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13、夜の森
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「よしよし……」
使い古した薬瓶を一度机に置いて、レビはそれを満足しながら眺めた。
仕事の合間とはいえ何日もかけてしまったが、ようやく星見草から暗視の魔法薬を精製できた。
恒例の夕食も終わり陽は落ちているが、まだ砦には明かりが多く点いている。
「うーん、」
人間たちが眠りに就くまでの短い間、できる仕事はなんだろうかと室内を見渡した。
ちょうどいい時間潰しがないかと巡らせる先、鏡が目に留まって少し考え。よし、と鏡の前に腰を下ろした。
人に会うことの少ない時間になるから良い機会だ。
色々試してみて、戦士らしいかつ魔術師らしくもあるかと、こめかみの辺りに三筋の細い編み込みを這わせて、頭の後ろで束ねて結び目を隠した。
「まあ、形は合ってるか」
手鏡と合わせて後も確認し、息を抜く。
改めて窓を振り返れば充分に暗くなっている。ひとつ深呼吸して覚悟を決め、薬瓶の中の試薬を一気に飲み干した。
レビの家は砦の中でも川の傍の、一番上流にある。薬師の役を務めるために優遇されているのだ。
架け直してもらった新しい橋を渡れば、対岸には森が目の前だ。
月はちょうど半分欠けていて、真っ暗ではないが、もちろん森は別だ。半分はエルフの血を引き、エルフの国で生まれ育ったレビは森を怖いと思ったことはないが、危険ではある。
月光が照らす場所とその陰の暗さを見比べ、まだ薬が効いてはいないことを確かめた。顔を上げて月の位置を大体覚えておく。
森に入って歩き始めれば、道を空けるように虫の声が左右に遠退いた。
別世界のような涼しさに、足を進めるだに湿り気が増して、胸と腹が安らいだ。遠くからフクロウの声が聞こえて、別の方向からは、注意深く移動している獣の足音も。
砦の昼と入れ替わりのように、森での暮らしが音をさせている。
「ん?」
植物の夜の顔を観察しながら歩く耳に、かすかに違和感が触れた。
耳を澄ませても、確かとは思えないが。少なくともなんとなく感じる方向へと足を向けた。
求愛のために微かな光を運ぶ虫が小さく舞い、以前に確認した星見草も咲いている。入り組んだ木々の間を、獣道を確かめながら進む。
「ああ、」
聞き覚えのある声がいくつも聞こえてくる。獣人たちがいるらしい。
そちらへ歩いていくと木々が少しまばらになって、更に進むと開けた場所に出た。
「まだまだ!」
「ちょ、ちょちょ、交代、ベル交代」
「よっしゃ今度は十五秒もたす!」
「いーち、にーい、」
中心で声を上げているのはリーだ。手頃な太い木の枝を手にして、若手たちの戦闘訓練をしているらしい。
「おおー」
充分に距離を開けて輪になり、立ったり座ったりで観戦している山犬たちの横に並んだ。
「レビだ」
「あ、レビだ。よう」
「おー。リー強いなあ」
「強いぜ、めちゃくちゃ強いし全然疲れねえ」
「すっご、近くで見るとこんな速いのか」
「速いよなあ」
当たり前だが、反射神経が尋常ではない。
そういうルールなのか、剣の代わりなのだろう木切れを各々手にして、交代でリーに挑んでいるが歯が立たないように見える。
獣人の彼ららしい、剣技というよりは、剣も交えた格闘スタイル。剣を交わしてぶつかり合い、素早くそれを引き下げると蹴りや拳の応酬があり、相手の隙をつくようにまた剣が振られる。
見たところ若手ばかりの面々はすぐに蹴飛ばされ吹き飛ばされて、絶え間なく交代してはまた挑んでいるようだ。
試合というよりは稽古か、と観察している内に、挑戦者が途切れてきた。
あれ。と、目をやれば、輪になっている者は座り込んだり大の字に伸びたりしている。中心にいるリーの動きには変化がないというのに。
「リー、全員撃沈だよー」
「も、もう立てねえ」
ギブアップの声に笑いながらリーを振り返って、目を丸くした。
ギョロギョロする琥珀の瞳が往復して若手たちを見回し、長く深く呼吸して上下する胸や肩からは微かに湯気が見えそうだ。
「あアー、そうか。いや、足りない。足りないな、あんまりいい夜だ。なあ……」
わ。と、思わず出た声をレビは小さく口の中に隠した。
こんなリーは初めて見た。全身で血に猛り、持て余す強大な力が彼の体中を駆け回っているのが見えるようだ。
「そうだろ。いい夜だ、ナハト。お前とはまだだな、今夜は」
「げえぇ」
「ご指名だー」
「頑張れナハト」
囃し立てる連中も、潰した声で答えたナハトも笑っている。
ナハトがいた。と、闇に紛れていた黒い服の黒髪を振り返った。
勢いもつけずナハトが立ち上がる。宙に手を出すと誰かが木の枝を投げた。わずかに回転しながら、それが真っ直ぐにナハトの手元に飛んでいくのも、ナハトがそれを見もせずに平然と握るのも格好良い。
どう考えてもレビは鈍い方ではないが、獣人の運動神経は桁違いなのだ。
「お手柔らかに頼むぜぇ」
「よく言う。もうその手は食わないぞ」
交わされた言葉はたったそれだけだ。もちろん合図もない。
リーとナハトが同時に駆け出し、いきなり互いの木剣を叩きつけ合った。
「……!」
怖いと思っていないのに、身体が勝手に縮み上がった。
まず、音が違う。剣のように扱っているが、彼らが手にしているのは木の枝だ。ぶつければ出る音はレビにも想像できる。
だがその音が、鋭く、高くて、ほんのわずかに尾を引いている。それなのに残響も消える速度で次の一打が打ち込まれた。
繰り返される剣戟は原始的な音楽の様相を帯びてくる。
動きも尋常でない。
互いに土を躙り、地を蹴ってはしきりに立ち位置を変える。相手のわずかな隙を狙おうというのか、それとも無理に隙を作らせようというのか、とにかく、互いに執念深いほどの食いつきが凶暴だ。
「わっ」
リーがナハトの剣を地面に押さえつけた、かと思ったくらいの素早さで、頭から着替えるように真っ黒な山犬が姿を現す。
ナハトの剣を押さえるために片手が塞がったリーに、四つ足を全力で跳ね上げる黒い犬が身体ごとぶつかった。
よろけたのかと思ったら、素早く半円を描いたリーが、灰色の狼に変じた。
「うわ、わ、」
凶暴さは人型の比ではない。地を蹴って全身でぶつかり合っては、威嚇の声を上げながら噛みつき合う。
噛みつかれた方は身をひねって相手を投げ飛ばし、また押しつぶすように体当たりした。
「え、え。大丈夫なのか、あれ」
「ン? なにが?」
「大丈夫だよ。普通」
「マジか……」
信じられない反応速度で、一瞬、互いに距離ができた瞬間に二人とも人型になっていて、また剣を拾った途端にぶつかり合った。
もう、レビは声もない。
「う、わ……」
ほんの一瞬、少なくともレビにはそう見えた。ほんの一瞬の形勢で、地に倒れた山犬を狼が両方の前足で押さえつけ、その首筋に噛みついた。
途端に、全ての動きが止まった。
間を置いて、クゥーンという鼻鳴きが聞こえて、のっそりと狼が山犬の上から退く。
一歩の距離が離れると二人とも人型に戻り。なんでもないようにリーが手を差し出し、ナハトがその手を取って立ち上がった。
「段々強くなるな、ナハト」
「馬鹿言うなよぉぉ。リーと違って俺ぁ必死だろうがぁ」
「ご謙遜だな」
「よせよぉ」
笑い合って、また自然とそれきり解散になった。
短い間呆然と見守ってから、輪に戻ったナハトにレビは急いで駆け寄る。
「ナハト、怪我は?」
「よおぉレビぃ。稽古でケガなんかするかよぉ」
「すごい思い切り噛まれてたけど」
「そりゃ咬むだろぉぉ。山犬も狼もぉ」
ほれ、とナハトが袖を上げて見せてくれた腕には、くっきりと大きな歯形がついて周囲が盛り上がり、だが確かに、出血はしていなかった。
「あ。この暗さじゃレビには見えねえかぁ?」
「え、」
ナハトの肌の色までくっきり見えている。が、その一言で思い当たって、周囲を見回した。昼のようとは言わないが、かなり明るい。少なくとも、満月の下くらいには。
「大丈夫、見えてる。上手くいったか……」
切り取られたよう木の葉が途切れる濃紺の空に、半月は見当たらない。時間の経過について頭を巡らせ。
「へえぇ?」
使い古した薬瓶を一度机に置いて、レビはそれを満足しながら眺めた。
仕事の合間とはいえ何日もかけてしまったが、ようやく星見草から暗視の魔法薬を精製できた。
恒例の夕食も終わり陽は落ちているが、まだ砦には明かりが多く点いている。
「うーん、」
人間たちが眠りに就くまでの短い間、できる仕事はなんだろうかと室内を見渡した。
ちょうどいい時間潰しがないかと巡らせる先、鏡が目に留まって少し考え。よし、と鏡の前に腰を下ろした。
人に会うことの少ない時間になるから良い機会だ。
色々試してみて、戦士らしいかつ魔術師らしくもあるかと、こめかみの辺りに三筋の細い編み込みを這わせて、頭の後ろで束ねて結び目を隠した。
「まあ、形は合ってるか」
手鏡と合わせて後も確認し、息を抜く。
改めて窓を振り返れば充分に暗くなっている。ひとつ深呼吸して覚悟を決め、薬瓶の中の試薬を一気に飲み干した。
レビの家は砦の中でも川の傍の、一番上流にある。薬師の役を務めるために優遇されているのだ。
架け直してもらった新しい橋を渡れば、対岸には森が目の前だ。
月はちょうど半分欠けていて、真っ暗ではないが、もちろん森は別だ。半分はエルフの血を引き、エルフの国で生まれ育ったレビは森を怖いと思ったことはないが、危険ではある。
月光が照らす場所とその陰の暗さを見比べ、まだ薬が効いてはいないことを確かめた。顔を上げて月の位置を大体覚えておく。
森に入って歩き始めれば、道を空けるように虫の声が左右に遠退いた。
別世界のような涼しさに、足を進めるだに湿り気が増して、胸と腹が安らいだ。遠くからフクロウの声が聞こえて、別の方向からは、注意深く移動している獣の足音も。
砦の昼と入れ替わりのように、森での暮らしが音をさせている。
「ん?」
植物の夜の顔を観察しながら歩く耳に、かすかに違和感が触れた。
耳を澄ませても、確かとは思えないが。少なくともなんとなく感じる方向へと足を向けた。
求愛のために微かな光を運ぶ虫が小さく舞い、以前に確認した星見草も咲いている。入り組んだ木々の間を、獣道を確かめながら進む。
「ああ、」
聞き覚えのある声がいくつも聞こえてくる。獣人たちがいるらしい。
そちらへ歩いていくと木々が少しまばらになって、更に進むと開けた場所に出た。
「まだまだ!」
「ちょ、ちょちょ、交代、ベル交代」
「よっしゃ今度は十五秒もたす!」
「いーち、にーい、」
中心で声を上げているのはリーだ。手頃な太い木の枝を手にして、若手たちの戦闘訓練をしているらしい。
「おおー」
充分に距離を開けて輪になり、立ったり座ったりで観戦している山犬たちの横に並んだ。
「レビだ」
「あ、レビだ。よう」
「おー。リー強いなあ」
「強いぜ、めちゃくちゃ強いし全然疲れねえ」
「すっご、近くで見るとこんな速いのか」
「速いよなあ」
当たり前だが、反射神経が尋常ではない。
そういうルールなのか、剣の代わりなのだろう木切れを各々手にして、交代でリーに挑んでいるが歯が立たないように見える。
獣人の彼ららしい、剣技というよりは、剣も交えた格闘スタイル。剣を交わしてぶつかり合い、素早くそれを引き下げると蹴りや拳の応酬があり、相手の隙をつくようにまた剣が振られる。
見たところ若手ばかりの面々はすぐに蹴飛ばされ吹き飛ばされて、絶え間なく交代してはまた挑んでいるようだ。
試合というよりは稽古か、と観察している内に、挑戦者が途切れてきた。
あれ。と、目をやれば、輪になっている者は座り込んだり大の字に伸びたりしている。中心にいるリーの動きには変化がないというのに。
「リー、全員撃沈だよー」
「も、もう立てねえ」
ギブアップの声に笑いながらリーを振り返って、目を丸くした。
ギョロギョロする琥珀の瞳が往復して若手たちを見回し、長く深く呼吸して上下する胸や肩からは微かに湯気が見えそうだ。
「あアー、そうか。いや、足りない。足りないな、あんまりいい夜だ。なあ……」
わ。と、思わず出た声をレビは小さく口の中に隠した。
こんなリーは初めて見た。全身で血に猛り、持て余す強大な力が彼の体中を駆け回っているのが見えるようだ。
「そうだろ。いい夜だ、ナハト。お前とはまだだな、今夜は」
「げえぇ」
「ご指名だー」
「頑張れナハト」
囃し立てる連中も、潰した声で答えたナハトも笑っている。
ナハトがいた。と、闇に紛れていた黒い服の黒髪を振り返った。
勢いもつけずナハトが立ち上がる。宙に手を出すと誰かが木の枝を投げた。わずかに回転しながら、それが真っ直ぐにナハトの手元に飛んでいくのも、ナハトがそれを見もせずに平然と握るのも格好良い。
どう考えてもレビは鈍い方ではないが、獣人の運動神経は桁違いなのだ。
「お手柔らかに頼むぜぇ」
「よく言う。もうその手は食わないぞ」
交わされた言葉はたったそれだけだ。もちろん合図もない。
リーとナハトが同時に駆け出し、いきなり互いの木剣を叩きつけ合った。
「……!」
怖いと思っていないのに、身体が勝手に縮み上がった。
まず、音が違う。剣のように扱っているが、彼らが手にしているのは木の枝だ。ぶつければ出る音はレビにも想像できる。
だがその音が、鋭く、高くて、ほんのわずかに尾を引いている。それなのに残響も消える速度で次の一打が打ち込まれた。
繰り返される剣戟は原始的な音楽の様相を帯びてくる。
動きも尋常でない。
互いに土を躙り、地を蹴ってはしきりに立ち位置を変える。相手のわずかな隙を狙おうというのか、それとも無理に隙を作らせようというのか、とにかく、互いに執念深いほどの食いつきが凶暴だ。
「わっ」
リーがナハトの剣を地面に押さえつけた、かと思ったくらいの素早さで、頭から着替えるように真っ黒な山犬が姿を現す。
ナハトの剣を押さえるために片手が塞がったリーに、四つ足を全力で跳ね上げる黒い犬が身体ごとぶつかった。
よろけたのかと思ったら、素早く半円を描いたリーが、灰色の狼に変じた。
「うわ、わ、」
凶暴さは人型の比ではない。地を蹴って全身でぶつかり合っては、威嚇の声を上げながら噛みつき合う。
噛みつかれた方は身をひねって相手を投げ飛ばし、また押しつぶすように体当たりした。
「え、え。大丈夫なのか、あれ」
「ン? なにが?」
「大丈夫だよ。普通」
「マジか……」
信じられない反応速度で、一瞬、互いに距離ができた瞬間に二人とも人型になっていて、また剣を拾った途端にぶつかり合った。
もう、レビは声もない。
「う、わ……」
ほんの一瞬、少なくともレビにはそう見えた。ほんの一瞬の形勢で、地に倒れた山犬を狼が両方の前足で押さえつけ、その首筋に噛みついた。
途端に、全ての動きが止まった。
間を置いて、クゥーンという鼻鳴きが聞こえて、のっそりと狼が山犬の上から退く。
一歩の距離が離れると二人とも人型に戻り。なんでもないようにリーが手を差し出し、ナハトがその手を取って立ち上がった。
「段々強くなるな、ナハト」
「馬鹿言うなよぉぉ。リーと違って俺ぁ必死だろうがぁ」
「ご謙遜だな」
「よせよぉ」
笑い合って、また自然とそれきり解散になった。
短い間呆然と見守ってから、輪に戻ったナハトにレビは急いで駆け寄る。
「ナハト、怪我は?」
「よおぉレビぃ。稽古でケガなんかするかよぉ」
「すごい思い切り噛まれてたけど」
「そりゃ咬むだろぉぉ。山犬も狼もぉ」
ほれ、とナハトが袖を上げて見せてくれた腕には、くっきりと大きな歯形がついて周囲が盛り上がり、だが確かに、出血はしていなかった。
「あ。この暗さじゃレビには見えねえかぁ?」
「え、」
ナハトの肌の色までくっきり見えている。が、その一言で思い当たって、周囲を見回した。昼のようとは言わないが、かなり明るい。少なくとも、満月の下くらいには。
「大丈夫、見えてる。上手くいったか……」
切り取られたよう木の葉が途切れる濃紺の空に、半月は見当たらない。時間の経過について頭を巡らせ。
「へえぇ?」
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