【完結】魔がさし令嬢の国外逃亡は恋の予感

愚者 (フール)

文字の大きさ
121 / 124
第5章  永遠の愛をあなたに

第26話 偶然か必然か

しおりを挟む
 感動的な王妃と子爵令嬢の交流の最中さなかの途中、今度は国王が席を立ち話をし始めた。

「今宵、ここにつどった者たちよ。
がー、これから話す言葉をよく聞くがよいぞ。
ここにおる、マロー子爵を見知っておる者もおろう。
長年領地の水害に、苦酸くさんめていておった」

領地の水はけの悪さは貴族の内々では有名であり、口々にあの領地でなくて良かったと語られるほど。
口を一文字に結び、苦悶くもんの表情を浮かべる。
マロー子爵の親しき友人たちも、陛下の話に賛同し頷きそうになった。

「神が天から見て、それを不憫ふびんに思われたのだろう。
それも苦しみを与えていた川から、砂金が発見され出土した。
この結果から、領地の山の地層に金脈があるそうだ。
苦難に耐えてこそ、与えられた幸運だと感じ入っておる。
これからも、マロー領を頼んだぞ!
マロー伯爵」

グレースの父は、片膝をつき頭を深く下げ話を伺っていた。 
その姿勢のままに、臣下としてお礼を述べるのである。

「陛下、身に余るお言葉にー。どう返してよいのか、言葉も見つかりません。
陛下の慈悲深いお心が、天の神に届いたのでございましょう。
マロー子爵は、これからも陛下からたまわってた土地を大切にしていく所存しょぞんございます」

陛下は子爵と伯爵をいい間違えたのだろう。
さり気なく、やんわり聞こえるようにと訂正をする。

「余は、ここで宣言する。
災害に挫けず、負けることなく。
そして領民を思い遣り、実直に統治している。
マロー子爵から、マロー伯爵へとじょする事にした。
今日この時から、伯爵と名乗るのを許そう」

驚きで顔を上げてしまうマロー子爵と夫人は、今までの苦労がよみがえるのか涙で顔をらす。

また一段と拍手と歓声が沸き起こり、会場には温かな空気が充満していた。

 グレースたちは大勢の方々から、祝福と賛辞が次々に声をかけられている。
ひときわ注目を浴びているのは、子爵から伯爵に突然に叙せられた父マロー伯爵と母の夫人。

「カルロス様。両親があれ程に喜びを表したのは、私が知る限り生まれて初めて見ましたわ。 
私も王妃様にお会いできただけでなく、皆様の前で祝福と励ましのお言葉まで頂きました。 
それに、この指輪まで…。
これは王妃様にとっては、大切な想い出のお品ですのにー。
幸せすぎて、怖いぐらいです」

とても後悔をしていた、あの場では拒否は難しい状況。
またしても、グレースは困ることになり悩んでしまう。

「王妃様は君に指輪を与える事で、お気持ちに区切りを付けたんだと思う。
贈られたアルバ公爵も、この話を知ったら同じ思いになる筈だよ」

「アルバ公爵は指輪を与えられて、ご不快にならないかしら?!
公爵様の愛が込められたお品でしょう?
同性のカルロス様がそうお思いになるなら、そうかも知れないわ」

そんな彼女の肩を抱くカルロスは、先程から嫌な視線を感じて気にしていた。
その視線は温かいものではなく、刺すような冷やかなものである。

「グレース嬢、勘違いならいいのだが…。
嫌な感じがする、視線を受けているようだ。
他国の私とは思えない、貴女だと思う。
何か、心当たりはないか!?」

「えっ、私にですか?
この様な場所は、勤めていた時しか思い当たりません。
もしかしたら、仲の良かったメイドたちが居て私を見てるのかしら?」

愛しい人の気になる発言に、気を集中して周辺を見渡してみた。
そこには学生時代の元婚約者だった男と、彼を自分から奪った彼女。

「あっ…、元婚約者とその…。
婚約破棄になった、原因の伯爵令嬢です。
こんな場所で再会するなんて」

不安で押しつぶされそうな声で、彼に正直に話すグレース。

「気にするな。
やましいのは、アチラではないか。
クラレンス公爵夫人のお言葉ではないが、堂々としていれば良い。
君には、私が側に居るよ。
身分では、私が上であるから安心して欲しい」

カルロスは「真実の愛を求めて」で、彼がグレースに放った失礼な言葉の数々を読み知っていた。
多少は着色していても、根本的な内容はそうは変わらない。

許しはしない!
愛する女性を、どん底に突き落として笑いものにしたのだ。

「もう一生会うことがないと、あんな馬鹿な本を書きました。
きっと、あの本を読んでいるわ。
作家名に、彼女の名なんて付けるんではなかった。
あ…、絶望的な気分よ」

彼女の体から、かすかに震えているのが伝わる。

守るようにグレースの細い腰に手をまわして自分に引き寄せた。
何人かの人をはさんで怒りを含んだ目線をした男女を、彼は良くよく眺めて再確認する。

「あれが、「真実の愛を求めて」の書かれた最大の要因か」

考えていた思いを、グレースに聞こえないくらいの小さな声で冷たくつぶく。
普段の温厚なカルロスが鳴りを潜めて、彼らとの対峙を覚悟しているようだった。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

リトライさせていただきます!〜死に戻り令嬢はイケメン神様とタッグを組んで人生をやり直す事にした。今度こそ幸せになります!!〜

ゆずき
恋愛
公爵家の御令嬢クレハは、18歳の誕生日に何者かに殺害されてしまう。そんなクレハを救ったのは、神を自称する青年(長身イケメン)だった。 イケメン神様の力で10年前の世界に戻されてしまったクレハ。そこから運命の軌道修正を図る。犯人を返り討ちにできるくらい、強くなればいいじゃないか!! そう思ったクレハは、神様からは魔法を、クレハに一目惚れした王太子からは武術の手ほどきを受ける。クレハの強化トレーニングが始まった。 8歳の子供の姿に戻ってしまった少女と、お人好しな神様。そんな2人が主人公の異世界恋愛ファンタジー小説です。 ※メインではありませんが、ストーリーにBL的要素が含まれます。少しでもそのような描写が苦手な方はご注意下さい。

毒姫ライラは今日も生きている

木崎優
恋愛
エイシュケル王国第二王女ライラ。 だけど私をそう呼ぶ人はいない。毒姫ライラ、それは私を示す名だ。 ひっそりと森で暮らす私はこの国において毒にも等しく、王女として扱われることはなかった。 そんな私に、十六歳にして初めて、王女としての役割が与えられた。 それは、王様が愛するお姫様の代わりに、暴君と呼ばれる皇帝に嫁ぐこと。 「これは王命だ。王女としての責務を果たせ」 暴君のもとに愛しいお姫様を嫁がせたくない王様。 「どうしてもいやだったら、代わってあげるわ」 暴君のもとに嫁ぎたいお姫様。 「お前を妃に迎える気はない」 そして私を認めない暴君。 三者三様の彼らのもとで私がするべきことは一つだけ。 「頑張って死んでまいります!」 ――そのはずが、何故だか死ぬ気配がありません。

3回目の人生は、悪役令嬢を辞めて引きこもります~一歩も出ずに国を救ったら、なぜか「聖女」として崇められ最強の男たちが部屋を包囲してくる件~

放浪人
恋愛
公爵令嬢エリザベートは、1度目は悪役令嬢として断罪され処刑、2度目は改心して聖女となり国に尽くしたが過労死……という悲惨な最期を遂げた。 記憶を持ったまま3度目の人生が始まった瞬間、彼女は固く決意する。 「もう絶対に働きません! 今世は部屋から一歩も出ず、睡眠と趣味に命をかけます!」 最強の拒絶結界『絶対領域』で部屋に籠城し、婚約破棄イベントも夜会も全て無視して惰眠を貪ろうとするエリザベート。 しかし、彼女の「働きたくない」一心からの行動――適当な農業アドバイスや、安眠妨害への容赦ない迎撃――が、周囲には「国を憂う深慮遠謀」「慈愛に満ちた奇跡」として超好意的に解釈されてしまう!? ヤンデレ化した元婚約者の王太子、物理で愛を語る脳筋騎士団長、効率厨の隣国王子、さらには古代の引きこもり少年までをも巻き込み、事態は国家規模の大騒動へ。 部屋ごと空を飛んで戦場を浄化し、パジャマ姿で古代兵器を操り、地下牢をスイートルームに変えながら、エリザベートは究極の安眠を手に入れることができるのか? 塩対応すればするほど愛され、逃げれば逃げるほど伝説になる、最強引きこもり令嬢の勘違いドタバタ溺愛ファンタジー、ここに完結!

魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました

iru
恋愛
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。 両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。 両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。 しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。 魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。 自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。 一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。 初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。 恋人になりたいが、年上で雇い主。 もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。 そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。 そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。 レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか? 両片思いのすれ違いのお話です。

【完結】公爵令嬢は勇者への恩返しを試みる〜サブヒロインとして頑張ります〜

マロン株式
恋愛
 公爵令嬢ユウフェには、ひとつだけ秘密がある。  ――この世界が“小説の中”だと知っていること。  ユウフェはただの“サブヒロイン”で、物語の結末では魔王のもとへ嫁ぐ運命にある……はずだった。 けれどーー  勇者の仲間、聖女、そして魔王が現れ、〝物語どおり〟には進まない恋の三角関係(いや、四角関係?)が動き出す。  サブヒロインの恩返しから始まる、ほのぼの甘くて、少し切ない恋愛ファンタジー。 ◇◇◇ ※注意事項※ ・序盤ほのぼのめ ・勇者 ✖ サブヒロイン ✖ 魔王 ✖ 巫女(?)の恋愛模様 ・基本はザマァなし ・過去作のため、気になる部分あればすみません ・他サイトと並行改稿中のため、内容に差異が出る可能性があります ・設定ゆるめ ・恋愛 × ファンタジー

愛する人は、貴方だけ

月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
下町で暮らすケイトは母と二人暮らし。ところが母は病に倒れ、ついに亡くなってしまう。亡くなる直前に母はケイトの父親がアークライト公爵だと告白した。 天涯孤独になったケイトの元にアークライト公爵家から使者がやって来て、ケイトは公爵家に引き取られた。 公爵家には三歳年上のブライアンがいた。跡継ぎがいないため遠縁から引き取られたというブライアン。彼はケイトに冷たい態度を取る。 平民上がりゆえに令嬢たちからは無視されているがケイトは気にしない。最初は冷たかったブライアン、第二王子アーサー、公爵令嬢ミレーヌ、幼馴染カイルとの交友を深めていく。 やがて戦争の足音が聞こえ、若者の青春を奪っていく。ケイトも無関係ではいられなかった……。

【完結】アラサー喪女が転生したら悪役令嬢だった件。断罪からはじまる悪役令嬢は、回避不能なヤンデレ様に溺愛を確約されても困ります!

美杉日和。(旧美杉。)
恋愛
『ルド様……あなたが愛した人は私ですか? それともこの体のアーシエなのですか?』  そんな風に簡単に聞くことが出来たら、どれだけ良かっただろう。  目が覚めた瞬間、私は今置かれた現状に絶望した。  なにせ牢屋に繋がれた金髪縦ロールの令嬢になっていたのだから。  元々は社畜で喪女。挙句にオタクで、恋をすることもないままの死亡エンドだったようで、この世界に転生をしてきてしあったらしい。  ただまったく転生前のこの令嬢の記憶がなく、ただ状況から断罪シーンと私は推測した。  いきなり生き返って死亡エンドはないでしょう。さすがにこれは神様恨みますとばかりに、私はその場で断罪を行おうとする王太子ルドと対峙する。  なんとしても回避したい。そう思い行動をした私は、なぜか回避するどころか王太子であるルドとのヤンデレルートに突入してしまう。  このままヤンデレルートでの死亡エンドなんて絶対に嫌だ。なんとしても、ヤンデレルートを溺愛ルートへ移行させようと模索する。  悪役令嬢は誰なのか。私は誰なのか。  ルドの溺愛が加速するごとに、彼の愛する人が本当は誰なのかと、だんだん苦しくなっていく――

処理中です...