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本編 燦聖教編
どっちに行く?
しおりを挟む「さてと……あの扉の奥に進むか?」
俺は軽く体を伸ばすと扉に向かって歩き始めた。
「そうじゃのう。悪の親玉がおるかの?」
パールが俺の横を歩きながら楽しそうに話す。
『どんな奴が燦聖教を作ったんだろうな? ククッ楽しみだぜ』
パールが楽しそうなのでスバルまで一緒に嬉しそうだ。楽しみなのは良いけど……すぐに度を越して暴れるからな。
「そうか。でもいきなり暴れるのはやめてくれよ?」
『そんな事しねーよっ』
そう俺に返事を返すとスバルは扉に向かって飛んで行った。
扉の前に立ち黒く重厚な扉を開けようとしたが、ビクともしない。
「んん? 鍵が掛かってるのか?」
俺がそういうとパールが首を横に振り
「これは、魔道具を使った扉で認識されていない者は開けられぬ仕組みじゃ」
「認識されてない者?」
俺はその意味が全く理解できず、言葉をおうむ返しする。
「うむ。ここに魔道具が埋め込まれているじゃろ?」
パールが扉の中央にある石を指した。
「これ?」
「そうじゃ。これが魔道具で、そこに同じ魔道具をかざすと扉が開く仕組みじゃ。じゃがこんなもんワシにかかれば意味が無い」
そう言ってパールが前足で扉に触れると、扉に埋め込まれていた魔石がポロリと落ちてきた。
「何をしたんだ?」
「魔道具に魔力を送って壊したんじゃ。これでもう普通の扉になった。さあ奥に進むのじゃ」
相変わらず凄いことをサラッとやってのけるな。
扉を開けると階段があった。上に上がる階段と、下に降りる階段。
普通に考えると、今まで上がって来てたんだから上に上がるのが妥当だと思うが……。
「ティーゴはどっちに行く?」
パールがまた難題を出し俺を試している。
困ったぞ……これは間違えたくないな。
上に上がるのが最善だと思うのに下が気になって仕方がない。
「何じゃ?悩んでいるようじゃのう?」
「うん。上だと思うんだけど、何故か下が気になるんだよ」
「フハハッ!ティーゴらしいというか、野生の感というか」
パールは何か分かってるのか楽しそうに笑う。
何だよ?何でそんなに笑っているのか俺には意味が分からないぞ?
「どーいう事だよ?」
『主~。下には弱っている奴がいるぞ?』
俺が困っていると思ったのか銀太が教えてくれた。相変わらず優しい。
「えっ?弱っている奴?」
「そうじゃよ! 下には燦聖教に捕らえられている者がおる。それを感で見抜くとは流石じゃのう。サーチと神眼を合わせて使うと探知した者の状態まで分かるんじゃ。これは次の宿題じゃの」
次の宿題って簡単に言うなぁ。二種類を同時に使うとかハイレベルなんだぞ?まぁ頑張るしかない。
「じゃあ先に下に行って囚われている人達を助けたい!」
「了解じゃ!ティーゴはそう言うと思ったのじゃ」
俺たちは階段を一気に駆け降りる。
長い階段を降り下に辿り着くとまた扉があったが、これもさっきと同じ魔道具が埋め込まれていたのでパールが壊した。
扉に手を掛け思いっきり開けると、中にいた人達が驚き俺を見つめる、その足には足枷が付けられていた。
中の部屋は少し豪華な調度品が並び、広さも部屋だと考えるとかなり広い。イルさんの豪華な宿泊施設くらいある。
少し唖然と部屋を見回していると、一番手前にいた男が話しかけて来た。
この男は痩せてはいるが、囚われているとは思えない程に身綺麗で品のある服を着ている。
「今日はもう来ないんじゃなかったのか?あれ君は初めて見る顔だね?」
男が俺を不思議そうに見る。そうか燦聖教のローブ羽織ってないしな。
とりあえず現状を聞きたいしこの男に質問してみるか。
「ええと……この場所は?足枷をしているし貴方は囚われているんだよね?」
俺がそう言うと男が眉間に皺を寄せ食って掛かってきた。
「何をとぼけた事を言って!俺たち王族をここに閉じ込めたのはお前達だろう!」
——-へっ?今なんて言った?王族?
★ ★ ★
もうすぐティーゴ達の本が発売されます。宜しければ手に取って頂けると嬉しいです。(*´꒳`*)
発売は12月15日以降順次発送されます。
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