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第一章 お帰りなさい、勇者(魔王)さま!
第四話 魔王、村にて。1
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◇ ◇ ◇
アンナの村はとても綺麗なところだった。
小鳥が可愛くさえずり、家々がところ狭しと並んでるのにも関わらず、緑も豊か。
村の中心を流れる小川はまるでそこから湧き出たかのように澄んでいて、魚達がその透明な水の中を気持ち良さそうに泳ぐ。
THE・平和。
少なくとも、アブサードが守っているとは思えないくらい平和だ。
しかし、そんな村に似合わず、村人達の顔は険しかった。
「おい、また誰かあそこに召喚されたらしいぜ?」
こんな話している村人達が多いのだ。
勿論、その『誰か』は俺なワケなんだが。
どうやら俺は望んで召喚されたんじゃないらしい。
「冗談だろ? 本当にそんなことする奴がいたのか?」
「それがよ、だいぶ昔だが召喚の儀式が失敗したことがあたろう?」
「あー、シンプソンが召喚行ってた頃か?」
「そうそう、あのときの召喚が今頃になって発動したって噂になってるぜ?」
「ひゃー、おっかねぇなぁ…」
「今、その穴ごと埋めにかかってるらしい。何事もなく済んでほしいもんだよな…」
そんなことを話している横を俺とアンナは通り抜けた。
幸い、アンナからローブをもらっていたお陰で、向こうから俺の制服(コッチではかなり異様らしい)を見られずに済みそうだ。
しかしその途中、アンナが悲しそうな顔をしているのを、俺は見た。
それほど俺はここに来ちゃまずい奴だったのか?
「それで、帰って来て早々悪いんだが、俺を元の世界に戻す方法って知らないか?」
ここに長居するのも悪いかもしれないしな。
「うーん…ごめんなさい。私、こんなこと今まで無かったから…」
「そっか…」
「あ、でも、もしかするとおじいちゃんかアブサードさんが何か知ってるかも…」
「おじいちゃんは召喚に詳しいのか?」
「うん! おじいちゃんは昔、召喚師だったんだよ!」
「ほー。」
そんな話をしながら2,3件の建物を通りすぎた後、アンナは西部劇とかでよくみるような居酒屋?に入った。
「おじいちゃん! ただいまー!」
ギィと扉を開け、アンナは元気な声を店内に響かす。
客がいないところをみると、どうやら今日は定休日だろうか?
「おお、お帰りアンナ。」
優しそうな声と共にカウンターの後ろから杖をもった初老の男性が出てきた。
「はて? そちらの方々は誰だい?」
「この人は行商人のえっと…」
しまった。本名しか言ってなかったな。
「…はじめまして、行商人のギルバートンです。」
即興で考えた。名前っぽいだろ?
「そ、そう! ギルバートンさん! で、もう一人はアブサードさんだよ。森で気絶してたところをギルバートンさんが見つけてくれたんだ。」
「…ほう、そうでしたか。旅のお方ありがとうございます。」
少し俺を見つめた後、深々と頭を下げられる。
「いえいえ、僕もアンナさんに助けていただいたのでこのくらいなんともないです。」
「そう言っていただけると助か…おや?」
「?」
老人が顎に手を当て俺を覗き込む。
その視線はアブサードがずっと離さない剣に注がれていた。
「その剣はもしや…!」
その目が見開かれる。
「そ、そうだよ! アブサードさんが伝説の剣を抜いたんだよ!」
「まさか…本当にこやつが抜いてしまうとは...」
老人が感心したようにアブサードを眺めていたその時、
「ん…んぁ? どこだぁここは…?」
アブサードが目を覚ました。
キョロキョロと辺りを見回し、自分が置かれている状況を把握する。
薄暗い店内。
ローブを纏った俺に担がれている。
「…ッ!? だ、誰だテメェ!?」
ゲシッと横っ腹を蹴られる。
ぐえっ、何すんだこの野郎…!
さらに俺から距離をとったアブサードは、フェンシングのようにその剣を俺の顔目掛けて振るってきた。
(危ねぇッ!?)
ビュオッ! と目の前を剣先が掠める。
ほ、本気かコイツ!?
壁に追い詰められた俺に、アブサードは血走る目で喉元に剣を押し付けてきた。
「お、落ち着け!」
俺は両手を挙げて『降参』のポーズをとる。
マズいぞ、マジでコイツの目は本気だ。
俺の脳がそう判断し反射的に翼を出そうとする。
が、
『 や め な い か ッ! こ の 馬 鹿 者 が ッ!!』
その瞬間、カウンターの方からとてつもない怒号が飛んできた。
カウンターを見ると老人が物凄い形相でこちらを睨んでいる。
どうやら声の主は老人のようだ。
「げぇッ!? 」
その老人を見たアブサードは急に潰されたカエルのような叫び声をあげた。
「し、師匠!? どうしてここに!?」
アブサードの剣がようやく首もとから離れる。
「師に対して『げぇッ!?』とはなんだ! それにここにワシの店じゃ! 」
再度周りを見回したアブサードは『しまった』という顔を浮かべ、青くなった。
アンナのおじいさんはかなり怒っているようで、杖でアブサードの膝をバシッと叩いた。
「人様に迷惑をかけおって! そこに直れ!」
そしてガミガミと長い説教が始まった。
アンナの村はとても綺麗なところだった。
小鳥が可愛くさえずり、家々がところ狭しと並んでるのにも関わらず、緑も豊か。
村の中心を流れる小川はまるでそこから湧き出たかのように澄んでいて、魚達がその透明な水の中を気持ち良さそうに泳ぐ。
THE・平和。
少なくとも、アブサードが守っているとは思えないくらい平和だ。
しかし、そんな村に似合わず、村人達の顔は険しかった。
「おい、また誰かあそこに召喚されたらしいぜ?」
こんな話している村人達が多いのだ。
勿論、その『誰か』は俺なワケなんだが。
どうやら俺は望んで召喚されたんじゃないらしい。
「冗談だろ? 本当にそんなことする奴がいたのか?」
「それがよ、だいぶ昔だが召喚の儀式が失敗したことがあたろう?」
「あー、シンプソンが召喚行ってた頃か?」
「そうそう、あのときの召喚が今頃になって発動したって噂になってるぜ?」
「ひゃー、おっかねぇなぁ…」
「今、その穴ごと埋めにかかってるらしい。何事もなく済んでほしいもんだよな…」
そんなことを話している横を俺とアンナは通り抜けた。
幸い、アンナからローブをもらっていたお陰で、向こうから俺の制服(コッチではかなり異様らしい)を見られずに済みそうだ。
しかしその途中、アンナが悲しそうな顔をしているのを、俺は見た。
それほど俺はここに来ちゃまずい奴だったのか?
「それで、帰って来て早々悪いんだが、俺を元の世界に戻す方法って知らないか?」
ここに長居するのも悪いかもしれないしな。
「うーん…ごめんなさい。私、こんなこと今まで無かったから…」
「そっか…」
「あ、でも、もしかするとおじいちゃんかアブサードさんが何か知ってるかも…」
「おじいちゃんは召喚に詳しいのか?」
「うん! おじいちゃんは昔、召喚師だったんだよ!」
「ほー。」
そんな話をしながら2,3件の建物を通りすぎた後、アンナは西部劇とかでよくみるような居酒屋?に入った。
「おじいちゃん! ただいまー!」
ギィと扉を開け、アンナは元気な声を店内に響かす。
客がいないところをみると、どうやら今日は定休日だろうか?
「おお、お帰りアンナ。」
優しそうな声と共にカウンターの後ろから杖をもった初老の男性が出てきた。
「はて? そちらの方々は誰だい?」
「この人は行商人のえっと…」
しまった。本名しか言ってなかったな。
「…はじめまして、行商人のギルバートンです。」
即興で考えた。名前っぽいだろ?
「そ、そう! ギルバートンさん! で、もう一人はアブサードさんだよ。森で気絶してたところをギルバートンさんが見つけてくれたんだ。」
「…ほう、そうでしたか。旅のお方ありがとうございます。」
少し俺を見つめた後、深々と頭を下げられる。
「いえいえ、僕もアンナさんに助けていただいたのでこのくらいなんともないです。」
「そう言っていただけると助か…おや?」
「?」
老人が顎に手を当て俺を覗き込む。
その視線はアブサードがずっと離さない剣に注がれていた。
「その剣はもしや…!」
その目が見開かれる。
「そ、そうだよ! アブサードさんが伝説の剣を抜いたんだよ!」
「まさか…本当にこやつが抜いてしまうとは...」
老人が感心したようにアブサードを眺めていたその時、
「ん…んぁ? どこだぁここは…?」
アブサードが目を覚ました。
キョロキョロと辺りを見回し、自分が置かれている状況を把握する。
薄暗い店内。
ローブを纏った俺に担がれている。
「…ッ!? だ、誰だテメェ!?」
ゲシッと横っ腹を蹴られる。
ぐえっ、何すんだこの野郎…!
さらに俺から距離をとったアブサードは、フェンシングのようにその剣を俺の顔目掛けて振るってきた。
(危ねぇッ!?)
ビュオッ! と目の前を剣先が掠める。
ほ、本気かコイツ!?
壁に追い詰められた俺に、アブサードは血走る目で喉元に剣を押し付けてきた。
「お、落ち着け!」
俺は両手を挙げて『降参』のポーズをとる。
マズいぞ、マジでコイツの目は本気だ。
俺の脳がそう判断し反射的に翼を出そうとする。
が、
『 や め な い か ッ! こ の 馬 鹿 者 が ッ!!』
その瞬間、カウンターの方からとてつもない怒号が飛んできた。
カウンターを見ると老人が物凄い形相でこちらを睨んでいる。
どうやら声の主は老人のようだ。
「げぇッ!? 」
その老人を見たアブサードは急に潰されたカエルのような叫び声をあげた。
「し、師匠!? どうしてここに!?」
アブサードの剣がようやく首もとから離れる。
「師に対して『げぇッ!?』とはなんだ! それにここにワシの店じゃ! 」
再度周りを見回したアブサードは『しまった』という顔を浮かべ、青くなった。
アンナのおじいさんはかなり怒っているようで、杖でアブサードの膝をバシッと叩いた。
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