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九重の章 京極御堂 15
~御殿山~ 10
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『ところで、大彦命は知っておるな?
崇神帝の頃、四道将軍大彦命は、弟の武渟川別命と共に、兄は北陸道を、弟は東海道を北上し、未だ従わぬ民を帰服させるために会津の地まで進軍し合流したという。
会津とは『出会う』ということだ。
その時、命たちに付き従った者たち、帰服した者たちを、「はせつかい」つまり丈部とした。
その中には当然、かの御霊を祀る人々も居た。』
『大彦命は阿倍氏の祖となる。
征夷大将軍坂上田村麻呂公の征討以来、蝦夷や土蜘蛛、夷狄と呼ばれた人々は、俘囚となり氏を賜ったが、大伴部は大伴氏、吉弥候部は毛野氏へと変えた。
そして丈部は、阿倍(安倍、阿部、安部、安陪)氏を名乗ったのだ。』
『大彦命の母方の祖は、饒速日命である。同じ血を受け継ぐものとして、阿部(安倍)を名乗り、この地を、御霊を祀っているのだ。』
「では、鹽竈神とは長髄彦の祟る御霊そのものであると、心得ればよいのですか?」
経清が静かに尋ねる。
『いや、かの神は。この地の者にとっては、畏れる神であり、敬う神であるとともに、崇める神でもある。
また朝廷にとっては、祟る神であり、鎮めるべき神であるとともに、忌むべき神でもある。
であるからこそ、長髄彦の名は秘され、賽の神とも、祓戸神とも、岐の神とも云われ、そしてその本体を塩土老翁神と云われるのだ。』
『このことを知るは、帝とその周りの一部の者、そして我ら御霊を祀る者たちだけじゃ。
この国の最大にして最強、大元たる怨霊、祟る神にも成りうる御霊を鎮め、祀るのが安倍に連なる者たちなのだ。
このこと、しかとその胸に刻みつけて貰いたい。』
頼時と貞任、宗任の三人が、経清と永衡の目を見つめて、ひとつ頷いた。
「「は、しかと承知つかまつりました。」」
見つめる目を見つめ返し、しばしの沈黙の後、二人が両手をついて一礼した。
ところで、こののち鹽竈神の右宮一禰宜新太夫家となる小野氏は、和珥氏の末である。
この時より二百年の昔、陸奥守に任ぜられて下向した小野氏に、小野篁がいる。
篁には、夜ごと六道珍皇寺の井戸を通って地獄に渡り、閻魔大王のもとで裁判の補佐をしていたという逸話があるが、この六道珍皇寺とともに、陸奥国の竹駒神社を創建したとも伝えられている。
この竹駒神社は、篁が伏見稲荷を勧請したと伝えられ、日本三大稲荷にも数えられることがある。
そして、現世においても鹽竈神社に匹敵するほどの参詣者と、人々の尊崇を集めている。
このような話を伝え聞くと、小野氏が新太夫家となった理由が分かるような気がする。
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会津とは『出会う』ということだ。
その時、命たちに付き従った者たち、帰服した者たちを、「はせつかい」つまり丈部とした。
その中には当然、かの御霊を祀る人々も居た。』
『大彦命は阿倍氏の祖となる。
征夷大将軍坂上田村麻呂公の征討以来、蝦夷や土蜘蛛、夷狄と呼ばれた人々は、俘囚となり氏を賜ったが、大伴部は大伴氏、吉弥候部は毛野氏へと変えた。
そして丈部は、阿倍(安倍、阿部、安部、安陪)氏を名乗ったのだ。』
『大彦命の母方の祖は、饒速日命である。同じ血を受け継ぐものとして、阿部(安倍)を名乗り、この地を、御霊を祀っているのだ。』
「では、鹽竈神とは長髄彦の祟る御霊そのものであると、心得ればよいのですか?」
経清が静かに尋ねる。
『いや、かの神は。この地の者にとっては、畏れる神であり、敬う神であるとともに、崇める神でもある。
また朝廷にとっては、祟る神であり、鎮めるべき神であるとともに、忌むべき神でもある。
であるからこそ、長髄彦の名は秘され、賽の神とも、祓戸神とも、岐の神とも云われ、そしてその本体を塩土老翁神と云われるのだ。』
『このことを知るは、帝とその周りの一部の者、そして我ら御霊を祀る者たちだけじゃ。
この国の最大にして最強、大元たる怨霊、祟る神にも成りうる御霊を鎮め、祀るのが安倍に連なる者たちなのだ。
このこと、しかとその胸に刻みつけて貰いたい。』
頼時と貞任、宗任の三人が、経清と永衡の目を見つめて、ひとつ頷いた。
「「は、しかと承知つかまつりました。」」
見つめる目を見つめ返し、しばしの沈黙の後、二人が両手をついて一礼した。
ところで、こののち鹽竈神の右宮一禰宜新太夫家となる小野氏は、和珥氏の末である。
この時より二百年の昔、陸奥守に任ぜられて下向した小野氏に、小野篁がいる。
篁には、夜ごと六道珍皇寺の井戸を通って地獄に渡り、閻魔大王のもとで裁判の補佐をしていたという逸話があるが、この六道珍皇寺とともに、陸奥国の竹駒神社を創建したとも伝えられている。
この竹駒神社は、篁が伏見稲荷を勧請したと伝えられ、日本三大稲荷にも数えられることがある。
そして、現世においても鹽竈神社に匹敵するほどの参詣者と、人々の尊崇を集めている。
このような話を伝え聞くと、小野氏が新太夫家となった理由が分かるような気がする。
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