【完結】魔がさし令嬢の国外逃亡は恋の予感

愚者 (フール)

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第3章  カルロスの婚約者

第23話 婚約者への後悔

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 重苦しい空気の中で、夫人のすすり泣く声だけが耳に響く。 
侯爵夫人アデラがグレースにトレド伯爵令嬢カトリーナの話をしていた頃。

場所は違うが、エーレンタール侯爵の2人はカルロスからカトリーナ嬢の牢屋ろうやでの話を聞かされていた。

「お兄様、本当の話ですか?!
そんな破廉恥はれんちなことを行為をしたの。
カトリーナ嬢が…」

一人娘の彼女は、家族とはいえ男性からこの様な話をされて顔を真っ赤にしていた。

「あぁ、私も言葉を失くしたよ。
そして、彼女に自分の気持ちを話さなかった事を後悔こうかいをした。
知らぬ存ぜぬで、無視し続けていたんだからね。
私が…。彼女をそうさせたのかもしれない」

兄は妹に、苦しい胸のうちを語る。
あのときのカトリーナのうらみを込めた目線に、思い返す度に心臓が止まりそうになった。

「お前のせいだけではない!
親である、私たちの責任でもある。
グレース嬢には、心より感謝しなくてはならない。
火傷やけどをさせただけでなく、カトリーナ嬢と向かい合うきっかけをくれたのだからな」

父であるエーレンタール侯爵は、グレースの本を膝に置きしっかり持って言う。
視線を真っ直ぐに見て、息子が元婚約者から逃げないで立ち向かった事はこれで良かったと思った。

「お父様?!
カトリーナ嬢は、これからどうなるのですか?
私はどうしても何故か、彼女を好きではなかったわ。
でも、それでも気になります。彼女の今後をー」

ベアトリスは、兄を裏切り他の男性と関係を持った彼女を許せなかった。
ましてや、グレースにあんな酷い火傷をさせた。
最後まで、謝罪の言葉が一言もなかったこともだ。

「私とアデラの考えは、一致いっちしていた。
おそらくは、修道院しゅうどういんへ行くことになるだろう。
その後は、どうなりどうするかは分からない。
この後、彼女の行い次第だ」

侯爵は同じ年頃の娘を持つ、だから余計に心が痛んだ。

「父上、私はどうしたらいいのでしょうか?
1人の女性を不幸にしてしまった。
どうつぐなえばいいのですか?!」

カルロスは、震える声で目の前の父に懺悔ざんげの言葉を告げるのである。

「一緒に考えよう、カルロス。
忘れろとは言わないが、お前はエーレンタール侯爵の後継あとつぎだ。
それは長男としての義務」

マキシミアン・エーレンタールは、父として侯爵として息子に言い放った。

「はい、父上」と、カルロスはしっかりと返事をする。

「父上、グレース嬢の本は読み終わったんですよね。
私もその本を、読んでいいですか?!
知りたいのです。
婚約破棄をされた女性の心情を。
カトリーナ嬢の思いを、少しは理解し分かるかもしれない」

どんな思いが書いてあるのか。
破棄をされた女性の考えは、男性とは違うはずだ。
した方とされた方では、意味あいは真逆だと想像は出来る。

「お兄様、グレースとカトリーナ嬢は違う人間よ?!
一緒にしないで下さいまし」

ベアトリスは、隣に座る兄カルロスを怒鳴りつけた。
兄がグレースを、侮辱ぶじょくしたと感じたのだ。

「ベアトリス待ちなさい。
カルロスの後で、お前も読んでみなさい」

兄を怒っていた彼女は、父の誘いに驚きはしたが本には興味はずっとあった。

「何故、エテルネルで婚約破棄が流行はやったのか。
その為に絶版ぜっぱんになったのかは、全てこの本を読めば分かると私は思う。
破棄された女性たちの想いを、この本に込めたのだから」

子供たちは、父の話でグレースの本は自分らの思った内容より深い物語だと感じ取る。

侯爵家の人たちは、カトリーナとグレース。
婚約破棄をされた女性たちを、各自が思い考えさせられた。

    
    王都の学園ではカルロスが、学園の令嬢たちから注目のまとになるのは決定だった。
見栄みばえも良く、ザイールの侯爵家で由緒ゆいしょ正しき名門の後継者こうけいしゃ

「エーレンタール侯爵令息とトレド伯爵令嬢が、婚約を取りやめたそうよ」

「彼女、何をしたのかしらね?
素行そこうは悪かったし、時間の問題だったわ」

「私内緒にしてたけど、カルロス様を以前からおしたいしていたの。
これはチャンスだよね」

令嬢たちは、二人の婚約破棄をコソコソ話題にした。
一部だがどこかられたのか、すでに噂話は広がりを見せ始めていた。

婚約破棄したからには、令嬢たちが目の色を変えてねらってくるに違いない。

彼が誰と婚姻するのか。
それはまだ、誰になるのかは予想できない段階。

そんな現状で読むグレースの書いた「真実の愛を求めて」が、彼に何をどうもたらしてくれるのかー。




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