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第一章 お帰りなさい、勇者(魔王)さま!
第三話 魔王、勇者になります。6
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◇ ◇ ◇
俺は勇者()を背負って少女の村へ向かっていた。
気絶してもなお剣は握ったままだ。
どんだけその剣が欲しいんだよ。
「いやぁ、久し振りに驚きの連続ですよまったく.....」
隣を歩く少女が話しかけてきた。
歩く度に三つ編みのお下げがふさふさと揺れる。
「驚いたのはコッチもおんなじだって。」
「けっこう苦労したんですよ?村まで走ってまた戻って森に行って大蛇に襲われて...はぁ。」
「わ、悪かったよ。俺もテンパってたんだ。」
落ち込んだ少女をなだめる。
「...それにしても、偶然ってあるんですね。」
「ん?俺の話、信じてくれたのか?」
俺はこの少女に事の経緯を話した。
恐らく信じてくれないだろうと思っていた俺は少女のその言葉に驚いた。
「信じないも何も、あんなの見せられたらイヤでも信じちゃいますよ。えっと...」
「扇摩 勇希、勇希でいいよ。」
「あ...はい、勇希さん。」
「それにしても意外と怖がらなかったよな?ここの魔王って案外やさしかったりするのか?」
「自分に聞いてみたらどうですか?」
「あはは、それが出来たら苦労しないよ...」
はぁ、と大きなため息が出る。
そんな俺を少女はクスッと笑って
「それに、助けてもらった恩人を悪人扱いするほど私も腐っていませんよ。」
ニコッと笑顔を向けてくる。
「ああ、それもそうだな。」
俺もつられて笑ってしまう。
「それはそうと、この人の知り合いか?」
担いでいるコイツを指差して言う。
だらしなく剣がブラブラと揺れているにが少々恐い。
「あぁ、その方はレクレス・アブサードさん、村の唯一の戦士さんです。いつもモンスターから村を守ってくれているんですが、何分、性格がちょっとアレですから村の評判はあまりよくないですけど...」
ん?村にはコイツしか戦闘員がいないのか?
「でもこの人弱いぞ?」
俺は気になって聞き返した。
さすがに相手が大蛇だったからと言っても、一撃で沈められるような戦士とは、これいかに。
「村は結界が張られていて大抵のモンスターは入ってこれないんです。でも、結界も完璧ではないので取り残しが出ます。その取り残しを退治して下さっているのがレクレスさんなんですよ。だからあまり仕事をなさる機会がないんです。」
なるほど、そういうことか。
そういうことなら...
「じゃあ、この人を勇者って事にしておいてくれないか?」
俺はこれ以上はあまり面倒事には関わりたくないのだ。
それでコイツの仕事も増えるなら一石二鳥だろう。
「えっ?」
しかし、少女が困惑した目で俺を見つめる。
うぅ、本音は言い辛いしなぁ...
「ほ、ほら! 俺って魔王じゃん? 勇者になる素質なんてないんじゃないかな?」
正直、これは正解だと思う。
魔王が勇者だなんて、敵は誰になるんだ?
そう言った俺に少女はとんでもない言葉を返してきた。
「でも、勇者の力はすでに勇希さんに宿ってますよ?」
「......ゑ?」
は?
すでに...え?
「ほら、勇希さんが剣を抜いた時、光が体に纏わり付きましたよね?あれがそうです。」
あの光が一時的だが翼を消したのを思い出す。
確かに一瞬だが、強大な力が俺の翼を押さえ込んだんだ。
あー、アレかよ......
マジ勘弁してくれよ......
俺は地球に帰りたいんだよ......
ガクーっと上がっていたテンションが一気に下がる。
「だ、大丈夫ですよ! 勇者の力はそんなに悪いモノでも無いですし、勇希さんが知られたくないと言うのなら、私はナイショにしておきますよ。」
「あ、ありがとう、えーと...」
そういえば名前、聞いてなかったなぁ...
俺の名前言った時に聞いておくんだった...
「アンナ、アンナ・ミークネス、アンナって呼んでください。」
俺がドギマギしていると少女の方から話してくれた。
「あぁ、ありがとな、アンナ。」
「いえいえ♪」
俺に名前で呼ばれたのがそんなに嬉しいのか、アンナはよりいっそう笑顔を咲かせた。
「そろそろ村へ着きます。勇希さんのことはなんて説明しましょう?」
「遠い町からきた行商人で、荷馬車を盗賊に奪われ、逃げてきた所を伝説の剣を抜いて気を失ったレクレスを背負うアンナに出会った。という程で頼む。」
「りょーかいです♪」
そんな話を終えると、俺はアンナの村にたどり着いた。
俺は勇者()を背負って少女の村へ向かっていた。
気絶してもなお剣は握ったままだ。
どんだけその剣が欲しいんだよ。
「いやぁ、久し振りに驚きの連続ですよまったく.....」
隣を歩く少女が話しかけてきた。
歩く度に三つ編みのお下げがふさふさと揺れる。
「驚いたのはコッチもおんなじだって。」
「けっこう苦労したんですよ?村まで走ってまた戻って森に行って大蛇に襲われて...はぁ。」
「わ、悪かったよ。俺もテンパってたんだ。」
落ち込んだ少女をなだめる。
「...それにしても、偶然ってあるんですね。」
「ん?俺の話、信じてくれたのか?」
俺はこの少女に事の経緯を話した。
恐らく信じてくれないだろうと思っていた俺は少女のその言葉に驚いた。
「信じないも何も、あんなの見せられたらイヤでも信じちゃいますよ。えっと...」
「扇摩 勇希、勇希でいいよ。」
「あ...はい、勇希さん。」
「それにしても意外と怖がらなかったよな?ここの魔王って案外やさしかったりするのか?」
「自分に聞いてみたらどうですか?」
「あはは、それが出来たら苦労しないよ...」
はぁ、と大きなため息が出る。
そんな俺を少女はクスッと笑って
「それに、助けてもらった恩人を悪人扱いするほど私も腐っていませんよ。」
ニコッと笑顔を向けてくる。
「ああ、それもそうだな。」
俺もつられて笑ってしまう。
「それはそうと、この人の知り合いか?」
担いでいるコイツを指差して言う。
だらしなく剣がブラブラと揺れているにが少々恐い。
「あぁ、その方はレクレス・アブサードさん、村の唯一の戦士さんです。いつもモンスターから村を守ってくれているんですが、何分、性格がちょっとアレですから村の評判はあまりよくないですけど...」
ん?村にはコイツしか戦闘員がいないのか?
「でもこの人弱いぞ?」
俺は気になって聞き返した。
さすがに相手が大蛇だったからと言っても、一撃で沈められるような戦士とは、これいかに。
「村は結界が張られていて大抵のモンスターは入ってこれないんです。でも、結界も完璧ではないので取り残しが出ます。その取り残しを退治して下さっているのがレクレスさんなんですよ。だからあまり仕事をなさる機会がないんです。」
なるほど、そういうことか。
そういうことなら...
「じゃあ、この人を勇者って事にしておいてくれないか?」
俺はこれ以上はあまり面倒事には関わりたくないのだ。
それでコイツの仕事も増えるなら一石二鳥だろう。
「えっ?」
しかし、少女が困惑した目で俺を見つめる。
うぅ、本音は言い辛いしなぁ...
「ほ、ほら! 俺って魔王じゃん? 勇者になる素質なんてないんじゃないかな?」
正直、これは正解だと思う。
魔王が勇者だなんて、敵は誰になるんだ?
そう言った俺に少女はとんでもない言葉を返してきた。
「でも、勇者の力はすでに勇希さんに宿ってますよ?」
「......ゑ?」
は?
すでに...え?
「ほら、勇希さんが剣を抜いた時、光が体に纏わり付きましたよね?あれがそうです。」
あの光が一時的だが翼を消したのを思い出す。
確かに一瞬だが、強大な力が俺の翼を押さえ込んだんだ。
あー、アレかよ......
マジ勘弁してくれよ......
俺は地球に帰りたいんだよ......
ガクーっと上がっていたテンションが一気に下がる。
「だ、大丈夫ですよ! 勇者の力はそんなに悪いモノでも無いですし、勇希さんが知られたくないと言うのなら、私はナイショにしておきますよ。」
「あ、ありがとう、えーと...」
そういえば名前、聞いてなかったなぁ...
俺の名前言った時に聞いておくんだった...
「アンナ、アンナ・ミークネス、アンナって呼んでください。」
俺がドギマギしていると少女の方から話してくれた。
「あぁ、ありがとな、アンナ。」
「いえいえ♪」
俺に名前で呼ばれたのがそんなに嬉しいのか、アンナはよりいっそう笑顔を咲かせた。
「そろそろ村へ着きます。勇希さんのことはなんて説明しましょう?」
「遠い町からきた行商人で、荷馬車を盗賊に奪われ、逃げてきた所を伝説の剣を抜いて気を失ったレクレスを背負うアンナに出会った。という程で頼む。」
「りょーかいです♪」
そんな話を終えると、俺はアンナの村にたどり着いた。
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