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二十六話 アニキ、呼び掛ける
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いつだってそうだった……ボクは相手のためだと言いながら、綺麗ごとばかり並べている。
それが処世術だったとしても、たんに自分が泥被りたくないだけなんだ。
現に、田宮さんは苦しみ悩み道を誤ってしまった。
こうなったのもボクのせいだ……自分のポリシーを気にするあまり、彼女気持ちを軽く見てしまった。
どうにかなる。そんな曖昧な思いで接したことへの罰だ。
氷柱に亀裂が走ると即、砕け散った。
吹雪くような冷気の向こう側から、ソレは突然やってきた。
『変身だぁ! キュイちゃん』
「ピュアセレクト! ドブデバイス、オン」
氷原となった中庭に人よりも遥かに大きな魚影が舞う。
地中がまるで水面のように波打つと魚影は吸い込まれるように消えてゆく。
一瞬だけ視認できた。あれは化石の魚だ!
シーラカンスとか言うヤツに似ているような気がする。
この魚型変体を以後、アイススケルターと呼称しよう。
とにかく、ここで暴れ回られると他の生徒たちに被害が及ぶ。
なんとか注意をひきつけながら、学校から抜け出すしかない。
地中から「グオオオオォォォ――――ン!!」と鳴き声のようなものが響いてくる。
音が明確に聞き取れるようになると石化した魚体が再度、氷塊の真下から出現し、ボクの頭上を飛び越えてくる。
敵意があるのか、判断しかねるが今はそんなことを気にしている余裕はない。
変体は変体、怪人である。
今は無害だったとしても、人を殲滅する為に肉体改造されたのが怪人だ。
時間が経てば経つほど、自我を失い凶暴化する。
せめて、まだ誰も傷つけていないうちに止めてあげなければ田宮さんが可哀想だ。
同情、上等、それで彼女の傷口が小さくなるのなら、今度は汚れてみせる。
何もない、何もできない真っ白な正義は今日で卒業だ。
「来い! ガゥキャノン」
転送された小型の砲身はガゥライザーの腹部両脇に搭載されているキャノン砲だ。
小柄なボクでも扱えるようにサイズダウンして再設計されている。
重量的に持ち上がられるか不安だったけど、これなら二門、同時にガーターベルトへと取り付けられる。
足下へ置けば邪魔にしかならない砲身を腰に取り付けるのは、もはやヒーロー業界のマナーである。
照準スコープなど付属されていないから、砲撃をするタイミングは当然、勘だ。
地面から飛び跳ねては踊る魚影にロックオンして砲弾を撃ち込む。
トリガーを引くと眩いばかりの閃光が射出し、中庭で凍っている二腕キンジェロ―の像を破壊した。
勉強をするフリをしながら、数百キロの背負子を担ぐアルピニスト。
その目的は他者にバレないようビルドアップすることである。
稀代の筋肉馬鹿である彼も銅像になれば、容易く溶け落ちる……違うな、コレ。
ボクが知っているガゥキャノンの性能ではない。
完全にビームキャノンとしてカスタマイズされている……。
攻撃は見事に外したけど、挑発には成功した。
ボクを脅威だと判断したアイススケルターが怒涛の勢いで接近してくる。
「転送、スラスターレグルぅぅぅぅ」
全力ダッシュで、校舎の外へとおびき出す。
ただし、ボクはキュイの状態であっても持久力がない。
すぐに息切れして走れなくなる。そこでコイツ、スラスターレグルの出番だ。
ガゥライザーのタテガミが真ん中から観音開きして、ウィング形状に変形する。
ボクの背中へとタイタニックするようにはめ込まれると、魔法の力によりボクは空を飛べるようになる。
本当にこれが魔法なのか? 胡散臭さ満載だけど、疑うのはNGだ。
誰かが疑念を口にすれば、誰かの夢を壊すことになる。
魔法少女にとって、魔法は絶対だ。マジカルパワーで解決できないことは何一つない。
万が一、マッスルパワーだと指摘されても美少女という概念がそれを打ち消す。
実に計算されたバトルスタイルに、我々ヒーローも脱帽せざるを得ない。
とにかく空を制する者は戦いを制する! そう思っていた時期がボクにもありました……。
「す、進めない。嘘でしょ……氷壁ができている!?」
視界に反射する光が飛び込むと、急停止した。
気づかないまま先に進んでいたら大惨事になるところだった。
学校から出られないよう、頑丈な氷の壁が学校全体に覆いかぶさっていた。
よく見ると、校舎自体も氷でコーティグされている。
道理で、これだけ騒がしくしても誰も出て来ないわけだ。
この様子では……間違いなく、教室の中は氷点下にさらされてしまっている。
グズグズしている暇はない! 今度こそガゥキャノンで田宮さんを元に戻してみせる。
『ピュアドライブ、ゲージマックス! サークレットフェアリーよ、今こそフルスタイルモードにチェンジするのです!!』
「言い方……怪しい教祖みたいになっているよ」
『ええぃ! つべこべ言うのは変身してからになさい。これぞ、本家本元の魔法少女なり!!』
「ドブさん、勢いだけはスゴく伝ってくるよ!」
『ドンマイみたいな感じで言うなや』
「トランスドライブ、ピュアチェンジ!! サークレットフェアリー!」
ボクのかけ声と連動し、ガゥライザーの本体が顕現した。
そこから十六のパーツ(今はうち三つを使用中)に分解され、身体の各部に装着されてゆく。
ボディスーツ姿(競泳水着)の上からフリル形状のミニスカートに変形したスラスターレグル取り付けられ、袖なしのバスターローブをまとう。
各部のギアパーツは肉体を保護するアーマーとなり、獣の角を想起させるような、鋭角のヘッドバンドが頭に固定された。
この感触、イエローに変身した時と同じだ。
湧き上がる勇気と、無限の希望、そして……あざといぐらいの愛くるしさを携えて、サークレットフェアリーここに爆誕。
それが処世術だったとしても、たんに自分が泥被りたくないだけなんだ。
現に、田宮さんは苦しみ悩み道を誤ってしまった。
こうなったのもボクのせいだ……自分のポリシーを気にするあまり、彼女気持ちを軽く見てしまった。
どうにかなる。そんな曖昧な思いで接したことへの罰だ。
氷柱に亀裂が走ると即、砕け散った。
吹雪くような冷気の向こう側から、ソレは突然やってきた。
『変身だぁ! キュイちゃん』
「ピュアセレクト! ドブデバイス、オン」
氷原となった中庭に人よりも遥かに大きな魚影が舞う。
地中がまるで水面のように波打つと魚影は吸い込まれるように消えてゆく。
一瞬だけ視認できた。あれは化石の魚だ!
シーラカンスとか言うヤツに似ているような気がする。
この魚型変体を以後、アイススケルターと呼称しよう。
とにかく、ここで暴れ回られると他の生徒たちに被害が及ぶ。
なんとか注意をひきつけながら、学校から抜け出すしかない。
地中から「グオオオオォォォ――――ン!!」と鳴き声のようなものが響いてくる。
音が明確に聞き取れるようになると石化した魚体が再度、氷塊の真下から出現し、ボクの頭上を飛び越えてくる。
敵意があるのか、判断しかねるが今はそんなことを気にしている余裕はない。
変体は変体、怪人である。
今は無害だったとしても、人を殲滅する為に肉体改造されたのが怪人だ。
時間が経てば経つほど、自我を失い凶暴化する。
せめて、まだ誰も傷つけていないうちに止めてあげなければ田宮さんが可哀想だ。
同情、上等、それで彼女の傷口が小さくなるのなら、今度は汚れてみせる。
何もない、何もできない真っ白な正義は今日で卒業だ。
「来い! ガゥキャノン」
転送された小型の砲身はガゥライザーの腹部両脇に搭載されているキャノン砲だ。
小柄なボクでも扱えるようにサイズダウンして再設計されている。
重量的に持ち上がられるか不安だったけど、これなら二門、同時にガーターベルトへと取り付けられる。
足下へ置けば邪魔にしかならない砲身を腰に取り付けるのは、もはやヒーロー業界のマナーである。
照準スコープなど付属されていないから、砲撃をするタイミングは当然、勘だ。
地面から飛び跳ねては踊る魚影にロックオンして砲弾を撃ち込む。
トリガーを引くと眩いばかりの閃光が射出し、中庭で凍っている二腕キンジェロ―の像を破壊した。
勉強をするフリをしながら、数百キロの背負子を担ぐアルピニスト。
その目的は他者にバレないようビルドアップすることである。
稀代の筋肉馬鹿である彼も銅像になれば、容易く溶け落ちる……違うな、コレ。
ボクが知っているガゥキャノンの性能ではない。
完全にビームキャノンとしてカスタマイズされている……。
攻撃は見事に外したけど、挑発には成功した。
ボクを脅威だと判断したアイススケルターが怒涛の勢いで接近してくる。
「転送、スラスターレグルぅぅぅぅ」
全力ダッシュで、校舎の外へとおびき出す。
ただし、ボクはキュイの状態であっても持久力がない。
すぐに息切れして走れなくなる。そこでコイツ、スラスターレグルの出番だ。
ガゥライザーのタテガミが真ん中から観音開きして、ウィング形状に変形する。
ボクの背中へとタイタニックするようにはめ込まれると、魔法の力によりボクは空を飛べるようになる。
本当にこれが魔法なのか? 胡散臭さ満載だけど、疑うのはNGだ。
誰かが疑念を口にすれば、誰かの夢を壊すことになる。
魔法少女にとって、魔法は絶対だ。マジカルパワーで解決できないことは何一つない。
万が一、マッスルパワーだと指摘されても美少女という概念がそれを打ち消す。
実に計算されたバトルスタイルに、我々ヒーローも脱帽せざるを得ない。
とにかく空を制する者は戦いを制する! そう思っていた時期がボクにもありました……。
「す、進めない。嘘でしょ……氷壁ができている!?」
視界に反射する光が飛び込むと、急停止した。
気づかないまま先に進んでいたら大惨事になるところだった。
学校から出られないよう、頑丈な氷の壁が学校全体に覆いかぶさっていた。
よく見ると、校舎自体も氷でコーティグされている。
道理で、これだけ騒がしくしても誰も出て来ないわけだ。
この様子では……間違いなく、教室の中は氷点下にさらされてしまっている。
グズグズしている暇はない! 今度こそガゥキャノンで田宮さんを元に戻してみせる。
『ピュアドライブ、ゲージマックス! サークレットフェアリーよ、今こそフルスタイルモードにチェンジするのです!!』
「言い方……怪しい教祖みたいになっているよ」
『ええぃ! つべこべ言うのは変身してからになさい。これぞ、本家本元の魔法少女なり!!』
「ドブさん、勢いだけはスゴく伝ってくるよ!」
『ドンマイみたいな感じで言うなや』
「トランスドライブ、ピュアチェンジ!! サークレットフェアリー!」
ボクのかけ声と連動し、ガゥライザーの本体が顕現した。
そこから十六のパーツ(今はうち三つを使用中)に分解され、身体の各部に装着されてゆく。
ボディスーツ姿(競泳水着)の上からフリル形状のミニスカートに変形したスラスターレグル取り付けられ、袖なしのバスターローブをまとう。
各部のギアパーツは肉体を保護するアーマーとなり、獣の角を想起させるような、鋭角のヘッドバンドが頭に固定された。
この感触、イエローに変身した時と同じだ。
湧き上がる勇気と、無限の希望、そして……あざといぐらいの愛くるしさを携えて、サークレットフェアリーここに爆誕。
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