【完結】魔がさし令嬢の国外逃亡は恋の予感

愚者 (フール)

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第4章  真実の愛を求めて

第6話 侯爵夫人の願い

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  倒れてから数日が過ぎ、体調が戻ったグレースはベアトリスの家庭教師をしていた。
勉強を教えてくれているグレースに、本の主人公が重なって見えて仕方がない様子。

グレースはこのとき、侯爵のみが本を読んでいると信じていた。
まさか、侯爵一家全員で回し読みされていたとは思ってもなかったのである。

  エーレンタール侯爵マキシミアンは、マロー子爵の手紙の返事を待っていた。
だが、元婚約者の伯爵領の橋が壊れたために使者がかなり遠回りになってしまう。
それに、カトリーナ嬢の噂をあれから耳にしない。
侯爵は、それも気になり始めていた。

「何か良くないことが、起こらないと良いが…」

 ベアトリスは学園の休みの週末に、読み終わる予定にした。
父や兄が、泣いた程の物語だ。
実際にすでに毎回泣きすぎて、次の日学園に通う時は下を向いて顔を見せないようにしている始末しまつだった。

「ほんと!グレースったら罪深いお人よね!」と、ベアトリスは机に置いてある本を眺めて苦笑をする。

本を開くと、主人公の令嬢が主である伯爵令嬢との別れの場面。
仕えていた伯爵令嬢は、王子の妃になり王宮へ。
辛いときに励まし合った二人。

「お願いよ!
私と一緒に、王宮へ来てはくれないかしら?!」

伯爵令嬢は頼むが、母と家をそのままに離れることは出来ない。

「お嬢様、遠く離れていても幸せを願っております。
私の様な者に、親切にして下さり感謝してます!」

彼女は後ろ髪を引かれつつ、自身の故郷に帰ることになった。

帰った領地の当主である父に、娘は願いを言ってくる。

「父上、母上が良くなりましたら…。
どうか!私を領地の何処でも構いませんから、小さな畑と家を頂けますか?!」

父は娘の話す内容に驚愕きょうがくする。
これから婚姻こんいんもせずに、この屋敷を独り出て暮らすと言うのか?!
黙って下を向く当主である父に、ハッキリと決心する言葉を口に出したのだ。 

「私は平民になり、この領地で暮らしてみようと思っております。
もし弟が誰かとこの家を継ぐ際は、私は肩身かたみせまい思いをしたくないのです」

「平民にならなくても、隠居いんきょしたら私たちと暮らせば良いのではないか?
それまでは、この屋敷にいなさい。
お前は、さんざん家の犠牲になっている。
父として、お前には顔向け出来ない!」

父は親でもあるのに頭を下げながら、私に謝ってくる。
あぁ、婚約破棄をされた。
あの頃を、みじめな自分を思い出す主人公。

本を読んでた彼女は、テーブルの上に飾られた花瓶に刺された赤い薔薇ばらをふと見てとつぶやいた。

「私なら、どうするのかしら?
平民になるなんて考えもしないわ。
もし、平民になったら私は生きていけるの?!」

ベアトリスはそんな事を思って、また続きを読み始める。

「気にしないで、父上。私は何のしがらみもなく、自由に生きたいのです。
贅沢ぜいたくと言えば、私の誕生日の年1回でいいのです。
父上たちに、会いに来ても宜しいですか?!」

父は嗚咽おえつをし、何度も考え直すように私の両肩に手を置きながら説得してきた。

それから、半年が過ぎ。
やっと領地に春の気配を感じる頃に、私は1軒の少し古びた独りでは広い家と近くに畑をいただけた。  
弟も同じ子爵令嬢と婚約し、母も体調が安定したので家を出ることに決めた。

「貴族籍からは外さない。
疲れたら、いつでも戻って来なさい。
近くには領民で信頼出来る人がいる。
お前の事を頼んであるから…。
グリシーヌ、不甲斐ふがいないない父を許せ」

ベアトリスは、最後にこの令嬢の名を字を見て分かった。

なぜなら令嬢とか、貴女としか呼ばれて無かったからだ。
仕えていた令嬢すら、不思議なことに名を出さないで呼ばれる設定せっていになっていた。
 
「グリシーヌとグレースは、同じなのね。
グレースは、平民になりたいの?
本音は修道院でなくて、貴族の世界から消えたいの…」

ベアトリスは、グレースの奥底にある思いをまだ知らずにいた。

 その時、侯爵夫人アデラは息子カルロスとお茶を飲んでいた。

「カルロス。
婚約破棄したばかりで人の視線を感じますが、今度の夜会にグレース嬢をパートナーとして参加しない?」

「グレース嬢と、ですか?」

母の言葉に、息子が驚きの表情を見せた。

「あなた達だけではないわ。
私たち夫婦に、ベアトリスと婚約者である公爵令息も一緒よ」

「グレース嬢は前に夜会にでましたが、あんな気まずい思いをさせた。
今度こそ、彼女から断りそうですよ。母上」

「私はねぇ、カルロス。
彼女に華やかな、心躍る楽しい経験をさせてあげたいのよ。
私に、協力しなさい!」

「言われてみれば、あんなにダンスを練習して踊らなかったですしね」

グレースと一緒に踊った、ワルツを思い出す。

「貴方だって、また社交をして相手を探さなくてはいけない。
侯爵を継ぐものが、いつまでも独身では困るでしょう?!」

息子は母には逆らえず、承諾しょうだくの意思をしめした。

まだこの時は夜会で人生を左右することが起こるとは、カルロスは思ってはなかったのである。
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