異世界魔王の勇者転生記 

タケノコご飯

文字の大きさ
14 / 21
第一章  お帰りなさい、勇者(魔王)さま!

第四話 魔王、村にて。1

しおりを挟む
        ◇  ◇  ◇

アンナの村はとても綺麗なところだった。
小鳥が可愛くさえずり、家々がところ狭しと並んでるのにも関わらず、緑も豊か。
村の中心を流れる小川はまるでそこから湧き出たかのように澄んでいて、魚達がその透明な水の中を気持ち良さそうに泳ぐ。

 THE・平和。

少なくとも、アブサードが守っているとは思えないくらい平和だ。
しかし、そんな村に似合わず、村人達の顔は険しかった。


「おい、また誰かあそこに召喚されたらしいぜ?」


こんな話している村人達が多いのだ。
勿論、その『誰か』は俺なワケなんだが。
どうやら俺は望んで召喚されたんじゃないらしい。


「冗談だろ? 本当にそんなことする奴がいたのか?」
「それがよ、だいぶ昔だが召喚の儀式が失敗したことがあたろう?」
「あー、シンプソンが召喚行ってた頃か?」
「そうそう、あのときの召喚が今頃になって発動したって噂になってるぜ?」
「ひゃー、おっかねぇなぁ…」
「今、その穴ごと埋めにかかってるらしい。何事もなく済んでほしいもんだよな…」


そんなことを話している横を俺とアンナは通り抜けた。
幸い、アンナからローブをもらっていたお陰で、向こうから俺の制服(コッチではかなり異様らしい)を見られずに済みそうだ。
しかしその途中、アンナが悲しそうな顔をしているのを、俺は見た。
それほど俺はここに来ちゃまずい奴だったのか?


「それで、帰って来て早々悪いんだが、俺を元の世界に戻す方法って知らないか?」

ここに長居するのも悪いかもしれないしな。

「うーん…ごめんなさい。私、こんなこと今まで無かったから…」
「そっか…」
「あ、でも、もしかするとおじいちゃんかアブサードさんその人が何か知ってるかも…」
「おじいちゃんは召喚に詳しいのか?」
「うん! おじいちゃんは昔、召喚師だったんだよ!」
「ほー。」

そんな話をしながら2,3件の建物を通りすぎた後、アンナは西部劇とかでよくみるような居酒屋?に入った。


「おじいちゃん! ただいまー!」


ギィと扉を開け、アンナは元気な声を店内に響かす。
客がいないところをみると、どうやら今日は定休日だろうか?


「おお、お帰りアンナ。」


優しそうな声と共にカウンターの後ろから杖をもった初老の男性が出てきた。


「はて? そちらの方々は誰だい?」
「この人は行商人のえっと…」


しまった。本名しか言ってなかったな。


「…はじめまして、行商人のギルバートンです。」


即興で考えた。名前っぽいだろ?


「そ、そう! ギルバートンさん! で、もう一人はアブサードさんだよ。森で気絶してたところをギルバートンさんが見つけてくれたんだ。」
「…ほう、そうでしたか。旅のお方ありがとうございます。」


少し俺を見つめた後、深々と頭を下げられる。


「いえいえ、僕もアンナさんに助けていただいたのでこのくらいなんともないです。」
「そう言っていただけると助か…おや?」
「?」

老人が顎に手を当て俺を覗き込む。
その視線はアブサードがずっと離さない剣に注がれていた。


「その剣はもしや…!」


その目が見開かれる。


「そ、そうだよ! アブサードさんが伝説の剣を抜いたんだよ!」
「まさか…本当にこやつが抜いてしまうとは...」


老人が感心したようにアブサードを眺めていたその時、


「ん…んぁ? どこだぁここは…?」


アブサードが目を覚ました。
キョロキョロと辺りを見回し、自分が置かれている状況を把握する。
薄暗い店内。
ローブを纏った俺に担がれている。

「…ッ!? だ、誰だテメェ!?」


ゲシッと横っ腹を蹴られる。

 ぐえっ、何すんだこの野郎…!

さらに俺から距離をとったアブサードは、フェンシングのようにその剣を俺の顔目掛けて振るってきた。

(危ねぇッ!?)

ビュオッ! と目の前を剣先が掠める。
ほ、本気かコイツ!?

壁に追い詰められた俺に、アブサードは血走る目で喉元に剣を押し付けてきた。


「お、落ち着け!」


俺は両手を挙げて『降参』のポーズをとる。

 マズいぞ、マジでコイツの目は本気だ。

俺の脳がそう判断し反射的に翼を出そうとする。

 が、



 『 や め な い か ッ! こ の 馬 鹿 者 が ッ!!』



その瞬間、カウンターの方からとてつもない怒号が飛んできた。
カウンターを見ると老人が物凄い形相でこちらを睨んでいる。
どうやら声の主は老人のようだ。


「げぇッ!? 」


その老人を見たアブサードは急に潰されたカエルのような叫び声をあげた。


「し、師匠!? どうしてここに!?」

アブサードの剣がようやく首もとから離れる。

「師に対して『げぇッ!?』とはなんだ! それにここにワシの店じゃ! 」

再度周りを見回したアブサードは『しまった』という顔を浮かべ、青くなった。
アンナのおじいさんはかなり怒っているようで、杖でアブサードの膝をバシッと叩いた。


「人様に迷惑をかけおって! そこに直れ!」


そしてガミガミと長い説教が始まった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

まったく知らない世界に転生したようです

吉川 箱
ファンタジー
おっとりヲタク男子二十五歳成人。チート能力なし? まったく知らない世界に転生したようです。 何のヒントもないこの世界で、破滅フラグや地雷を踏まずに生き残れるか?! 頼れるのは己のみ、みたいです……? ※BLですがBがLな話は出て来ません。全年齢です。 私自身は全年齢の主人公ハーレムものBLだと思って書いてるけど、全く健全なファンタジー小説だとも言い張れるように書いております。つまり健全なお嬢さんの癖を歪めて火のないところへ煙を感じてほしい。 111話までは毎日更新。 それ以降は毎週金曜日20時に更新します。 カクヨムの方が文字数が多く、更新も先です。

異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~

松永 恭
ファンタジー
三十三歳のビルメン、白石恭真(しらいし きょうま)。 異世界に召喚されたが、与えられたスキルは「清掃」。 「役立たず」と蔑まれ、牢獄に放り込まれる。 だがモップひと振りで汚れも瘴気も消す“浄化スキル”は規格外。 牢獄を光で満たした結果、強制釈放されることに。 やがて彼は知らされる。 その力は偶然ではなく、光の女神に選ばれし“使徒”の証だと――。 金髪エルフやクセ者たちと繰り広げる、 戦闘より掃除が多い異世界ライフ。 ──これは、汚れと戦いながら世界を救う、 笑えて、ときにシリアスなおじさん清掃員の奮闘記である。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

碧天のノアズアーク

世良シンア
ファンタジー
両親の顔を知らない双子の兄弟。 あらゆる害悪から双子を守る二人の従者。 かけがえのない仲間を失った若き女冒険者。 病に苦しむ母を救うために懸命に生きる少女。 幼い頃から血にまみれた世界で生きる幼い暗殺者。 両親に売られ生きる意味を失くした女盗賊。 一族を殺され激しい復讐心に囚われた隻眼の女剣士。 Sランク冒険者の一人として活躍する亜人国家の第二王子。 自分という存在を心底嫌悪する龍人の男。 俗世とは隔絶して生きる最強の一族族長の息子。 強い自責の念に蝕まれ自分を見失った青年。 性別も年齢も性格も違う十三人。決して交わることのなかった者たちが、ノア=オーガストの不思議な引力により一つの方舟へと乗り込んでいく。そして方舟はいくつもの荒波を越えて、飽くなき探究心を原動力に世界中を冒険する。この方舟の終着点は果たして…… ※『side〇〇』という風に、それぞれのキャラ視点を通して物語が進んでいきます。そのため主人公だけでなく様々なキャラの視点が入り混じります。視点がコロコロと変わりますがご容赦いただけると幸いです。 ※一話ごとの字数がまちまちとなっています。ご了承ください。 ※物語が進んでいく中で、投稿済みの話を修正する場合があります。ご了承ください。 ※初執筆の作品です。誤字脱字など至らぬ点が多々あると思いますが、温かい目で見守ってくださると大変ありがたいです。

充実した人生の送り方 ~妹よ、俺は今異世界に居ます~

中畑 道
ファンタジー
「充実した人生を送ってください。私が創造した剣と魔法の世界で」 唯一の肉親だった妹の葬儀を終えた帰り道、不慮の事故で命を落とした世良登希雄は異世界の創造神に召喚される。弟子である第一女神の願いを叶えるために。 人類未開の地、魔獣の大森林最奥地で異世界の常識や習慣、魔法やスキル、身の守り方や戦い方を学んだトキオ セラは、女神から遣わされた御供のコタローと街へ向かう。 目的は一つ。充実した人生を送ること。

迷宮遊戯

ヘロー天気
ファンタジー
ダンジョンマスターに選ばれた魂が生前の渇望を満たすべく、迷宮構築のシステムを使って街づくりに没頭する。 「別に地下迷宮である必要はないのでは?」

処理中です...