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本編 浮島編
鷹の王からの願い
しおりを挟む扉の奥にテーブルと椅子がありそこに鷹の王は座っていた。
机の上には紙が散乱している。
「大賢者様! わざわざフロッティにお越し頂き感謝いたします」
俺達が部屋に入ったのに気付くと、慌てて椅子から立ち上がり前に立つと深々頭を下げた。
「私は鷹の王、ジグムンドです」
「わわっ! ええと俺はティーゴです。鷹の王、頭を上げて下さい」
「ありがとうございますティーゴ様……私の話を少し聞いて頂けますか?」
「もちろん」
「ささっこちらにお掛け下さい」
俺と二号は、鷹の王ジグムンドに促され椅子に腰を下ろした。銀太は床、パールは机の上に座っている。猫だし問題ないよな?
ロックが慌てて、机の上に散乱していた紙を片付ける。
「むっ? ロックよ。その片付けた紙をワシに見せよ」
「えっ……こちらですか?」
「それは魔導兵器について書いておるのう?」
「えっ……大賢者様は魔導兵器をご存知で?」
パールの発言に、鷹の王とロックが目を見張る。魔導兵器って……ええと燦聖教の時にもいたやつか? 確か封印された魔導具って言ってたような。
「もちろんじゃ。ワシに知らぬ事などない。さぁ見せるのじゃ」
ロックは何も言わず、パールの前に紙を並べる。
「ほう……これは魔導兵器の仕組み……分解図か。ふむ良く描けておる」
「ありがとうございます」
「分かったぞ! お主らはこの魔導兵器に攻め込まれ困っておるのじゃな?」
「大賢者様その通りです! 沢山の魔導兵器に乗り込まれ、あっという間に浮島が一つ奪われました。どうにか一体を破壊する事に成功し、分解して弱点がないか必死に調べていたのです……」
鷹の王が悔しそうに眉を顰める。
「魔導兵器は頑丈で物理攻撃や魔法攻撃で破壊する事が難しく……多くの仲間が……くっ」
色々な事を思い出したんだろう。鷹の王はそう言って口篭ってしまった。
重苦しい空気が流れる中、それを断ち切るようにパールは一刀両断した。
「こんな奴らはワシの手にかかればイチコロじゃよ」
「「えっ?!」」
「イチコロじゃと言ったんじゃ!」
その言葉に鷹の王とロックが目を見張り驚いているが、すまん。これがパールの通常運転なんだよ。
「ですが……今、奪われた浮島に大量の魔導兵器が集まって来ているとの情報があり……そのう」
鷹の王が困惑している。流石にそれは無理だろうと言いたいんだろうが、言葉を飲み込んだようだ。
「その数は二百を超えていると……」
「数が何体おろうがワシには関係ない。魔導兵器の主を変えるだけでいいんじゃから!」
パールはどうじゃワシ凄いじゃろう? はよう褒めいとでも言ってるように、ふんぞり返っている。
チラリと細目で鷹の王達を見ているがな? パールよ? 王達は驚きすぎて固まっちゃったぞ?
「「あぐっ! はっはぁ!」」
ようやく正気に戻ったのか、鷹の王が「そんな事が本当に可能なんでしょうか?」と声を振り絞って質問する。
「もちろんじゃ! 魔力が高ければ主の上書きなど簡単じゃ」
そう言って再びふんぞり返った。
「ああっ……大賢者様」
そんなパールに涙を溜め、ひれ伏す鷹の王とロック。
傍からみると、猫にひれ伏す鷹の王……なんともシュールだな。まぁパールだし、仕方ないか。
「ではさっさと片付けに行くか! 行くぞティーゴよ」
「了解だ」
「ありがとうございます」
俺達が部屋を出るまでずっと、鷹の王達はひれ伏したままだった。
結局、鷹の王の話じゃなくて……パールの独壇場になっちゃったな。まぁいつもの事か。
王城を出ると……街の中央に見た事のある奴らが……
『主様? 聞いたぜ? 盛大な祭りがあるジャイ?』
『祭りと言ったら我らコブ!』
「ハクとロウ……」
おいおい……誰がこいつらに祭りなんて誤情報を教えたんだ? これ絶対に大騒ぎになるぞ? はぁ。
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