異世界魔王の勇者転生記

第一章 お帰りなさい、勇者(魔王)さま!

第一話 こんちは、『非』日常。

　　　　　　　◇　　◇　　◇

「ふぁぁぁああ...ぁふ...。」

目覚まし時計の音と共に、俺は目覚めた。
チュンチュンと小鳥が鳴き、白い光がカーテンの隙間から差し込む。

(またこの夢...。)

何度みても慣れないものだ。
自分が魔王で転生する直前で終わり。
幼い頃からずっと見続けているこの夢はいつしか脳裏にすっかり焼き付いてしまっていた。

俺の名前は扇摩おうま 勇希ゆうき。
まぁどこにでもいる高校2年のニワカオタクだ。
自慢出来るとしたらちょっと我慢強いところくらいかな、ははっ。

ズキッ

「っ...!イタタタタ...。」

そしてこの夢を見るといつも額のキズが痛む。
俺は生まれたときからそこに何かが突き刺さったようなキズがある。
このキズのせいで中二の頃にどれだけ友達にからかわれたことか...。
そんなことを思いながら、ふと時計をみるとーー

ーー　9時30分

...ヤベェ、アラーム設定ミスってんじゃん。

ガバッ!

急いで布団から出て、学校へ走ろうとしたところ、

「ーーおわッ!?」

何かに躓いて転びそうになる。
そこには、俺の鞄といつもの朝食のパンがおいてあった。
更に鞄の上に

『遅刻すんなよ、お兄。』

と置き手紙が。
男のような字体だがこの字は俺の義妹いもうと、桃花のものだ。
アイツ...。

（ここまでしてくれるんなら起こしてくれてもいいのに...。）

裏ではここまでしてくれるのに表では俺に冷たいのだろうか?
本人曰く、「表ぐらい自分でしろ。」だと。
まったく、いちいち正論を振りかざすヤツだ。

俺は急いで着替えると、パンをくわえて学校へ走り出した。
お約束の展開が待っていないかと、かれこれ4年は続けている。

ーーもうすでに遅刻しているんだが。

最近知った近道である裏路地を走りながらそんなことを考えていると、

ズボッ

急に左足が何かにハマった。
見ると俺の足元には小さな魔方陣が。

「...へ?」

更にその魔方陣は俺が踏むと同時にブワッと俺を包み込むように展開した。
俺の体が宙に浮く。

「ちょ、ちょ!、ちょ!?」

あれぇー!?コッチの展開の方ですかぁ!?

生憎、この薄汚い裏路地を通るのは俺か猫ぐらいで、助けを求めようにも誰もいない。

ピカーッ

魔方陣が輝を放ち、次の瞬間、







俺は裏路地から忽然と姿を消した...。