51 / 69
九重の章 京極御堂 14
~御殿山~ 9
しおりを挟む
『ここまでは、よう知っておる話と思うが、ここからが大事じゃ。
降将となった長髄彦は、饒速日命と神武帝の対面前に、饒速日命によって殺されたとも云われているが、密かに妹の登美夜須毘売によって逃されたのだ。』
経清と永衡の二人が息を呑む。
『むろん饒速日命も、もしかしたら神武帝も知っていたかもしれん。
はじめは、同族である出雲や石見の民に匿われた。
しかし、神武帝が高尾張邑の土蜘蛛を平らげて葛城に至り征東を完了すると、畝傍山の東南に橿原の都を定め、大物主の娘の媛蹈鞴五十鈴媛命を正妃とするに至って、再起は叶わないことを悟ってその地で薨じた。』
『亡骸は、はじめ出雲の富邑に、そして石見の八百山に移され、諏訪を経由して最終的にはこの陸奥の地、一森山に葬られたのだ。』
そう言って、頼時は静かに目を閉じた。
「一森山・・・。ということは、鹽竈の社に!」
経清が目を見開いた。
『かつて、出雲の民が辿った道を、逆に辿って至ったのだ。土蜘蛛と呼ばれた者たちと共に・・・。』
『話はそれだけではない。饒速日命の子の可美真手命は、物部氏の祖となり石見国にいたが、知っての通り政争に敗れた。
一方で、出雲の民と同族の媛蹈鞴五十鈴媛命と神武帝の子の神八井耳命は、多氏の祖であり、今は中央にはいない。』
『多くの民が、畿内の地を追われた・・・。和邇氏、蘇我氏、大伴氏、葛城氏、巨勢氏、そして阿倍氏・・・。』
最後の氏を聞いて、経清と永衡は顔を上げる。
『蝦夷とは何か・・。土蜘蛛とは?』
『はるか昔、豊葦原中国に塩と金(銅)を伝えた民は、はじめにこの鹽竈の地に至ったという。元から居た民と共に暮らし、西へと移っていった。』
『そして、恨みを持った御霊はこの地に還ってきた。その御霊を祀るは、かつての同胞と追われた人々。』
辺りの静寂が一層深くなっていくのが感じられる。
降将となった長髄彦は、饒速日命と神武帝の対面前に、饒速日命によって殺されたとも云われているが、密かに妹の登美夜須毘売によって逃されたのだ。』
経清と永衡の二人が息を呑む。
『むろん饒速日命も、もしかしたら神武帝も知っていたかもしれん。
はじめは、同族である出雲や石見の民に匿われた。
しかし、神武帝が高尾張邑の土蜘蛛を平らげて葛城に至り征東を完了すると、畝傍山の東南に橿原の都を定め、大物主の娘の媛蹈鞴五十鈴媛命を正妃とするに至って、再起は叶わないことを悟ってその地で薨じた。』
『亡骸は、はじめ出雲の富邑に、そして石見の八百山に移され、諏訪を経由して最終的にはこの陸奥の地、一森山に葬られたのだ。』
そう言って、頼時は静かに目を閉じた。
「一森山・・・。ということは、鹽竈の社に!」
経清が目を見開いた。
『かつて、出雲の民が辿った道を、逆に辿って至ったのだ。土蜘蛛と呼ばれた者たちと共に・・・。』
『話はそれだけではない。饒速日命の子の可美真手命は、物部氏の祖となり石見国にいたが、知っての通り政争に敗れた。
一方で、出雲の民と同族の媛蹈鞴五十鈴媛命と神武帝の子の神八井耳命は、多氏の祖であり、今は中央にはいない。』
『多くの民が、畿内の地を追われた・・・。和邇氏、蘇我氏、大伴氏、葛城氏、巨勢氏、そして阿倍氏・・・。』
最後の氏を聞いて、経清と永衡は顔を上げる。
『蝦夷とは何か・・。土蜘蛛とは?』
『はるか昔、豊葦原中国に塩と金(銅)を伝えた民は、はじめにこの鹽竈の地に至ったという。元から居た民と共に暮らし、西へと移っていった。』
『そして、恨みを持った御霊はこの地に還ってきた。その御霊を祀るは、かつての同胞と追われた人々。』
辺りの静寂が一層深くなっていくのが感じられる。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ
朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】
戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。
永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。
信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。
この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。
*ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。
If太平洋戦争 日本が懸命な判断をしていたら
みにみ
歴史・時代
もし、あの戦争で日本が異なる選択をしていたら?
国力の差を直視し、無謀な拡大を避け、戦略と外交で活路を開く。
真珠湾、ミッドウェー、ガダルカナル…そして終戦工作 分水嶺で下された「if」の決断。
破滅回避し、国家存続をかけたもう一つの終戦を描く架空戦記。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
裏長屋の若殿、限られた自由を満喫する
克全
歴史・時代
貧乏人が肩を寄せ合って暮らす聖天長屋に徳田新之丞と名乗る人品卑しからぬ若侍がいた。月のうち数日しか長屋にいないのだが、いる時には自ら竈で米を炊き七輪で魚を焼く小まめな男だった。
対米戦、準備せよ!
湖灯
歴史・時代
大本営から特命を受けてサイパン島に視察に訪れた柏原総一郎大尉は、絶体絶命の危機に過去に移動する。
そして21世紀からタイムリーㇷ゚して過去の世界にやって来た、柳生義正と結城薫出会う。
3人は協力して悲惨な負け方をした太平洋戦争に勝つために様々な施策を試みる。
小説家になろうで、先行配信中!
影武者の天下盗り
井上シオ
歴史・時代
「影武者が、本物を超えてしまった——」
百姓の男が“信長”を演じ続けた。
やがて彼は、歴史さえ書き換える“もう一人の信長”になる。
貧しい百姓・十兵衛は、織田信長の影武者として拾われた。
戦場で命を賭け、演じ続けた先に待っていたのは――本能寺の変。
炎の中、信長は死に、十兵衛だけが生き残った。
家臣たちは彼を“信長”と信じ、十兵衛もまた“信長として生きる”ことを選ぶ。
偽物だった男が、やがて本物を凌ぐ采配で天下を動かしていく。
「俺が、信長だ」
虚構と真実が交差するとき、“天下を盗る”のは誰か。
時は戦国。
貧しい百姓の青年・十兵衛は、戦火に焼かれた村で家も家族も失い、彷徨っていた。
そんな彼を拾ったのは、天下人・織田信長の家臣団だった。
その驚くべき理由は——「あまりにも、信長様に似ている」から。
歴史そのものを塗り替える——“影武者が本物を超える”成り上がり戦国譚。
(このドラマは史実を基にしたフィクションです)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる