【完結】魔がさし令嬢の国外逃亡は恋の予感

愚者 (フール)

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第1章  隣国への逃亡

第13話 奇妙な願い

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 翌日、一晩中寝られない中で少しだけ睡眠を取った私の顔は最悪に近かった。
そんな顔で申し訳なく思いながら、王妃様にお茶をそそぐ。
おろかな私の悩みと葛藤かっとうを、神経をすり減らしていたのをあの方は気づかれた。

「グレース、何か悩みがあるのかしら?
今日は顔色が悪く見えるわ。
私に出来ることなら、何でも相談しなさいな」

言ってしまおう、そうすれば楽になる。

いいえ!
いけないグレース、それだけは!

「王妃様、どんな物でも構いません。
捨てるものでいいのです!
紙とインクを頂けてませんか?」

何を馬鹿な事を頼んでいるの、私はー。
でも、これでまた物語の続きが書ける。
もう一人の私の物語が、せめて空想でもいいから幸せをつかみたい!

「紙とインク?
そう、もう手元に無くなって困っていたのね。
安心して、文官に頼んであげるわ。
そんな顔をする前に、遠慮しないで話せばいいのよ。グレース」

可哀想に、実家に手紙を書きたかったのね。
考えたら人それぞれ書きたい事は、同じではないわ。
王妃はグレースの入れた紅茶を飲みながら、そう考えて直ぐに文官に指示しようと思っていた。

願いが叶った。
本当の願いは叶わないが、今はそれでいい。
彼女は王妃に心を隠して、嬉しそうに笑顔を向けていた。

 後日、文官から呼び出された。
その部屋は普段使われてない物置で、そこの角に大量のインクの入った小瓶こびんとさまざまな大きさの紙が乱雑らんざつに置いてあった。

「王妃様からの格別な、ご配慮はいりょだ!
心から感謝致すがよい!」

文官は面倒な仕事をさせられて、その原因のグレースに憮然ぶぜんたる顔でえらそうに話してきた。

「はい!お手数をお掛けして、すみませんでした。
インクと紙を、有難うございます!
大切に使わせて頂きます」

頭を下げていた彼女は、彼が部屋から出るまでその姿勢でいた。

紙はサイズがバラバラで、インクは色が微妙に違っていた。
休憩時間や休日を使い、一人でコツコツ選別をしていく。
先に自分の分は、部屋に持ち帰っていた。

全て整理し終わり、その量のすごさに驚き。
これをどうするかを、今度は悩む事になる。

「そうだわ!メイド仲間たちと分けたらいい。
きっと、欲しい人は居るはずだわ」

グレースは休憩時間に女官長オリヴィアに声をかけて、紙とインクの説明をする。

「まぁ、グレース!
いい判断です、王妃様には私からお伝えします。
王妃さまもお話を聞き、お喜びになるはずですよ」

女官長は、早速さっそくにジョセフィーヌ王妃にグレースの言葉を伝えた。

「なんて、優しい子でしょう。
ちゃんと、紙とインクを分けてしてから伝えてくるなんて!
文官たちは、ただ渡しただけだったのね。
グレースのいいようにして頂戴ちょうだいな。
私は構いません」

「有難うございます。
王妃様、グレースも感謝するでしょう」

その場で少しだけ考えて、女官長オリヴィアに指示を出した。

「女官長、今度一人部屋が空いたらグレースに使わせなさい!
私の代わりに気づいて、メイド仲間を気遣ってくれたお礼です。
いいですね!」

王妃の配慮に再び感謝を示すように、深く頭を下げてカーテシーをした。

 余ったものをただ皆に分け与えたら、何故か王妃様からちょっと狭いが一人部屋を与えられた。
皆に悪いと辞退しようとしたら、周りから反対されてしまう。
だから、こうして集中して夢物語にひたっていけた。

ひたすら書いていた。
書かないと、母の病で苦しむ姿を想像してしまう。
家族のいる領地へ戻ったのは、いつだったろうか?
もし、王宮へ入る前に故郷に戻って帰っていたら母の病に気づけたか。

書き終わってしまえば、むなしさしか残らない。
涙があふれて、止まらない。

私の書いている話は、空想のいつわりの愛。
馬鹿だわ、こんなのを書いても一銭にもならない。
自己満足でしかない。

彼女は書き上がった原稿の上に、泣き顔をのせては目をつむる。








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