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2巻
2-2
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彼女も私と同じで一人でいる事が多かった。貴族しかいないAクラスに平民の彼女が簡単に馴染めるわけもないので、当然の事かもしれない。
他の貴族の令嬢達と仲良くなってもよかったんだけど、Aクラスには巻き戻り前のアイザック様の婚約者、アイリーン様がいるのだ。
彼女は侯爵令嬢という身分もあいまって、多くの取り巻き達を連れている。
そして私は何故か彼女に嫌われているようで、その集団には無視されてしまっていた。
断罪を免れるためにも、アイリーン様とは関わりたくないから良いんだけど……
クラスにお友達がいないのは正直言ってさみしい。
だからこそ、シャルロッテ様に話しかけようと思っているのに、休み時間になると何処かに消えてしまう。今日も、授業が終わったらあっという間に何処かへ行ってしまっていた。
◆
「あれ? ここは……何処だろう?」
お昼の休み時間、私は学園の広大な庭園をウロウロしていた。
はい、迷子になりました。
困ったな。アイザック様とランチを学園のカフェテリアで食べる約束をしてたのに……
いつもは教室から一緒に移動しているのだけど、今日はアイザック様とジーニアス様の二人が生徒会でのお手伝いに呼ばれているのだ。
初めて一人でカフェテリアに向かうと決まってから、二人には「大丈夫なのか?」と心配され、「三回も行った事があるので大丈夫ですわ」などと偉そうに言ったのに……
そんな過去の自分に一言だけ言ってやりたい。
あなたは三回行っても道を覚えてないポンコツですよと。
何処が正解の道なのかも分からず、途方にくれながらプラプラと歩いていると。
「――んっ?」
奥の方で声がする? 何かしら……
――気になり、声がする方に駆け寄ると……
「平民の分際でAクラス? そんなわけないでしょう。あなたにはAクラスの人しか羽織れないその特別なローブも、ネクタイも似合わないのよ!」
「ホントよね? 私でさえBクラスですのにっ、あなたのような下賎な平民がAなんてっ! 信じられないですわっ」
「試験の時に何か不正をやったんでしょう?」
「――私は何もしていません」
「はぁ? 誰が口を利いて良いと言ったのかしら?」
「あははっ、平民には貴族のルールなんて分からないのかしらね」
――六、七人の女生徒が一人の女生徒を囲み罵っている?
「なっ……何をやってっ!」
私が慌てて女生徒の前に飛び出た、その時!
「こんなお弁当なんか持ってきて、貧乏臭いのよっ! その似合っていないローブもこれで似合うようになるんじゃない?」
女生徒の一人が、囲まれていた少女に目がけてお弁当箱を投げつけた。
それは全て少女の前に立った私に命中し、お弁当の中身が私のローブや制服にベッタリと付着した。
お弁当を投げるとか……あなた達、何をやってくれてるんですか?
「…………これはどういう事ですか?」
食べ物を大事にしないとかバチが当たりますよ?
私はキッとその場にいた貴族令嬢達を睨みつけた。
彼女達は自分達のした事に気付き、震え上がる。
だって目の前にいるのは、公爵家令嬢ソフィア・グレイドルなのだから。
自分で言うのもあれだけれど……いくら学園内とはいえ、公爵令嬢に対してお弁当をぶちまけるとか、ありえないよね。
「質問してるんですよ? 一人の女生徒をよってたかって虐めるとか、淑女のする事ですかね?」
私はさらに彼女達を睨む。
「「「「ヒィッ」」」」
いつもの私とあまりにも様子が違うので、怖かったのだろう。
貴族令嬢達の顔色が青ざめていく。
「ももっ、申しわけございませんっ。グレイドル様に当てるつもりは無かったのですっ」
女生徒達は必死に許してくれと涙ながらに懇願する。
「謝るのは私ではありませんよ! 私の後ろにいる女生徒にです」
「へっ、平民に?」
「……はぁ。 この学園では身分など関係ないって、学園長がおっしゃってましたよ? ゴタゴタ言ってないで早く謝れ!」
あまりにも平民だの、あーだーこーだといって自分達がした事を反省しないので、つい怒りが魔力の覇気となって溢れ出る。
それを浴びた女生徒達は立っているのもやっとの様子。
「「「「ヒィッ! すすっ、すみませんでした」」」」
女生徒達はフラつきながらも深々と頭を下げた。
「あなた達のした事についてはちゃんと、学校に報告させてもらいます。処罰は学校にお任せします」
「そっ、そんな、お許し下さい」
「それならば、初めからしなければ良かったんですよ! 虐めなんてっ」
「くっ……」
女生徒達は顔を顰め真っ青になりながら、その場を去っていった。
はぁ……前世でもあんなタイプの女性がいたなぁ……っと昔のことを思い出す。集団で、しかも自分より弱い者しかターゲットにしない人達。
そんな人達の事は本当に苦手だし嫌いだった。
「あっあのう……」
前世の事まで思い出し、一人でぷりぷりと怒っていると。
私の背後から、か細い声が聞こえてくる。
「あっ」
そうだった! ぷりぷりしてる場合じゃなかった。
虐められてた子は大丈夫かな?
私は慌てて声のする方に振り向いた。
あわっ……! 可愛い……なんて可愛いのっ。
なんと、虐められていたのは、私が話しかけたいと思っていたクラスメート、シャルロッテ・ハーメイ様だったのだ。
「あっ、あのう……グレイドル様。ありがとうございます」
そう言ってシャルロッテ様は困ったように笑い、私に向かって深くお辞儀した。
ついついその可愛いさにポーッと見惚れてしまう。
「あの……?」
「へあっ? あっ! ゲフンッ。大した事はしてないから、気にしないで下さいね?」
私は慌てて淑女らしい仕草をし、返事をした。
危ない危ない、可愛くてウットリ見てるとか何をしているの私。
「あのっ! すみません。私のせいで大切なローブや制服が……何年かかるか分かりませんが、絶対に弁償してお返しします」
「えっ? そんな事してくれなくて大丈夫! 本当に気にしないで?」
「でも……それじゃあ私の気持ちが収まりません」
そんな事言われてもなぁ……弁償してもらうなら、お弁当をぶち撒けた人達にお願いしたいし。
この美少女に何をして……っ!
そうだっ。
「あのっ……じゃあ。一つお願いしても良い?」
「はいっ、なんですか?」
「私とお友達になってくれない?」
「わっ……私がですか……? そんなっ……ふうっ」
私がそう伝えると、シャルロッテ様の大きな瞳からポロポロと涙がこぼれ落ちる。
「えっ!? 泣く程に嫌だった!?」
そこまで私って嫌われてるのか……くうっ。
何もしてないはずなんだけれどなぁ……悲しい。
「ちっ、ちがっ、誤解っ、うっ……嬉しくてっ、ふううっ、涙がっ」
私がシュンッと下を向き落ち込んでいると。
泣きながら必死に違うと、嬉しいという言葉が聞こえてきた……え?
聞き間違いじゃない……よね?
「えっ? 嬉しい? 私と友達になるのが?」
緊張しながら聞き返すと、シャルロッテ様は頬を染めながら頭を上下に大きく動かして頷いた。
「やった! やりましたわ! 初めてのお友達ができましたわ」
私は嬉しくって、その場でぴょんぴょんと跳ねた。
そんな淑女らしからぬ姿を、にこにこと泣き笑いしながら、シャルロッテ様は幸せそうに見ていた。
◆
「あのっ……そのまま教室に帰られるのですか?」
シャルロッテ様が心配そうに私の制服を見ている。確かにこのまま教室に戻ると食べ物が匂うし、あまりにも汚れが酷い。
だけど私にはこの制服をすぐに綺麗にしてくれる味方がいるんだな。
「ああっ、これ? 大丈夫ですわ」
「えっ? 大丈夫?」
「ふふっ……もうそろそろかしら?」
私がそう呟くと、空から二つの光が勢いよく飛んで来た。
『ソフィア~、お昼のオヤツ』
『今日は何かしら……ウフフ』
私と契約してくれている妖精達――シルフィとウンディーネが私目がけて飛んできた。
ふふふ、そろそろ来る頃だと思ってたのよね。おやつの時間だもの。
「今日のおやつはマフィンよ」
私は鞄からマフィンを取り出し二人に見せた。
『うわぁー! なんか今日のは色が綺麗だなっ』
『本当ねっ、クリームの色が水色や桃色をしていて、今までのマフィンと違うわっ!』
「ふふっ。マフィンを飾り付けるお砂糖に色付けして飾り付けしたの。ちょっとカロリーは高くなるけどね。綺麗でしょう?」
『うんっ、美味そうだっ! んっ、アレ? ソフィア服が汚れてるぞ? 何したんだ?』
シルフィが汚れた制服の周りを不思議そうに飛び回る。
さすがに気付くよね。
「えへへ……ちょっと」
『相変わらずお転婆なんだからっ。はぁ……仕方ないわね。シルフィいつものアレの出番ね』
ウンディーネが私の汚れた制服を見て、やれやれと両手をあげて呆れた表情をする。
『おおっ、分かったぜ!』
シルフィがそれに応えると、ウンディーネが呪文を詠唱する。
すると、私の制服に渦を巻いた水が襲いかかってきた。渦巻いた水は汚れを巻き取りながら制服の上を這っていく。あっという間に私の制服は水浸しに。
『次はオイラの出番だね♪』
シルフィがそう言うと、風を使い一瞬で制服を乾かしてくれた。
その一連の動作を静かに見ていたシャルロッテ様だが、さすがに私のドレスがいきなり元通りになったのだ。驚きのあまりポカンと口を開けて固まっている。
「なっ、何がっ!? これは魔法ですか? グレイドル様の周りに二つの大きな光が現れたと思ったら……」
さすがは同じAクラスに在籍しているシャルロッテ様、魔力数値が高いだけある。姿は見えなくても、光としてシルフィ達を認識出来るんだわ。
それはそうと、シルフィ達の事をどう説明したら……
「ええっと、コレは魔法というか……あの。ええと……あっ、そういえばお友達になったのに、自己紹介がまだでしたわね」
私は慌てて名前を名乗ると、淑女の挨拶をした。
「あっ、あわっ……私はシャルロッテ・ハーメイと言います」
シャルロッテ様は少し頬を染め緊張しながら挨拶を返してくれた。
「私達、クラスメートでしょう? よろしければシャルロッテ様とお呼びしても良いかしら?」
「もっ、もちろんです! シャルロッテとお呼び下さい! 様はいりません」
「まぁ! では私の事もソフィアと呼んでね」
「そんなっ、私のような者が……グレイドル様を名前でお呼びするなんてっ」
「私がそう呼んで欲しいの! お願い」
「……分かりました。ソフィア様」
「ふふっ、なんか嬉しいなっ。よろしくねシャルロッテ」
「――‼ は、はいっ」
お友達ができた事が嬉しくて微笑むと、シャルロッテは何故か下を向き頬を赤らめた。
「あの……それで制服は何故元の美しさに戻ったのですか? どのような魔法を使われたのですか?」
やっと冷静を取り戻したシャルロッテが、私に質問する。
確かにそこが一番気になりますよね。
「ええっと……? 何故?」
シルフィ達の事をどう説明し……あっ! そうだったわ。忘れてたっ。
シルフィ達の事はお父様やアイザック様たち以外には秘密だった!
でも今更どう説明したら良いのか分からないし……シャルロッテは私にとって初めてのお友達だから……シルフィとウンディーネを紹介しても良いよね?
私はうんうんと一人勝手に納得した。
「……実はシャルロッテが見た光の正体は、妖精なの。私……そのう、実は妖精とお友達で……」
「ソッ……! ソフィア様は妖精様とお友達なんですか!? 妖精は心が美しい者の前にしか姿を現さないと聞きますわ! ソフィア様は見た目だけじゃなく心も天使のように美しいのですね!」
私が妖精とお友達だと告げると、シャルロッテが興奮気味に早口で捲し立てる。
シャルロッテ?
天使とか何を言い出すんですか?
「ほほっ、褒めすぎだわ! そのっ、たまたま仲良くなれて……」
少し照れ臭そうに私が微笑むと、つられてシャルロッテも一緒に笑う。
「「ふふっ」」
私とシャルロッテはお互いの目を見つめ合い笑った。
「……あれっ? 私……笑ってる。自然に笑えたのなんて何年ぶりでしょうか……まだ自然に笑う事が出来たのですね。笑うのって胸が温かくなって幸せだったと思い出しました」
シャルロッテが笑いながら、何やらブツブツと独り事を言っている。
「どうしたの? 何を言ってるのか聞き取れないけれど……」
頬を緩めて笑うシャルロッテが不思議で、キョトンとした目で見つめていたら。
「ふふふっ。私……今、最高に幸せなんです。ソフィア様とお友達になれて妖精様のお話も聞けて」
「ひょっ!?」
友達になれて幸せと満面の笑みで言われ、嬉しくて私も同じように赤面しニマニマと笑う。
そんな私達の様子をシルフィとウンディーネも、ヤレヤレっといった表情で見ていた。
そんな時だった。
ぐぅぅぅぅ~っとお腹の音色が盛大に鳴り響く。
「あっ!」
シャルロッテが真っ赤な顔でお腹を押さえる。
「すっ、すみませんっ! お昼ご飯を食べ損ねてっ、その……」
恥ずかしさの余りシャルロッテは慌てふためく。そんな姿も可愛い。
「ふふ、そんなに慌てなくても……そうだっ。このマフィン一緒に食べない? これは私が作ったの」
「ソフィア様が……作った?」
私が作ったと言うと、ものすごく不思議そうにシャルロッテが見てくる。
公爵令嬢が料理するなんて世間一般的ではないか……でも私は違うんだよね。
「そうなの。今日のは自信作!」
私はシャルロッテの手にマフィンをのせた。
実はこのマフィン、アイザック様とジーニアス様にあげる予定だったけど良いよね。
「どうぞ食べて?」
「……はいっ」
シャルロッテは笑い泣きしながら、美味しそうにマフィンを頬張る。
「おっ……おいひいです。ううっ」
「なっ、なんで泣くの!?」
「私……お友達の作ったお菓子を食べるの……初めてで……ふうっ。嬉しくて」
幸せそうにマフィンを食べるシャルロッテを見て、私はなんだか羨ましくなり……
「私もお友達の作ったお菓子を食べたいわっ!」
「わっ、私が作ったお菓子などソフィア様には……」
「いいのっ! 明日はお菓子を交換しましょう。ねっ? 約束よ」
「明日……ですか?」
私がそう言うと、シャルロッテは大きな瞳をさらに見開く。
「そうよっ」
「ふふっ」
シャルロッテはまた涙を零した。
でも、なんだかさっきよりも嬉しそうだ。
「また泣いて!」
「えへへ、嬉し涙です」
◇ シャルロッテ・ハーメイ
「なんと! この魔力量……凄いですよ! シャルロッテ様なら宮廷魔導士になれますよ」
私の魔力が桁違いに高いと分かったのは、十二歳の魔力測定の儀。
測定をした神官の人が両親に向かって瞳を輝かせ、そう語っていた。その時の私は、大人に褒められたのが嬉しくて、何かすごい事なのではと心が躍ったのだけれど。
――想像に反して、私の人生は百八十度変わってしまった。
私は田舎の小さな村に住んでいた。
田舎じゃ、ほんの少しの魔力でも魔力持ちってだけで目立つのだ。だから有名な魔法学園に入れる程の魔力が私にあると分かると、小さな村は大騒ぎとなり、私を崇め盛り立てた。
大人達は、こんな子どもに媚びを売る。
何故なら私が学園を卒業し、王宮勤めの宮廷魔導士様になるかもしれないからだ。
平民が宮廷魔導士と繋がりを持つなど、まずありえない。
だからなれるかもしれない私に、大人達は必死に媚びを売るのだ。
両親はそれを誇らしげにいつも嬉しそうに自慢する。周りが私を褒め称える度、両親の態度が尊大になっていった。
いつしか私は両親にとって娘ではなく、自慢するための道具となった。そう、両親まで変わってしまった。
何処かに行っては道具を自慢、そんな道具を羨ましく見る村人達。
あの日から、同世代の友達はいなくなった。皆が私を避けた。
理由は簡単。大人達が私に媚びを売ろうと、他の子供達と比べ持ち上げる。誰だって比較され下に見られたら良い気はしない。
そして一番の原因は、私の両親が友達を見下しバカにしたからだ。
「あんた達みたいな出来の悪い子と、ウチのシャルロッテは格が違うのよ、未来の宮廷魔導士様だからね。分かる? もう近寄らないでね?」
その言葉を聞いた時は泣いて怒ったが、両親はそれを止める事は無かった。
「シャルロッテは私達とは格が違うからね~。一緒に遊んでもつまらないでしょ?」
「私達と遊んでいたら魔導士様の格が下がってしまうわ」
――誰も一緒に遊んでくれなくなった。
他の貴族の令嬢達と仲良くなってもよかったんだけど、Aクラスには巻き戻り前のアイザック様の婚約者、アイリーン様がいるのだ。
彼女は侯爵令嬢という身分もあいまって、多くの取り巻き達を連れている。
そして私は何故か彼女に嫌われているようで、その集団には無視されてしまっていた。
断罪を免れるためにも、アイリーン様とは関わりたくないから良いんだけど……
クラスにお友達がいないのは正直言ってさみしい。
だからこそ、シャルロッテ様に話しかけようと思っているのに、休み時間になると何処かに消えてしまう。今日も、授業が終わったらあっという間に何処かへ行ってしまっていた。
◆
「あれ? ここは……何処だろう?」
お昼の休み時間、私は学園の広大な庭園をウロウロしていた。
はい、迷子になりました。
困ったな。アイザック様とランチを学園のカフェテリアで食べる約束をしてたのに……
いつもは教室から一緒に移動しているのだけど、今日はアイザック様とジーニアス様の二人が生徒会でのお手伝いに呼ばれているのだ。
初めて一人でカフェテリアに向かうと決まってから、二人には「大丈夫なのか?」と心配され、「三回も行った事があるので大丈夫ですわ」などと偉そうに言ったのに……
そんな過去の自分に一言だけ言ってやりたい。
あなたは三回行っても道を覚えてないポンコツですよと。
何処が正解の道なのかも分からず、途方にくれながらプラプラと歩いていると。
「――んっ?」
奥の方で声がする? 何かしら……
――気になり、声がする方に駆け寄ると……
「平民の分際でAクラス? そんなわけないでしょう。あなたにはAクラスの人しか羽織れないその特別なローブも、ネクタイも似合わないのよ!」
「ホントよね? 私でさえBクラスですのにっ、あなたのような下賎な平民がAなんてっ! 信じられないですわっ」
「試験の時に何か不正をやったんでしょう?」
「――私は何もしていません」
「はぁ? 誰が口を利いて良いと言ったのかしら?」
「あははっ、平民には貴族のルールなんて分からないのかしらね」
――六、七人の女生徒が一人の女生徒を囲み罵っている?
「なっ……何をやってっ!」
私が慌てて女生徒の前に飛び出た、その時!
「こんなお弁当なんか持ってきて、貧乏臭いのよっ! その似合っていないローブもこれで似合うようになるんじゃない?」
女生徒の一人が、囲まれていた少女に目がけてお弁当箱を投げつけた。
それは全て少女の前に立った私に命中し、お弁当の中身が私のローブや制服にベッタリと付着した。
お弁当を投げるとか……あなた達、何をやってくれてるんですか?
「…………これはどういう事ですか?」
食べ物を大事にしないとかバチが当たりますよ?
私はキッとその場にいた貴族令嬢達を睨みつけた。
彼女達は自分達のした事に気付き、震え上がる。
だって目の前にいるのは、公爵家令嬢ソフィア・グレイドルなのだから。
自分で言うのもあれだけれど……いくら学園内とはいえ、公爵令嬢に対してお弁当をぶちまけるとか、ありえないよね。
「質問してるんですよ? 一人の女生徒をよってたかって虐めるとか、淑女のする事ですかね?」
私はさらに彼女達を睨む。
「「「「ヒィッ」」」」
いつもの私とあまりにも様子が違うので、怖かったのだろう。
貴族令嬢達の顔色が青ざめていく。
「ももっ、申しわけございませんっ。グレイドル様に当てるつもりは無かったのですっ」
女生徒達は必死に許してくれと涙ながらに懇願する。
「謝るのは私ではありませんよ! 私の後ろにいる女生徒にです」
「へっ、平民に?」
「……はぁ。 この学園では身分など関係ないって、学園長がおっしゃってましたよ? ゴタゴタ言ってないで早く謝れ!」
あまりにも平民だの、あーだーこーだといって自分達がした事を反省しないので、つい怒りが魔力の覇気となって溢れ出る。
それを浴びた女生徒達は立っているのもやっとの様子。
「「「「ヒィッ! すすっ、すみませんでした」」」」
女生徒達はフラつきながらも深々と頭を下げた。
「あなた達のした事についてはちゃんと、学校に報告させてもらいます。処罰は学校にお任せします」
「そっ、そんな、お許し下さい」
「それならば、初めからしなければ良かったんですよ! 虐めなんてっ」
「くっ……」
女生徒達は顔を顰め真っ青になりながら、その場を去っていった。
はぁ……前世でもあんなタイプの女性がいたなぁ……っと昔のことを思い出す。集団で、しかも自分より弱い者しかターゲットにしない人達。
そんな人達の事は本当に苦手だし嫌いだった。
「あっあのう……」
前世の事まで思い出し、一人でぷりぷりと怒っていると。
私の背後から、か細い声が聞こえてくる。
「あっ」
そうだった! ぷりぷりしてる場合じゃなかった。
虐められてた子は大丈夫かな?
私は慌てて声のする方に振り向いた。
あわっ……! 可愛い……なんて可愛いのっ。
なんと、虐められていたのは、私が話しかけたいと思っていたクラスメート、シャルロッテ・ハーメイ様だったのだ。
「あっ、あのう……グレイドル様。ありがとうございます」
そう言ってシャルロッテ様は困ったように笑い、私に向かって深くお辞儀した。
ついついその可愛いさにポーッと見惚れてしまう。
「あの……?」
「へあっ? あっ! ゲフンッ。大した事はしてないから、気にしないで下さいね?」
私は慌てて淑女らしい仕草をし、返事をした。
危ない危ない、可愛くてウットリ見てるとか何をしているの私。
「あのっ! すみません。私のせいで大切なローブや制服が……何年かかるか分かりませんが、絶対に弁償してお返しします」
「えっ? そんな事してくれなくて大丈夫! 本当に気にしないで?」
「でも……それじゃあ私の気持ちが収まりません」
そんな事言われてもなぁ……弁償してもらうなら、お弁当をぶち撒けた人達にお願いしたいし。
この美少女に何をして……っ!
そうだっ。
「あのっ……じゃあ。一つお願いしても良い?」
「はいっ、なんですか?」
「私とお友達になってくれない?」
「わっ……私がですか……? そんなっ……ふうっ」
私がそう伝えると、シャルロッテ様の大きな瞳からポロポロと涙がこぼれ落ちる。
「えっ!? 泣く程に嫌だった!?」
そこまで私って嫌われてるのか……くうっ。
何もしてないはずなんだけれどなぁ……悲しい。
「ちっ、ちがっ、誤解っ、うっ……嬉しくてっ、ふううっ、涙がっ」
私がシュンッと下を向き落ち込んでいると。
泣きながら必死に違うと、嬉しいという言葉が聞こえてきた……え?
聞き間違いじゃない……よね?
「えっ? 嬉しい? 私と友達になるのが?」
緊張しながら聞き返すと、シャルロッテ様は頬を染めながら頭を上下に大きく動かして頷いた。
「やった! やりましたわ! 初めてのお友達ができましたわ」
私は嬉しくって、その場でぴょんぴょんと跳ねた。
そんな淑女らしからぬ姿を、にこにこと泣き笑いしながら、シャルロッテ様は幸せそうに見ていた。
◆
「あのっ……そのまま教室に帰られるのですか?」
シャルロッテ様が心配そうに私の制服を見ている。確かにこのまま教室に戻ると食べ物が匂うし、あまりにも汚れが酷い。
だけど私にはこの制服をすぐに綺麗にしてくれる味方がいるんだな。
「ああっ、これ? 大丈夫ですわ」
「えっ? 大丈夫?」
「ふふっ……もうそろそろかしら?」
私がそう呟くと、空から二つの光が勢いよく飛んで来た。
『ソフィア~、お昼のオヤツ』
『今日は何かしら……ウフフ』
私と契約してくれている妖精達――シルフィとウンディーネが私目がけて飛んできた。
ふふふ、そろそろ来る頃だと思ってたのよね。おやつの時間だもの。
「今日のおやつはマフィンよ」
私は鞄からマフィンを取り出し二人に見せた。
『うわぁー! なんか今日のは色が綺麗だなっ』
『本当ねっ、クリームの色が水色や桃色をしていて、今までのマフィンと違うわっ!』
「ふふっ。マフィンを飾り付けるお砂糖に色付けして飾り付けしたの。ちょっとカロリーは高くなるけどね。綺麗でしょう?」
『うんっ、美味そうだっ! んっ、アレ? ソフィア服が汚れてるぞ? 何したんだ?』
シルフィが汚れた制服の周りを不思議そうに飛び回る。
さすがに気付くよね。
「えへへ……ちょっと」
『相変わらずお転婆なんだからっ。はぁ……仕方ないわね。シルフィいつものアレの出番ね』
ウンディーネが私の汚れた制服を見て、やれやれと両手をあげて呆れた表情をする。
『おおっ、分かったぜ!』
シルフィがそれに応えると、ウンディーネが呪文を詠唱する。
すると、私の制服に渦を巻いた水が襲いかかってきた。渦巻いた水は汚れを巻き取りながら制服の上を這っていく。あっという間に私の制服は水浸しに。
『次はオイラの出番だね♪』
シルフィがそう言うと、風を使い一瞬で制服を乾かしてくれた。
その一連の動作を静かに見ていたシャルロッテ様だが、さすがに私のドレスがいきなり元通りになったのだ。驚きのあまりポカンと口を開けて固まっている。
「なっ、何がっ!? これは魔法ですか? グレイドル様の周りに二つの大きな光が現れたと思ったら……」
さすがは同じAクラスに在籍しているシャルロッテ様、魔力数値が高いだけある。姿は見えなくても、光としてシルフィ達を認識出来るんだわ。
それはそうと、シルフィ達の事をどう説明したら……
「ええっと、コレは魔法というか……あの。ええと……あっ、そういえばお友達になったのに、自己紹介がまだでしたわね」
私は慌てて名前を名乗ると、淑女の挨拶をした。
「あっ、あわっ……私はシャルロッテ・ハーメイと言います」
シャルロッテ様は少し頬を染め緊張しながら挨拶を返してくれた。
「私達、クラスメートでしょう? よろしければシャルロッテ様とお呼びしても良いかしら?」
「もっ、もちろんです! シャルロッテとお呼び下さい! 様はいりません」
「まぁ! では私の事もソフィアと呼んでね」
「そんなっ、私のような者が……グレイドル様を名前でお呼びするなんてっ」
「私がそう呼んで欲しいの! お願い」
「……分かりました。ソフィア様」
「ふふっ、なんか嬉しいなっ。よろしくねシャルロッテ」
「――‼ は、はいっ」
お友達ができた事が嬉しくて微笑むと、シャルロッテは何故か下を向き頬を赤らめた。
「あの……それで制服は何故元の美しさに戻ったのですか? どのような魔法を使われたのですか?」
やっと冷静を取り戻したシャルロッテが、私に質問する。
確かにそこが一番気になりますよね。
「ええっと……? 何故?」
シルフィ達の事をどう説明し……あっ! そうだったわ。忘れてたっ。
シルフィ達の事はお父様やアイザック様たち以外には秘密だった!
でも今更どう説明したら良いのか分からないし……シャルロッテは私にとって初めてのお友達だから……シルフィとウンディーネを紹介しても良いよね?
私はうんうんと一人勝手に納得した。
「……実はシャルロッテが見た光の正体は、妖精なの。私……そのう、実は妖精とお友達で……」
「ソッ……! ソフィア様は妖精様とお友達なんですか!? 妖精は心が美しい者の前にしか姿を現さないと聞きますわ! ソフィア様は見た目だけじゃなく心も天使のように美しいのですね!」
私が妖精とお友達だと告げると、シャルロッテが興奮気味に早口で捲し立てる。
シャルロッテ?
天使とか何を言い出すんですか?
「ほほっ、褒めすぎだわ! そのっ、たまたま仲良くなれて……」
少し照れ臭そうに私が微笑むと、つられてシャルロッテも一緒に笑う。
「「ふふっ」」
私とシャルロッテはお互いの目を見つめ合い笑った。
「……あれっ? 私……笑ってる。自然に笑えたのなんて何年ぶりでしょうか……まだ自然に笑う事が出来たのですね。笑うのって胸が温かくなって幸せだったと思い出しました」
シャルロッテが笑いながら、何やらブツブツと独り事を言っている。
「どうしたの? 何を言ってるのか聞き取れないけれど……」
頬を緩めて笑うシャルロッテが不思議で、キョトンとした目で見つめていたら。
「ふふふっ。私……今、最高に幸せなんです。ソフィア様とお友達になれて妖精様のお話も聞けて」
「ひょっ!?」
友達になれて幸せと満面の笑みで言われ、嬉しくて私も同じように赤面しニマニマと笑う。
そんな私達の様子をシルフィとウンディーネも、ヤレヤレっといった表情で見ていた。
そんな時だった。
ぐぅぅぅぅ~っとお腹の音色が盛大に鳴り響く。
「あっ!」
シャルロッテが真っ赤な顔でお腹を押さえる。
「すっ、すみませんっ! お昼ご飯を食べ損ねてっ、その……」
恥ずかしさの余りシャルロッテは慌てふためく。そんな姿も可愛い。
「ふふ、そんなに慌てなくても……そうだっ。このマフィン一緒に食べない? これは私が作ったの」
「ソフィア様が……作った?」
私が作ったと言うと、ものすごく不思議そうにシャルロッテが見てくる。
公爵令嬢が料理するなんて世間一般的ではないか……でも私は違うんだよね。
「そうなの。今日のは自信作!」
私はシャルロッテの手にマフィンをのせた。
実はこのマフィン、アイザック様とジーニアス様にあげる予定だったけど良いよね。
「どうぞ食べて?」
「……はいっ」
シャルロッテは笑い泣きしながら、美味しそうにマフィンを頬張る。
「おっ……おいひいです。ううっ」
「なっ、なんで泣くの!?」
「私……お友達の作ったお菓子を食べるの……初めてで……ふうっ。嬉しくて」
幸せそうにマフィンを食べるシャルロッテを見て、私はなんだか羨ましくなり……
「私もお友達の作ったお菓子を食べたいわっ!」
「わっ、私が作ったお菓子などソフィア様には……」
「いいのっ! 明日はお菓子を交換しましょう。ねっ? 約束よ」
「明日……ですか?」
私がそう言うと、シャルロッテは大きな瞳をさらに見開く。
「そうよっ」
「ふふっ」
シャルロッテはまた涙を零した。
でも、なんだかさっきよりも嬉しそうだ。
「また泣いて!」
「えへへ、嬉し涙です」
◇ シャルロッテ・ハーメイ
「なんと! この魔力量……凄いですよ! シャルロッテ様なら宮廷魔導士になれますよ」
私の魔力が桁違いに高いと分かったのは、十二歳の魔力測定の儀。
測定をした神官の人が両親に向かって瞳を輝かせ、そう語っていた。その時の私は、大人に褒められたのが嬉しくて、何かすごい事なのではと心が躍ったのだけれど。
――想像に反して、私の人生は百八十度変わってしまった。
私は田舎の小さな村に住んでいた。
田舎じゃ、ほんの少しの魔力でも魔力持ちってだけで目立つのだ。だから有名な魔法学園に入れる程の魔力が私にあると分かると、小さな村は大騒ぎとなり、私を崇め盛り立てた。
大人達は、こんな子どもに媚びを売る。
何故なら私が学園を卒業し、王宮勤めの宮廷魔導士様になるかもしれないからだ。
平民が宮廷魔導士と繋がりを持つなど、まずありえない。
だからなれるかもしれない私に、大人達は必死に媚びを売るのだ。
両親はそれを誇らしげにいつも嬉しそうに自慢する。周りが私を褒め称える度、両親の態度が尊大になっていった。
いつしか私は両親にとって娘ではなく、自慢するための道具となった。そう、両親まで変わってしまった。
何処かに行っては道具を自慢、そんな道具を羨ましく見る村人達。
あの日から、同世代の友達はいなくなった。皆が私を避けた。
理由は簡単。大人達が私に媚びを売ろうと、他の子供達と比べ持ち上げる。誰だって比較され下に見られたら良い気はしない。
そして一番の原因は、私の両親が友達を見下しバカにしたからだ。
「あんた達みたいな出来の悪い子と、ウチのシャルロッテは格が違うのよ、未来の宮廷魔導士様だからね。分かる? もう近寄らないでね?」
その言葉を聞いた時は泣いて怒ったが、両親はそれを止める事は無かった。
「シャルロッテは私達とは格が違うからね~。一緒に遊んでもつまらないでしょ?」
「私達と遊んでいたら魔導士様の格が下がってしまうわ」
――誰も一緒に遊んでくれなくなった。
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