異世界魔王の勇者転生記 

タケノコご飯

文字の大きさ
17 / 21
第一章  お帰りなさい、勇者(魔王)さま!

第四話 魔王、村にて。4

しおりを挟む
        ◇  ◇  ◇

俺はリーダー格の男に歩み寄った。
「……」
今起こった事が理解できていないようでメリケンの野郎が飛ばされた方を向いて口を開けている。

俺はその横を通り過ぎると倒れているアンナの元へ歩み寄った。
どうやら気絶しているだけのようだ。

正面にいるアンナを縛り上げていた男もリーダー格の男と同様、口をアングリと開けて驚いているのが顔を覆っている布越しにでもわかる。

俺はアンナを抱き抱えるとおじいさんの元へ向かう。
しかし

「……はッ!? 」

アンナを縛り上げていた男がようやく我に帰った。
背中に背負っていた大鎌を手に取ると

「テ、テメェ! よくもパークをぉぉぉッ!」

俺が殴り飛ばした男らしき名を叫び、三日月のように整った大鎌を凪いできた。
その鋭い刃は後ろから俺の首を捕らーー

「ぐがッ!?」

ーーえず、頭上を通過した。

メギッ…!

が男の横腹を抉る。
男は車に跳ねられたように吹き飛ぶと、店の壁を貫通し、隣の家の壁へめり込み動かなくなった。

おじいさんにアンナを渡すと、俺はリーダー格の男に向き直る。

「…き、貴様ァ……!」

ヤツは我に帰ると、さらに懐から剣を取りだし、両手に剣を構えた。

(どんだけ懐に剣入れてるんだよ…)

さっきまでとは違い、翼を出した瞬間から不思議と俺は落ち着いていた。
高ぶっていた感情が一旦リセットされたみたに、頭に昇っていた血がなくなっていた。

でも、確かに強い怒りを胸に感じる。

目の前にいる男は決して許されない事をしたんだからな。

「うらぁぁぁぁぁぁあああああ!!」

男はギィンッと一度剣を打ち鳴らすと、真正面から突っ込んできた。
こちらも翼を硬化させ、両翼から一本ずつ羽を抜き取りそれに応戦する。

当たるとは思わなかったが、牽制に翼を凪いだ。
が、案の定、男はそれを前転で回避して俺の懐へと潜り込んむ。
「オゥラァッ!」
さらにその体制から切り上げるように剣を振るった。
その剣を羽で受け止め顔を上げると、男は楽しそうに笑っていた。
「へへっ…さっきの力はハッタリか…?」
さっきのメリケン野郎の拳よりも重い一撃が俺の腕ごしにも伝わり、腕がびりびりと痺れる。
その一瞬の痺れも終わるか終わらないかの内に、
「魔王ってのも大したことねぇなぁッ!!」
男はもう片方の剣で俺の顔目掛けて突きを放つ。
(チィッ…!)
俺は咄嗟に、翼で地を蹴った。
男の狙いはズレ、放った突きは、辛うじて俺の顔の芯を捉えず、頬を掠める。
「このッ…!」
俺は、腰を低くしていた男の肩を蹴り、宙に舞い上がった。
その体制から羽の剣を男に向かって投げ放つ。
「はァッ!こんなものッ!!」
男はそれを自慢の腕力でガンガンッと弾きかえす。
そして手ぶらの俺に向かって薄気味悪い笑みをこぼした。
だが、

ーー その油断が命取りだ…!

俺は天井に突き刺さっていたおじいさんの氷の剣を掴みとった。
状況を理解した男の笑みが、ひきつったように歪む。

「はぁぁぁぁぁぁああああッ!」

俺はその剣を引き抜くと、落下する体と共に、男の肩へと勢いよく突き刺した。

ブシュッと男の真っ赤な鮮血が宙を舞い、体制を崩された男の顔から、余裕が消える。
「!? くぉッ…!?」
男のもつ剣も、肩を貫かれた腕から地に落ちた。
不安定ながらもなんとか着地した俺は、すかさず、痛みに困惑した男のもう片方の腕を翼で凪ぎ払う。

ゴキリッ…!

俺の腕から鈍い音が聞こえ、握っていたもうひとつの剣が弾き飛ぶ。
さらに蹴りをがら空きになった腹に叩き込むが、男はこれを間一髪で後ろに跳んで避けた。


「…や、やるじゃねぇか…な、舐めてたぜ…!」

それでも男はニヤリと笑い、

「こいつは…出したくなかったんだがなぁ…!」

そう言って、指笛をピーーーッと鳴らした。
すると、

 バゴォッ!


壊れた扉を更に吹き飛ばして、



(!?)






鎖で両手を結ばれた大男が、姿を現した。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~

松永 恭
ファンタジー
三十三歳のビルメン、白石恭真(しらいし きょうま)。 異世界に召喚されたが、与えられたスキルは「清掃」。 「役立たず」と蔑まれ、牢獄に放り込まれる。 だがモップひと振りで汚れも瘴気も消す“浄化スキル”は規格外。 牢獄を光で満たした結果、強制釈放されることに。 やがて彼は知らされる。 その力は偶然ではなく、光の女神に選ばれし“使徒”の証だと――。 金髪エルフやクセ者たちと繰り広げる、 戦闘より掃除が多い異世界ライフ。 ──これは、汚れと戦いながら世界を救う、 笑えて、ときにシリアスなおじさん清掃員の奮闘記である。

転生先はご近所さん?

フロイライン
ファンタジー
大学受験に失敗し、カノジョにフラれた俺は、ある事故に巻き込まれて死んでしまうが… そんな俺に同情した神様が俺を転生させ、やり直すチャンスをくれた。 でも、並行世界で人々を救うつもりだった俺が転生した先は、近所に住む新婚の伊藤さんだった。

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

異世界に召喚されたので、好き勝手に無双しようと思います。〜人や精霊を救う?いいえ、ついでに女神様も助けちゃおうと思います!〜

月城 蓮桜音(旧・神木 空)
ファンタジー
仕事に日々全力を注ぎ、モフモフのぬいぐるみ達に癒されつつ、趣味の読書を生き甲斐にしていたハードワーカーの神木莉央は、過労死寸前に女神に頼まれて異世界へ。魔法のある世界に召喚された莉央は、魔力量の少なさから無能扱いされるが、持ち前のマイペースさと素直さで、王子と王子の幼馴染達に愛され無双して行く物語です。 ※この作品は、カクヨムでも掲載しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

処理中です...