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本編 燦聖教編
大賢者カスパールと弟子のグリモワール ④
しおりを挟む「そうじゃ! その調子じゃリィモよ。魔力調整が中々上手くなってきたのじゃ」
「ほんと? じゃあ次にレベルアップできる?」
「そうじゃのう……このまま上手くいけばじゃのう」
「やったーー!!」
リィモとカスパールは森に来ていた。リィモの修行のためだ。
王都の奥にある森に家を作り、リィモ達と暮らし始めてはや一年が経とうとしていた。
「カスパール様、お兄ちゃん。ご飯ができました」
カリンがご飯が出来たと呼びに来た。
「カリンの飯は美味いからのう。楽しみじゃ。よし休憩にするか」
カスパールは呼びにきたカリンの頭を優しく撫でる。
「ふふふっ」
頭を撫でられてカリンは幸せそうに微笑む。
小さかったリィモやカリンの身長はみるみると成長した。
初めて出会った時の二人は十歳なのに六歳児ほどの身長しか無かった。
カスパールと出会い二年の時が経つと、二人の身体も心も十二歳の年相応に見える程に大きく成長した。
そんな二人の姿を見てカスパールは少し眩しそうに目を細めるのだった。
「ふむ今日はスープか。肉が柔らかく出汁が上手い。パンと合うのう」
「えへへ。このお肉はロックバードを時間をかけて煮込んだの。カスパール様の口に合って嬉しい」
カリンは美味しそうに食べるカスパールを、幸せそうに微笑みジッと見つめる。
「カリンも食わぬか!見ているだけじゃとスープをワシらが全て食うてしまう」
カスパールが見ているだけで食べないカリンに、食べろと急かすとリィモがニヤニヤして答える。
「カリンはカスパール様が美味しそうに食べてる姿を見るのが好きなのさ。な?カリン」
「わっ!ちがっくないけど……!もうっお兄ちゃん黙ってて!」
カリンが顔を真っ赤にして慌ててスープを飲む。
「ははは」
そんな二人の姿を微笑ましく見ているカスパールだった。
魔法の修行が始まってから数年
リィモはスポンジが水を吸収するかのように魔法をどんどん覚えていった。
十五歳に成長したリィモは、Aランク魔法を全て使えるほどに成長していた。
普通は使える魔法は限りがある。
自分に適した属性の魔法以外を使うのは難しいのだが、カスパールが師匠ということもありリィモは全属性の魔法を使える。
そんなリィモはカスパールの代わりに国王からの頼みを聞いて王都を守ったり、近隣の村や街の住民達を守るために魔法を使うようになっていた。
そんなある日、家に隣国の使者が二人に会うために訪れていた。
「ふうん……分かったよ助けに行くよ。良いよね?カスパール様」
「リィモよ良いのか?隣国に行くと早くとも二週間は家に帰って来れぬ」
この日の頼み事は、隣国皇女の謎の奇病を治す為の薬草採取。この薬草はSランクの入手困難なレア薬草。
内容から言ってリィモ一人では到底無理な話。カスパールと一緒でもすぐに帰ってこれる内容では無かった。
「僕は困ってる人を助けたい。それにどんな事があっても頼み事は断りたくないんだ」
リィモは自分がカスパールに助けられた事もあり、困っている人を全て助けてあげたいとの想いがあった。
「じゃが……カリンが一人になるぞ?」
カスパールが不安げにカリンを見る。
「カスパール様。私は一人でも大丈夫!こう見えてもリィモと一緒に魔法だって覚えたし、私の結界魔法は凄いってカスパール様が褒めてくれたじゃないですか。だから私のことは気にせずに安心して行って来てください」
かりんは自分の胸をドンッと誇らしげに叩いた。
「カリン!ありがとう。カリンの大好きな甘味をお土産にたくさん買ってくるからな」
そう言ってリィモはギュッとカリンを抱きしめた。
「ふふっ。甘味は両手にいっぱいだよ」
「分かったよ」
こうしてカスパールとリィモは、カリンを家に一人残して隣国へと旅立った。
後にこの事を、カスパールは一生後悔する事になるのだが………。
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