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第5章 永遠の愛をあなたに
第11話 観劇は社交の一部です
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部屋の中は、色とりどりのドレスで埋め尽くされていた。
馬車二台分の服を持参して、王都でも名が通る店の物であった。
演劇をただ観に行くだけで、どうしてドレスを新しく買うの?
「グレース、なにボーッとしているの。
そんな暗いお色はダメよ!
せっかく、あのマノン様のお誘いなのよ。
綺麗な、素敵なドレスを着て行かなくてはいけないわ!」
「ですが、アデラ様から前に頂いたドレスを着ていけば良いではありませんか?!」
「はぁ?何を仰ってますか?
本当はオーダーメイドしたいのを、時間がないから諦めて既製品にしたのよ。
せめていい品にしないと、お兄様が恥をかくわ!」
将来義理の姉になるグレースを、皆に知らしめる機会である観劇を成功させる使命感にかられていた。
貧乏生活をしていたせいで、着飾るのは苦手なのよね。
あんなに素晴らしい恋愛小説を書けるのに、これを他人には話せないなんてー!
才能を隠す、これこそ才能の無駄遣いよ!!
「ベアトリス様。
どうせ劇場では、入る時と出る時しか人に見られませんよ。
誰も知り合いはおりませんし、見られても一瞬ですわ」
娘より手厳しい母アデラが我慢できず、グレースに反論して口を出してきた。
「グレース!
ベアトリスの言ってることは、今回は珍しく正しいわ!
貴女は、息子カルロスの婚約者になるのよ。
このエーレンタール侯爵の沽券に関わります。
贅沢でもない、これは立派な社交の一部ですよ!」
社交、演劇を観に行くのも社交になるのか。
知らなかったし、甘かった。
社交の世界は、実に奥が深い。
グレースは新たな世界に、また一歩足を踏み入れた気がした。
「では、このドレスでは如何ですか?
深緑ですが、落ち着いていて品ございます!」
「それは、黒に近いですよ。
未亡人じゃあるまいし、却下です!
この薔薇色のピンクにしなさい!!」
ド派手なローズピンクのドレスを、勢いよく目の前に突き出された。
「お母様、未成年の令嬢じゃああるまいし!
こちらの薄いピンクにしませんか?!ねっ、グレース!!」
もう目がチカチカして、ドレスなんて何でもいいじゃない?!
ピンクは、ちょっと嫌ですわ。
私は琥珀で栗毛、あぁ~全てが地味すぎる~!
近くにあったオレンジのドレスを鷲掴みすると、グレースは手をたかだかと挙げて叫んだ。
「これにします!
派手でもないし地味でもないです!
どうですか、お二方はこれで納得してくれますよね!!?」
やけくそとはこの状況を言うのだと、ドレスを出していたメイドたちは思う。
「珍しく明るいお色を選んだじゃない!
お母様、このドレスをどう思いますか?!」
「グレース!!
いいじゃないの!
宝石は真珠が似合いそうだし、髪にはオレンジの薔薇を飾りましょう。
誰かー、庭師にオレンジの薔薇を絶対に咲かす様に命じなさい!!」
お願いやめてー、庭師さんはいい人なのよ。
庭師さんが、可哀想そうになるでしょう?!
何で、こんな風になっちゃうの??
職務の休み時間に、お茶を準備する途中で報告をする。
「そうであるか…。
最後は庭師が犠牲になり、やっとドレスが決まったのか。
すまない、グレース。
あの二人は、本当に君が好きなんだよ。
許してやってくれないか?!」
息子がそう謝ると、お茶を飲んでいた父マキシミアンは苦笑して頭を下げていた。
「侯爵様、頭を挙げて下さい。私は、嬉しいのですよ。
こんなに良くして頂き、遠く離れた家族を思い出してしまうほどに」
本心を彼女が包み隠さず正直に話す姿に、カルロスは愛おしさが込み上げてくる。
「グレース!
国外追放の罪を償ったら、私と一緒にご実家に挨拶に行こう。
私も、その前に父上から侯爵としての教えを請うっている。
それまでは、少しでも成長するようにお互いに頑張ろう!」
差し出された手を、掴み握るもうひとつの小さな手。
マキシミアンは若者たちの強さに、年甲斐もなく感動していた。
この家に入婿として入り、最初は他人の目を気にして過ごしていた遠い昔の過去を思い出す。
「そろそろ、休憩はおしまいだ。
カルロス、始めるぞ!」
父親は促す言葉を投げ掛けると、先に隣の部屋へ独りが入っていく。
「頑張って、カルロス様。
私もアデラ様からザィールの貴族の家名を教えて貰っております。
焦らずに一歩一歩、確実に歩んで参りましょう」
彼が無理しないように、カルロスはそんな彼女の包容力を感じていた。
苦労してるだけあって、どっしりと構えているな。
「確実に覚えないとな。
グレースも、他国で大変だけど無理するな。
母はあんなんだから、深く聞かないで聞き流すのも大事だよ」
書斎で待っていた父の侯爵は、会話を盗み聞きして息子が嫁に尻に引かれるのを想像する。
(親子2代で、エーレンタール侯爵は女性の方が強い家系になりそうだなぁ)
違う国の言葉のかかあ天下を思い出して、独りほくそ笑む。
もう少しだけ待つことにしたマキシミアンは、近くのソファに行儀悪く寝転ぶのである。
馬車二台分の服を持参して、王都でも名が通る店の物であった。
演劇をただ観に行くだけで、どうしてドレスを新しく買うの?
「グレース、なにボーッとしているの。
そんな暗いお色はダメよ!
せっかく、あのマノン様のお誘いなのよ。
綺麗な、素敵なドレスを着て行かなくてはいけないわ!」
「ですが、アデラ様から前に頂いたドレスを着ていけば良いではありませんか?!」
「はぁ?何を仰ってますか?
本当はオーダーメイドしたいのを、時間がないから諦めて既製品にしたのよ。
せめていい品にしないと、お兄様が恥をかくわ!」
将来義理の姉になるグレースを、皆に知らしめる機会である観劇を成功させる使命感にかられていた。
貧乏生活をしていたせいで、着飾るのは苦手なのよね。
あんなに素晴らしい恋愛小説を書けるのに、これを他人には話せないなんてー!
才能を隠す、これこそ才能の無駄遣いよ!!
「ベアトリス様。
どうせ劇場では、入る時と出る時しか人に見られませんよ。
誰も知り合いはおりませんし、見られても一瞬ですわ」
娘より手厳しい母アデラが我慢できず、グレースに反論して口を出してきた。
「グレース!
ベアトリスの言ってることは、今回は珍しく正しいわ!
貴女は、息子カルロスの婚約者になるのよ。
このエーレンタール侯爵の沽券に関わります。
贅沢でもない、これは立派な社交の一部ですよ!」
社交、演劇を観に行くのも社交になるのか。
知らなかったし、甘かった。
社交の世界は、実に奥が深い。
グレースは新たな世界に、また一歩足を踏み入れた気がした。
「では、このドレスでは如何ですか?
深緑ですが、落ち着いていて品ございます!」
「それは、黒に近いですよ。
未亡人じゃあるまいし、却下です!
この薔薇色のピンクにしなさい!!」
ド派手なローズピンクのドレスを、勢いよく目の前に突き出された。
「お母様、未成年の令嬢じゃああるまいし!
こちらの薄いピンクにしませんか?!ねっ、グレース!!」
もう目がチカチカして、ドレスなんて何でもいいじゃない?!
ピンクは、ちょっと嫌ですわ。
私は琥珀で栗毛、あぁ~全てが地味すぎる~!
近くにあったオレンジのドレスを鷲掴みすると、グレースは手をたかだかと挙げて叫んだ。
「これにします!
派手でもないし地味でもないです!
どうですか、お二方はこれで納得してくれますよね!!?」
やけくそとはこの状況を言うのだと、ドレスを出していたメイドたちは思う。
「珍しく明るいお色を選んだじゃない!
お母様、このドレスをどう思いますか?!」
「グレース!!
いいじゃないの!
宝石は真珠が似合いそうだし、髪にはオレンジの薔薇を飾りましょう。
誰かー、庭師にオレンジの薔薇を絶対に咲かす様に命じなさい!!」
お願いやめてー、庭師さんはいい人なのよ。
庭師さんが、可哀想そうになるでしょう?!
何で、こんな風になっちゃうの??
職務の休み時間に、お茶を準備する途中で報告をする。
「そうであるか…。
最後は庭師が犠牲になり、やっとドレスが決まったのか。
すまない、グレース。
あの二人は、本当に君が好きなんだよ。
許してやってくれないか?!」
息子がそう謝ると、お茶を飲んでいた父マキシミアンは苦笑して頭を下げていた。
「侯爵様、頭を挙げて下さい。私は、嬉しいのですよ。
こんなに良くして頂き、遠く離れた家族を思い出してしまうほどに」
本心を彼女が包み隠さず正直に話す姿に、カルロスは愛おしさが込み上げてくる。
「グレース!
国外追放の罪を償ったら、私と一緒にご実家に挨拶に行こう。
私も、その前に父上から侯爵としての教えを請うっている。
それまでは、少しでも成長するようにお互いに頑張ろう!」
差し出された手を、掴み握るもうひとつの小さな手。
マキシミアンは若者たちの強さに、年甲斐もなく感動していた。
この家に入婿として入り、最初は他人の目を気にして過ごしていた遠い昔の過去を思い出す。
「そろそろ、休憩はおしまいだ。
カルロス、始めるぞ!」
父親は促す言葉を投げ掛けると、先に隣の部屋へ独りが入っていく。
「頑張って、カルロス様。
私もアデラ様からザィールの貴族の家名を教えて貰っております。
焦らずに一歩一歩、確実に歩んで参りましょう」
彼が無理しないように、カルロスはそんな彼女の包容力を感じていた。
苦労してるだけあって、どっしりと構えているな。
「確実に覚えないとな。
グレースも、他国で大変だけど無理するな。
母はあんなんだから、深く聞かないで聞き流すのも大事だよ」
書斎で待っていた父の侯爵は、会話を盗み聞きして息子が嫁に尻に引かれるのを想像する。
(親子2代で、エーレンタール侯爵は女性の方が強い家系になりそうだなぁ)
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