【完結】無意識 悪役公爵令嬢は成長途中でございます! ーヘイズ留学 暗躍編ー

愚者 (フール)

文字の大きさ
130 / 142
第6章  黒い森の戦い

第22話 枯れ木に花が咲く

しおりを挟む
    寝込んでいると言わせる伯爵夫人との面会に彼女は、お見舞いとして自らお茶を用意している。
誰にその場を聞き出したのか、厨房ちゅうぼうにひょっこり立っていた。
小さな子供が大人に混ざり、チョロチョロしていて目立ってしまう。

「お嬢様が?
ご自分でお茶を淹れるのですか?
私どもが致しますから」

「あらっ、私でもお茶くらいは…。
そう?
ではお湯は沸いているので、ここからお願いできるかしら」

この水を飲ませればいいだけなので、自分より美味しくできる者にたくす。

『本当は祖父母にと長寿ちょうじゅの泉のお水をくみんできたけど、おばあ様の分は夫人に差し出すわ。
帰りの途中に、また泉に水を汲みに行かないといけないわね』

面倒くさいが仕方ないと諦めて、これも人助けのためだと納得していた。
    
   
    マーシャル伯爵夫人は、見知らぬ客人からの手紙を受け取り読み終えていた。
エテルネルから留学しに来ている公爵令嬢の筆跡ひっせきは、見事なヘイズ語で書かれていて文字からは教養高さが見て取れた。
素晴らしい淑女しゅくじょではないかと想像する。

「お客様を迎えるのでドレスに着替えなくては、久しぶりに鏡を見たらこんなにやつれている。
これでは、旦那様から見向きもされなくなるわね」

夫人は、鏡の中の自分に向けて話しているのか。
髪をかしてくれているメイドに、話しているのか分からない態度していた。

「旦那様はお忙しいのですわ。
じきに必ずや、奥さまの所へ参ります」

メイドは明るくそうは言ってくれるが、彼女は子を亡くしてしまった事で夫が外に浮気して女性を囲ったのではないかと疑っていたのである。

『まさか、今から見舞いに来る女性が旦那様のー。
そうよ、留学生がどうしてわざわざ私に会いに来るの!』

夫人は病のせいもあり、精神が不安定になりかかっていのかもしれない。
 
「奥様、お見舞いのお客様が参りました。
部屋の中へ、案内しても宜しいですか?」

メイドの問いかけに、夫人の顔が醜くゆがんで見えた。

「あっ、えぇ…」

扉の向こうにマルクスのー。
開けられし扉の前にいたのはー。

「こ、子供!!
お客様って、この方なの」

せて青白い、如何いかにも繊細そうな女性が凝視ぎょうしして私の顔から目の焦点しょうてんから離そうとしなかった。
もしかして、この人。
私を何かと勘違していたの?

「子供で、年齢は11歳です。
お初にお目にかかります。
エテルネルから来ました、プリムローズ・ド・クラレンスと申します。これから、良しなにお願い致しますわ」

流石さすがは、気位高そうな公爵令嬢。
初対面でも、見下す様なご挨拶に固まる部屋にいる人たち。
しかし、伯爵夫人は自分の出した失礼な言葉のせいで何も言えずにいた。

「お茶とお菓子をお持ちしましたの。
それから、伯爵夫人には大事なお話がございます。
人払ひとばらいをして下さい」

その場に誰も居なくなると彼女は、お茶を注ぎながら体調の具合をうかがう。

「医師は精神の沈みが、体調に関係しているとおおせです。
分かっていますが、亡くした子を思い出すのです」

初めて会っている、それも年端としはもいかない少女に私は何を告げているのか。

「知り合いに、女の子を2歳で亡くした方がおられます。
しばらくは落ち込んだそうですが、今では二人の男子たちの母です。
いつまでも夫人が落ち込んでいるから、ご主人に悪影響を与えたのです」

「最近、あの人は私に会いに来なかった。
もしかしたら、外に女性がいるかもと思う程に…」

夫人に夫マーシャル伯爵とすり替わり、弟君が謀反むほんを起こした内容を告げる。

「そんなー!!
マルクスの弟がしたの!
とても信じられない!」

顔を下にして手でおおい、嘘よ信じられないと何度も同じ言葉を言っては頭を振り続けている。

「現実に起きてしまっているわ。
貴女がいくら信じなくてもね」

現実逃避げんじつとうひしている夫人に、彼女は冷静になるように伝える。

「いつまでも、せって落ち込んでいたからなの。
医者が他国からの知識があったら、私の赤ちゃんが助かっていたかもと言ったのを気にしていたのかしら?
あの人はー」

動揺して一気に顔色が悪くなり、呼吸も荒くなる夫人。
落ち着いてと、プリムローズは背中をさする。

「安心していいわ。
今は地下牢から出て、安静に休まれている。
国王は、伯爵を不問にすると約束してますよ。
貴女は元気になり、心配させた伯爵を今度は支えなくてはなりません」

泣いてばかりの夫人に、お茶を差し出す。

「あの人は、生きてるの?!
マルクスに、夫に会わせてください」

困った方ね、気持ちは分かる。

「命には別状ありません。
伯爵は半月も地下牢に監禁されて、少しだけ体調が悪いわ。
今は静養してます」

「良かった。別邸に居てそんな事になっているとは、全然知りませんでしたわ」

伯爵夫人は、胸に手を置き安堵のため息をつく。

「このお茶は元気を取り戻す、魔法をかけたお茶なのよ。
私は特別な力を持って生まれたの。
この力は、頻繁ひんぱんには使えない。
信じる信じないは、貴女しだいよ」

「魔法のお茶ですって?
あっ、瞳の色がー。
紫から赤ワインの様な色に変わりましたわ!」

夫人は彼女の瞳を見て、これ以上開くのが困難なぐらいに大きな目をして驚く。
そのグレーがかかった青い瞳には、彼女の顔がハッキリと映り込んでいた。

「興奮したり力を使うと、瞳の色が変化するの。
気持ち悪い?
アルゴラではこの瞳を持つ者は、神様みたいな扱いなのよ」

あらしげに光る赤紫の瞳を輝かして、先にカップのふちに口をつけて紅茶を美味しそうに飲む。

その様子をチラッと見て震える手で、夫人もカップを持ち上げて飲み出す。

いつも飲んでいる茶葉だと気付く。
たが、飲んでみると体内からどんどんと熱い何かがあふれる出すよう。
冷え切った体が温かくなり、そしてなまりのような重苦しさから羽が生えた軽さに変化する。

「ウソ?
今までとは、何かが全然違う。
たった、一口のお茶で?!
れ木に花を咲かせた】よう。
貴女は魔法使いか、それとも本当に神様なの?」

自分で話をしていて気がおかしくなったともう一人の自分が問いかける。

『この伯爵夫人って興味深い。 
自分を枯れ木に見立て、私を魔女と言ってくる。
それとも、想像力があり余っているの。
笑いをこらえるのが大変よ。
しかし、泉の水の即効性は凄い』

黙ってひたすら、吹き出しそうになるのをこらえるのが精一杯のプリムローズ。

前に座る肩くらいの銀髪の美少女は、戸惑う態度の伯爵夫人に微笑ほほえむ。
小さな彼女を見て感じているのは、自分よりもはるか歳上の人に感じてしまう。

外からの風がカーテンをらして、部屋の中へ。
二人の所まで風がそよぐ、それは静かな昼下がりの時間であった。
    
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

『婚約破棄された悪役令嬢ですが、嫁ぎ先で“連れ子三人”の母になりました ~三人の「ママ」が聞けるまで、私は絶対に逃げません~』

放浪人
恋愛
「母はいりません」と拒絶された悪役令嬢が、最強の“ママ”になるまでの物語。 「君のような可愛げのない女は、王妃にふさわしくない」 身に覚えのない罪で婚約破棄され、“悪役令嬢”の汚名を着せられたクラリス。 彼女が新たに嫁いだのは、北方の辺境を守る「氷の公爵」ことレオンハルト・フォン・グレイフだった。 冷え切った屋敷で彼女を待っていたのは、無表情な夫と、心に傷を負った三人の連れ子たち。 「僕たちに、母はいりません」 初対面で突きつけられた三つの拒絶。しかし、クラリスは諦めなかった。 「称号はいりません。私が欲しいのは――あなたたち三人の『ママ』になれる日だけです」 得意の生活魔法『灯(ともしび)』で凍えた部屋を温め、『鎮(しずめ)』の歌で夜泣きを癒やし、家政手腕で荒れた食卓を立て直す。 クラリスの献身的な愛情は、頑なだった子供たちの心を解きほぐし、やがて不器用な夫の氷の心さえも熱く溶かしていく。 これは、不遇な悪役令嬢が「最強の母」となり、家族を脅かす元婚約者や魔獣たちを華麗に撃退し、最愛の家族から「ママ」と呼ばれるその日までを綴った物語。

婚約破棄されたので、愛のない契約結婚を選んだはずでした

鍛高譚
恋愛
王太子の婚約者だった伯爵令嬢・カーテンリンゼ。 しかし、王太子エドワルドは突然の婚約破棄を言い渡し、彼女を冷たく突き放す。 ――だが、それは彼女にとってむしろ好都合だった。 「婚約破棄? 結構なことですわ。むしろ自由を満喫できますわね!」 ところが、婚約破棄された途端、カーテンリンゼは別の求婚者たちに目をつけられてしまう。 身分を利用されるだけの結婚などごめんだと思っていた彼女の前に現れたのは、冷徹と噂される若き公爵・レオポルド。 「契約結婚だ。君の自由は保証しよう」 「まあ、それは理想的ですわね」 互いに“愛のない”結婚を選んだ二人だったが、次第に相手の本当の姿を知り、想いが変わっていく――。 一方、王太子エドワルドは、自分が捨てたはずのカーテンリンゼを取り戻そうと動き出し……!?

【完結】【35万pt感謝】転生したらお飾りにもならない王妃のようなので自由にやらせていただきます

宇水涼麻
恋愛
王妃レイジーナは出産を期に入れ替わった。現世の知識と前世の記憶を持ったレイジーナは王子を産む道具である現状の脱却に奮闘する。 さらには息子に殺される運命から逃れられるのか。 中世ヨーロッパ風異世界転生。

断罪される前に市井で暮らそうとした悪役令嬢は幸せに酔いしれる

葉柚
恋愛
侯爵令嬢であるアマリアは、男爵家の養女であるアンナライラに婚約者のユースフェリア王子を盗られそうになる。 アンナライラに呪いをかけたのはアマリアだと言いアマリアを追い詰める。 アマリアは断罪される前に市井に溶け込み侯爵令嬢ではなく一市民として生きようとする。 市井ではどこかの王子が呪いにより猫になってしまったという噂がまことしやかに流れており……。

【完結】悪役令嬢は婚約者を差し上げたい

三谷朱花
恋愛
アリス・デッセ侯爵令嬢と婚約者であるハース・マーヴィン侯爵令息の出会いは最悪だった。 そして、学園の食堂で、アリスは、「ハース様を解放して欲しい」というメルル・アーディン侯爵令嬢の言葉に、頷こうとした。

【完結】名前もない悪役令嬢の従姉妹は、愛されエキストラでした

犬野きらり
恋愛
アーシャ・ドミルトンは、引越してきた屋敷の中で、初めて紹介された従姉妹の言動に思わず呟く『悪役令嬢みたい』と。 思い出したこの世界は、最終回まで私自身がアシスタントの1人として仕事をしていた漫画だった。自分自身の名前には全く覚えが無い。でも悪役令嬢の周りの人間は消えていく…はず。日に日に忘れる記憶を暗記して、物語のストーリー通りに進むのかと思いきや何故かちょこちょこと私、運良く!?偶然!?現場に居合わす。 何故、私いるのかしら?従姉妹ってだけなんだけど!悪役令嬢の取り巻きには絶対になりません。出来れば関わりたくはないけど、未来を知っているとついつい手を出して、余計なお喋りもしてしまう。気づけば私の周りは、主要キャラばかりになっているかも。何か変?は、私が変えてしまったストーリーだけど…

婚約破棄の代償

nanahi
恋愛
「あの子を放って置けないんだ。ごめん。婚約はなかったことにしてほしい」 ある日突然、侯爵令嬢エバンジェリンは婚約者アダムスに一方的に婚約破棄される。破局に追い込んだのは婚約者の幼馴染メアリという平民の儚げな娘だった。 エバンジェリンを差し置いてアダムスとメアリはひと時の幸せに酔うが、婚約破棄の代償は想像以上に大きかった。

転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎

水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。 もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。 振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!! え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!? でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!? と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう! 前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい! だからこっちに熱い眼差しを送らないで! 答えられないんです! これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。 または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。 小説家になろうでも投稿してます。 こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。

処理中です...