【完結】魔がさし令嬢の国外逃亡は恋の予感

愚者 (フール)

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第3章  カルロスの婚約者

第5話 グレースの風邪

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 エーレンタール侯爵一家が、王都に戻る日が差し迫った日に問題が発生してしまう。
どうしても学園が始まる前には、王都に帰らなくてならない。

グレースが目が覚めて容態が安定したので、一家全員で見舞いに部屋を訪れていた。

「もう、申し訳ございません。
ケホッ、風邪なんてひいてしまい。ゴホッ、ゴホン!」

ベッドの中で咳をしながら座って頭を下げまくるのを見ていて、ベアトリスが辛そうな表情で話し出す。

「いいのよ、無理しないでね。
隣国から来て、心労がまったのではないかしら?
ゆっくりと休んで、グレース」

ベアトリスはメイド長メリッサが、咳き込む彼女の背中をさするのをみて気の毒がっている。

「悪いがグレース嬢、私と息子たちは先に王都に戻る。
後から妻と一緒に来て欲しい。
そうだ、君の本を旅の途中で読ませてくれぬか?!」

グレースは、メリッサに頼みかばんから本を出してもらった。

立派な皮の表紙は、作者のみに許された特別な本であった。

本の出来た過程かていを思い出し優しく1度本をると、侯爵に差し出しながら言った。

「私の心が、一番醜い時期に書かれた本です。
きっと読むにはあたいしないでしょう。
ですが、率直な感想をお聞かせ下さいませ。
どうか、宜しくお願いします」

「真実の愛を求めて」の感想を、初めて知りたいと心の底から思った。

今までは他人が、どう感じたかなんて怖くて聞けなかった。
彼女自身、逃げていたのだ。
あの婚約破棄騒動から。

侯爵はグレースから本を受けとると、1番後ろのページを躊躇ためらいもなく開く。

エテルネルでは1番の大手出版社での発行で、シリアル番号は0だった。

これは作家のみに与えられた、名誉の特別な番号。

「あぁ、疑ってすまない。
本当に君が書いたんだね。
作家名はシャロンか。
グレース嬢とは思えん作家名だね?!」

侯爵は独り言の様に本を持ちグレースに向かって話すと、彼女は突然笑いながら作家名の説明をした。

「フフフ、その名は私の婚約者を奪った令嬢の名前ですわ。
この本をもし目にして、彼女が私を思い出してくれないかと付けましたの。
意地悪いじわるい女でしょう?!
本当に最低な自分でしたわ。
この時の私は…」

グレースの告白は、この部屋にいる全員が驚愕きょうがくした。

1人で自虐的じぎゃくてきに笑う彼女は、まるで悪女のような表情と笑い声を一瞬だけする。

ここにいる者はグレースの心の闇を、ほんの少しだけ垣間見かいまみた気持ちになっていた。

「あの、私は独りで後を追いますので皆様で旅立って下さい」

グレースは侯爵夫人に申し訳ないと、頭を下げつつそうして欲しいと頼んだ。

「何を言うのよ、グレース!
私は貴女と話しながら旅をしたいのよ。
ジョセフィーヌ様のエテルネルの暮らしを、詳細に聞きたいわ。
お願いよ、そうさせてね」

私も侯爵夫人に王妃様の指輪を見せて、これをどうしたらいいのか。
夫人に全てを話して、助言をして欲しいと考えていた。
二人きりなら、話し出す機会がある。
この機会を最大限かさないと、勿体もったいない。

「では、お言葉に甘えさせて頂きます。
侯爵様、カルロス様、ベアトリス様。
侯爵夫人を少しだけお借り致します。
直ぐにでもお返し致しますね」

グレースが風邪の熱のせいか、恥ずかしさからなのか。
真っ赤にした顔で、侯爵家族にお願いをする姿は可愛らしく見えて仕方なかった。

「ハハハ、家内は本の代わりだな。
グレース嬢、本を貸してくれて有難う。楽しんで読ませてもらうぞ」

エーレンタール侯爵は「真実の愛を求めて」の本を大事そうに持つと、笑って彼女に明るく話して安心させた。

あわてなくていい、体が一番大切だからね。
母上、グレース嬢に無理をさせないで下さい」

「へぇ~、珍しいことね。
お兄様が女性に関心を示して、お優しい言葉をかけるなんて」

茶化ちゃかす妹の頭を軽く小突いて、カルロスは赤らんだ顔をするとベアトリスに何か文句を言っていた。

早く体調を戻して出発できるようにしなくてはと、グレースは笑いながら心の中で誓うのであった。
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