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本編 燦聖教編
閑話グリモワールの思い
しおりを挟むグリモワールside
僕はカリンとカスパール様とずっと一緒に暮らす事が出来れば、それで良かった。
それが僕の幸せだった。
僕とカリンは忌み子と言われ村人から忌み嫌われていた。毎日誰かが馬鹿にする、毎日誰かが殴りにくる。
僕は何もしてないのに。
忌み子と言うだけで。
もう死んでもい、どうなっても良いと思って村を出た。
カリンには言わなかったけど、僕はもう生きる事に疲れたんだ。
死ぬつもりだった。
魔獣が襲って来た時、逃げなかった。ああこれで死ねると思った。
神様お願いします、来世はもう少し楽な人生を僕とカリンに下さい。そう祈った。
そんな時だった。
忌み子の僕達を、魔獣から救い嫌悪する事なく優しく抱きしめ助けてくれた人。
それがカスパール様との出会いだった。
それからの毎日は、本当に幸せだった。誰も僕達を殴らない、嫌な事をされない。
砂や何かが混ざっていない食べ物。食べる事が幸せなんだと、初めて知った。
カスパール様が連れて来てくれた村は、僕らに人権を与えてくれた。
孤児院での暮らしも幸せだった。
でも僕は、少しの時間があればカスパール様を探した。
ずっと側にいたかった。
何でも良いから話がしたかった。
カスパール様はそんな僕を邪険にするでもなく、ちゃんと相手してくれる。
幸せだ。
ある時、僕の願いが叶った。
カスパール様が僕を弟子にしてくれた。
「ワシが弟子をとるのはお前が初めてじゃ」
そう言ってくしゃりと笑い、頭を撫でてくれた。
どうやら僕の魔力量は、かなり高いらしく、高ランク魔法まで覚える事が出来るらしい。
僕は教えてくれた事を、スポンジが水を吸収するかのごとく、難なく高ランク魔法も覚えていった。
数年が経つと、報酬の高い依頼も難なくこなせるようになっていた。
お金にも困らなくなり、あと少し頑張れば働かなくても暮らしていけるのではないか?
僕は少し傲りがあったのだろう。そんな緩みから僕は大切な人を亡くしてしまった。
報酬の良さに目が眩みカリンを二週間も一人にしてしまった。
何故大丈夫だと? か弱い女の子を一人残して……愚鈍な考えに嫌気がする。
この後の記憶はうろ覚えだ。
怒りに任せグテ村を滅ぼし、偉大なる大賢者様の墓を荒らし蘇らせ、駒のように使った。
邪神に操られていたとは言え、僕の贖罪は簡単に許される事ではない。
こんな僕を正気に戻してくれたのも……やはりカスパール様だった。
何故か死んだ筈のカスパール様と、再会し……僕の念願だったカリンの命を蘇らせてくれた。
邪神に憑依される時、カリンの魂までが僕の体と一体化していたんだと、カスパール様と共にいたティーゴ様が教えてくれた。
大切な半身カリンが生き返り、本当に嬉しかった。
涙が止まらなかった。
だが僕は……時間が経つにつれ自分のしでかした事の恐ろしさに、震えが止まらなくなる。
何の罪もない人々を、どれだけ苦しめ殺めたのだろう。
自分に人としての感情が戻る度に、苦しい気持ちが増幅していく。
「グテ村の人達は前に向かって進んでおる」
カスパール様はそう言って、僕らをグテ村があった場所に連れて来た。
そこで見た景色は……昔と変わらない……いや昔よりも発展していた。
どうやら僕が大魔法を使って消滅させた時には、村人の殆どが隣り町にいたのだとか。
亡くなったのは十二人だと……。
全員が亡くなってなかった事には少し安堵した。
嬉しくもあった。
だからって、僕がグテ村を消滅させようとした事実は消えない。
僕の罪はなくならないんだ。
グテ村の人達は、こんなにも醜い僕を恨んでないと言った……僕は汚い言葉で罵ってくれたほうが良い。
なのに村人達は、僕なんかの銅像を建てて敬っていた。
こんな何の価値もないゴミ虫の僕をだ……やめてくれ。
僕はそんな敬われるような人じゃない。屑やゴミだと罵られる存在なのだ。
もう疲れた。
ティーゴ様に殺してと願えば、僕を殺してくれるだろうか?
一番苦しい方法で。
僕は楽になっちゃダメなんだ。苦しまないといけない。
カスパール様はそんな事してくれないだろう。
ティーゴ様にお願いしに行こう。
こんな僕の願いを叶えてくれるだろうか。
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