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第3章 カルロスの婚約者
第7話 離れし家族
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エーレンタール侯爵の治める領地の本宅では、グレースと夫人のアデラ二人になってしまった。
風邪の熱がひきベッドから起き上がり歩けるようになると、グレースは夫人を残したことを後悔する。
世話をしてくれていたメイド長メリッサに、今までの礼を伝えていた。
「メリッサさん。
何日も、看病をして下さって有難うございます」
何度も頭を下げられ、礼を言う彼女の態度に飽き飽きしていた。
メリッサは、彼女の生まれ持っての性分だろうと苦笑するのだ。
「もうじき、侯爵様たちは王都のタウンハウスに着く頃ですよ」
やっぱり上位貴族だけあって、王都に屋敷をお持ちだったのね。
私のような貧乏貴族には、王都に屋敷なんて夢でしかない。
「このお屋敷でも立派ですのに、王都の屋敷も素晴らしいのでしょうね」
まだ見てはないが本宅に住んでみて、大体は予想できる。
「ふふ、それはそうですよ。
エーレンタール侯爵は、公爵に近いお家柄と言わせてますからね」
雇われている誇りなのか、メイド長として自慢げに笑みを浮かべ話す。
「そんな立派な家系とは。
ご厄介になっていて、迷惑じゃないかしら?」
グレースの小さな声は、メリッサには最後の方は耳に聞こえては来なかった。
「ここだけの話ですが、トレド伯爵令嬢とカルロス様とは相性がお悪いと思っております」
伯爵令嬢だから、もっと身分の高い方をカルロス様にと考えているのだろうか。
「グレース嬢は、身分の高い方を想像していたのかしら?ふふふ」
メリッサは笑ってクローゼットからドレスを用意して、図星の言葉を投げかける。
「メリッサさん、違うんですか?!
カルロス様なら公爵でも同じ侯爵のご令嬢でも、引く手あまたなのではないでしょうか?」
長年お側に仕えていた彼女なら、母親のような気持ちで接していたのではと話しを聞いていて思う。
「カルロス様は、女性に対して淡泊なのです。
婚約も祖先同士の約束だからと、なんも違和感なく婚約したのですよ」
「普通ですわ。
婚約者がいても、浮気する人もいますしね」
そう、私みたいにー。
「お年頃ですし、容姿も悪くないのに。
私には、不思議で仕方ありません」
元婚約者とは家の領地が隣で、支援して貰っていた。
幼なじみだから、そのまま婚姻できる。
危機感なく過ごしていたら、あっさり浮気されて捨てられてしまったわ。
昔の嫌なことを思い出してしまった。
「ドレスに着替えて、アデラ様が席にお着きになる前に行きませんと」
「はい、そうですね。
どのドレスを着たら宜しいでしょうか?」
メリッサにドレスのアドバイスを頂きながら、先程の話を聞きまた婚約破棄を思い出す。
そんな自分が、卑屈すぎると思う。
考える度にあの時の、あの人たちの私をあぜ蹴り笑う声が聞こえてきそうだ。
侯爵夫人は、独り本宅に留まってからはグレースと食事するのが多くなった。
「それでは、お早く王都へ。
皆様に、アデラ様のお元気なお姿をお見せしなくては!」
年下の彼女は明るく、年と身分が上の貴婦人にそう持ちかけた。
「えぇ、そうね。
貴女がそう言ってくれて助かるわ。
正直に話すと、家族たちを気になっていたのよ」
「母として妻として、当然ですわ。
仲のよろしい御一家ですもの。
私も皆様に早くお会いしたいです」
寝込んだせいで、家族を離れ離れにさせてしまったのだから。
「気にかけてくれて、感謝するわ。グレース嬢」
にこやかに両名が笑うと、数日後に王都に向けて旅立つ。
その旅は、もう一人の彼女を呼び起こす旅でもあったのだ。
妻アデラとグレース嬢が、王都に向かったとの知らせが侯爵家に連絡が入ってきた。
午前中に仕事を済ませ、真実の愛を求めての最後の場面を読み終える。
自然と涙が溢れ文字が読みにくかったが、指でそれを払うと読みきることがやっと出来た。
人の親として娘がこんな事態になったら、娘ベアトリスの顔が頭をよぎる。
カルロスとベアトリスは、父に学園からの帰宅の挨拶をしに居間に入ってきた。
父は椅子に座って、窓の外の空に顔を向けている。
グレースの本を膝に置き、子供の頭を優しく撫でるような姿。
子供らは、そんな父を目にして声をかけにくくなる。
「学園から帰ってきたのだな」
話しかける声には、どこと無しに憂いがあった。
父は泣いていたのだと、側に行って目を見て気づく。
泣いた姿を初めて見た子供らは、どうしたらいいのか立ちすくむ。
「た…、ただいま帰りました。父上」
カルロスが兄として先に挨拶をすると、ベアトリスも後に続く。
2人に座るようにと言い渡すと、ベルを鳴らしメイドにお茶を用意するように頼んだ。
「これを読み終えた。
久し振りに泣いたよ。
いい意味で裏切られた。
そんな…、作品だ」
「父上がそう伝えたら、グレース嬢は喜ぶでしょう」
息子は、泣いたあとが残る瞳をあえて見ずに返事を返した。
「彼女は醜い心で書いたと私に言ったが、私はそうは思わない」
父は本の感想を、内容を知らせない程度に話してくれる。
「お父様、グレースの本はそんなに素晴らしかったの?」
グレースに接するうちに、彼女の人柄を愛するようになっていた。
「ベアトリス、君がこの本を読んで何を感じるか。
私は幸せとは、何かと感じたよ。
何より愛の重みもね」
意味深な言い方をされて、ベアトリスはどう返事していいのか首を傾げる。
三人は彼女が書いた本の表紙に、同時に自然と視線を合わせていた。
風邪の熱がひきベッドから起き上がり歩けるようになると、グレースは夫人を残したことを後悔する。
世話をしてくれていたメイド長メリッサに、今までの礼を伝えていた。
「メリッサさん。
何日も、看病をして下さって有難うございます」
何度も頭を下げられ、礼を言う彼女の態度に飽き飽きしていた。
メリッサは、彼女の生まれ持っての性分だろうと苦笑するのだ。
「もうじき、侯爵様たちは王都のタウンハウスに着く頃ですよ」
やっぱり上位貴族だけあって、王都に屋敷をお持ちだったのね。
私のような貧乏貴族には、王都に屋敷なんて夢でしかない。
「このお屋敷でも立派ですのに、王都の屋敷も素晴らしいのでしょうね」
まだ見てはないが本宅に住んでみて、大体は予想できる。
「ふふ、それはそうですよ。
エーレンタール侯爵は、公爵に近いお家柄と言わせてますからね」
雇われている誇りなのか、メイド長として自慢げに笑みを浮かべ話す。
「そんな立派な家系とは。
ご厄介になっていて、迷惑じゃないかしら?」
グレースの小さな声は、メリッサには最後の方は耳に聞こえては来なかった。
「ここだけの話ですが、トレド伯爵令嬢とカルロス様とは相性がお悪いと思っております」
伯爵令嬢だから、もっと身分の高い方をカルロス様にと考えているのだろうか。
「グレース嬢は、身分の高い方を想像していたのかしら?ふふふ」
メリッサは笑ってクローゼットからドレスを用意して、図星の言葉を投げかける。
「メリッサさん、違うんですか?!
カルロス様なら公爵でも同じ侯爵のご令嬢でも、引く手あまたなのではないでしょうか?」
長年お側に仕えていた彼女なら、母親のような気持ちで接していたのではと話しを聞いていて思う。
「カルロス様は、女性に対して淡泊なのです。
婚約も祖先同士の約束だからと、なんも違和感なく婚約したのですよ」
「普通ですわ。
婚約者がいても、浮気する人もいますしね」
そう、私みたいにー。
「お年頃ですし、容姿も悪くないのに。
私には、不思議で仕方ありません」
元婚約者とは家の領地が隣で、支援して貰っていた。
幼なじみだから、そのまま婚姻できる。
危機感なく過ごしていたら、あっさり浮気されて捨てられてしまったわ。
昔の嫌なことを思い出してしまった。
「ドレスに着替えて、アデラ様が席にお着きになる前に行きませんと」
「はい、そうですね。
どのドレスを着たら宜しいでしょうか?」
メリッサにドレスのアドバイスを頂きながら、先程の話を聞きまた婚約破棄を思い出す。
そんな自分が、卑屈すぎると思う。
考える度にあの時の、あの人たちの私をあぜ蹴り笑う声が聞こえてきそうだ。
侯爵夫人は、独り本宅に留まってからはグレースと食事するのが多くなった。
「それでは、お早く王都へ。
皆様に、アデラ様のお元気なお姿をお見せしなくては!」
年下の彼女は明るく、年と身分が上の貴婦人にそう持ちかけた。
「えぇ、そうね。
貴女がそう言ってくれて助かるわ。
正直に話すと、家族たちを気になっていたのよ」
「母として妻として、当然ですわ。
仲のよろしい御一家ですもの。
私も皆様に早くお会いしたいです」
寝込んだせいで、家族を離れ離れにさせてしまったのだから。
「気にかけてくれて、感謝するわ。グレース嬢」
にこやかに両名が笑うと、数日後に王都に向けて旅立つ。
その旅は、もう一人の彼女を呼び起こす旅でもあったのだ。
妻アデラとグレース嬢が、王都に向かったとの知らせが侯爵家に連絡が入ってきた。
午前中に仕事を済ませ、真実の愛を求めての最後の場面を読み終える。
自然と涙が溢れ文字が読みにくかったが、指でそれを払うと読みきることがやっと出来た。
人の親として娘がこんな事態になったら、娘ベアトリスの顔が頭をよぎる。
カルロスとベアトリスは、父に学園からの帰宅の挨拶をしに居間に入ってきた。
父は椅子に座って、窓の外の空に顔を向けている。
グレースの本を膝に置き、子供の頭を優しく撫でるような姿。
子供らは、そんな父を目にして声をかけにくくなる。
「学園から帰ってきたのだな」
話しかける声には、どこと無しに憂いがあった。
父は泣いていたのだと、側に行って目を見て気づく。
泣いた姿を初めて見た子供らは、どうしたらいいのか立ちすくむ。
「た…、ただいま帰りました。父上」
カルロスが兄として先に挨拶をすると、ベアトリスも後に続く。
2人に座るようにと言い渡すと、ベルを鳴らしメイドにお茶を用意するように頼んだ。
「これを読み終えた。
久し振りに泣いたよ。
いい意味で裏切られた。
そんな…、作品だ」
「父上がそう伝えたら、グレース嬢は喜ぶでしょう」
息子は、泣いたあとが残る瞳をあえて見ずに返事を返した。
「彼女は醜い心で書いたと私に言ったが、私はそうは思わない」
父は本の感想を、内容を知らせない程度に話してくれる。
「お父様、グレースの本はそんなに素晴らしかったの?」
グレースに接するうちに、彼女の人柄を愛するようになっていた。
「ベアトリス、君がこの本を読んで何を感じるか。
私は幸せとは、何かと感じたよ。
何より愛の重みもね」
意味深な言い方をされて、ベアトリスはどう返事していいのか首を傾げる。
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