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鬼喰いの森 ~ 香妖の森
56. 情報を収集する
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「コレ」
私は竜騎士のところに行くと、特製『ケチケチ精霊サンドイッチ』と水の入った木のコップを渡す。
「え、ああ。いいよ、君のだろ?」
「1、4、4、イリ」
十と百の位は複雑すぎて言えない。単数読みで『百四十四』を察しておくれ。
「1……もしかして金竜のことか?」
こくり。
「宿としてもてなしてくれるのか?」
こくり。
金払った分、変なもの提供しろって言われたら困るからね。焚き火は独占しないし、食事も渡す。
「君の食糧だろう? 君が食べていいよ」
拒否られた。これはつまり、毒見をしろってことかな。せっかく作ったのに。
悔しいので、手元の水を一口ごくりと飲み、さらに差し戻されたサンドイッチをはむっと食ってやる。
香ばしい紫パンがしゃくっと崩れ、とろけた三種類のチーズと発酵胡麻ペーストが舌の上で混ざり合う。しいたけもどきはモキュモキュと弾力があって、ナッツ類がカリコリと音を立て、レタスもどきは新鮮でさっぱりすっきり。絶妙なハーモニーが鼻腔を突き抜けた。
お、ケチったけど旨じょっぱい。んじゃ、もう一口あーん……。
「……美味しそうだね、やっぱり貰おうかな」
無駄にイケメンな愛想笑いに、ふつふつと殺意が湧く。すたすたすたと自分の陣地に戻って柿の実を一つ取ると、そちらも竜騎士に渡しに行った。
歯で豪快に噛みついて、皮をびーっと引っ張ると、甘々オレンジゼリーみたいな果実を目の前でむしゃってみせる。口の中であっという間に濃厚ジュースになる柔らかさ。
「い……いただくよ」
かじりかけを手渡してやった。奴は後でこっそり捨てるのかもしれないけれど、一口分はしっかり私の腹に入れたからね、万福柿さんや。
「リュウキシ……リュウ?」
ついでに爺様のミッションも挑戦してみよう。きょろきょろと辺りを探すように見渡す。はたして通じるだろうか。
つま先立ちしたり、身体を斜めに傾けたりして、何かを探す動きをくり返す。
「私の竜かい?」
「ソウソウ」
竜騎士は、うーん、と困ったようにしばらく宙を見てから、ふたたびこちらに視線を合わせてきた。
「街のね、外宿に置いているよ」
あそっか、街壁の内側には許可がないと竜や馬は入れない。……て、森は来れるよね。魔獣や魔樹に襲われる危険を考えたら、むしろそうすべき。
なんだね、独り肝試し大会でもしに来たのかね。
眉をちょこっとひそめて『納得できない』という表情を作る。そして可愛く人差し指を口元に当て、考え込むフリ。そのまま無邪気にコテリと小首を傾げてみせた。
さあ、竜がいない理由を吐け!
「探し人がいてね、そのお方が竜を大層お嫌いなのだそうだ。竜がいると何重もの魔術で近づけなくなっていると言われたので、王都との行き返り以外は使えないんだよ」
うん? もしかして。
私は荷物から、この地方の地図を引っ張り出す。ミーシュカも引っ掴んで、竜騎士のところへ戻り、地図を広げた。
「ココ……リュウキシ、リュウキシ、リュウキシ」
ただの当てずっぽうなのだけど、何重もの魔術で竜を拒否れる人間は、かなり数が限られるんじゃなかろーか。
五日前に検問のあった場所を指さし、竜騎士が沢山いたことを、同じ場所を少しずらしながらも何度もてんつくてん、と突いて表現する。
そして、ミーシュカのネックストラップに引っかけたお守りから、赤い糸を摘み上げて、もう一回「リュウキシ」と言った。
「赤、は第三師団の連中か。もしかして君はあの方を探している竜騎士にもう出会ったのかな。裏穀倉地帯を皮切りに、全国規模で探す予定だから」
なんですと。爺様のせいで、これからも旅程変更を覚悟しないといけないのか。
「……ワルイ、マドウシ? イイ、マドウシ?」
二日前に新しい街で練習した単語、『魔導士』が早速の大活躍だ。魔導士二人が契約獣の狐と虎を戦わせて魔術大戦争するという、三番目の御伽話の読み聞かせを何人かにお願いした。
カチューシャ以外に魔獣って見たことないのだけど、虎は尻尾が蠍で背中に羽も生えてて、狐は尻尾が九本あるらしい。そいで狐が虎の喉元に三日三晩かぶりつき続けて勝敗が決するとかいう、相変わらず単にバトるだけのお話。
「どうかな……」
え、迷うの。どっち。ねぇ、どういうこと?!
「あーいや。もちろん、この国が誇る偉大な魔導士様なんだよ。戦場ではかなり独断で物事を進める強引な方だったけど、九年大戦の英雄でね。便利な魔道具もたくさん発明してくださった驚異的な頭脳の持ち主で。
ただまぁ、消息の断ち方といい、その前後の周囲の証言といい、少し気になる点があって……」
はたしてその点とは。お話の続きを期待を込めてじっと待つが、「まぁまぁ」と笑われ、頭をぽんぽんされてしまった。一昨日洗っといて良かった。
日本みたいな高温多湿じゃないし、天使のサラサラヘアが維持できている。
「君は、すごくお年を召した、白髪で背の高い上級魔導士様をどこかで見かけなかったかな。銀色――灰色ともいうが――の猫を連れて歩いているはずなんだ。
比類なき大賢人だから、きっとすぐに判る」
通訳する爺様の声がひっじょーに自慢げである。ええもう、すぐに判りますねえ。
そいでカチューシャは灰色じゃなくて『銀色』猫だったのか。
これ、はっきり見たって言うと、容疑者コースで連行されかねないし。見てないって言うと、話打ち切りだし。
でも生きて歩いた姿は見てないからノーなのか? うーん。
「もし見たら、竜騎士たちに知らせてくれ。あと、その竜はその方には近づけないほうがいい。まだ幼い子竜だろ? 訓練された大人の騎竜ならともかく、魔導士への対応は解らないだろうから」
今、一緒にいますがどうしませう。
この人、あんま詳しく言う気はないわね。そう見切りをつけると、軽く頷いてフィオの隣に戻る。なんだかフィオも神妙な面持ちだ。
≪爺様ーっ、竜嫌いってどーいうことっ!?≫
私は自分のサンドイッチもそっちのけで、ミーシュカをゆさゆさ揺さぶった。熊乗っ取り犯め、何企んでやがるっ!
≪落ち着けっ! 誤解じゃ! ワシは竜が嫌いだなんぞ、一度も公言したことはない!≫
≪んじゃ、そう思ったことは?≫
≪………………≫
あるんかい。そういや、竜の乗り方の魔術、さっぱり全くからっきし覚えてなかったよね。
≪ワシが嫌いなのは、騎竜じゃ。竜の大陸におればよいものを、人間の戦にしゃしゃり出おって、無辜の民にまで被害を拡大しおる。竜さえいなければ、戦争はもっと小規模だったのじゃ≫
うーん。それは違うよ、爺様。私は向こうの世界の話をした。
人間が何世代もの時間をかけて、最優先事項として、より殺傷能力の高い武器を次々開発していっていること。
現代に近づくにつれ、より多くの一般人が犠牲になっていること。
どんどん進化した殺人兵器のせいで、世界はいつ滅んでもおかしくない状況になっていること。
≪人間は、竜がいなければ別の兵器を駆使して、出来るだけ多くの敵を殺そうとするよ。だから竜のせいなんかじゃない。そもそもどんな規模だろうと、人間が戦争しなければ済む話だもん。
人の戦に竜を利用するって決めた時点で、全面的に悪いのは人間なの≫
爺様が押し黙る。
≪でもさ爺様、そんな理由で竜除けの魔術なんかかけたの?≫
少なくとも死後は、あんま効果ないみたいだけど。
≪いや、んなものかけた記憶もないし、開発した記憶すらない≫
お、即座にきっぱり言い切った。こういうときの爺様は多分、信じていいような気がする。
≪騎竜を近づけたくない理由があるんでしょ≫
しゃなりしゃなりと白い毛並みを優雅に揺らし、カチューシャが私たちのそばにゆっくり来る。キャットウォークを歩くトップモデルですか。
≪どんな理由?≫
≪そんなこと、知る訣ないでしょっ≫
ぴしゃりと尻尾を振り下ろすのは余計です、お姐様。そいで後ろの壁のサボテン女王様は、ノリノリで真似しなくていいですってば。
良い子が自分もやらなきゃいけないと勘違いして、緑のぷるるんお尻を持ち上げちゃったでしょ。
≪検問を設置させたのは神殿長じゃろうが……失踪前後の証言というのが気になるの。穀倉地帯で尚かつ裏側なぞ、ワシとは縁もゆかりもないと解っておろうに≫
爺熊がうなってるので、しばらく皆で座談会。王都から霊山を挟んで北側を『裏穀倉地帯』と呼ぶのだそうだ。
アハ体験とやらを期待して、ポケットの雲小花を焚き火にくべてみた。立ちのぼる光の粒を眺めながら、いろいろと理由を考えたのだけれど、説得力のある答えは得られない。
カマキリ竜騎士からあれだけの情報を引き出せただけでも上等、という結論でお開きとなる。
自分を幼く見せ――もとい、相手を油断させる緑頭巾、今日もフル稼働だった。
……いや。あの竜騎士って優秀なんでしょ? もしかして、話しながらこっちの反応をうかがっていた?
もしかして漏らしてくれた情報って、すでに人々の間に広まっているような、どうでもいい内容だけ?
いかんせん判断材料が少ないので、すべては闇の中だ。仕方がないのでさっさと食事を終わらせ、マッサージという口実で白犬のモフモフ毛を堪能させてもらう。
寝れるかな、足が張って痛い。こういう日こそ、地面に穴を開けてお湯を張り、アロマオイル数滴落として足湯がしたかったのに。
そしてこのところの魔法練習のおかげで、私には今すぐそれが出来たのにっ。ちくせう。
フィオのぽってりお腹に頭を寄せ、大福よん豆を手の中でにぎにぎしながら、爺様のコートの上でゴロゴロ。
おじいちゃんのお守り石、巾着袋から出して結界作らなきゃ。そいで焚き火に枯れ枝も追加して、ついでにお小遣い欄に竜騎士からもらった金額を書き込んで、そしたらフィオと『お休みなさい、いい夢を』って願い合って、それからそれから――……。
****************
※お読みいただき、ありがとうございます。
もし宜しければ、感想をぜひお願いします。
「お気に入りに追加」だけでも押していただけると、幸いです!
すでに押してくださった皆様、感謝の気持ちでいっぱいです。
今日も明日も、たくさんの幸せが舞い込みますように。
私は竜騎士のところに行くと、特製『ケチケチ精霊サンドイッチ』と水の入った木のコップを渡す。
「え、ああ。いいよ、君のだろ?」
「1、4、4、イリ」
十と百の位は複雑すぎて言えない。単数読みで『百四十四』を察しておくれ。
「1……もしかして金竜のことか?」
こくり。
「宿としてもてなしてくれるのか?」
こくり。
金払った分、変なもの提供しろって言われたら困るからね。焚き火は独占しないし、食事も渡す。
「君の食糧だろう? 君が食べていいよ」
拒否られた。これはつまり、毒見をしろってことかな。せっかく作ったのに。
悔しいので、手元の水を一口ごくりと飲み、さらに差し戻されたサンドイッチをはむっと食ってやる。
香ばしい紫パンがしゃくっと崩れ、とろけた三種類のチーズと発酵胡麻ペーストが舌の上で混ざり合う。しいたけもどきはモキュモキュと弾力があって、ナッツ類がカリコリと音を立て、レタスもどきは新鮮でさっぱりすっきり。絶妙なハーモニーが鼻腔を突き抜けた。
お、ケチったけど旨じょっぱい。んじゃ、もう一口あーん……。
「……美味しそうだね、やっぱり貰おうかな」
無駄にイケメンな愛想笑いに、ふつふつと殺意が湧く。すたすたすたと自分の陣地に戻って柿の実を一つ取ると、そちらも竜騎士に渡しに行った。
歯で豪快に噛みついて、皮をびーっと引っ張ると、甘々オレンジゼリーみたいな果実を目の前でむしゃってみせる。口の中であっという間に濃厚ジュースになる柔らかさ。
「い……いただくよ」
かじりかけを手渡してやった。奴は後でこっそり捨てるのかもしれないけれど、一口分はしっかり私の腹に入れたからね、万福柿さんや。
「リュウキシ……リュウ?」
ついでに爺様のミッションも挑戦してみよう。きょろきょろと辺りを探すように見渡す。はたして通じるだろうか。
つま先立ちしたり、身体を斜めに傾けたりして、何かを探す動きをくり返す。
「私の竜かい?」
「ソウソウ」
竜騎士は、うーん、と困ったようにしばらく宙を見てから、ふたたびこちらに視線を合わせてきた。
「街のね、外宿に置いているよ」
あそっか、街壁の内側には許可がないと竜や馬は入れない。……て、森は来れるよね。魔獣や魔樹に襲われる危険を考えたら、むしろそうすべき。
なんだね、独り肝試し大会でもしに来たのかね。
眉をちょこっとひそめて『納得できない』という表情を作る。そして可愛く人差し指を口元に当て、考え込むフリ。そのまま無邪気にコテリと小首を傾げてみせた。
さあ、竜がいない理由を吐け!
「探し人がいてね、そのお方が竜を大層お嫌いなのだそうだ。竜がいると何重もの魔術で近づけなくなっていると言われたので、王都との行き返り以外は使えないんだよ」
うん? もしかして。
私は荷物から、この地方の地図を引っ張り出す。ミーシュカも引っ掴んで、竜騎士のところへ戻り、地図を広げた。
「ココ……リュウキシ、リュウキシ、リュウキシ」
ただの当てずっぽうなのだけど、何重もの魔術で竜を拒否れる人間は、かなり数が限られるんじゃなかろーか。
五日前に検問のあった場所を指さし、竜騎士が沢山いたことを、同じ場所を少しずらしながらも何度もてんつくてん、と突いて表現する。
そして、ミーシュカのネックストラップに引っかけたお守りから、赤い糸を摘み上げて、もう一回「リュウキシ」と言った。
「赤、は第三師団の連中か。もしかして君はあの方を探している竜騎士にもう出会ったのかな。裏穀倉地帯を皮切りに、全国規模で探す予定だから」
なんですと。爺様のせいで、これからも旅程変更を覚悟しないといけないのか。
「……ワルイ、マドウシ? イイ、マドウシ?」
二日前に新しい街で練習した単語、『魔導士』が早速の大活躍だ。魔導士二人が契約獣の狐と虎を戦わせて魔術大戦争するという、三番目の御伽話の読み聞かせを何人かにお願いした。
カチューシャ以外に魔獣って見たことないのだけど、虎は尻尾が蠍で背中に羽も生えてて、狐は尻尾が九本あるらしい。そいで狐が虎の喉元に三日三晩かぶりつき続けて勝敗が決するとかいう、相変わらず単にバトるだけのお話。
「どうかな……」
え、迷うの。どっち。ねぇ、どういうこと?!
「あーいや。もちろん、この国が誇る偉大な魔導士様なんだよ。戦場ではかなり独断で物事を進める強引な方だったけど、九年大戦の英雄でね。便利な魔道具もたくさん発明してくださった驚異的な頭脳の持ち主で。
ただまぁ、消息の断ち方といい、その前後の周囲の証言といい、少し気になる点があって……」
はたしてその点とは。お話の続きを期待を込めてじっと待つが、「まぁまぁ」と笑われ、頭をぽんぽんされてしまった。一昨日洗っといて良かった。
日本みたいな高温多湿じゃないし、天使のサラサラヘアが維持できている。
「君は、すごくお年を召した、白髪で背の高い上級魔導士様をどこかで見かけなかったかな。銀色――灰色ともいうが――の猫を連れて歩いているはずなんだ。
比類なき大賢人だから、きっとすぐに判る」
通訳する爺様の声がひっじょーに自慢げである。ええもう、すぐに判りますねえ。
そいでカチューシャは灰色じゃなくて『銀色』猫だったのか。
これ、はっきり見たって言うと、容疑者コースで連行されかねないし。見てないって言うと、話打ち切りだし。
でも生きて歩いた姿は見てないからノーなのか? うーん。
「もし見たら、竜騎士たちに知らせてくれ。あと、その竜はその方には近づけないほうがいい。まだ幼い子竜だろ? 訓練された大人の騎竜ならともかく、魔導士への対応は解らないだろうから」
今、一緒にいますがどうしませう。
この人、あんま詳しく言う気はないわね。そう見切りをつけると、軽く頷いてフィオの隣に戻る。なんだかフィオも神妙な面持ちだ。
≪爺様ーっ、竜嫌いってどーいうことっ!?≫
私は自分のサンドイッチもそっちのけで、ミーシュカをゆさゆさ揺さぶった。熊乗っ取り犯め、何企んでやがるっ!
≪落ち着けっ! 誤解じゃ! ワシは竜が嫌いだなんぞ、一度も公言したことはない!≫
≪んじゃ、そう思ったことは?≫
≪………………≫
あるんかい。そういや、竜の乗り方の魔術、さっぱり全くからっきし覚えてなかったよね。
≪ワシが嫌いなのは、騎竜じゃ。竜の大陸におればよいものを、人間の戦にしゃしゃり出おって、無辜の民にまで被害を拡大しおる。竜さえいなければ、戦争はもっと小規模だったのじゃ≫
うーん。それは違うよ、爺様。私は向こうの世界の話をした。
人間が何世代もの時間をかけて、最優先事項として、より殺傷能力の高い武器を次々開発していっていること。
現代に近づくにつれ、より多くの一般人が犠牲になっていること。
どんどん進化した殺人兵器のせいで、世界はいつ滅んでもおかしくない状況になっていること。
≪人間は、竜がいなければ別の兵器を駆使して、出来るだけ多くの敵を殺そうとするよ。だから竜のせいなんかじゃない。そもそもどんな規模だろうと、人間が戦争しなければ済む話だもん。
人の戦に竜を利用するって決めた時点で、全面的に悪いのは人間なの≫
爺様が押し黙る。
≪でもさ爺様、そんな理由で竜除けの魔術なんかかけたの?≫
少なくとも死後は、あんま効果ないみたいだけど。
≪いや、んなものかけた記憶もないし、開発した記憶すらない≫
お、即座にきっぱり言い切った。こういうときの爺様は多分、信じていいような気がする。
≪騎竜を近づけたくない理由があるんでしょ≫
しゃなりしゃなりと白い毛並みを優雅に揺らし、カチューシャが私たちのそばにゆっくり来る。キャットウォークを歩くトップモデルですか。
≪どんな理由?≫
≪そんなこと、知る訣ないでしょっ≫
ぴしゃりと尻尾を振り下ろすのは余計です、お姐様。そいで後ろの壁のサボテン女王様は、ノリノリで真似しなくていいですってば。
良い子が自分もやらなきゃいけないと勘違いして、緑のぷるるんお尻を持ち上げちゃったでしょ。
≪検問を設置させたのは神殿長じゃろうが……失踪前後の証言というのが気になるの。穀倉地帯で尚かつ裏側なぞ、ワシとは縁もゆかりもないと解っておろうに≫
爺熊がうなってるので、しばらく皆で座談会。王都から霊山を挟んで北側を『裏穀倉地帯』と呼ぶのだそうだ。
アハ体験とやらを期待して、ポケットの雲小花を焚き火にくべてみた。立ちのぼる光の粒を眺めながら、いろいろと理由を考えたのだけれど、説得力のある答えは得られない。
カマキリ竜騎士からあれだけの情報を引き出せただけでも上等、という結論でお開きとなる。
自分を幼く見せ――もとい、相手を油断させる緑頭巾、今日もフル稼働だった。
……いや。あの竜騎士って優秀なんでしょ? もしかして、話しながらこっちの反応をうかがっていた?
もしかして漏らしてくれた情報って、すでに人々の間に広まっているような、どうでもいい内容だけ?
いかんせん判断材料が少ないので、すべては闇の中だ。仕方がないのでさっさと食事を終わらせ、マッサージという口実で白犬のモフモフ毛を堪能させてもらう。
寝れるかな、足が張って痛い。こういう日こそ、地面に穴を開けてお湯を張り、アロマオイル数滴落として足湯がしたかったのに。
そしてこのところの魔法練習のおかげで、私には今すぐそれが出来たのにっ。ちくせう。
フィオのぽってりお腹に頭を寄せ、大福よん豆を手の中でにぎにぎしながら、爺様のコートの上でゴロゴロ。
おじいちゃんのお守り石、巾着袋から出して結界作らなきゃ。そいで焚き火に枯れ枝も追加して、ついでにお小遣い欄に竜騎士からもらった金額を書き込んで、そしたらフィオと『お休みなさい、いい夢を』って願い合って、それからそれから――……。
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