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本編 燦聖教編
ミナトゥークに潜入
しおりを挟む「パール?またあの服着るのか?」
「それが一番怪しまれんじゃろうからの」
俺とパールは燦聖教の黒マント服に着替える。
ええと?俺の名前は何だっけ?身分証を確認する。
「アタマガウ・スイだな。スイ助祭、パールは何て名前?」
パールも首から下げた身分証を確認する。
「ワシ?ふむ……キレテナ・イデスじゃ」
俺とパールは豪華な門に向け歩いていく。銀太は目立つので人化してもらった。
ティアとスバルは小さいのでそのままで問題なし。
ハクとロウは魔獣兵器のフリをして、額に魔石を貼り付けている。ハクとロウには異空間で待機してもらう予定だったんだけど、意地でも一緒に来たかったらしく、自分達で額に魔石を接着剤で付けてきた。
大丈夫かな接着剤とかで付けて?後で魔石を取る時に額の毛抜けるんじゃ……。
ティーゴはどうだと言わんばかりに前を歩くハクとロウをチラリと見る。
毛が抜けたその姿を想像し。
「ブホォッ!額がハゲるとか。くくっ」
『なっ何ジャイ?主様、我らを見て?!』
「あっゲフンッ何でも無いよっ?ちょっと咽せただけだから!さっ門に行こう」
門の壁にまで宝石を散りばめ埋め込んでいるのか、近付くと輝きが凄い。
「ティーゴ彼処で検問しとる見たいじゃぞ?」
パールが指を指す方を見ると、門の横に部屋が有りその場所に別の街道から来た黒マントの男達が、馬車を止め中に入って行った。
「俺達も後に続こう」
先に検問所に行った男達は、馬車に乗り込み輝く門をくぐりミナトゥーク街に入って行った。
検問所の部屋に入ると、同じ様な黒い服を着た男達が四人座っていた。
俺の横にいる銀太を見て男は舌舐めずりをし、話しかけて来た。
「これは!とんでもなく美しい獣人ですね。こちらで販売されるのですか?金額によっては私が買い取らせて頂きたいですね」
何言ってんだ?銀太を売れだと?銀太を見ると話を聞いてなかった様で、テーブルの上にあるクッキーを凝視していた。
口から涎が垂れてるよ?
「こいつは販売用ではない、戦闘用だ」
「こっこんなに美しい獣人が愛玩奴隷でないなんて!もったいない」
黒マントの男は余程銀太が気に入ったのか騒ぎ出す。
「五月蝿いのじゃ、早く街にいれろ!」
パールが苛立ち身分証を見せると、全員が立ち上がり頭を下げた。
「しっ失礼な態度をとり申し訳ございませんっ!助祭様とは露知らず。どうかっどうかご容赦ください」
「まさか助祭様が低階級の式服を羽織ってるなどと、思いもしなかったので申し訳ありませんっ」
何だ?適当に綺麗な黒マントを羽織ってたけど……マントにランクとかあるの?
知らなかった……。
「何故その様な低ランクの式服を羽織っているのですか?」
男が不思議そうに問う。
えー困ったなぁ……知らなかったとか言えないし。
「これはこの街に来る時に魔獣に襲われて……」
そう言うと何か納得したのかまだ話し終えていないのに、男が話し出した。
「ああっ成る程!理由が分かりました。
助祭様が何故お共を付けずにいらっしゃったのかと実は少し不思議に思いまして、襲われていたのですね。さぁそんな低ランクマントはお脱ぎになって、こちらの式服を羽織って下さい」
別の男が隣の部屋からマントを二着持って来た。
「あちらの部屋はこの街に来る仲間達の式服が旅で汚れたり、破れたりした時の為に作られた衣装部屋です。さぁこちらを御使い下さい」
何て無駄な金の使い方してるんだよっ!
はぁ……さすが貴族街だな。食うに困る奴が沢山いるのにな、どの街もこれだ。燦聖教の奴等ばかり贅沢な暮らしをしやがって。
横を見るとパールも同じ気持ちなのか、苦虫を噛み潰したよう顔をしていた。
馬車も襲われ壊されたと勘違いされ、要らないと言ったのに華美な馬車が用意されていた。
俺とパールが助祭だから媚を売りたいんだろう。
渋々馬車に乗り派手な門をぬけると……何だこの街は!
建物の壁は全て白亜の壁で統一され、宝石や硝子細工などて装飾されていた。屋根は全て青色だ。
貴族達が住んでいる屋敷は街の中心に集まっているのか、大きな建物が街の中央に集中している。
その周りを囲うかの様に色々なお店が軒を連ねて建っていた。
ハクとロウがステージを見たいと言うので、御者に頼みステージまで馬車で連れて行って貰った。
ステージは俺達が入って来た入り口の門の正反対の場所にあると御者の男が教えてくれた。
馬車で街中を走ると……なるほど、歩いている人なんて一人も居ない。そうか貴族様は歩かないんだな。
ステージに近付くと馬車を停める場所に沢山の馬車が停車していた。
「今から燦聖教スターセブンのステージが始まるみたいですねっ!良かったですね」
っと御者が興奮気味に頬を紅潮し教えてくれた。
いやいやガドウィンで見たあのステージだろ?どうせ。
俺達は御者に礼をしステージに向かい歩いて行く。
「ハク、ロウ。今から出てくる奴の歌や踊りがどんなに下手でも、今はじっと黙って見ててくれよ?まだ今は騒ぎを起こしたくないからな!」
『分かったジャイ』
『今回だけコブ』
ハクとロウに言い聞かせてステージにスターセブンが出て来るのを待った。
すると……何処からともなくあの異様に下手な歌が聞こえて来た。
するとステージ上にスターセブンが登場し、大量の花弁が舞う。
貴族相手だけにちょっと豪華だな。
すると集まった貴族から大歓声が巻き起こる。
七人に増え色が七色に増え男達が滑る様にステージを動いてる。何だあの動き!?
よく見ると履いているブーツに車輪の様なのが付いている。
だからあんな滑る様な滑らかな動きでステージを走れるんだ。
『ほう……あれは面白いジャイね』
『我らもあの靴履いて見たいコブ』
意外にもハクとロウの評価が良い。でもそれは初めだけ、歌や踊りが始まると……うん。安定の下手さだね。安心したよ。
ステージが終わり貴族達が何かを投げ出した!何を投げてるんだ?横にいた貴族の手元を見ると、これは魔石じゃない……金貨だっ!貴族達はお金をステージに投げているのか!
さすが貴族街だな。
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