【完結】魔がさし令嬢の国外逃亡は恋の予感

愚者 (フール)

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第2章  エーレンタール侯爵家 

第7話 侯爵令嬢ベアトリス

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  部屋に戻ると顔を洗い、ドレスに着替えさせられた。
次は髪型をい直され、薄くお化粧をする指示をメイドたちにしている。

私は、人形の様にされるがままだった。

メイド長は他のメイドたちに、指図すると鏡の前に座る私を鏡越しににらんでました。
着ている若草色わかくさいろのドレスを、この私が着てもいいのかしら?

「メリッサ様、本当にすみませんでした。
勝手に部屋を出て、指示なしでお仕事をしてしまい。
怒っておられますよね?」

髪を編み込みをされて、可愛らしい感じにされている。
彼女が手際よく結っている最中さいちゅうに、改めてもう一度メリッサに謝罪をする。

「ええ、怒ってます。
部屋の机の上を見て、どんなに私共が驚いたことか。
直ぐに居場所は分かりましたから、良かったですよ!」

「この着ているドレスは、お幾らになりますか?
やはり1度着て、ただで返すわけには参りませんよね」

グレースは、胸にあるレース付のリボンを軽く指先で触って不安がる。

「クローゼットにあるドレスは、奥様からの贈り物です。
ご安心下さいませ。グレース嬢」

こ、これが贈り物なんですか?
生まれて初めてだわ。
こんな綺麗な新しいドレスなんて! 
それが、タダで無料なんてー。

幼い頃から頂き物の服ばかり、シミがあったり破けていたのもありましたわ。
誤魔化ごまかせる服は刺繍をしたり、リボンをつけたり手直ししてましたのよ。

「こんなに綺麗な格好かっこうをして、何かあるんですか?!」

「朝の食事ですよ。
侯爵家では、そのドレスは普段着扱いです」

メイド長メリッサの説明に、侯爵家の財力を目の当たりにした。
生きてる世界が、完璧に違いすぎる。

朝の食事が、緊張のあまり喉が通りそうもないグレース。
明日からは絶対に、使用人たちの食べる場所でご一緒させて欲しいわ。

支度したくが時間内に終わり、メイド長はほっとする。
メリッサはグレースをともない、侯爵ご一家がそろう食堂へ向かうため部屋を出ていった。

  食堂にはエーレンタール侯爵夫妻と息子カルロス。
そして、妹のベアトリスがグレースを興味深げに見つめて座っていた。

「おはようございます。
お待たせ致しまして、申し訳ございません。
エーレンタール侯爵様。
侯爵夫人、素敵なドレスを感謝致します」

グレースは美しい所作しょさで謝罪すると、侯爵は寛容に謝罪を受け取り席に座るよう言ってくる。

「おはよう、グレース嬢。
昨日は、かなり疲れていたのね?初めて会うわね。
此方こちらが長女のベアトリスよ!」

グレースはベアトリスに、席につく前に挨拶と自己紹介をする。
侯爵令嬢は彼女を見ようともせず、あたりさわりない言葉をかける。

神に感謝をしてから、朝の食事を始めた。
グレースが、普段食べているのとは格段の差があった。
昨日も感じたが、豪華な食事。
粗相そそうをしないように、ゆっくりと食べ出す。
緊張して美味しいはずの料理が、何を食べても味がしない気がするわ。
横にカルロスと前にベアトリスがいるが、とにかく料理に集中して視線には気づかないグレース。
 
 「グレースさんってお呼びしても宜しいかしら?
私をベアトリスって呼んで下さいね。
エテルネルから此方こちらには、観光にでも来ましたの?」
 
ベアトリスは、グレースに意地悪な質問をする。
美しい金髪の美少女は、前に座る栗毛くりげの女性を探る目付きをしていた。

そんな冷たさを感じる会話に食事の手を止め、なんと返事をしたらいいか悩んだ。
ベアトリスの質問に、どんどん暗い表情になっていく。

「ベアトリス、グレース嬢に失礼な態度をしてはいけません!」

自身の娘がグレースに対して強く感じ悪い物言ものいいを、不機嫌に注意をする侯爵夫人。

「侯爵夫人、いいのです。
侯爵令嬢、私は罪を犯した。
そして、自国を離れたのです。
人をあやめたりはしてませんが、沢山の方をまどわせた。
侯爵夫人は、そんな私をかくまってくれたのです」

グレースの告白は、カルロスとベアトリスを驚かせる。

侯爵夫妻は、エテルネルの王妃からの手紙で知ってたのか冷静な態度をしていた。

「まぁ、何をされたのですか?
とても興味がございますわ!」

「いい加減にしないか!
ベアトリス!」

父の侯爵は我慢できず、傲慢ごうまんな態度の娘をしかりつけた。

グレースは、嘘をつきたくなかったので真実を話した。
ベアトリス様は、私が侯爵家にご厄介やっかいなるのがきっと気に入らないんだわ。

「エーレンタール侯爵令嬢。
ご不快でしょうが、しばらく此方に滞在をお許しください。
これからは、お食事はご一緒致しません。
使用人として過ごすつもりです。侯爵、侯爵夫人!そのようにお願いします!」

グレースは座りながら、ひたすら頭を下げ続けていた。

「ベアトリスの言ったことを、気にしなくていいのですよ。
それに貴女は、けして罪人でもないわ。
グレース嬢は、大事な友人から頼まれた方よ。
たとえ娘とて、無礼は許しません」

侯爵夫人は、自身の娘にきつく申し伝えた。

それからは、誰一人話もしない、静かな食事となった。
食事が終わりに近づくと、デザートとお茶が出された。

お茶を飲んでいた侯爵令息カルロスが、隣のグレースを横目にチラリと見て話題をふってくる。

「お茶はグレース嬢の入れてくれた方が、比べられないぐらい美味しいですね」

「ええ、そうね。
昨日お茶を飲んでしまったからだわ。ホホホ」

「そんなに美味しいお茶なら、ぜひ私にも頼むよ。グレース嬢!」

侯爵夫妻も、息子の話に続いて会話をしてくる。
お茶の時間に、侯爵ご一家にお茶を入れる約束をしてしまう。

仲間はずれのベアトリスは、不機嫌な顔のまま黙って食事を続けていた。



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