エンリルの風 チートを貰って神々の箱庭で遊びましょ!

西八萩 鐸磨

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プロローグ

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 突然、テーブルの上のタブレットが光り、呼び出し音が鳴り響いた。


「もしもし?イナちゃん?あたし、ウカよ。お久しぶり~。元気してた?」

「あら、ウカちゃん?ご無沙汰ね、元気よ」

「そう、それは良かったわ」

「で、どうしたの?突然」

「うんあのさあ、例の件だけどさ。ちょうどいい子がみつかったから、そっちへ送ろうかと思って」

「え?ああ、あの件ね。そう、みつかったの。良かったわ、もうカレコレ探し始めて1600年くらいになるかしらね?」

「そうね、タケちゃんが亡くなってからだから、そのくらいかしらね」

「そうかあ・・・。あの子も、結構長い間、頑張ってくれたんだけどね。そんななるかあ・・・」

「じゃあ、準備ができたら、そっちに現れるから、よろしくね」

「オッケー、わかった。色々悪いわね、この埋め合わせは、あとでお返しするわ」

「別に気にしなくていいわよ。こっちこそ、昔はお世話になったんだから」

「まあね。そんなこともあったわね」

「じゃ、要件はそれだけだから。またね~」

「相変わらず、タンパクねえ。バーイ」


 タブレットの通話中の表示が消える。


「ふう・・・それに、にぎやかな子ね。いつも・・・」




*****************************



「おはよう」

「おう、おはよう!」

「なあ、大晦日の『笑ってはいけない』見た?」

「ああ、見たぜ」


 冬休み明けの学校で、久しぶりに顔を合わせたクラスメートたちと、休みの間の話で盛り上がる。


「ところで、今年の初詣はどこ行った?」

「俺んとこは、塩釜神社しおがまじんじゃ

「わざわざ行ったんだー。俺のうちは近場で、大崎八幡おおさきはちまんだな。聖也せいやのとこは?」

「ん?えっと、竹駒たけこまさんだよ。うちは毎年あそこさ」

「へー、そうなんだ~」


 俺は大伴聖也おおともせいや、高校2年生。

 うちの高校は、仙台市内でも有数の進学校だ。

 キャンパスは、市街地と広瀬川をはさんだ対岸にあって、周りはいわゆる文教地区で、緑もたくさん残ってる。




 キ~ン コ~ン カ~ン コ~ン~~~~

 始業式的なものと、簡単なホームルーム、休み明けのテストの話が終わると、解散となった。


「終わった、おわった~」

「帰って、ゲームしよ~」

「なんか食っていかね~?」

「んじゃあな~」


 初日の学校は早めに終わるので、みんなさっさと帰り始める。

 俺も、自転車あいしゃにまたがり、家へと向かった。


 いつもの坂道を軽快に下っていく。


 緩いカーブに差し掛かった時、横の小さな茂みから、茶色い小さな物体が飛び出してきた。


『キキキィー!』


 慌てて、ハンドルを切りながら、ブレーキをかける。

 間一髪、衝突は免れた。

 しかし、その小さな物体は、道路の真中で竦んだまま、固まっている。


 そこへ、向こうから対向車が迫ってくるのが視界に入った。


「危ない!」


 俺はとっさに、自転車を脇に放り出して、その小さな物体にダッシュで駆け寄ると、そのまま覆いかぶさるように懐に抱えて、向かってくる車を避けようとした。


『ガツッ』


 だが、道幅が狭く、完全には避けきれなかったため、車が俺に接触する。

 その瞬間、俺は背中に大きな衝撃を感じた。


『い、痛てえ!』


 ぶつかった衝撃で、吹き飛ばされた俺は、空中を飛びながら、何故か冷静に懐に抱いたその小さな物体を観察していた。


『茶色くて・・・ん、きつね色?モフモフしてて、とっても柔らかく肌触りがいい。子犬?耳が大きいな。シッポもふさふさ。・・・きつね?・・なんでこんな街なかに、キツネが?ん?狐?マジで?』


 次の瞬間、地面に叩きつけられた。

 信じられない痛みの中、薄れゆく意識。

 最後に俺の目に映ったのは、子ぎつねのつぶらな瞳と、ヒクヒクさせる小さくて黒い、艶やかな鼻だった。
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