異世界魔王の勇者転生記 

タケノコご飯

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第一章  お帰りなさい、勇者(魔王)さま!

第三話 魔王、勇者になります。5

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        ◇  ◇  ◇

バサァッ

と、俺は翼を大きく広げた。

うん、やっぱり翼は畳んでる時よりも広げてる時の方がいい。

そしてさっき地面に叩きつけられたとき思いだいたんだよなぁ。

ーー 『魔剣・・』の出し方。

俺は右手に意識を集中させる。
すると黒い霧が俺の手を包んだかと思うと、

 ズ、ズ、ズ...

とその『魔剣』が姿を表した。

ーー 魔剣『ディアボロ』

それがこの剣の名だ。

俺はそれ魔剣を構えると、牙を捕まれても尚ギロリと俺を睨み付ける大蛇に容赦なく切りつけた。
羽とは違い、もっと長くて鋭いそれ魔剣は一撃で大蛇の首を刈り取った。

ーー やっぱり、使いなれてる...

そのことに違和感を感じながら。

『き、貴様まさか...!?』

大蛇の一匹がしゃべりかけてきた。

え?
しゃべれるの?

『初代...魔王...!』

え?
俺初代だっけ?
そう言えば上に誰も居なかったような...


俺は掴んでいた大蛇の頭をソイツに向かって投げつけた。
切ったばかりの大蛇の頭はネズミ花火のように血を撒き散らしながら飛んでいく。
さらに俺は翼に力を込め、硬化させる。

(これでアイツが体制を崩せば...)

『ッ!?』

ヤツは、一瞬怯んだ。

(いける...!)

『シャァァァァァァァッ!』

大蛇の身体が横へと傾いてーー






  ゴシャッ!







ーー ムチのように身体をしならせ、尻尾で頭を弾ち返してきた。







「ーー イッ!?」

不意を突かれた俺は一瞬判断が遅れる。
今更硬化した翼で回避するのは不可能だ。

ーー コイツ...!

(一か、八か...!)

溜め込んだ力をすべて出し、俺は高速で迫るその頭に向かって突っ込んだ。


「おぉぉぉぉぉおおお!!」


無理矢理右の翼を前方に押し出し、その反動で体を大蛇の頭の左側面を受け流すように、体を回転させて滑らせた。

硬化していると言えど、すさまじい衝撃と摩擦熱が翼の感覚を通して流れ込んでくる。


「ぐッ!?...ッ!」


だがこれで終わりではない。


『キシャァァァァァァアアアッ!』


高速回転した俺に、大蛇がもう一度巨大な尻尾を振るう。
今度は確実に避けられない。

(ちぃッ...!)

「ッらぁぁぁぁぁぁああああッ!!」


俺はその回転の勢いを利用して、魔剣でヤツの迫り来る尻尾を両断した。
ブシッと勢いよく切り離された尻尾がブーメランのように明後日の方向へ飛んで行く。


「ーーぁぁぁぁぁぁあああッ!」


そのまま大蛇のコメカミに、左の翼を貫通させる勢いで思いっきり突き刺した。
尻尾を失った大蛇の目が、驚愕に見開かれる。


「ッーー!!」


俺はその脳天に魔剣を力一杯振り下ろした。
ガリリッ!と魔剣が突き刺さる。

「ぜらぁぁぁぁぁぁッ!」

俺は、さらに力を込める。

......ズシュッ!!

一瞬間を空けて、俺の魔剣は大蛇の頭を貫通した。
ぐらぁっと大蛇の巨体がジェンガを崩した時のように大きく揺れる。
そして俺は大蛇の頭から放り出された。
ドドーッと大蛇が倒れるのと同時に、俺も地面に叩きつけられる。

「あだッ......!」

手から離れた魔剣が、風に吹かれたロウソクの炎のようにフッと消える。
俺は何度か地面をバウンドし、大の字になって止まった。

「イツツツ、なんとか倒せたぁ......」

そんな俺にトテトテと少女が近寄ってきた。

「あー、大丈夫?」

少女にそう言ってひょいと身を起こす。

「そ、それは私の台詞セリフです!」

くわっと身を乗り出して少女は叫んだ。

「あ、貴方は、一体...?」

そして今度はじっと俺の顔を覗き込んで聞いてくる。

あぁ、コレ言って大丈夫かな?
(よし...)

「うーん、引いたりしないって約束してくれる?」

少女はコクコクと頷いた。

この際どんな隠し事しても無理だろうし、もう言っちゃおう。



「俺は扇摩 勇希、異世界からきた『人間』で、この世界の『魔王』の生まれ変わりだ。」



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