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2巻
2-2
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俺達は途中で休憩を挟みながら、長いトンネルをやっと通過することが出来た。
キラキラしていて綺麗なので、景色に飽きることはなかったが、やはり疲れた。
「やっと外だな! ってもう真っ暗だ」
トンネル内に居たから時間経過が分からなかった。
聖獣達が次々に『お腹すいた』と連呼してしゃがみこむ。
「分かった! 次に広い場所があったら、今日はそこでご飯にして寝るとするか!」
『我は甘味が食べたい』
『俺もー!』
『あっしはリコリパイが食べたいっすね』
『俺もティーゴのパイが食べたい!』
『私もティーゴのパイがいいわ』
さすがケルベロスと言うべきか、一号達の食べたいものは同じだった。
「パイだな! 了解」
甘味はご飯じゃなくておやつだけどな? 聖獣達は甘いものが好きだな。
そう言えば、俺のステータスってどうなってんだ?
スバルや一号、二号、三号をテイムして何か変化あるのかな? ステータスを暫く確認してなかったな、見てみるか。
俺は神眼を発動した。
《神眼》
名前 ティーゴ
種族 人族
ランク SS ↑UP
年齢 17
性別 男
ジョブ 魔物使い
レベル 85 ↑UP
体力 2168 ↑UP
攻撃力 3650
魔力 99970
幸運 1050 ↑UP
スキル 全属性魔法 神眼 アイテムボックス メタモルフォーゼ←new!
Sランク以上の魔獣や魔物をテイム出来る。
Sランク未満の魔獣や魔物はテイム出来ない。
使い獣 フェンリル銀太
グリフォン昴
ケルベロス暁 樹 奏
凄いことになってる……俺のランクがSSってウソだろ⁉ 銀太達以外で聞いたことねーぞ。
それに体力と幸運が増えてた! だから最近いいことがあるのか!
あと、スバルのスキルの【メタモルフォーゼ】が使えるようになってる。
俺も何かに変身出来るのかな?
後で試してみようかな?
ステータスを見た後は、再び足を進める。歩き進めると、森の近くで野宿出来そうな開けた場所を見つけた。
「よーしっ! 今日はここでご飯にしよう!」
『やったー!』
『甘味♪ 甘味♪ 甘味♪』
『リコリパイ♪ パイ♪ パイ♪』
みんな楽しそうだな……可愛い聖獣達のご飯、作るか!
★ ★ ★
次の日。俺は、この先の進み方を地図を見ながら考えていた。
普通ならこの目の前にある森を迂回して行くんだが、どう見てもこの森を突っ切った方が港町ニューバウンに近い。
それに森の探索は楽しいしな。よし、森を抜けるルートで行くか!
「あと少し休憩したら出発するぞー!」
『『『はーい』』』
『分かったのだ』
『了解』
そう言えば、メタモルフォーゼのことをスバルに聞くのを忘れてたな。
メタモルフォーゼ……? どうやって使うのかな? 《メタモルフォーゼ》って念じるとか?
ボンッ‼
「えっ?」
視界が低く……はわっ⁉
「手が! 獣!」
突然の変化に驚いていると、急に三号が笑い出した。
『やだーっ、ティーゴったら! メタモルフォーゼ使ったの? 可愛い……その姿はタヌキ? あっ! アライグマね!』
「えっ……? 俺アライグマになってるの?」
『あはははっ、ティーゴの旦那! アライグマって!』
くそう……!
スバルが腹を抱えて爆笑してる。
『主……何でアライグマになってしまったのじゃ……その姿だと我はヨシヨシしてもらえぬ』
銀太が尻尾を下げて寂しそうに、アライグマになった俺を見つめる。
銀太……お前はそんな心配を……可愛いけど!
「俺も訳分かんないんだよ。何でアライグマになったんだ? メタモルフォーゼって変身出来る姿を選べるんじゃないのか?」
俺が不思議に思って質問すると、スバルが得意げに答える。
『何にでもなれるほど万能じゃねーよ! このスキルは』
『ププッそうよ! はじめは人化することからスタートし、その後、自分に合った魔獣の姿に変身出来るようになるの!』
三号も修業が必要だと、少し馬鹿にしたように俺を見る。
『あっ……でもティーゴは人族だから獣化したのか! 魔獣じゃなくて可愛いアライグマに……ブッ』
うう……みんなが笑いを必死に堪えてる。
強そうな魔獣に変身出来なくて悪かったな‼
俺だってカッコいいドラゴンとかに変身したかったよ。
「じゃあもっとレベル上げないと、色々な姿に変身出来ないのか……?」
『そうだな! 今はアラッ……ブッククッ……アライグマだけだな!』
スバルが笑いながら返事をする。そんなに面白いのか?
『ティーゴの旦那……元に戻ってくれよ! 可笑しくて……ククッ……ダメだ』
「戻り方が分かんないの!」
戻れるなら、もう戻ってる!
俺は両手を上下にバタバタさせて怒る!
『その姿で怒っても迫力が……ククククッ』
『もう一度メタモルフォーゼって念じてみて?』
《メタモルフォーゼ》
そう念じた瞬間――ボンッ!
「あっ人の手……⁉」
俺は自分の顔を触る。間違いない、いつもの俺だ。
「良かったー! 戻れた!」
『旦那……服は着なくていいのか? ジロジロ見られてるぜ?』
「えっ……?」
あわっ⁉ 何で裸なんだよ!
俺は慌てて、いつの間にか散らばっていた服を着た。
しかも、街道を歩いていた数人に見られた! こんな所で裸になる変な奴って絶対思われた! うう……!
『ティーゴ! そんなに落ち込まないで? ね!』
三号がそう言って俺の足にすり寄る。
「三号……ありがとう……って! そうだよ! 三号達は人化しても服着てるじゃん? 何で俺は服着てないの?」
『そりゃ? 私達は修業してるから! ティーゴも修業してレベル上げたら、上手に変身出来るよ!』
はぁぁ……修業か。
メタモルフォーゼは当分使わない! 俺は心に誓った。
「じゃあスバルも人化出来るのか?」
『あったり前よ! 俺が一番上手いんだぜ?』
ボンッ!
そう言うと、スバルは赤髪の背が高い男性に変身した。
『どうだ! カッコイイだろ?』
男の俺から見ても迫力の美形だ。
またも、ボンッ。
『女にもなれるんだぜ? 凄いだろ?』
今度は赤髪の綺麗な女の人に変身した。
「スバル凄いな! どっちにも変身出来るなんて! 天才だよ!」
『ティーゴの旦那! それは褒め過ぎだよっ! ふふふっ』
美人なお姉さんのスバルが照れている。不思議な感じだ。
ボンッ。
『やっぱりこの姿が楽だな!』
いつものミニサイズスバルに戻った。
うん。俺もその姿が落ち着くよ。
「よし! じゃあ出発するか!」
『主~また森に入るのか?』
「うん。森を抜けて行こうと思って」
みんなを連れて俺は森に入っていく。
キョロキョロ、キョロキョロ。
森に入ってからというもの、銀太は周りを気にし、あちこちを見ている。
「銀太? どうしたんだ。さっきからキョロキョロして」
『……んん。誰かに見られているような気配がするのだ』
「えっ! 誰かに?」
俺も周りを見渡すが何も感じない。
だが、次の瞬間――
『さすがフェンリル様、無作法なことをしてすみません』
「うわっ? えっ!」
急に目の前に、男か女か分からない綺麗な人が現れた。
『お主は……! ドライアドか?』
『はい! 覚えてくれていたのですね。フェンリル様』
ドライアドだって?
それって絵本とかに出てくる木の精霊だよな? 精霊って実在したのか!
『我等に何か用か?』
銀太がドライアドに話しかける。
『実はお願いがあります……』
ドライアドは深々とお辞儀をした。
『ドライアドは滅多に人前に現れないはずだろ。そんな奴が一体どうしたんだ?』
スバルが不思議そうに質問する。
『一緒について来てもらえますか? 見てもらった方が早いので……』
俺達はドライアドの案内で森の奥深くへと歩いていく。
しばらく歩いてもまだ着かない。
『ドライアド! 何処まで行くんだ? ドンドン空気が悪くなってる』
何かに気づいた一号がドライアドに訴えかける。
『……これは穢れ?』
銀太がケガレといった。穢れ? 何だそれは?
さらに奥に歩いていくと、俺でも分かるくらいに空気が濁っている。
その先に黒い何かが見える。
「こっ、これは泉か?」
ドライアドに案内された場所にあったのは、黒く濁った大きな泉だった。
『この泉は穢れておる……』
銀太は怪訝そうに泉を見る。
『そうなのです。この森は泉の綺麗な水と共に生きていたのに……! 水が穢れ……森も死にかけています……』
『何でこんなことになったんだ?』
『それは、数週間前に魔族が【穢れ玉】を泉に落としていってしまったからです。それからドンドン泉が穢れ……空気も淀み……この森も、このままだといずれ穢れに呑み込まれ、死の森になるでしょう』
また魔族……! アイツ等は一体何がしたいんだ⁉
『我等をここに連れて来たということは、穢れをどうにかして欲しいということじゃの? ドライアドよ』
『その通りです。フェンリル様』
『お願いします! この森を助けてください!』
シュン、ともう一人ドライアドが現れた。
『『よろしくお願いします』』
二人のドライアドは俺たちに深々と頭を下げた。
『我に任せておけ! 大丈夫じゃ!』
『俺達だっているからな!』
銀太とスバルが少し得意げに返事をする。
『『ありがとうございます』』
「でもこの穢れとやらは、どう処理するんだ?」
『我が泉を浄化するので、主達はこの穢れの元、【穢れ玉】を探して欲しい』
「了解だ! 任せてくれ」
『『『はーい』』』
『俺は空から様子を見るよ!』
スバルは颯爽と飛んで行った。
よし! 俺も探すぞー!
早速泉の近くを歩き回り、それらしき物を探してみる。そういえば穢れ玉ってどんな玉なんだ? 銀太に詳しく聞くのを忘れてたな。
ふと足元を見ると、俺の頭くらいの大きさの黒い石を見つけた。
こういう感じの物なのかな?
俺はその石を持ち上げ、銀太に聞いてみた。
「銀太ー! 穢れ玉ってこんなのか?」
『あっあわっ! 主それじゃ! 触ったらダメじゃ! 主まで穢れてしまう!』
『やだっティーゴ! 早くその石放して!』
『あわわ……穢れ玉を触って!』
ん? 何か銀太達が慌ててるな? 遠くて何言ってるのかよく聞こえない……。
この石を綺麗にしたらいいのか? 俺はなんとなく、手で石を撫でた。
すると石が輝き出し……パァァァァァーッと輝いた。
「うわっ!」
石が急に真っ白に!
『主……何という無自覚……! 穢れ玉を一瞬で浄化した』
森の澱んだ空気が、一気に清らかに。死にかけていた森が生き生きとした姿へと変わる……!
「何だこれ? 急に何が起こったんだ」
突然のことに理解が出来ず、俺は石を持ったまま呆然と立ち尽くしていた。
銀太やスバルが俺の所に飛んで来た。
『主、凄いのだ! 穢れ玉に触れる人族など、聞いたことがないのだ!』
「えっ? この石が穢れ玉?」
俺は穢れ玉だと聞いて、慌てて持ってる石を下に置く。
『そうだよ! 普通なら触れると一瞬で穢れ、魔に呑み込まれてしまうのに……! 触っても平気で、しかもそのまま浄化しちまうとは……ティーゴの旦那は本当に規格外だな!』
何だって? 俺が浄化?
『本当よ! その玉を持ち上げた時は、ビックリして私の心臓が止まるかと思ったわ!』
『何もなくて良かったっす……』
一号達も泣きそうな顔で走ってきた。
そんな危険な玉を俺は触ってたのか!
はぁ良かった……危うく取り返しのつかないことになるところだった。
しかし……何で浄化出来たんだ? 俺……何もしてないよな?
『ああ……森が元気になっていく』
『泉に妖精達が帰って来た……! 良かった……これで森は生き返る』
綺麗になった森と泉を見て、ドライアド達は感動している。
「とりあえずは一件落着でいいのかな?」
『あと少しで死の森になるはずだったこの森を……元の美しい森に戻していただき、本当にありがとうございます』
再びドライアド達は頭を下げた。
『『これは私達からの御礼です。受け取ってください』』
ドライアドは俺に袋を渡してきた。渡された袋の中には、緑色に輝く綺麗な石が二十個くらい入っていた。
『ほう……これは精霊石か!』
袋を覗いた銀太がこの石を精霊石だと言う。
精霊石だって? 初めて聞く名前だ。
首を傾げていると、スバルが興奮した様子で捲し立てた。
『何? 精霊石! それはかなりレアだぜ! カスパール様が中々手に入らないって話してたからな! それがこんなにも! ラッキーだな!』
カスパール様が探していたって⁉ 凄い物を貰ってしまった……いいのかな、こんなに沢山貰ってしまって?
『『では私達はこれで失礼します』』
質問する間も与えず、ドライアド達は行ってしまった。
泉のそばには、俺達だけが残される。
『良かったの主! 精霊石が貰えて!』
『これでアイテム作ったら、沢山の付与がつけられるぜ?』
なるほど、アイテムに使うのか……!
「じゃあこの石を使って、スバルや一号、二号、三号、みんなでお揃いのアイテムを作るか!」
『『『……えっ?』』』
一号、二号、三号達がビックリした顔で俺を見る。
『ティーゴの旦那……俺達にも高貴なるオソロをくれるのか……?』
スバルまで震える声で俺に問う。
何だ? みんなの様子が変だ……?
『本当にいいの……?』
『あっしにまで?』
『高貴なるオソロをティーゴと?』
うわぁぁーんっ‼
オワッ! みんなが泣きながら抱きついて来たっ‼ ちょっ……⁉
『ありがとうティーゴ!』
『また高貴なるオソロが貰えるなんて夢みたいだ!』
『ううっ……二人の主からあっしはオソロが貰えるんすね……嬉しい』
『俺は……ティーゴと高貴なるオソロがしたかった……! 嬉しいぜ……うっうう』
そうか……スバル達にとって、オソロには特別な意味があるんだな。
こんなことなら、もっと早く作ろうって言えば良かったな。
俺はスバル達が泣きやむまで頭を撫でてやった。
銀太だけは、泣いているスバル達を少し不思議そうに見ていた。
「…………落ち着いたか? 港町ニューバウンについたらオソロ作りに行こうな!」
オソロを作るってことは、俺はカスパール様と同じことをするんだよな。
俺はスバル達の主になりましたって、ちゃんとカスパール様に挨拶したいな。
そうだ! カスパール様のお墓に行ったらいいんだ。
そうと決まったら色々と忙しくなって来たぞー!
と決心していると……コツン! 卵が足元に転がってきた。
「あれっ……卵? もしかしてお前もオソロが欲しいのか?」
プルプルッ!
そうだよとでも言わんばかりに震える。
「そうか。分かったよ! 卵の分も作ろうな!」
プルプルッ!
やったーと言っているかのように喜んでいるのが分かる。
ふふっ、本当に面白い卵だな! まだ生まれてないのにこんなに意思があるなんて……!
どんな奴が生まれてくるんだろうな? 楽しみだな。
「元気に生まれてこいよ?」
俺はそう言って卵を撫でた。
んん? 卵がピンク色に少し光ったような気がしたが……? 気のせいだろうな。
よし! 港町ニューバウン目指して、行くか!
閑話――魔王様のお気に入りになりたい魔族達の呟き
四天王バフォメットは悩んでいた。
ああっクソ……! 何でこんなことになったのだ⁉
全ては順調だった。エルフの里に忍びこみ、やっとの思いで盗んだ聖龍の卵。
沢山の穢れを与えて邪竜が生まれてくるはずだったのに……! それを後少しのところで……!
どうして急にトリプルSのフェンリルが現れるんだ⁉
おかしいだろう? そんなことあるか?
今まで我等が何をしようと興味など示さなかったフェンリルが! 何故急に……関わってくるんだ!
フェンリルが現れて、卵を奪って行った。さすがに怖くて取り戻しになどいけない!
ああああ……!
穢れに染まった邪竜を献上して、魔王様のお気に入りの幹部になる計画が……丸潰れだ!
このままだと他の奴に先を越されてしまう……!
クソックソッ!
四天王ベルゼブブもまた悩んでいた。
何でこうなった?
魔王様に気に入ってもらうため、念入りに、綿密に計画し、ルクセンベルクの街は壊滅するはずだった……!
これを手土産に魔王様に気に入ってもらう予定が……ああっ台無しだ!
この計画のために青き魔獣を沢山作り、民は青き死の病気を得て、ルクセンベルクは死の街と化する……そう、計画は完璧だった……。
なのに! 何で⁉ トリプルSのフェンリルが現れて我らの邪魔をする!
今まで魔族のことなど気にも留めてなかったはずなのに!
ああっ……! 計画は丸潰れだ……これでは魔王様のお気に入りになれない……。
また何か考えねば……クソッ!
四天王ベリアルも悩んでいた。
森を穢れで覆って死の森を作り、これからという時に、森が浄化されていた。
はぁ?
何で?
意味が分からない! 一体何が起こってるんだ?
クソッ! また計画を立てないと……! 他の奴等もまだ何も魔王様にアピール出来ていないはずだ……。
また別の……何か手を考えないと!
キラキラしていて綺麗なので、景色に飽きることはなかったが、やはり疲れた。
「やっと外だな! ってもう真っ暗だ」
トンネル内に居たから時間経過が分からなかった。
聖獣達が次々に『お腹すいた』と連呼してしゃがみこむ。
「分かった! 次に広い場所があったら、今日はそこでご飯にして寝るとするか!」
『我は甘味が食べたい』
『俺もー!』
『あっしはリコリパイが食べたいっすね』
『俺もティーゴのパイが食べたい!』
『私もティーゴのパイがいいわ』
さすがケルベロスと言うべきか、一号達の食べたいものは同じだった。
「パイだな! 了解」
甘味はご飯じゃなくておやつだけどな? 聖獣達は甘いものが好きだな。
そう言えば、俺のステータスってどうなってんだ?
スバルや一号、二号、三号をテイムして何か変化あるのかな? ステータスを暫く確認してなかったな、見てみるか。
俺は神眼を発動した。
《神眼》
名前 ティーゴ
種族 人族
ランク SS ↑UP
年齢 17
性別 男
ジョブ 魔物使い
レベル 85 ↑UP
体力 2168 ↑UP
攻撃力 3650
魔力 99970
幸運 1050 ↑UP
スキル 全属性魔法 神眼 アイテムボックス メタモルフォーゼ←new!
Sランク以上の魔獣や魔物をテイム出来る。
Sランク未満の魔獣や魔物はテイム出来ない。
使い獣 フェンリル銀太
グリフォン昴
ケルベロス暁 樹 奏
凄いことになってる……俺のランクがSSってウソだろ⁉ 銀太達以外で聞いたことねーぞ。
それに体力と幸運が増えてた! だから最近いいことがあるのか!
あと、スバルのスキルの【メタモルフォーゼ】が使えるようになってる。
俺も何かに変身出来るのかな?
後で試してみようかな?
ステータスを見た後は、再び足を進める。歩き進めると、森の近くで野宿出来そうな開けた場所を見つけた。
「よーしっ! 今日はここでご飯にしよう!」
『やったー!』
『甘味♪ 甘味♪ 甘味♪』
『リコリパイ♪ パイ♪ パイ♪』
みんな楽しそうだな……可愛い聖獣達のご飯、作るか!
★ ★ ★
次の日。俺は、この先の進み方を地図を見ながら考えていた。
普通ならこの目の前にある森を迂回して行くんだが、どう見てもこの森を突っ切った方が港町ニューバウンに近い。
それに森の探索は楽しいしな。よし、森を抜けるルートで行くか!
「あと少し休憩したら出発するぞー!」
『『『はーい』』』
『分かったのだ』
『了解』
そう言えば、メタモルフォーゼのことをスバルに聞くのを忘れてたな。
メタモルフォーゼ……? どうやって使うのかな? 《メタモルフォーゼ》って念じるとか?
ボンッ‼
「えっ?」
視界が低く……はわっ⁉
「手が! 獣!」
突然の変化に驚いていると、急に三号が笑い出した。
『やだーっ、ティーゴったら! メタモルフォーゼ使ったの? 可愛い……その姿はタヌキ? あっ! アライグマね!』
「えっ……? 俺アライグマになってるの?」
『あはははっ、ティーゴの旦那! アライグマって!』
くそう……!
スバルが腹を抱えて爆笑してる。
『主……何でアライグマになってしまったのじゃ……その姿だと我はヨシヨシしてもらえぬ』
銀太が尻尾を下げて寂しそうに、アライグマになった俺を見つめる。
銀太……お前はそんな心配を……可愛いけど!
「俺も訳分かんないんだよ。何でアライグマになったんだ? メタモルフォーゼって変身出来る姿を選べるんじゃないのか?」
俺が不思議に思って質問すると、スバルが得意げに答える。
『何にでもなれるほど万能じゃねーよ! このスキルは』
『ププッそうよ! はじめは人化することからスタートし、その後、自分に合った魔獣の姿に変身出来るようになるの!』
三号も修業が必要だと、少し馬鹿にしたように俺を見る。
『あっ……でもティーゴは人族だから獣化したのか! 魔獣じゃなくて可愛いアライグマに……ブッ』
うう……みんなが笑いを必死に堪えてる。
強そうな魔獣に変身出来なくて悪かったな‼
俺だってカッコいいドラゴンとかに変身したかったよ。
「じゃあもっとレベル上げないと、色々な姿に変身出来ないのか……?」
『そうだな! 今はアラッ……ブッククッ……アライグマだけだな!』
スバルが笑いながら返事をする。そんなに面白いのか?
『ティーゴの旦那……元に戻ってくれよ! 可笑しくて……ククッ……ダメだ』
「戻り方が分かんないの!」
戻れるなら、もう戻ってる!
俺は両手を上下にバタバタさせて怒る!
『その姿で怒っても迫力が……ククククッ』
『もう一度メタモルフォーゼって念じてみて?』
《メタモルフォーゼ》
そう念じた瞬間――ボンッ!
「あっ人の手……⁉」
俺は自分の顔を触る。間違いない、いつもの俺だ。
「良かったー! 戻れた!」
『旦那……服は着なくていいのか? ジロジロ見られてるぜ?』
「えっ……?」
あわっ⁉ 何で裸なんだよ!
俺は慌てて、いつの間にか散らばっていた服を着た。
しかも、街道を歩いていた数人に見られた! こんな所で裸になる変な奴って絶対思われた! うう……!
『ティーゴ! そんなに落ち込まないで? ね!』
三号がそう言って俺の足にすり寄る。
「三号……ありがとう……って! そうだよ! 三号達は人化しても服着てるじゃん? 何で俺は服着てないの?」
『そりゃ? 私達は修業してるから! ティーゴも修業してレベル上げたら、上手に変身出来るよ!』
はぁぁ……修業か。
メタモルフォーゼは当分使わない! 俺は心に誓った。
「じゃあスバルも人化出来るのか?」
『あったり前よ! 俺が一番上手いんだぜ?』
ボンッ!
そう言うと、スバルは赤髪の背が高い男性に変身した。
『どうだ! カッコイイだろ?』
男の俺から見ても迫力の美形だ。
またも、ボンッ。
『女にもなれるんだぜ? 凄いだろ?』
今度は赤髪の綺麗な女の人に変身した。
「スバル凄いな! どっちにも変身出来るなんて! 天才だよ!」
『ティーゴの旦那! それは褒め過ぎだよっ! ふふふっ』
美人なお姉さんのスバルが照れている。不思議な感じだ。
ボンッ。
『やっぱりこの姿が楽だな!』
いつものミニサイズスバルに戻った。
うん。俺もその姿が落ち着くよ。
「よし! じゃあ出発するか!」
『主~また森に入るのか?』
「うん。森を抜けて行こうと思って」
みんなを連れて俺は森に入っていく。
キョロキョロ、キョロキョロ。
森に入ってからというもの、銀太は周りを気にし、あちこちを見ている。
「銀太? どうしたんだ。さっきからキョロキョロして」
『……んん。誰かに見られているような気配がするのだ』
「えっ! 誰かに?」
俺も周りを見渡すが何も感じない。
だが、次の瞬間――
『さすがフェンリル様、無作法なことをしてすみません』
「うわっ? えっ!」
急に目の前に、男か女か分からない綺麗な人が現れた。
『お主は……! ドライアドか?』
『はい! 覚えてくれていたのですね。フェンリル様』
ドライアドだって?
それって絵本とかに出てくる木の精霊だよな? 精霊って実在したのか!
『我等に何か用か?』
銀太がドライアドに話しかける。
『実はお願いがあります……』
ドライアドは深々とお辞儀をした。
『ドライアドは滅多に人前に現れないはずだろ。そんな奴が一体どうしたんだ?』
スバルが不思議そうに質問する。
『一緒について来てもらえますか? 見てもらった方が早いので……』
俺達はドライアドの案内で森の奥深くへと歩いていく。
しばらく歩いてもまだ着かない。
『ドライアド! 何処まで行くんだ? ドンドン空気が悪くなってる』
何かに気づいた一号がドライアドに訴えかける。
『……これは穢れ?』
銀太がケガレといった。穢れ? 何だそれは?
さらに奥に歩いていくと、俺でも分かるくらいに空気が濁っている。
その先に黒い何かが見える。
「こっ、これは泉か?」
ドライアドに案内された場所にあったのは、黒く濁った大きな泉だった。
『この泉は穢れておる……』
銀太は怪訝そうに泉を見る。
『そうなのです。この森は泉の綺麗な水と共に生きていたのに……! 水が穢れ……森も死にかけています……』
『何でこんなことになったんだ?』
『それは、数週間前に魔族が【穢れ玉】を泉に落としていってしまったからです。それからドンドン泉が穢れ……空気も淀み……この森も、このままだといずれ穢れに呑み込まれ、死の森になるでしょう』
また魔族……! アイツ等は一体何がしたいんだ⁉
『我等をここに連れて来たということは、穢れをどうにかして欲しいということじゃの? ドライアドよ』
『その通りです。フェンリル様』
『お願いします! この森を助けてください!』
シュン、ともう一人ドライアドが現れた。
『『よろしくお願いします』』
二人のドライアドは俺たちに深々と頭を下げた。
『我に任せておけ! 大丈夫じゃ!』
『俺達だっているからな!』
銀太とスバルが少し得意げに返事をする。
『『ありがとうございます』』
「でもこの穢れとやらは、どう処理するんだ?」
『我が泉を浄化するので、主達はこの穢れの元、【穢れ玉】を探して欲しい』
「了解だ! 任せてくれ」
『『『はーい』』』
『俺は空から様子を見るよ!』
スバルは颯爽と飛んで行った。
よし! 俺も探すぞー!
早速泉の近くを歩き回り、それらしき物を探してみる。そういえば穢れ玉ってどんな玉なんだ? 銀太に詳しく聞くのを忘れてたな。
ふと足元を見ると、俺の頭くらいの大きさの黒い石を見つけた。
こういう感じの物なのかな?
俺はその石を持ち上げ、銀太に聞いてみた。
「銀太ー! 穢れ玉ってこんなのか?」
『あっあわっ! 主それじゃ! 触ったらダメじゃ! 主まで穢れてしまう!』
『やだっティーゴ! 早くその石放して!』
『あわわ……穢れ玉を触って!』
ん? 何か銀太達が慌ててるな? 遠くて何言ってるのかよく聞こえない……。
この石を綺麗にしたらいいのか? 俺はなんとなく、手で石を撫でた。
すると石が輝き出し……パァァァァァーッと輝いた。
「うわっ!」
石が急に真っ白に!
『主……何という無自覚……! 穢れ玉を一瞬で浄化した』
森の澱んだ空気が、一気に清らかに。死にかけていた森が生き生きとした姿へと変わる……!
「何だこれ? 急に何が起こったんだ」
突然のことに理解が出来ず、俺は石を持ったまま呆然と立ち尽くしていた。
銀太やスバルが俺の所に飛んで来た。
『主、凄いのだ! 穢れ玉に触れる人族など、聞いたことがないのだ!』
「えっ? この石が穢れ玉?」
俺は穢れ玉だと聞いて、慌てて持ってる石を下に置く。
『そうだよ! 普通なら触れると一瞬で穢れ、魔に呑み込まれてしまうのに……! 触っても平気で、しかもそのまま浄化しちまうとは……ティーゴの旦那は本当に規格外だな!』
何だって? 俺が浄化?
『本当よ! その玉を持ち上げた時は、ビックリして私の心臓が止まるかと思ったわ!』
『何もなくて良かったっす……』
一号達も泣きそうな顔で走ってきた。
そんな危険な玉を俺は触ってたのか!
はぁ良かった……危うく取り返しのつかないことになるところだった。
しかし……何で浄化出来たんだ? 俺……何もしてないよな?
『ああ……森が元気になっていく』
『泉に妖精達が帰って来た……! 良かった……これで森は生き返る』
綺麗になった森と泉を見て、ドライアド達は感動している。
「とりあえずは一件落着でいいのかな?」
『あと少しで死の森になるはずだったこの森を……元の美しい森に戻していただき、本当にありがとうございます』
再びドライアド達は頭を下げた。
『『これは私達からの御礼です。受け取ってください』』
ドライアドは俺に袋を渡してきた。渡された袋の中には、緑色に輝く綺麗な石が二十個くらい入っていた。
『ほう……これは精霊石か!』
袋を覗いた銀太がこの石を精霊石だと言う。
精霊石だって? 初めて聞く名前だ。
首を傾げていると、スバルが興奮した様子で捲し立てた。
『何? 精霊石! それはかなりレアだぜ! カスパール様が中々手に入らないって話してたからな! それがこんなにも! ラッキーだな!』
カスパール様が探していたって⁉ 凄い物を貰ってしまった……いいのかな、こんなに沢山貰ってしまって?
『『では私達はこれで失礼します』』
質問する間も与えず、ドライアド達は行ってしまった。
泉のそばには、俺達だけが残される。
『良かったの主! 精霊石が貰えて!』
『これでアイテム作ったら、沢山の付与がつけられるぜ?』
なるほど、アイテムに使うのか……!
「じゃあこの石を使って、スバルや一号、二号、三号、みんなでお揃いのアイテムを作るか!」
『『『……えっ?』』』
一号、二号、三号達がビックリした顔で俺を見る。
『ティーゴの旦那……俺達にも高貴なるオソロをくれるのか……?』
スバルまで震える声で俺に問う。
何だ? みんなの様子が変だ……?
『本当にいいの……?』
『あっしにまで?』
『高貴なるオソロをティーゴと?』
うわぁぁーんっ‼
オワッ! みんなが泣きながら抱きついて来たっ‼ ちょっ……⁉
『ありがとうティーゴ!』
『また高貴なるオソロが貰えるなんて夢みたいだ!』
『ううっ……二人の主からあっしはオソロが貰えるんすね……嬉しい』
『俺は……ティーゴと高貴なるオソロがしたかった……! 嬉しいぜ……うっうう』
そうか……スバル達にとって、オソロには特別な意味があるんだな。
こんなことなら、もっと早く作ろうって言えば良かったな。
俺はスバル達が泣きやむまで頭を撫でてやった。
銀太だけは、泣いているスバル達を少し不思議そうに見ていた。
「…………落ち着いたか? 港町ニューバウンについたらオソロ作りに行こうな!」
オソロを作るってことは、俺はカスパール様と同じことをするんだよな。
俺はスバル達の主になりましたって、ちゃんとカスパール様に挨拶したいな。
そうだ! カスパール様のお墓に行ったらいいんだ。
そうと決まったら色々と忙しくなって来たぞー!
と決心していると……コツン! 卵が足元に転がってきた。
「あれっ……卵? もしかしてお前もオソロが欲しいのか?」
プルプルッ!
そうだよとでも言わんばかりに震える。
「そうか。分かったよ! 卵の分も作ろうな!」
プルプルッ!
やったーと言っているかのように喜んでいるのが分かる。
ふふっ、本当に面白い卵だな! まだ生まれてないのにこんなに意思があるなんて……!
どんな奴が生まれてくるんだろうな? 楽しみだな。
「元気に生まれてこいよ?」
俺はそう言って卵を撫でた。
んん? 卵がピンク色に少し光ったような気がしたが……? 気のせいだろうな。
よし! 港町ニューバウン目指して、行くか!
閑話――魔王様のお気に入りになりたい魔族達の呟き
四天王バフォメットは悩んでいた。
ああっクソ……! 何でこんなことになったのだ⁉
全ては順調だった。エルフの里に忍びこみ、やっとの思いで盗んだ聖龍の卵。
沢山の穢れを与えて邪竜が生まれてくるはずだったのに……! それを後少しのところで……!
どうして急にトリプルSのフェンリルが現れるんだ⁉
おかしいだろう? そんなことあるか?
今まで我等が何をしようと興味など示さなかったフェンリルが! 何故急に……関わってくるんだ!
フェンリルが現れて、卵を奪って行った。さすがに怖くて取り戻しになどいけない!
ああああ……!
穢れに染まった邪竜を献上して、魔王様のお気に入りの幹部になる計画が……丸潰れだ!
このままだと他の奴に先を越されてしまう……!
クソックソッ!
四天王ベルゼブブもまた悩んでいた。
何でこうなった?
魔王様に気に入ってもらうため、念入りに、綿密に計画し、ルクセンベルクの街は壊滅するはずだった……!
これを手土産に魔王様に気に入ってもらう予定が……ああっ台無しだ!
この計画のために青き魔獣を沢山作り、民は青き死の病気を得て、ルクセンベルクは死の街と化する……そう、計画は完璧だった……。
なのに! 何で⁉ トリプルSのフェンリルが現れて我らの邪魔をする!
今まで魔族のことなど気にも留めてなかったはずなのに!
ああっ……! 計画は丸潰れだ……これでは魔王様のお気に入りになれない……。
また何か考えねば……クソッ!
四天王ベリアルも悩んでいた。
森を穢れで覆って死の森を作り、これからという時に、森が浄化されていた。
はぁ?
何で?
意味が分からない! 一体何が起こってるんだ?
クソッ! また計画を立てないと……! 他の奴等もまだ何も魔王様にアピール出来ていないはずだ……。
また別の……何か手を考えないと!
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