224 / 314
本編 燦聖教編
大賢者カスパールと弟子のグリモワール ①
しおりを挟む
このお話は主人公ティーゴが生まれる五百年も前に遡る。
この時代のカスパールは、大賢者様と人々から呼ばれていない。
まだ齢六十歳の若い?カスパールのお話である。
カスパールは、スバル達と暮らしていた人里離れた家に住んでおらず、ヴァンシュタイン王国城下町の外れに家を借り、一人ひっそりと暮らしていた。
ある日カスパールはヴァンシュタイン王国国王ニルヴァーナに呼び出され、謁見の間にて頼み事を聞いていた。
「頼むカスパールよ! 今から辺境の村に向かい其方の力を貸してくれないか? 今王立騎士団が村の救助を行なっているのだが、魔法鳥からの連絡があってな、このままだと全滅だと言うんだ。そうなると近隣の村にまで被害が及ぶ事となる。お願いだ! カスパールが助けてくれたら大丈夫だと思うんだ! 頼む!」
国王ニルヴァーナは座っていた豪華な椅子から降りその場に平伏した。
その姿を見ると、どちらの立場が上なのか分からない。
カスパールは長く生やした顎髭を触りながら国王をジッと見る
「してニルヴァーナよ?本当に約束してくれるんじゃろうの?」
国王は平伏したまま顔だけ上に上げカスパールを見る。
「願いは……王族が保管している禁断の書物などが置いてある書庫に出入りできる権利だったか? そんなことで助けてくれるなら、いつでも出入り自由の権利を与える! だから頼む」
「約束じゃぞ?」
そう言いニヤリと笑うとカスパールの姿は消えた。
「カスパール……頼んだぞ」
★ ★ ★
カスパールは謁見の間から転移魔法を使い辺境の村に転移していた。
むふふっ
王の頼みを聞くのは面倒じゃが、王族が保管しておる禁忌の書物が置いてある書庫に、自由に出入り出来るのは嬉しいのう。
さっさと村人たちを助けて、書庫に向かうとするか。
楽しみじゃのう。あの場所にはまだ見ぬ謎の書物が数多くあるからのう。
書物のことを想像し意気揚々と歩いて行くと、村の中は魔獣たちが縦横無尽に歩いていた。
「なんと! 思っていたよりも魔獣の数が多い」
これは先ずは村にいる魔獣全てを討伐し、すぐに結界を張らんと外からどんどん魔獣がやって来ておる。これはもしやスタンピードか?
スタンピードとは突如として魔獣が溢れ魔獣が村や街に集団で押し寄せてくることを言う。今まさに、この村ではその状況に陥っていた。
むぅ……簡単じゃと思っていたのに意外と面倒じゃのう。
カスパールは空に浮き上がると、雷魔法を発動した。
《インパルス》
魔法を発動した瞬間、空から無数の雷が村にいる魔獣目がけて一斉に落ちて行く。雷が当たった魔獣は次から次へと消し炭となり倒れていく。
それを見た村人達や冒険者、更には助けに来ていた騎士団は、何が起こっているのか意味が分からず。
倒れて行く魔獣をただ呆然と立ち尽くし見ていた。
ーーなんだこれは?神の裁き雷なのか?ーー我らに神が味方したのか?ーー私達は助かったのか?!
村が全滅するかと思われた脅威の魔獣達は、カスパールの登場によりものの数分で方が付いてしまった。
カスパールは空の上から村の様子を眺めている。
「よし!これで村にいた魔獣は全て殲滅したのじゃ。後は村に結界を張ってじゃ……村の外に溢れておる魔獣達を倒しに行くか!」
カスパールは最も簡単に結界を村に張ったが、村と言ってもこの辺境の村は名ばかりで街と言ってもおかしくない大きさだ。
それを一瞬で張ってしまうカスパール、大賢者と人々から言われてないのが不思議なくらいだ。
まぁそれには少し理由があるのだが。
「よしこれでもう村は安心じゃ。この結界も百年はもつじゃろう」
村の外に降りると、ミノタウルスの群れが百メートルほど離れたところから村に向かって突進していた。
ふむ……ミノタウルスか。あやつらを倒せば最後か、面倒じゃからSランク魔法で一度に………む?
カスパールが魔法を放とうとした瞬間、子供の姿が目に入る。
なっ?あれは兄妹か?あの場所におったら、ミノタウロスに踏み潰されてしまう。
カスパールは直様兄妹の所に転移した。
子供達は小さく丸まり震えていた。二人の子供を抱き抱えると空に浮かび上がり魔法を放った。
《エクスプロージョン》
爆音と共にミノタウロスの群れは消え去った。
再び地上に降りると、カスパールは抱きかかえている子供達を改めて見つめる。
子供達の姿はやせ細り、肌はカサつき栄養が足りていないのが一目で分かる。
なんでこんな小さな子供が村の外におるんじゃ?
抱いている小さな子供達を不思議そうに見つめていると、震えていた一人の子供がやっと落ち着きカスパールを見た。
「おっお爺ちゃんが僕を助けてくれたの?」
「ワシはお爺ちゃんではない、カスパールじゃ!」
「カスパールさん?僕はグリモワール、この子は妹のカリンだよ」
兄の少年はニカッと笑った。
妹のカリンはカスパールの腕の中で気持ち良さそうに眠っていた。
よほど疲れが溜まっていたのであろう。
さてこの後はどうするかのう。
こんな小さな子供達を、魔獣がいなくなったとはいえこの場所に置いておけない。
ううむ……困ったのじゃ。
少し考えて、カスパールはこの栄養の足りて無い子供達を連れて帰ることにした。
この時代のカスパールは、大賢者様と人々から呼ばれていない。
まだ齢六十歳の若い?カスパールのお話である。
カスパールは、スバル達と暮らしていた人里離れた家に住んでおらず、ヴァンシュタイン王国城下町の外れに家を借り、一人ひっそりと暮らしていた。
ある日カスパールはヴァンシュタイン王国国王ニルヴァーナに呼び出され、謁見の間にて頼み事を聞いていた。
「頼むカスパールよ! 今から辺境の村に向かい其方の力を貸してくれないか? 今王立騎士団が村の救助を行なっているのだが、魔法鳥からの連絡があってな、このままだと全滅だと言うんだ。そうなると近隣の村にまで被害が及ぶ事となる。お願いだ! カスパールが助けてくれたら大丈夫だと思うんだ! 頼む!」
国王ニルヴァーナは座っていた豪華な椅子から降りその場に平伏した。
その姿を見ると、どちらの立場が上なのか分からない。
カスパールは長く生やした顎髭を触りながら国王をジッと見る
「してニルヴァーナよ?本当に約束してくれるんじゃろうの?」
国王は平伏したまま顔だけ上に上げカスパールを見る。
「願いは……王族が保管している禁断の書物などが置いてある書庫に出入りできる権利だったか? そんなことで助けてくれるなら、いつでも出入り自由の権利を与える! だから頼む」
「約束じゃぞ?」
そう言いニヤリと笑うとカスパールの姿は消えた。
「カスパール……頼んだぞ」
★ ★ ★
カスパールは謁見の間から転移魔法を使い辺境の村に転移していた。
むふふっ
王の頼みを聞くのは面倒じゃが、王族が保管しておる禁忌の書物が置いてある書庫に、自由に出入り出来るのは嬉しいのう。
さっさと村人たちを助けて、書庫に向かうとするか。
楽しみじゃのう。あの場所にはまだ見ぬ謎の書物が数多くあるからのう。
書物のことを想像し意気揚々と歩いて行くと、村の中は魔獣たちが縦横無尽に歩いていた。
「なんと! 思っていたよりも魔獣の数が多い」
これは先ずは村にいる魔獣全てを討伐し、すぐに結界を張らんと外からどんどん魔獣がやって来ておる。これはもしやスタンピードか?
スタンピードとは突如として魔獣が溢れ魔獣が村や街に集団で押し寄せてくることを言う。今まさに、この村ではその状況に陥っていた。
むぅ……簡単じゃと思っていたのに意外と面倒じゃのう。
カスパールは空に浮き上がると、雷魔法を発動した。
《インパルス》
魔法を発動した瞬間、空から無数の雷が村にいる魔獣目がけて一斉に落ちて行く。雷が当たった魔獣は次から次へと消し炭となり倒れていく。
それを見た村人達や冒険者、更には助けに来ていた騎士団は、何が起こっているのか意味が分からず。
倒れて行く魔獣をただ呆然と立ち尽くし見ていた。
ーーなんだこれは?神の裁き雷なのか?ーー我らに神が味方したのか?ーー私達は助かったのか?!
村が全滅するかと思われた脅威の魔獣達は、カスパールの登場によりものの数分で方が付いてしまった。
カスパールは空の上から村の様子を眺めている。
「よし!これで村にいた魔獣は全て殲滅したのじゃ。後は村に結界を張ってじゃ……村の外に溢れておる魔獣達を倒しに行くか!」
カスパールは最も簡単に結界を村に張ったが、村と言ってもこの辺境の村は名ばかりで街と言ってもおかしくない大きさだ。
それを一瞬で張ってしまうカスパール、大賢者と人々から言われてないのが不思議なくらいだ。
まぁそれには少し理由があるのだが。
「よしこれでもう村は安心じゃ。この結界も百年はもつじゃろう」
村の外に降りると、ミノタウルスの群れが百メートルほど離れたところから村に向かって突進していた。
ふむ……ミノタウルスか。あやつらを倒せば最後か、面倒じゃからSランク魔法で一度に………む?
カスパールが魔法を放とうとした瞬間、子供の姿が目に入る。
なっ?あれは兄妹か?あの場所におったら、ミノタウロスに踏み潰されてしまう。
カスパールは直様兄妹の所に転移した。
子供達は小さく丸まり震えていた。二人の子供を抱き抱えると空に浮かび上がり魔法を放った。
《エクスプロージョン》
爆音と共にミノタウロスの群れは消え去った。
再び地上に降りると、カスパールは抱きかかえている子供達を改めて見つめる。
子供達の姿はやせ細り、肌はカサつき栄養が足りていないのが一目で分かる。
なんでこんな小さな子供が村の外におるんじゃ?
抱いている小さな子供達を不思議そうに見つめていると、震えていた一人の子供がやっと落ち着きカスパールを見た。
「おっお爺ちゃんが僕を助けてくれたの?」
「ワシはお爺ちゃんではない、カスパールじゃ!」
「カスパールさん?僕はグリモワール、この子は妹のカリンだよ」
兄の少年はニカッと笑った。
妹のカリンはカスパールの腕の中で気持ち良さそうに眠っていた。
よほど疲れが溜まっていたのであろう。
さてこの後はどうするかのう。
こんな小さな子供達を、魔獣がいなくなったとはいえこの場所に置いておけない。
ううむ……困ったのじゃ。
少し考えて、カスパールはこの栄養の足りて無い子供達を連れて帰ることにした。
230
あなたにおすすめの小説
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。
お前は家から追放する?構いませんが、この家の全権力を持っているのは私ですよ?
水垣するめ
恋愛
「アリス、お前をこのアトキンソン伯爵家から追放する」
「はぁ?」
静かな食堂の間。
主人公アリス・アトキンソンの父アランはアリスに向かって突然追放すると告げた。
同じく席に座っている母や兄、そして妹も父に同意したように頷いている。
いきなり食堂に集められたかと思えば、思いも寄らない追放宣言にアリスは戸惑いよりも心底呆れた。
「はぁ、何を言っているんですか、この領地を経営しているのは私ですよ?」
「ああ、その経営も最近軌道に乗ってきたのでな、お前はもう用済みになったから追放する」
父のあまりに無茶苦茶な言い分にアリスは辟易する。
「いいでしょう。そんなに出ていって欲しいなら出ていってあげます」
アリスは家から一度出る決心をする。
それを聞いて両親や兄弟は大喜びした。
アリスはそれを哀れみの目で見ながら家を出る。
彼らがこれから地獄を見ることを知っていたからだ。
「大方、私が今まで稼いだお金や開発した資源を全て自分のものにしたかったんでしょうね。……でもそんなことがまかり通るわけないじゃないですか」
アリスはため息をつく。
「──だって、この家の全権力を持っているのは私なのに」
後悔したところでもう遅い。
私に姉など居ませんが?
山葵
恋愛
「ごめんよ、クリス。僕は君よりお姉さんの方が好きになってしまったんだ。だから婚約を解消して欲しい」
「婚約破棄という事で宜しいですか?では、構いませんよ」
「ありがとう」
私は婚約者スティーブと結婚破棄した。
書類にサインをし、慰謝料も請求した。
「ところでスティーブ様、私には姉はおりませんが、一体誰と婚約をするのですか?」
婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました
kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」
王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
卒業パーティでようやく分かった? 残念、もう手遅れです。
柊
ファンタジー
貴族の伝統が根づく由緒正しい学園、ヴァルクレスト学院。
そんな中、初の平民かつ特待生の身分で入学したフィナは卒業パーティの片隅で静かにグラスを傾けていた。
すると隣国クロニア帝国の王太子ノアディス・アウレストが会場へとやってきて……。
聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい
金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。
私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。
勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。
なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。
※小説家になろうさんにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。