欠け神の宵契り

種田遠雷

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9、神婚の秘技

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 そのすぐそば、脚の付け根の皮膚が薄いところを指先が揉んで、気持ちはいいが、今欲しいのは熱の溜まりきった茎だ。
 求めたいのに方法が解らず、ただ肩と背をよじる内に一番熱かったところが少し落ち着いて、何をされているのか気がついた。
「あっ」
 思わず上げた目が、濡れた青い瞳と合って、まるで合図だったように、指が揉んでいたそこを浅く突き刺された。
「あ、ああ、っ、」
 受け入れるために念入りに清めて濡らしてあったそこは、当たり前なのに驚くほどよく滑って、レニとはまるで違う太く長い指を自在に出入りさせてしまう。
「うぁ、あっ、うぅ……」
 あらぬ場所に入られている強い違和感の奥、目に見えそうなほど明らかに身構えていた快感が、前を握り直されて突き抜けた。
「……ッは! っあ、――……あぁ、」
 聞いたこともない方法で射精させられ、昂ぶって尖った身体が次には崩れていくように感じる。
「は、お、お待ちください、」
 尻の穴にナルヌイの指が円を描いて巡り、本数を増やして拡げている。困るような慌てるような心持ちで、広い胸に手を突っ張った。
 指は動くのをやめ、唇を弄んでいた唇を離して、ちゃんと聞いてくれる顔を縋るように見つめた。
「し、支度しております。要りません、あなたにそのような……」
「儀をたがえるか?」
 お前の儀式の作法に違反するかと穏やかに尋ねられて、鈍った頭を巡らせ、首を振った。
「いいえ。あなたに作法は求めません」
 どのように行うかを決めるのは神の側であると答えれば、知らぬ国の神は満足そうに頷いた。
「ならば、今後も求めるな」
「は……、……はい」
 と、応じる他はなかった。
「レナン」
「はい……」
 涙に滲む目を見る青い目は笑っている。
「これでは入らんのだ」
 手を引いて、目の届かない下の方へと導かれる。握らされたものを探り、手に余るものが何かを理解して、身を投げ出した。
「うそだ、そんな……」
 やり方は知っている。想定外の対処まで色々と。
 だが思っていたより全く大きい。
「怖くなったか」
「かなり……」
 胸を揺らして笑っているナルヌイの方を向けず、逃げる気はなく諦めた脱力を、けれど片腕で掬い上げて抱き締められた。
「私は祭で巫子に傷を負わせるような粗暴な神ではない」
 はた、と、涙目をひとつ瞬いて、石の混じる大きな背を抱き返した。
「……はい。至らず、申し訳ありません。この身、開いて、契らせてください……」
 辛抱させるな、と、労う声は優しく。
 どういう具合なのか、後ろを向かせたり膝に抱えたりしながら、時折身体を慰め、丹念にそこを解して開いてくれるナルヌイに甘えて任せ。
 手と指だけで、声を上げて達した。
 四つん這いにされると震える腕や足が辛いが、もう矜持だけで身を支える。
「入る」
 濡れてただれてグズグズのそこに熱いものを擦りつけられ、はい、と頷いて膝を開き直した。
 丸く、ぬめって熱いものが、穴を薄く引き伸ばすようにゆっくりと入ってくる。
 痛みはわずか、違和感も少なからず、なによりもう、そこは弄られる快感を覚えて悦がっているが。ただただ、狭いところに大きなものを無理に押し込んでいく負担が重い。
 声にもできず細く長い息を繰り返し、太い肉の棒が下から身体を貫いていくのに、逃げぬよう身体を突っ張って堪えた。
 馴染ませるように少し揺すりながら、時間を掛けてじっくりと押し込まれ、もうこれ以上はと思う、その少し先で止まった。
 力が抜けて上半身が崩れるが、恐ろしいことに、咥え込んだものが大きすぎて下半身は全く動かなかった。
「少しの間、こらえろ」
「へ、は、……っ、ひ……ッ!」
 はいの二音が次げず、悲鳴を上げてしまう。
 ずるるるる、と、入れるのにあれほど苦労したのがうそかと思うほど、滑らかにナルヌイのものが真っ直ぐに滑り出て行く。
「いぁッ」
 張り出した亀頭が水音を立てて抜けて、快感と衝撃で身体が飛び跳ね、目の前がチカチカした。
「ひぃ、い、ィいいぃい……っ」
 間を置かず先端が押し当てられ、合わせた照準を正確に捉えるように、抜けるときよりは確かにゆっくりと、だが先とは比べものにならない滑らかさで再び突き刺された。
「ぃあ、ひっ、ああぁァ、あっ、ああ、ぁう……」
 同じことを丁寧に繰り返され、レニ自身では既に膝すら支えておられず、ナルヌイが掴んだ腰だけで身が吊られている。
 どこにも力が入らない身体を裏返され、ひとつずつ足を開かされても、何もできない。
「レナン、平気か」
 名を呼ばれて目を上げるが、ナルヌイが何と言ったのか理解できなかった。
 ただ、返事を出来ないのに聞こえでもしたよう、見つめてくる目はひどく優しく笑って、甘やかすような柔いくちづけを与えられた。
「あ、」
 開いた足の間にまた割り込まれて、眉が下がる。
 受け止め切れていない。けれど、身体を開き続けているしかない。
「レナン……辛かったら言ってくれ」
 今度は聞こえた。
 両手を伸ばして、長い黒髪を掻い潜るように太い首を抱き寄せる。大丈夫とは、つくろっても言えない心境だが。
「ナルヌイ様、……き、気持ちいいです、すごく」
 少なくともそれだけは嘘ではない。
 なんとか掻き集めた気丈を察するよう、優しくするから、と囁く声に眉が下がった。

「は。あ、ああー……、ん、んぅ」
 ゆっくりと船を漕ぐようナルヌイが動き出して、時折力が抜けて離れてしまう身体を、腕をと絡ませ直しながら、ほとんど為す術もなく抽送を受け入れる。
 次第に身体が馴染んで受け止められるようになったはいいが、繰り返して途切れることのない快楽に、レニばかりが身を震わせて達していた。
 尻の穴がドクドク脈打っていて、無理があるのが分かって怖いのに、勝手に身が捩れるほど悦い。
 もう絶頂しても気づかないほど意識もどろどろで、物欲しくなってはナルヌイの頬を包んでくちづけをねだった。
 何度でも、いくらでもナルヌイはレニの求めに応じ、あやすように甘やかしながら、その身の深くを身で探り。時折レニが息を上擦らせると、動きを遅くして抱き締めてくれた。
「なるぬいさま……」
 優しい、いとしい大きな神の逞しい身体を抱き寄せ、一体いつからこうしていたのだったかと、レニはぼんやり思った。
 まるで数十年も数百年も、この神の巫子として、こうして愛され続けている気がする。
 今は遠い、冬ごとに雪に閉ざされる山の国で、行ったことがないはずの、海と魚の穏やかな国で。そのどちらの神殿も見知っていて、そのどちらでも、この神と宵の契りを結んだことがあるように思える。
 レナン、と、切ないように優しく呼ぶ声も、ずっとずっと繰り返されていたような。
 波の音と、深夜に積もる雪の音が同時に聞こえるような感覚にたゆたい、途切れることない快楽と安穏に浸る意識を、ナルヌイの声が呼び戻した。
 縋りついていた身体を離させられ、抱えられていた足を下ろされ、顔の脇に両手が着かれる。
「顔を見せてくれ」
 ドン、と一度奥を突かれて小さく悲鳴を上げてしまい、眉を下げて笑いながら、手を伸ばし。自分からもナルヌイの顔が見えるよう、長い髪を片側に寄せさせてもらった。
「はい、ナルヌイ様」
 ああいよいよおいでになる、と、心は高揚で熱くとろけて。
「あっ、」
 脈打つような速さで今度はレニを気遣わず打ち込み始めるのに、足を開き腰を上げるように合わせ、白く飛びそうになる意識をこらえて。次第に焦点を失う青い目を恍惚として見つめた。
「ッ!」
 ナルヌイの眉がきつく寄せられ、激しい動きが一度止まって、嗚咽するよう途切れながら何度か揺すられ。
 たまらず手を伸ばして、肌の頬と石の頬とを愛しく包んだ。
「あ……」
 腹の中に出されている、という、浅ましいような悦びが絶頂して、ゆっくりと鎮まっていくのと入れ替わりに、渦巻く力の奔流が訪れた。

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