152 / 314
本編 燦聖教編
ユグドラシル
しおりを挟むパールにユグドラシルの小枝を見せるため、急いでオーちゃんのお店に行こうと足を進めると……
俺を見つけたアレクがニコニコしながら走って来た。
あの顔はまた何か良い報告があるんだろうな。
何だろう……新しい生地が作れたか?それとも?
「ティーゴ!聞いてくれっ!とうとう完成したんだよ!」
走って来たアレクに、ガシッと両肩を掴まれガクガクっと揺さぶられる。
怪力のアレクに、いきなり体を揺さぶられたティーゴは堪ったもんじゃない。
「ちょっ!落ち着けアレク!分かったから」
必死にアレクを落ち着かせようとするも、興奮冷めやらずと言った様子で饒舌に話を進めるアレク。
「念願のアレが完成したんだっ興奮せずにいられるかよっ!とりあえずコッチに来てくれ!」
アレクに無理やり手を引っ張られ、ついた先には……見た事もない新しい建物が建っていた。
「こんな建物あったか?」
「へへっ二号さんに頼んで作ってもらったんだよ」
しかもこの建物は、作られてからもう一ヶ月になると言う。
「俺……全く気付かなかった……」
レインボーマスカットの畑裏にその建物はあった。
「これはレインボーマスカッ酒の貯蔵庫さっ」
「レインボーマスカッ酒!?」
『むふふぅ……ティーゴしゃま。やっと完成したんでキュよ!』
『村でも大人気のお酒でキュよ!』
キューとキュウタが大きなシッポをプリプリ振りながら、貯蔵庫から出て来た。
「これはキューさんとキュウタさんに教えて貰いながら作ったお酒なんだ」
「キューとキュウタに!?」
『そうでキュよっ!ガンガーリスはレインボーマスカットでお酒を作るのが得意なんでキュ!
お酒作りは大勢いないと難しキュて……でもパールしゃまが人族の言葉を話せる様にしてキュれたおかげで、獣人達と協力して作れたんでキュ!』
キューが褒めてと言わんばかりに、しっぽプリプリ俺を見つめる。
何その姿。可愛いすぎるだろ!
「凄いなぁキューにキュウタ。ありがとうなっ」
キューとキュウタの頭を思いっきりワシワシと撫でてやると、二匹は気持ち良さそうにウットリしている、その姿がまた可愛いくて……俺のヨシヨシと撫でる手が止まらない。
「でもさ?酒って最低でも一年位ねかせるって昔読んだ本に書いてたような……」
「そこなんだよ!それがこの貯蔵庫なら一時間で一年ねかせた状態になる魔法の貯蔵庫なんだよ!」
「何だそれは……!?そんな事が出来るのか?」
「何か良いアイデアはないかとキューさんがオーちゃんに相談してな?そしたら時間経過の魔道具を作ってくれたんだ」
何だそれは!オーちゃんの錬金術の腕前凄すぎだろ……。
「オーちゃんって凄いな……」
オーちゃんの凄さに改めて感動していたらアレクが背中をバンバンと叩き、酒を飲めと勧めてくる。
「さぁ!飲んでみてくれよっ」
良くみると貯蔵庫の側には、テーブルと椅子がありそこでレインボーマスカッ酒が試飲出来るようになっていた。
すでにテーブルには三号と一号が椅子に座り、顔を赤らめ楽しそうに飲んでいる。
その姿はもうどう見ても酔っ払いである。
おいっ一号に三号よ。それもう試飲じゃないだろ。
俺は一号と三号達がいるテーブルの空いてる椅子に座り、キューが渡してくれたレインボーマスカッ酒を飲んでみる……透明だが光が当たるとエメラルドみたいな色にも見える美しいお酒。
ゴクッ
「……!うまっ」
フルーティーなんだけど、そこまで甘くもなく飲みやすい……!
『ふふっどう?美味しいでしょー?』
『あっし……気に入っちまいやした』
横で酔っ払い達がニヤニヤと俺の反応を見て楽しんでいる。
「お前達飲みすぎんなよ?」
『何言ってんのよー!らいじょーぶっふふふっ』
俺の様子を見て確信したのかアレクが「よっしゃー!」っと飛んで喜んでいた。
キューとキュウタは何やら楽しそうなダンスを踊っている。
俺の知らない間に異空間で名産品が出来上がっていた。
⭐︎★⭐︎★⭐︎★⭐︎
「何じゃ?楽しそうじゃのう?」
パールが貯蔵庫にやって来た。もうこの場所はジャイコブ達も加わりお祭り騒ぎとなっている。
「ああっパールぅ……俺パールに用があったんだよう……」
「何じゃ?珍しいティーゴ酔っ払っておるのか?」
「ええ~酔ってないよ?」
「いやいや顔も赤いし……目も虚ろじゃ」
ニコニコ笑いながらティーゴはポケットから何かを取り出した。
「ふふっ……パールにコレを見せたかったんだよ」
ティーゴはユグドラシルの小枝をパールに渡す。
「なっ!ここっコレを何処で手に入れたのじゃ!」
スピースピー……。
ティーゴはテーブル顔を付け気持ち良さそうに眠っていた。
「なっ!ティーゴよっ頼むっ起きてくれっ!一体何処で手に入れたのじゃー!ワシ気になって仕方ない」
パールが必死に起こそうと揺らすも、ティーゴは幸せそうな顔をして気持ち良さそうにスヤスヤと眠っていた。
271
あなたにおすすめの小説
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
皆さん勘違いなさっているようですが、この家の当主はわたしです。
和泉 凪紗
恋愛
侯爵家の後継者であるリアーネは父親に呼びされる。
「次期当主はエリザベスにしようと思う」
父親は腹違いの姉であるエリザベスを次期当主に指名してきた。理由はリアーネの婚約者であるリンハルトがエリザベスと結婚するから。
リンハルトは侯爵家に婿に入ることになっていた。
「エリザベスとリンハルト殿が一緒になりたいそうだ。エリザベスはちょうど適齢期だし、二人が思い合っているなら結婚させたい。急に婚約者がいなくなってリアーネも不安だろうが、適齢期までまだ時間はある。お前にふさわしい結婚相手を見つけるから安心しなさい。エリザベスの結婚が決まったのだ。こんなにめでたいことはないだろう?」
破談になってめでたいことなんてないと思いますけど?
婚約破棄になるのは構いませんが、この家を渡すつもりはありません。
初期スキルが便利すぎて異世界生活が楽しすぎる!
霜月雹花
ファンタジー
神の悪戯により死んでしまった主人公は、別の神の手により3つの便利なスキルを貰い異世界に転生する事になった。転生し、普通の人生を歩む筈が、又しても神の悪戯によってトラブルが起こり目が覚めると異世界で10歳の〝家無し名無し〟の状態になっていた。転生を勧めてくれた神からの手紙に代償として、希少な力を受け取った。
神によって人生を狂わされた主人公は、異世界で便利なスキルを使って生きて行くそんな物語。
書籍8巻11月24日発売します。
漫画版2巻まで発売中。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。
私に姉など居ませんが?
山葵
恋愛
「ごめんよ、クリス。僕は君よりお姉さんの方が好きになってしまったんだ。だから婚約を解消して欲しい」
「婚約破棄という事で宜しいですか?では、構いませんよ」
「ありがとう」
私は婚約者スティーブと結婚破棄した。
書類にサインをし、慰謝料も請求した。
「ところでスティーブ様、私には姉はおりませんが、一体誰と婚約をするのですか?」
婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました
kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」
王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。