【完結】魔がさし令嬢の国外逃亡は恋の予感

愚者 (フール)

文字の大きさ
35 / 124
第2章  エーレンタール侯爵家 

第8話 意地悪な問いかけ

しおりを挟む
  午後の穏やかな日差しの中。
侯爵ご一家は庭に咲く薔薇を見ては、その美しさを笑顔で眺めていた。

一家はご領地から一週間後に、王都のお屋敷に戻る予定を話し合う。
カルロス様とベアトリス様は、学園での新学期が始まるからだ。

 そんな話をメイド長メリッサさんに教えてもらいながら、グレースはお茶の準備をしていた。

ワゴンを押しながらメリッサと共に、部屋に入っていくと侯爵夫人は嬉しそうにお礼を言う。

「グレース、頼んで悪いわね。
貴女のお茶を飲んでしまったせいで、他のお茶では物足ものたりないのよ!フフフ」

そう話して笑う侯爵夫人に軽く頭を下げてしてから、順次じゅんじにカップに紅茶をそそぐとソーサに置きテーブルに置いていく。

ベアトリス様の番になると、グレースは特に気を付けた。
それは女の直感ちょっかんなのか、長く貴人たちに接したかんがそうさせる。

「ベアトリス様。こぼすといけませんので、お手をテーブルから離してくださいませ」

少しだけ困り顔になり、丁寧にお願いをしてみた。

「あらっ、私に命令するのかしら?
メイドの分際ぶんざいで!生意気ですこと!」

ベアトリスは、そうグレース言うと顔を背ける。
ティーポットを持って立ちつくす彼女に、令嬢はいちゃもんをつけているようだ。

グレースがその言いように困り眉間みけんにシワがるを見て、兄が不機嫌ふきげんに妹に声をかけ注意する。

「ベアトリス!グレース嬢がお茶を置けないだろう。
こんなに皿を前に置いていたら!
見ろ、置く場所がないじゃないか」

カルロスが言うと、渋々ながら素直に手を退かす。
お茶をなんとか無事に置くことが出来た。

「有り難うございます。
では皆様、どうぞお飲みください!」

お茶を飲みだすと、その美味しさを堪能たんのうして侯爵がグレースにお褒めの言葉をかけた。

「ほぉ、これは確かに美味うまいなぁ。
アデラが自慢するだけはあるな!アハハハ」

「そうですわね…。
たしかに、美味おいしいわ!!」

ベアトリスも思わず、グレースのお茶を美味しいと言ってしまった。
言ってから、気恥ずかしいのか赤い顔をする。
家族は声を出さずに微笑んだ。

グレースはお辞儀をして、その場に立って侯爵一家を眺めた。
本当に、絵のように美しい御家族。

私の家族たちも、国で元気で暮らしていると良いわね。
 母は、まだ入院しているのかしら?
故郷の病院のベッドに寝ていた姿を脳裏に浮かべ、母を思い出しそうになってしまう。

母との最後の別れを思い出していたら、侯爵夫妻からお代わりを求められた。

「グレース嬢。
貴女はメイドとしてではなく客人として、このエーレンタール侯爵に滞在するのよ」

アデラは彼女の着ているメイド姿を見て、今後の立場を説明する。

「ですがー、侯爵夫人。
それでは、此方こちらに居るときは肩身が狭いですわ。
少しでも、何かをさせて下さいませ!」

「お母様、グレース嬢が自分で言ってるのです。
宜しいんではなくて?!
でも、どうして隣国に来たのか。ハッキリとした、理由を知りたいですわね!」

ベアトリスは、グレースの罪人と言った事が気になっていた。
母がかばっているのも、まったく気に入らなかったのだ。

彼女は痛いぐらい、そんなベアトリスの気持ちがわかっていた。

「エーレンタール侯爵様!
お茶の席にはつまらない話ですが、私の身の上を聞いて下さい」

全て話した上で、お世話になるのが筋だと思っている。
無理に王妃様が、侯爵夫人に頼み込んだかもとそう感じ始めていた。

「そうだなぁ。 
実は私は、妻から何も聞かされてない。
隣国から客人が来るので、置いてくれないかしか知らないのだ。
信じているからいいのだがなぁ」

「私もジョセフィーヌ様から預かっていて欲しいと、貴女が隣国に来たわけは詳しくは手紙には書かれて無かったのよ」

これにはグレースも侯爵夫人以外の方々も、驚きの表情をしていた。

なんて事なの、まったく事情を知らなかったのね。
これは、話さなくてはいけないと覚悟をする。

「では、話させてください!
私の恥ずかしい、過去からになりますが…」

グレースが断ると、エーレンタール侯爵一家はあのベアトリスさえも静かになり話を聞くことになる。
 
その話は、話す自分も聞く人たちも悲しい気持ちになる話であった。
 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

リトライさせていただきます!〜死に戻り令嬢はイケメン神様とタッグを組んで人生をやり直す事にした。今度こそ幸せになります!!〜

ゆずき
恋愛
公爵家の御令嬢クレハは、18歳の誕生日に何者かに殺害されてしまう。そんなクレハを救ったのは、神を自称する青年(長身イケメン)だった。 イケメン神様の力で10年前の世界に戻されてしまったクレハ。そこから運命の軌道修正を図る。犯人を返り討ちにできるくらい、強くなればいいじゃないか!! そう思ったクレハは、神様からは魔法を、クレハに一目惚れした王太子からは武術の手ほどきを受ける。クレハの強化トレーニングが始まった。 8歳の子供の姿に戻ってしまった少女と、お人好しな神様。そんな2人が主人公の異世界恋愛ファンタジー小説です。 ※メインではありませんが、ストーリーにBL的要素が含まれます。少しでもそのような描写が苦手な方はご注意下さい。

毒姫ライラは今日も生きている

木崎優
恋愛
エイシュケル王国第二王女ライラ。 だけど私をそう呼ぶ人はいない。毒姫ライラ、それは私を示す名だ。 ひっそりと森で暮らす私はこの国において毒にも等しく、王女として扱われることはなかった。 そんな私に、十六歳にして初めて、王女としての役割が与えられた。 それは、王様が愛するお姫様の代わりに、暴君と呼ばれる皇帝に嫁ぐこと。 「これは王命だ。王女としての責務を果たせ」 暴君のもとに愛しいお姫様を嫁がせたくない王様。 「どうしてもいやだったら、代わってあげるわ」 暴君のもとに嫁ぎたいお姫様。 「お前を妃に迎える気はない」 そして私を認めない暴君。 三者三様の彼らのもとで私がするべきことは一つだけ。 「頑張って死んでまいります!」 ――そのはずが、何故だか死ぬ気配がありません。

3回目の人生は、悪役令嬢を辞めて引きこもります~一歩も出ずに国を救ったら、なぜか「聖女」として崇められ最強の男たちが部屋を包囲してくる件~

放浪人
恋愛
公爵令嬢エリザベートは、1度目は悪役令嬢として断罪され処刑、2度目は改心して聖女となり国に尽くしたが過労死……という悲惨な最期を遂げた。 記憶を持ったまま3度目の人生が始まった瞬間、彼女は固く決意する。 「もう絶対に働きません! 今世は部屋から一歩も出ず、睡眠と趣味に命をかけます!」 最強の拒絶結界『絶対領域』で部屋に籠城し、婚約破棄イベントも夜会も全て無視して惰眠を貪ろうとするエリザベート。 しかし、彼女の「働きたくない」一心からの行動――適当な農業アドバイスや、安眠妨害への容赦ない迎撃――が、周囲には「国を憂う深慮遠謀」「慈愛に満ちた奇跡」として超好意的に解釈されてしまう!? ヤンデレ化した元婚約者の王太子、物理で愛を語る脳筋騎士団長、効率厨の隣国王子、さらには古代の引きこもり少年までをも巻き込み、事態は国家規模の大騒動へ。 部屋ごと空を飛んで戦場を浄化し、パジャマ姿で古代兵器を操り、地下牢をスイートルームに変えながら、エリザベートは究極の安眠を手に入れることができるのか? 塩対応すればするほど愛され、逃げれば逃げるほど伝説になる、最強引きこもり令嬢の勘違いドタバタ溺愛ファンタジー、ここに完結!

魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました

iru
恋愛
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。 両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。 両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。 しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。 魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。 自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。 一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。 初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。 恋人になりたいが、年上で雇い主。 もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。 そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。 そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。 レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか? 両片思いのすれ違いのお話です。

【完結】公爵令嬢は勇者への恩返しを試みる〜サブヒロインとして頑張ります〜

マロン株式
恋愛
 公爵令嬢ユウフェには、ひとつだけ秘密がある。  ――この世界が“小説の中”だと知っていること。  ユウフェはただの“サブヒロイン”で、物語の結末では魔王のもとへ嫁ぐ運命にある……はずだった。 けれどーー  勇者の仲間、聖女、そして魔王が現れ、〝物語どおり〟には進まない恋の三角関係(いや、四角関係?)が動き出す。  サブヒロインの恩返しから始まる、ほのぼの甘くて、少し切ない恋愛ファンタジー。 ◇◇◇ ※注意事項※ ・序盤ほのぼのめ ・勇者 ✖ サブヒロイン ✖ 魔王 ✖ 巫女(?)の恋愛模様 ・基本はザマァなし ・過去作のため、気になる部分あればすみません ・他サイトと並行改稿中のため、内容に差異が出る可能性があります ・設定ゆるめ ・恋愛 × ファンタジー

愛する人は、貴方だけ

月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
下町で暮らすケイトは母と二人暮らし。ところが母は病に倒れ、ついに亡くなってしまう。亡くなる直前に母はケイトの父親がアークライト公爵だと告白した。 天涯孤独になったケイトの元にアークライト公爵家から使者がやって来て、ケイトは公爵家に引き取られた。 公爵家には三歳年上のブライアンがいた。跡継ぎがいないため遠縁から引き取られたというブライアン。彼はケイトに冷たい態度を取る。 平民上がりゆえに令嬢たちからは無視されているがケイトは気にしない。最初は冷たかったブライアン、第二王子アーサー、公爵令嬢ミレーヌ、幼馴染カイルとの交友を深めていく。 やがて戦争の足音が聞こえ、若者の青春を奪っていく。ケイトも無関係ではいられなかった……。

【完結】アラサー喪女が転生したら悪役令嬢だった件。断罪からはじまる悪役令嬢は、回避不能なヤンデレ様に溺愛を確約されても困ります!

美杉日和。(旧美杉。)
恋愛
『ルド様……あなたが愛した人は私ですか? それともこの体のアーシエなのですか?』  そんな風に簡単に聞くことが出来たら、どれだけ良かっただろう。  目が覚めた瞬間、私は今置かれた現状に絶望した。  なにせ牢屋に繋がれた金髪縦ロールの令嬢になっていたのだから。  元々は社畜で喪女。挙句にオタクで、恋をすることもないままの死亡エンドだったようで、この世界に転生をしてきてしあったらしい。  ただまったく転生前のこの令嬢の記憶がなく、ただ状況から断罪シーンと私は推測した。  いきなり生き返って死亡エンドはないでしょう。さすがにこれは神様恨みますとばかりに、私はその場で断罪を行おうとする王太子ルドと対峙する。  なんとしても回避したい。そう思い行動をした私は、なぜか回避するどころか王太子であるルドとのヤンデレルートに突入してしまう。  このままヤンデレルートでの死亡エンドなんて絶対に嫌だ。なんとしても、ヤンデレルートを溺愛ルートへ移行させようと模索する。  悪役令嬢は誰なのか。私は誰なのか。  ルドの溺愛が加速するごとに、彼の愛する人が本当は誰なのかと、だんだん苦しくなっていく――

処理中です...