異世界魔王の勇者転生記 

タケノコご飯

文字の大きさ
20 / 21
第一章  お帰りなさい、勇者(魔王)さま!

第四話 魔王、村にて。6

しおりを挟む
目を覚ますと、そこはベッドの上だった。
窓から光が差し込み、チュンチュンと小鳥が鳴いている。
(ーー今のは、俺が魔王だった時の、魔王の過去の記憶か…?)
なんだかややこしいな。
今回の夢は少し違っていた。
自分の記憶をみているハズなのに、まるで魔王の過去を覗いているみたいだ。
「ふぁあぁ~」
大きなあくびをして、いつもベッドの右上に置いてある時計を見ようと手を伸ばすが、なにもない。
(…?)
暫く手を泳がせるが、やはり何もない。
普段なら、少なくともティッシュとスマホがあるのだが…
不思議に思いながら、俺はたまたま引っ付かんだカーテンをシャッとめくった。

「ーーあ」

そこで目に飛び込んで来たのは太陽。
2つの太陽。
この世界で初めて目にした奇怪。


ーーそういえば、俺、異世界に来てたんだっけ?

徐々に頭が働いてくる。
ぼんやりした目を擦って、ようやくここが自室では無いことに気づいた。
(ーーここは…?)
天井からぶら下がるカーテンで仕切られているところをみると、病室のようにも見受けられる。

(そうだそうだ、アンナに連れられて村に来て、アブサードに襲われて、おじいさんにヒヤッとして、それから…)

「ーーはっ!?」

フワフワしていた頭が一気に覚醒し、全てを思い出す。
そうだ、俺たちは盗賊に襲われて、そして、アンナが…!

「ーー気づいたか? ギルバートンよぉ…」

すると、突然隣のカーテンがシャッと開けられ、レクレスが姿を現した。

「アンタ…!」
俺はレクレスの胸ぐらをひっ掴んだ。
ミチリとレクレスの服から嫌な音が聞こえる。
「あの時何してたんだ!? どうしてアンナが人質に捕られるようなことになったんッ…つうッ!?」
「落ち着け、傷口が開くぞ」
レクレスは俺の肩を押さえ、ベッドに戻した。
その時、俺は気づいた。
昨夜までかすり傷くらいしかなかったレクレスの体に痛々しい傷痕が増えていることに。
「……それについては…悪い。師匠が『もう取り引きは終わった』って言ったからよ、俺も完全に油断してたんだ。それも、もう半年も前の話だ」
「……クソッ!」
俺は自分の拳を睨みつけた。
まだ知り合って間もないが、恐らくあの大穴から俺を助けようとしてくれたのは彼女だろう。
彼女が居なければ、今ごろ俺はあの穴のなかで村人たちに生き埋めにされてしまっていたに違いない。
そんな恩人を、目の前で傷つけられてしまった。
俺がしっかりしなかったばかりに。
「今はもう大丈夫だ。あの夜から、師匠が徹夜でずっと回復魔法ヒールしてたから、もうなんともないと思うぜ」
「…そうか…え?」
あの夜? 昨夜じゃないのか?
そんなきょとんとした俺に、レクレスは続けた。
「しっかし良く寝たなお前。三日もグースカしてて体、重くないのか?」
み………
「……三日…?」
「まぁ、無理もねぇか。お前の魔力ごっそり消えてたらしいからな。三日で目を覚ましたのはいい方なのかもしれねぇな」
「ま、魔力…」
「ーーそれはそうと、師匠から大まかな話は聞いたぜ」
「………」
ついに俺は押し黙った。
やはりレクレスは俺を警戒しているのだろうか?

「巨人族を倒すなんて、街の王族に仕える騎士でも3,4人束になって、やっと1人相手できるくらいの強さだ。『朝起きたらソイツが通りのど真ん中でへばってた』って皆噂してるぜ?師匠の店もボロボロだしよぉ…
取り合えず師匠が倒したって噂になってるが、お前が抑えたんだろ?『巨人族には勝てない』って、昔から俺に言ってたからな。別に師匠の話を疑うつもりはねぇが、本当ならお前はただ者じゃねぇことになるな」


コイツに話ても大丈夫か?
如何にも口が軽そうな気もするが…
でも、おじいさんから話聞いてるんなら隠しても…

「ま、言いたくなかったら今は言わなくてもいいぜ」

(え…)
俺はその言葉に拍子抜けしてしまった。
てっきり、なにがなんでも情報を聞き出されるのかと思っていたからだ。
ちょっと呆け面している俺を見るとレクレスは微笑をうかべてベッドに腰かけた。
重みでベッドが少しだけギッと揺れる。
「バカな俺でも師匠に隠し事の2,3はある。それに、師匠の話聞いたら誰だってお前が敵じゃないことくらいわかるって…のっ!」

ベチン!

いたぁっ!?」
笑顔で思いきり背中を叩かれた。
「はははっ! 暗い顔すんなって!」
レクレスは笑った。
その笑顔から、嘘偽りは感じられなかった。
俺も対抗してひきつった笑顔をむけた。
「おい、まだ言わないとは言ってないぞ…」
でも、なんだかんだ言って、無理に追及しないコイツはいい奴だな。
おじいさんにも大層なこと言っておいて結局伝えられずじまいだったし、本当のことを言えたのはただ一人、アンナだけだ。
ここでレクレスに言えないのなら、俺は他の誰にも言えなくなっちまう。
だからーー

「ここまできたら、もう隠す気もない」

似合わない真面目な顔つきになったレクレスに、俺は思いきって経緯をぶちまけた。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

まったく知らない世界に転生したようです

吉川 箱
ファンタジー
おっとりヲタク男子二十五歳成人。チート能力なし? まったく知らない世界に転生したようです。 何のヒントもないこの世界で、破滅フラグや地雷を踏まずに生き残れるか?! 頼れるのは己のみ、みたいです……? ※BLですがBがLな話は出て来ません。全年齢です。 私自身は全年齢の主人公ハーレムものBLだと思って書いてるけど、全く健全なファンタジー小説だとも言い張れるように書いております。つまり健全なお嬢さんの癖を歪めて火のないところへ煙を感じてほしい。 111話までは毎日更新。 それ以降は毎週金曜日20時に更新します。 カクヨムの方が文字数が多く、更新も先です。

異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~

松永 恭
ファンタジー
三十三歳のビルメン、白石恭真(しらいし きょうま)。 異世界に召喚されたが、与えられたスキルは「清掃」。 「役立たず」と蔑まれ、牢獄に放り込まれる。 だがモップひと振りで汚れも瘴気も消す“浄化スキル”は規格外。 牢獄を光で満たした結果、強制釈放されることに。 やがて彼は知らされる。 その力は偶然ではなく、光の女神に選ばれし“使徒”の証だと――。 金髪エルフやクセ者たちと繰り広げる、 戦闘より掃除が多い異世界ライフ。 ──これは、汚れと戦いながら世界を救う、 笑えて、ときにシリアスなおじさん清掃員の奮闘記である。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

碧天のノアズアーク

世良シンア
ファンタジー
両親の顔を知らない双子の兄弟。 あらゆる害悪から双子を守る二人の従者。 かけがえのない仲間を失った若き女冒険者。 病に苦しむ母を救うために懸命に生きる少女。 幼い頃から血にまみれた世界で生きる幼い暗殺者。 両親に売られ生きる意味を失くした女盗賊。 一族を殺され激しい復讐心に囚われた隻眼の女剣士。 Sランク冒険者の一人として活躍する亜人国家の第二王子。 自分という存在を心底嫌悪する龍人の男。 俗世とは隔絶して生きる最強の一族族長の息子。 強い自責の念に蝕まれ自分を見失った青年。 性別も年齢も性格も違う十三人。決して交わることのなかった者たちが、ノア=オーガストの不思議な引力により一つの方舟へと乗り込んでいく。そして方舟はいくつもの荒波を越えて、飽くなき探究心を原動力に世界中を冒険する。この方舟の終着点は果たして…… ※『side〇〇』という風に、それぞれのキャラ視点を通して物語が進んでいきます。そのため主人公だけでなく様々なキャラの視点が入り混じります。視点がコロコロと変わりますがご容赦いただけると幸いです。 ※一話ごとの字数がまちまちとなっています。ご了承ください。 ※物語が進んでいく中で、投稿済みの話を修正する場合があります。ご了承ください。 ※初執筆の作品です。誤字脱字など至らぬ点が多々あると思いますが、温かい目で見守ってくださると大変ありがたいです。

充実した人生の送り方 ~妹よ、俺は今異世界に居ます~

中畑 道
ファンタジー
「充実した人生を送ってください。私が創造した剣と魔法の世界で」 唯一の肉親だった妹の葬儀を終えた帰り道、不慮の事故で命を落とした世良登希雄は異世界の創造神に召喚される。弟子である第一女神の願いを叶えるために。 人類未開の地、魔獣の大森林最奥地で異世界の常識や習慣、魔法やスキル、身の守り方や戦い方を学んだトキオ セラは、女神から遣わされた御供のコタローと街へ向かう。 目的は一つ。充実した人生を送ること。

迷宮遊戯

ヘロー天気
ファンタジー
ダンジョンマスターに選ばれた魂が生前の渇望を満たすべく、迷宮構築のシステムを使って街づくりに没頭する。 「別に地下迷宮である必要はないのでは?」

処理中です...