お人好し底辺テイマーがSSSランク聖獣たちともふもふ無双する

大福金

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本編 燦聖教編

大賢者カスパールと弟子のグリモワール ①

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このお話は主人公ティーゴが生まれる五百年も前に遡る。

この時代のカスパールは、大賢者様と人々から呼ばれていない。
まだよわい六十歳の若い?カスパールのお話である。


カスパールは、スバル達と暮らしていた人里離れた家に住んでおらず、ヴァンシュタイン王国城下町の外れに家を借り、一人ひっそりと暮らしていた。

ある日カスパールはヴァンシュタイン王国国王ニルヴァーナに呼び出され、謁見の間にて頼み事を聞いていた。

「頼むカスパールよ! 今から辺境の村に向かい其方の力を貸してくれないか? 今王立騎士団が村の救助を行なっているのだが、魔法鳥からの連絡があってな、このままだと全滅だと言うんだ。そうなると近隣の村にまで被害が及ぶ事となる。お願いだ! カスパールが助けてくれたら大丈夫だと思うんだ! 頼む!」

国王ニルヴァーナは座っていた豪華な椅子から降りその場に平伏した。
その姿を見ると、どちらの立場が上なのか分からない。

カスパールは長く生やした顎髭を触りながら国王をジッと見る

「してニルヴァーナよ?本当に約束してくれるんじゃろうの?」

国王は平伏したまま顔だけ上に上げカスパールを見る。

「願いは……王族が保管している禁断の書物などが置いてある書庫に出入りできる権利だったか? そんなことで助けてくれるなら、いつでも出入り自由の権利を与える! だから頼む」

「約束じゃぞ?」

そう言いニヤリと笑うとカスパールの姿は消えた。

「カスパール……頼んだぞ」



★  ★  ★


カスパールは謁見の間から転移魔法を使い辺境の村に転移していた。

むふふっ
王の頼みを聞くのは面倒じゃが、王族が保管しておる禁忌の書物が置いてある書庫に、自由に出入り出来るのは嬉しいのう。
さっさと村人たちを助けて、書庫に向かうとするか。
楽しみじゃのう。あの場所にはまだ見ぬ謎の書物が数多くあるからのう。

書物のことを想像し意気揚々と歩いて行くと、村の中は魔獣たちが縦横無尽に歩いていた。

「なんと! 思っていたよりも魔獣の数が多い」

これは先ずは村にいる魔獣全てを討伐し、すぐに結界を張らんと外からどんどん魔獣がやって来ておる。これはもしやスタンピードか?


スタンピードとは突如として魔獣が溢れ魔獣が村や街に集団で押し寄せてくることを言う。今まさに、この村ではその状況に陥っていた。

むぅ……簡単じゃと思っていたのに意外と面倒じゃのう。

カスパールは空に浮き上がると、雷魔法を発動した。

《インパルス》

魔法を発動した瞬間、空から無数の雷が村にいる魔獣目がけて一斉に落ちて行く。雷が当たった魔獣は次から次へと消し炭となり倒れていく。

それを見た村人達や冒険者、更には助けに来ていた騎士団は、何が起こっているのか意味が分からず。
倒れて行く魔獣をただ呆然と立ち尽くし見ていた。

ーーなんだこれは?神の裁きイカヅチなのか?ーー我らに神が味方したのか?ーー私達は助かったのか?!

村が全滅するかと思われた脅威の魔獣達は、カスパールの登場によりものの数分で方が付いてしまった。
カスパールは空の上から村の様子を眺めている。

「よし!これで村にいた魔獣は全て殲滅せんめつしたのじゃ。後は村に結界を張ってじゃ……村の外に溢れておる魔獣達を倒しに行くか!」

カスパールはいともも簡単に結界を村に張ったが、村と言ってもこの辺境の村は名ばかりで街と言ってもおかしくない大きさだ。
それを一瞬で張ってしまうカスパール、大賢者と人々から言われてないのが不思議なくらいだ。
まぁそれには少し理由があるのだが。

「よしこれでもう村は安心じゃ。この結界も百年はもつじゃろう」

村の外に降りると、ミノタウルスの群れが百メートルほど離れたところから村に向かって突進していた。

ふむ……ミノタウルスか。あやつらを倒せば最後か、面倒じゃからSランク魔法で一度に………む?

カスパールが魔法を放とうとした瞬間、子供の姿が目に入る。

なっ?あれは兄妹か?あの場所におったら、ミノタウロスに踏み潰されてしまう。

カスパールは直様兄妹の所に転移した。
子供達は小さく丸まり震えていた。二人の子供を抱き抱えると空に浮かび上がり魔法を放った。

《エクスプロージョン》

爆音と共にミノタウロスの群れは消え去った。

再び地上に降りると、カスパールは抱きかかえている子供達を改めて見つめる。
子供達の姿はやせ細り、肌はカサつき栄養が足りていないのが一目で分かる。

なんでこんな小さな子供が村の外におるんじゃ?
抱いている小さな子供達を不思議そうに見つめていると、震えていた一人の子供がやっと落ち着きカスパールを見た。

「おっお爺ちゃんが僕を助けてくれたの?」

「ワシはお爺ちゃんではない、カスパールじゃ!」

「カスパールさん?僕はグリモワール、この子は妹のカリンだよ」

兄の少年はニカッと笑った。

妹のカリンはカスパールの腕の中で気持ち良さそうに眠っていた。
よほど疲れが溜まっていたのであろう。

さてこの後はどうするかのう。

こんな小さな子供達を、魔獣がいなくなったとはいえこの場所に置いておけない。

ううむ……困ったのじゃ。

少し考えて、カスパールはこの栄養の足りて無い子供達を連れて帰ることにした。

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