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本編 燦聖教編
世界樹ユグドラシル
しおりを挟む俺とパールは少し緊張しながらユグドラシルに向かって歩き出した。
お互いの鼓動の音が聞こえそうなくらい、俺達はドキドキしている。
『トレ~ント♪』
俺に気付いたトレントが座りながら手を振っている。
トレントの表情がニコニコ笑っている様にも見え、その姿は何だか可愛い。
トレントのおかげで少し緊張も解れ、俺はもの凄い存在感を放つ世界樹の前まで歩いて来た。
「うはぁ……大きな巨木だな。世界樹ってのはこんなに大きいのか」
「そうじゃのう。ワシも文献でしか見た事がないからの。生で見るのは初めてじゃ」
「そうか……千年前に焼けて」
「うむ、世界樹を失ってこの世界は氷河期を迎え、畑が死に嵐が吹き荒れ太陽が顔を隠したと記されておる。その後世界の平和を取り戻すのに三百年はかかったと国の重要機密に書いてあった」
「そんなっ!まだ俺達の世界には世界樹がないんだろう?」
「ないと言うか、正しくは見つかっていないじゃ。この世界のどこかに世界樹は誕生しておるらしい。
じゃからこの世界が、また元の環境下に戻ったらしいと言われておる」
ーーそうなのです。私の子供が産まれています。
「「えっ?」」
何処からともなく声が聞こえて来た。
俺とパールはキョロキョロと辺りを見渡す……が、それらしく該当する者はいない。
ーーふふ、私は貴方達の前にいる大木です。貴方達の名称では世界樹ユグドラシルと呼ばれていますね。
「なっ!ユグドラシルって喋れるの?」
ーー喋れると言うか、貴方達の身体に直接エネルギーを送り私の気持ちを伝えています。
「そっそうなのか……おっ俺はティーゴって言います」
「ワシはパールじゃ」
ーーティーゴとパールね。この場所はとても素晴らしいですね。空気が浄化されキラキラと輝き土も水も美味しい。この様な素晴らしい場所が地上にあったなんて……。
「いやっ……この場所は何て言うか、そのっ正解には異空間って所で、地上とは少しだけ次元が違う場所なんだ。俺も良くは分かんないんだけど……」
ーー異空間……?それは初めて聞きましたね。
「それでこの異空間ってのは進化していくらしくて、最近ここに森が誕生したんだよ。ユグドラシルはその時にいたの?」
ーーよく分かりませんが、人族の戦争を終わらせる為に、私は死んだ筈だったのです。
それが何故か、意識が再び戻ると私は焼け弱った木の姿で、この森にいました。
小さな新芽は出ていましたが、この様な焼け焦げた状態では復活は難しいと思っていました。
「お主は戦争の犠牲となった世界樹か!何と……世界樹は復活するのか」
パールが瞳をキラキラさせ、何やらぶつぶつと独り言を喋っている。
こんな時のパールは新しい知識が入り嬉しくて仕方ない時だ。
ーーすぐに死ぬと思っていた私にこのトレントが毎日美味しい水を私に届けてくれたのです。
すると……弱っていた私の身体はぐんぐんと成長し今の姿まで回復しました。
『トレ~ント♪』
トレントがどうだと言わんばかりにコップを掲げる。
プッ……折角の良い話が……トレントの間抜けな声で台無しじゃないか。
トレントがあげてたのって慈愛の水だよな。
朝の日課、水やりの時に必ずトレントは現れて水浴びしていた。その時にコップを出してたのを思い出す。
あのコップはこの為だったんだな。遊んでるって思ってたよ、ゴメンな?
でもあのコップの量じゃ、こんなに大きな巨木には全く足りないんじゃないのか?
「もっと水は要りませんか?」
ーー水は欲しい。トレントが持って来てくれる水が。あれは何か普通の水と違うのです。
やっぱりな……。
「俺はそのお水を出せるので、今から沢山浴びる程に水をあげますね」
ーーえっ?あの水を出せる?
俺は出来るだけ広範囲で慈愛の水をユグドラシルにかけていく。
もちろん元気になれよ~っと気持ちをいっぱい込めて。
ーーはぁっ♡何て心地の良い……ああっ甦る。力が私に戻ってくるっ
十分ほど水をやり続けると。
ーーお腹いっぱいです。ゲフっありがとうございます。
あんなにも大きな巨木だからもっと水が必要かなと思ったが、そうでも無いらしい。
とりあえず無事元気になってくれて良かった。
ーーありがとうございますティーゴ様。本来の力を取り戻しました。
キラキラと輝く美しい深緑の髪色にエメラルドの様な瞳、とても地上の生物とは思えない程に美しい女性がティーゴ達の前に姿を現した。
「へっ?!誰?」
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