【完結】魔がさし令嬢の国外逃亡は恋の予感

愚者 (フール)

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第5章  永遠の愛をあなたに

第10話 訃報と招待状

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  穏やかな日々を送り、現在は隣国ザィールでグレースは暮らしていた。
水面下では、エテルネルの実家のマロー子爵家とエーレンタール侯爵家の間でやり取りの手紙が行き来している。
彼女は律儀りちぎにも、逃亡生活の間は祖国の家族とは関わらないようにしてきた。

しかし、それを無視する凶報が彼女にもたらされてしまう。

あの朝霧あさぎりの別れをした女官長オリヴィアの訃報ふほうを、実家の父の手紙で知ることになる。

「カルロス様…。
私は、大切な方を亡くしてしまったわ。
彼女との約束を守ることが、永遠にできなくなりました」

表情は魂が抜けたように見え、あっさりと冷静に話す。
だが、彼女の持つ手紙はわずかに震えていた。

「グレース、必ず彼女に会いに行こう。
肉体はないが、心は魂はきっとそこにとどまっているよ」

そことはオリヴィア様の眠っている墓標ぼひょうだろうと、グレースは余りにも早い突然の別れに今の現状をなげく。
すっかり落ち込む彼女を、カルロスが側にいて支え続けていた。

  そんな最中さなかに、一通の手紙がグレースの元に届けられる。

「グレース、アンタ宛に手紙があるよ!
私たちの中にまぎれて混んでいた、これだよ!」

一番仲の良いメイド仲間が渡した手紙を見て、その名にグレースは目を輝かした。

「マノン様だわ!
私がこの屋敷に滞在してるのを、ドロシーさんからうかがったのかしら?」

中身を見ると、手紙とチケット二枚が入っていた。

「最後の舞台をに来て下さい。
貴女の素敵な方とー。
素敵な方、カルロス様は一緒に観につき合ってくれるかしら?二週間後の千秋楽せんしゅうらく
あぁ、マノン様にお礼と感想をじかにお伝えしたいわ」

チケットを持って彼女は、カルロスが次期当主として習って働く書斎にお茶を持って向かう。
 
お茶の休憩時間には、いつも何故か家族全員が集まっていた。
グレースのお茶を一家で堪能たんのうするのが、最近の侯爵家の日課になってしまっていたのだ。

(どうしよう、やっぱり今日も全員揃っていらっしゃる。忙しくしている彼には、早く知らせておかないと予定を組まれてしまう)

頭の中で必死にかける言葉を探す彼女に、ベアトリスがいつも一番に話しかける。

「グレース、今日はどんなお茶を出してくれるの?
王宮で出されていた紅茶を飲めるなんて、王族にでもなった気分よ!」

お茶と家族との時間を大切にする一家は、そんな冗談を言う一人娘をいましめる視線をしていた。

「今日はディンブラ紅茶です。セイロンの五大紅茶のひとつです。
そのままでもミルクを入れてもいいですし、しっかりした香りと渋みが味わえますよ」

説明しながらも手際よく、紅茶を手渡していく。

「あの、カルロス様。
私と演劇を観に行きませんか?!」

唐突とうとつな誘い文句に誰もが驚き、紅茶をこぼしそうになるのをえていた。

「あらあら、良かったわね!
カルロス、貴方からお誘いするのが本来ほんらいすじですよ。
グレースからしてうなんて、この子はそういう事にうとくてごめんなさいね」

母であるアデラは謝りながら、紅茶のカップの受け皿を静かにテーブルに置く。

「違うんです!
タイラー父様の知り合いの仮面の館のドロシーさんに会いに行った時に、偶然に会われた方から招待状を頂いたのです!」

「ほう、どなたから頂いたんだい。グレース嬢」

当主マキシミアンが、興味深げに質問をしてきた。
カルロスは自分の話なのに、彼女と話せないのが面白おもしくないのか紅茶を飲んでいる。

「大女優のマノン様です。
光り輝くように美しく、素敵な女性でした。
私もあのような美女だったらと、ひと目見てうらやましくなりましたわ」

思い出すかのように頬を赤らめて、瞳をキラキラさせ話し出していた。

「マノン様ですの!
凄いですわ!
あの方を間近で見て、お話も出来たなんてー。
社交界でもマノン様は、なかなかお会いしませんのよ」

ベアトリスは、羨望せんぼう眼差まなざししで興奮してはグレースに伝えた。

「まぁ、そんな有名人でしたの。
知らないと言ったら、ドロシーさんからしかられました」

「そりゃあ、彼女に心酔しんすいしている人はたくさんいる。
ザィールの王族方も、その中に入るほどだよ」

カルロスは、やっとグレースに話が出来たと心の中で喜んだ。

「心酔ですか…。
それも王族たちが…。
私、そんなお方にあんな恥ずかしい話をペラペラとしゃべってたんですか」

最近の出来事なのに、遠い昔に感じるのは何故?

「ねぇ、マノン様はご結婚されるから女優をやめるのよね。
今度の舞台は特別なの。
私も行きたくて、チケットを婚約者に頼んでいるのよ!」

社交界で話題になっているのか、目をキラキラ光らせて話している。
いいなぁ~を連発させて彼女は、グレースたちの仲の良さにに喜びを感じてた。

「ベアトリス様も、お芝居に行く予定でしたのね。
えーっと、千秋楽のボックス席です。
これは、カルロス様の分ですわ」

彼に手渡すとチケットを確認し、お礼を言い返事をする。

「有難う、必ず行こう!
それに同伴者もいるよ。
私の勘だと、ドロシーさんも一緒だと思う」

カルロス様が考察こうさつの内容を話されて、聞いていてどうして招待されたか理解した。
あの時、マノン様はドロシーさんに最後の舞台の招待するのを伝えに行かれていたんだ。

偶然とはいえ、私も彼女の最後の舞台を観れるなんて!
光栄だわ!
神に感謝したい気持ちだと、グレースは天井を見上げていた。
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