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3.初めての戦闘
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「ほ」
光が消えると、あたりは森の中だった。
目の前には、石造りの神殿のような建物が、朽ちかけた体で佇んでいる。
ツタがからまりついていて、いつかテレビで見た、世界遺産のアンコールワットみたいだ。
高さはそれほどないから、このダンジョンには地下に伸びているバージョンだな。
「とりあえず、武器これでいいかな?」
俺は、プレートアーマーの冒険者(勇者?)から回収した剣を、鑑定してみた。
『鑑定』
-----------------
名前:無名 ランクC+
作成年代:現代
種別:ショートソード
材質:鞘,柄(青銅)刀身(合金(鋼95%ミスリル5%)
適正属性:水
効果:水属性魔法の効果を付加した時、物理攻撃力2倍
-----------------
あ、ミスリル含んでるんだ。
でも、これだとあのダンジョンボスには、ギリギリだったのかもなあ・・。
「何はともあれ、これをしばらく使うか」
そういえば!
「長距離転移の、詳細確認しとかないと」
説明は・・・、『一度訪れた場所であれば、マーキングにより位置を記憶し、何処へでも移動可能。ただし、移動距離はMP残量による』
「なるほど、大丈夫そうだな。とりあえずここを、マーキングしておこう」
『位置を記憶シマシタ』
「よし、と」
じゃあ、まずはどっちに向かおうかな。
「どこに向かうにしても、なにか目標なり、目的がほしいよな」
ん~と・・・目標は、とりあえず近場の集落に行きたいな。
食べ物も持ってないし・・あ、昼飯抜きだった。
そう、お金もない。
寝るところもなければ・・・。
「ん?そういえばこの格好、ブレザーの制服・・このままじゃ多分だめだよね?この世界じゃ」
ということで、目標は集落に行って、もろもろ手に入れること。(情報も含めて)
それから、当面の目的はどうしよかな~。
「あ~、俺って今まだレベル1だから、レベ上げしたいな」
よし、目的は適当に魔物を狩りつつ、レベル上げだ。
「魔物って適当に歩いてれば、出てくるかな?」
でも、いきなり高レベルな奴に出くわすのもなんだから、もっとこう、段階を踏みたいよね。
う~ん・・おう!確かスキルに探査系があったはず。
これか、空間把握。
『探査スキルと索敵スキルの統合されたスキルで、任意の範囲の物体を探査できる。探査時に、任意で種族別に色分けして表示できる。探査範囲は、任意で、地上、空中、地中、水中をオンオフできる。なお、この範囲はMP容量による▽』
おー、すごいな。
「およ?最後に下三角印があるぞ。押してみよう」
『表示された物体に対して、鑑定スキルを組み合わせることで、その詳細を知ることができる』
・・・凄すぎる。
1分ほど呆けたあと、再起動した俺は、早速スキルを展開させた。
「お、南の方角に1000キュビ?の距離に、ん~と、スライム発見!」
やった~スライム!・・って、やっぱスライムいるんだ。
ところで、キュピって何?
距離の単位みたいだけど。
ん~・・・こめかみに人差し指を当てて考える。
おお、世界知識という固有能力があったではないか。
なぜ今まで気が付かぬ?
『キュピは、長さの単位。1キュピは約50センチ』
・・ということは、500メートルくらい先か。(結構、俺って暗算得意。ソロバン習ってたんだ)
「じゃあ、まずは行ってみよー!」
俺は、歩きはじめてすぐに、自分の変化に気がついた。
全然、疲れないのである。
しかも、移動速度が速い!
「身体強化がレベル10だもんな」
自分で納得しつつ、1分もかからずに、そいつのそばまで到着した。
「ウサイン・ボルトの全力疾走かよ!」
自分でツッコミも入れておく。
10メートルほど先にいるのは、1体の半透明のアメーバのようなゲル状の物体。
ややブルーがかっているが、はっきりした色はない。
ポヨポヨというか、うにうにというか、不定形でうごめいている。
目鼻や口は無いようだ。(ドラクエとは違う)
よ~く見ると、真ん中に核のようなものがる。
『鑑定』
-----------------
名前:スライム ランクE
種族:スライム族
性別:無し
半透明のゲル状の魔物。物理攻撃が効きにくい。
死んだ魔物や動物を丸ごと取り込んで消化してしまう。
【ステータス】
レベル:1
HP :51/51
MP :10/10
【スキルステータス】
[ユニークスキル]
・体当たり(物理攻撃力5%上昇)
・攻撃力吸収(相手の物理攻撃力5%減少)
[固有能力]
・消化液飛散(相手の防御力及び敏捷5%減少)
討伐確認部位:魔石
可食性:不可
-----------------
ステータス低いけど、スキルをくらったら、いやな相手だな。
さて、どう戦えばいいかな?
相手は気づいていないみたいだが。
え~と、物理攻撃が効きにくいなら、魔法攻撃だよな。
『ファイヤボール』
俺は、たぶんスライムには火属性魔法だな、くらいの感覚で、ファイヤボールを当ててみた。
「ジュッ」
・・・・じゅって言って、一瞬で蒸発してしまった。
「ヤベッ、強すぎた?」
加減がわからないから、戦闘らしい、戦闘も経験せずに終わってしまった。
これじゃあ、いくら倒してもレベル上がんないだろうなあ・・。
「もう少し、まとまっているのを狙うか」
俺は、改めて空間把握スキルを展開させた。
探査範囲を5キロメートルまで広げた時、複数の魔物が集まっている場所を見つけた。
南東に9000キュピ、4.5キロメートルくらい行ったところだ。
さらに鑑定をかけてみると、スライムの他にゴブリンもいるみたいだ。
「よし、行ってみるか」
・・5分ほどで到着した。
スライムが5匹に、ゴブリンが10匹か。
心なしか、さっきのスライムより少し大きい気がする。
ゴブリンは、みな木の棒を持っている。
『鑑定』
-----------------
名前:スライム ランクE
種族:スライム族
性別:無し
半透明のゲル状の魔物。物理攻撃が効きにくい。
死んだ魔物や動物を丸ごと取り込んで消化してしまう。
【ステータス】
レベル:3
HP :53/53
MP :30/30
【スキルステータス】
[ユニークスキル]
・体当たり(物理攻撃力5%上昇)
・攻撃力吸収(相手の物理攻撃力5%減少)
[固有能力]
・消化液飛散(相手の防御力及び敏捷5%減少)
討伐確認部位:魔石
可食性:不可
-----------------
-----------------
名前:ゴブリン ランクE
種族:妖精族(小鬼族)
性別:雄
小型の醜い人型の魔物。肌の色は緑色。鼻や耳が尖っていて禿げ頭で目つきが悪い。
【ステータス】
レベル:3
HP :265/265
MP :0/0
【スキルステータス】
[ユニークスキル]
醜悪(相手の精神を低下させ、攻撃力及び防御力を1%減少)
[固有能力]
棒術LV1
討伐確認部位:魔石及び耳
可食性:不可
-----------------
「やっぱり、さっきのよりレベルが上か」
よく見ると、ゴブリンとスライムが、お互いを牽制し合いながら、何かを囲んでいる。
「あ!」
ゴブリンが1匹、スライムに体当たりをくらって、吹っ飛んだことで、密集していた魔物たちの間に、隙間ができた。
その隙間の奥の、魔物の輪の真ん中に、人のようなものが、うずくまっているのが見えた。
やばいな、このままだとやられちゃうぞ。
『ファイヤボール』
俺は、まずスライムの方を狙って、魔法を連続で放った。
あっと言う間に、5体のスライムが蒸発する。
その時点で、ようやく俺の存在に気がついたゴブリンたちが、一斉に俺の方を振り返った。
「ガッ、ガッ」
なんとも形容しがたい声を発し、木の棒を振り上げてこっちへ向かってきた。
その動きは全く統制がとれておらず、1匹ずつバラバラに攻撃してきた。
ケンカの経験すらない俺は、一瞬ヒヤッとしたが、すぐにあることに気がついた。
--奴らの動きが遅いのだ。
襲ってきた瞬間に身構えたのが、馬鹿らしく思えるほど、俺にはゴブリンの動きが止まったように見え、左手に持った(俺って左利きなの)剣で簡単に斬り倒すことができた。
文字どおり、瞬きをする間に、10匹のゴブリンは、すでに死体となって足元に転がっていた。
「ううううう」
魔物がいなくなって、静寂が戻ってきた森に、うめき声のようなものが聞こえてきて、俺はその出どころの方へ振り向いた。
振り向いた目線の先には、さきほどまで魔物たちに囲まれていたものの姿があった。
ボロボロで泥だらけ、ところどころ擦り切れ破れている、オーバーオールのような服を着た、小柄な人の姿だった。
その華奢な体から、女性・・・女の子だろう。
うずくまって、顔を手で覆い、うめき声と思ったのは、泣き声だったらしい。
「大丈夫か?」
俺は、そっと近づくと、驚かさないように気をつけながら、声をかけた。
「もう、魔物はぜんぶ倒したから、安心していいぞ」
嗚咽を洩らし続ける女の子に、そう言ってやった。
向こうをむいているので、背中越しに見える髪の毛の色は、明るい茶色・・金色にも見えるそれは、とても柔らかそうだった。
「怪我とかしているわけじゃないよな?」
一向に立ち上がらない彼女に、俺はもう一度話しかけた。
「ううん、だいじょうぶ。どこも怪我してない。こわかっただけなの」
ようやく泣くのをやめて、返事をした女の子が、右手で目をこすりながら立ちあがった。
身長は100センチもない、本当に小柄な子だ。
「お兄ちゃん、助けてくれてありがとう!」
そう言って、振り向いて顔を上げたその子の姿を見て、俺は一瞬息を呑んだ。
「えへっ。」
涙の跡が残る顔で、はにかんだ女の子の頭の上に、三角のフワフワした毛を生やした耳が、ぴょこんと立ち上がったのだ。
そして、うずくまっていた時は、股の間にでも挟んでいたのか、まるでマフラーのようにモフモフしたシッポが、後ろで左右にゆれていた。
「もしかして、狐人さん?」
俺は、思わずバカな質問をしてしまっていた。
「そうだよ」
その質問に、なんの屈託もなく答えて、小首をかしげる。
俺は、魔物を見ても感じなかった、異世界に来たのだという実感を、何故かこの時、はじめて感じていたのだった。
「お兄ちゃんどうかした?」
「あ、ごめんごめん。大丈夫だよ」
女の子の笑顔と、30秒ほど見つめ合ったまま固まっていた俺は、ようやく再起動した。
「ところで、君はどうして、こんなところにいたの?」
「んとね、人探し」
「一人で?」
「うん」
女の子が意外なことを言ってきた。
「こんな、魔物がうじゃうじゃいる森の中に、一人で行っちゃダメだって、パパやママから言われなかったの?」
俺は、女の子と目線が同じ高さになるように、しゃがんだ。
「パパもママもいないもん・・・」
すると、女の子は再び目に涙をためてそう言った。
「え?じゃあ、他に家族とかは?」
「・・・」
女の子が首を振る。
どういうことだ?
孤児ということか?
それとも、単なる迷子?
「そうだ!キミ、お名前は?」
俺は、話題を変えようと、明るい声を出して聞いた。
「コリン」
すると、長いまつげに涙の粒を残しながら、笑顔を一生懸命に作って答えてくれた。
「俺は、セイヤ。よろしくな」
俺も、コリンの頭をなでてやりながら、笑顔で答えてやった。
するとコリンは、今度は本当の笑顔になった。
「コリン、俺はこれから、どっか近くの村か町に行こうと思うんだけど、良かったら一緒に来ないか?」
俺は、こんな小さな女の子を、魔物がいる森の中に置いていくわけにはいかないと思い、そう言ってみた。
「うん、コリンもセイヤお兄ちゃんと、一緒に行きたい!」
「よし、一緒に行こう!」
俺はもう一度、頭をなでてやった。
・・・・けして、ホヨホヨの三角耳に触りたかった訳じゃありません。
『ヒール&クリーン』
改めてコリンの全身を確かめると、いたるところにすり傷があるものの、大きな怪我はなさそうだった。
俺は、ヒールとクリーンをかけてやることにした。
「すごーい、ピカピカ!セイヤお兄ちゃんありがとう!」
服が新品のようにキレイになり、血がにじんでいた肌もすべすべの状態になった自分を見て、コリンがとびっきりの笑顔でお礼を言ってきた。
めちゃくちゃカワイイな、この子。
「どういたしまして」
俺は、ツヤツヤサラサラになった、きつね色の髪のコリンの頭をまた撫でてあげた。
コリンも気持ちよさそうに目を細める。
「さ、じゃあ出発しよう」
「うん!」
俺は足を伸ばすと、あたりを見まわし、ふとコリンの方を見て言った。
「ところでコリンは、どっちから来たんだ?」
「遠いとこ」
「遠いとこ?」
なんか、斜め上の方を指差すコリンに、俺は首をひねった。
「そこは村かなんかか?」
「ううん、おっきな町だよ」
「そうか、町の名前は?」
「ん~~・・よくわかんない」
コリンが、首を振る。
まだ小さいからな、しょうがないか?
「そういえば、コリンは何歳だい?」
「んとね、5歳!もうすぐ6歳!」
5歳でこんな森の中に1人で来るなんて、何か余程の理由があるのかな?
しかも、親も家族もいないなんて・・・。
「セイヤお兄ちゃんは、何歳?」
「ん、俺か?俺は、17歳だ」
「おっとな~!」
「ははは、そうか?まだ子どもだと思うけどな」
コリンのいた集落が一番近いのかと思っていたが、どうも違うらしい。
どうすっかな・・・さっきの探査の時に、もう少し東よりの方に、川があったな。
川沿いに下れば、何らかの集落があるだろう。
よし、そうしよう。
「コリン、こっちへ行こう」
俺が東へ向けて歩きだすと、コリンが右手で俺の左手を握ってきた。
とっても小さくて、可愛い手だ。
「うん、行こう、いこう」
成り行きで、二人連れになった俺たちは、ようやくその場をあとにした。
・・・あ、いい忘れてたけど、倒したスライムとゴブリンの討伐部位は、ちゃんと回収してアイテムボックスにしまいました・・・て、ダレに言ってんだ?
光が消えると、あたりは森の中だった。
目の前には、石造りの神殿のような建物が、朽ちかけた体で佇んでいる。
ツタがからまりついていて、いつかテレビで見た、世界遺産のアンコールワットみたいだ。
高さはそれほどないから、このダンジョンには地下に伸びているバージョンだな。
「とりあえず、武器これでいいかな?」
俺は、プレートアーマーの冒険者(勇者?)から回収した剣を、鑑定してみた。
『鑑定』
-----------------
名前:無名 ランクC+
作成年代:現代
種別:ショートソード
材質:鞘,柄(青銅)刀身(合金(鋼95%ミスリル5%)
適正属性:水
効果:水属性魔法の効果を付加した時、物理攻撃力2倍
-----------------
あ、ミスリル含んでるんだ。
でも、これだとあのダンジョンボスには、ギリギリだったのかもなあ・・。
「何はともあれ、これをしばらく使うか」
そういえば!
「長距離転移の、詳細確認しとかないと」
説明は・・・、『一度訪れた場所であれば、マーキングにより位置を記憶し、何処へでも移動可能。ただし、移動距離はMP残量による』
「なるほど、大丈夫そうだな。とりあえずここを、マーキングしておこう」
『位置を記憶シマシタ』
「よし、と」
じゃあ、まずはどっちに向かおうかな。
「どこに向かうにしても、なにか目標なり、目的がほしいよな」
ん~と・・・目標は、とりあえず近場の集落に行きたいな。
食べ物も持ってないし・・あ、昼飯抜きだった。
そう、お金もない。
寝るところもなければ・・・。
「ん?そういえばこの格好、ブレザーの制服・・このままじゃ多分だめだよね?この世界じゃ」
ということで、目標は集落に行って、もろもろ手に入れること。(情報も含めて)
それから、当面の目的はどうしよかな~。
「あ~、俺って今まだレベル1だから、レベ上げしたいな」
よし、目的は適当に魔物を狩りつつ、レベル上げだ。
「魔物って適当に歩いてれば、出てくるかな?」
でも、いきなり高レベルな奴に出くわすのもなんだから、もっとこう、段階を踏みたいよね。
う~ん・・おう!確かスキルに探査系があったはず。
これか、空間把握。
『探査スキルと索敵スキルの統合されたスキルで、任意の範囲の物体を探査できる。探査時に、任意で種族別に色分けして表示できる。探査範囲は、任意で、地上、空中、地中、水中をオンオフできる。なお、この範囲はMP容量による▽』
おー、すごいな。
「およ?最後に下三角印があるぞ。押してみよう」
『表示された物体に対して、鑑定スキルを組み合わせることで、その詳細を知ることができる』
・・・凄すぎる。
1分ほど呆けたあと、再起動した俺は、早速スキルを展開させた。
「お、南の方角に1000キュビ?の距離に、ん~と、スライム発見!」
やった~スライム!・・って、やっぱスライムいるんだ。
ところで、キュピって何?
距離の単位みたいだけど。
ん~・・・こめかみに人差し指を当てて考える。
おお、世界知識という固有能力があったではないか。
なぜ今まで気が付かぬ?
『キュピは、長さの単位。1キュピは約50センチ』
・・ということは、500メートルくらい先か。(結構、俺って暗算得意。ソロバン習ってたんだ)
「じゃあ、まずは行ってみよー!」
俺は、歩きはじめてすぐに、自分の変化に気がついた。
全然、疲れないのである。
しかも、移動速度が速い!
「身体強化がレベル10だもんな」
自分で納得しつつ、1分もかからずに、そいつのそばまで到着した。
「ウサイン・ボルトの全力疾走かよ!」
自分でツッコミも入れておく。
10メートルほど先にいるのは、1体の半透明のアメーバのようなゲル状の物体。
ややブルーがかっているが、はっきりした色はない。
ポヨポヨというか、うにうにというか、不定形でうごめいている。
目鼻や口は無いようだ。(ドラクエとは違う)
よ~く見ると、真ん中に核のようなものがる。
『鑑定』
-----------------
名前:スライム ランクE
種族:スライム族
性別:無し
半透明のゲル状の魔物。物理攻撃が効きにくい。
死んだ魔物や動物を丸ごと取り込んで消化してしまう。
【ステータス】
レベル:1
HP :51/51
MP :10/10
【スキルステータス】
[ユニークスキル]
・体当たり(物理攻撃力5%上昇)
・攻撃力吸収(相手の物理攻撃力5%減少)
[固有能力]
・消化液飛散(相手の防御力及び敏捷5%減少)
討伐確認部位:魔石
可食性:不可
-----------------
ステータス低いけど、スキルをくらったら、いやな相手だな。
さて、どう戦えばいいかな?
相手は気づいていないみたいだが。
え~と、物理攻撃が効きにくいなら、魔法攻撃だよな。
『ファイヤボール』
俺は、たぶんスライムには火属性魔法だな、くらいの感覚で、ファイヤボールを当ててみた。
「ジュッ」
・・・・じゅって言って、一瞬で蒸発してしまった。
「ヤベッ、強すぎた?」
加減がわからないから、戦闘らしい、戦闘も経験せずに終わってしまった。
これじゃあ、いくら倒してもレベル上がんないだろうなあ・・。
「もう少し、まとまっているのを狙うか」
俺は、改めて空間把握スキルを展開させた。
探査範囲を5キロメートルまで広げた時、複数の魔物が集まっている場所を見つけた。
南東に9000キュピ、4.5キロメートルくらい行ったところだ。
さらに鑑定をかけてみると、スライムの他にゴブリンもいるみたいだ。
「よし、行ってみるか」
・・5分ほどで到着した。
スライムが5匹に、ゴブリンが10匹か。
心なしか、さっきのスライムより少し大きい気がする。
ゴブリンは、みな木の棒を持っている。
『鑑定』
-----------------
名前:スライム ランクE
種族:スライム族
性別:無し
半透明のゲル状の魔物。物理攻撃が効きにくい。
死んだ魔物や動物を丸ごと取り込んで消化してしまう。
【ステータス】
レベル:3
HP :53/53
MP :30/30
【スキルステータス】
[ユニークスキル]
・体当たり(物理攻撃力5%上昇)
・攻撃力吸収(相手の物理攻撃力5%減少)
[固有能力]
・消化液飛散(相手の防御力及び敏捷5%減少)
討伐確認部位:魔石
可食性:不可
-----------------
-----------------
名前:ゴブリン ランクE
種族:妖精族(小鬼族)
性別:雄
小型の醜い人型の魔物。肌の色は緑色。鼻や耳が尖っていて禿げ頭で目つきが悪い。
【ステータス】
レベル:3
HP :265/265
MP :0/0
【スキルステータス】
[ユニークスキル]
醜悪(相手の精神を低下させ、攻撃力及び防御力を1%減少)
[固有能力]
棒術LV1
討伐確認部位:魔石及び耳
可食性:不可
-----------------
「やっぱり、さっきのよりレベルが上か」
よく見ると、ゴブリンとスライムが、お互いを牽制し合いながら、何かを囲んでいる。
「あ!」
ゴブリンが1匹、スライムに体当たりをくらって、吹っ飛んだことで、密集していた魔物たちの間に、隙間ができた。
その隙間の奥の、魔物の輪の真ん中に、人のようなものが、うずくまっているのが見えた。
やばいな、このままだとやられちゃうぞ。
『ファイヤボール』
俺は、まずスライムの方を狙って、魔法を連続で放った。
あっと言う間に、5体のスライムが蒸発する。
その時点で、ようやく俺の存在に気がついたゴブリンたちが、一斉に俺の方を振り返った。
「ガッ、ガッ」
なんとも形容しがたい声を発し、木の棒を振り上げてこっちへ向かってきた。
その動きは全く統制がとれておらず、1匹ずつバラバラに攻撃してきた。
ケンカの経験すらない俺は、一瞬ヒヤッとしたが、すぐにあることに気がついた。
--奴らの動きが遅いのだ。
襲ってきた瞬間に身構えたのが、馬鹿らしく思えるほど、俺にはゴブリンの動きが止まったように見え、左手に持った(俺って左利きなの)剣で簡単に斬り倒すことができた。
文字どおり、瞬きをする間に、10匹のゴブリンは、すでに死体となって足元に転がっていた。
「ううううう」
魔物がいなくなって、静寂が戻ってきた森に、うめき声のようなものが聞こえてきて、俺はその出どころの方へ振り向いた。
振り向いた目線の先には、さきほどまで魔物たちに囲まれていたものの姿があった。
ボロボロで泥だらけ、ところどころ擦り切れ破れている、オーバーオールのような服を着た、小柄な人の姿だった。
その華奢な体から、女性・・・女の子だろう。
うずくまって、顔を手で覆い、うめき声と思ったのは、泣き声だったらしい。
「大丈夫か?」
俺は、そっと近づくと、驚かさないように気をつけながら、声をかけた。
「もう、魔物はぜんぶ倒したから、安心していいぞ」
嗚咽を洩らし続ける女の子に、そう言ってやった。
向こうをむいているので、背中越しに見える髪の毛の色は、明るい茶色・・金色にも見えるそれは、とても柔らかそうだった。
「怪我とかしているわけじゃないよな?」
一向に立ち上がらない彼女に、俺はもう一度話しかけた。
「ううん、だいじょうぶ。どこも怪我してない。こわかっただけなの」
ようやく泣くのをやめて、返事をした女の子が、右手で目をこすりながら立ちあがった。
身長は100センチもない、本当に小柄な子だ。
「お兄ちゃん、助けてくれてありがとう!」
そう言って、振り向いて顔を上げたその子の姿を見て、俺は一瞬息を呑んだ。
「えへっ。」
涙の跡が残る顔で、はにかんだ女の子の頭の上に、三角のフワフワした毛を生やした耳が、ぴょこんと立ち上がったのだ。
そして、うずくまっていた時は、股の間にでも挟んでいたのか、まるでマフラーのようにモフモフしたシッポが、後ろで左右にゆれていた。
「もしかして、狐人さん?」
俺は、思わずバカな質問をしてしまっていた。
「そうだよ」
その質問に、なんの屈託もなく答えて、小首をかしげる。
俺は、魔物を見ても感じなかった、異世界に来たのだという実感を、何故かこの時、はじめて感じていたのだった。
「お兄ちゃんどうかした?」
「あ、ごめんごめん。大丈夫だよ」
女の子の笑顔と、30秒ほど見つめ合ったまま固まっていた俺は、ようやく再起動した。
「ところで、君はどうして、こんなところにいたの?」
「んとね、人探し」
「一人で?」
「うん」
女の子が意外なことを言ってきた。
「こんな、魔物がうじゃうじゃいる森の中に、一人で行っちゃダメだって、パパやママから言われなかったの?」
俺は、女の子と目線が同じ高さになるように、しゃがんだ。
「パパもママもいないもん・・・」
すると、女の子は再び目に涙をためてそう言った。
「え?じゃあ、他に家族とかは?」
「・・・」
女の子が首を振る。
どういうことだ?
孤児ということか?
それとも、単なる迷子?
「そうだ!キミ、お名前は?」
俺は、話題を変えようと、明るい声を出して聞いた。
「コリン」
すると、長いまつげに涙の粒を残しながら、笑顔を一生懸命に作って答えてくれた。
「俺は、セイヤ。よろしくな」
俺も、コリンの頭をなでてやりながら、笑顔で答えてやった。
するとコリンは、今度は本当の笑顔になった。
「コリン、俺はこれから、どっか近くの村か町に行こうと思うんだけど、良かったら一緒に来ないか?」
俺は、こんな小さな女の子を、魔物がいる森の中に置いていくわけにはいかないと思い、そう言ってみた。
「うん、コリンもセイヤお兄ちゃんと、一緒に行きたい!」
「よし、一緒に行こう!」
俺はもう一度、頭をなでてやった。
・・・・けして、ホヨホヨの三角耳に触りたかった訳じゃありません。
『ヒール&クリーン』
改めてコリンの全身を確かめると、いたるところにすり傷があるものの、大きな怪我はなさそうだった。
俺は、ヒールとクリーンをかけてやることにした。
「すごーい、ピカピカ!セイヤお兄ちゃんありがとう!」
服が新品のようにキレイになり、血がにじんでいた肌もすべすべの状態になった自分を見て、コリンがとびっきりの笑顔でお礼を言ってきた。
めちゃくちゃカワイイな、この子。
「どういたしまして」
俺は、ツヤツヤサラサラになった、きつね色の髪のコリンの頭をまた撫でてあげた。
コリンも気持ちよさそうに目を細める。
「さ、じゃあ出発しよう」
「うん!」
俺は足を伸ばすと、あたりを見まわし、ふとコリンの方を見て言った。
「ところでコリンは、どっちから来たんだ?」
「遠いとこ」
「遠いとこ?」
なんか、斜め上の方を指差すコリンに、俺は首をひねった。
「そこは村かなんかか?」
「ううん、おっきな町だよ」
「そうか、町の名前は?」
「ん~~・・よくわかんない」
コリンが、首を振る。
まだ小さいからな、しょうがないか?
「そういえば、コリンは何歳だい?」
「んとね、5歳!もうすぐ6歳!」
5歳でこんな森の中に1人で来るなんて、何か余程の理由があるのかな?
しかも、親も家族もいないなんて・・・。
「セイヤお兄ちゃんは、何歳?」
「ん、俺か?俺は、17歳だ」
「おっとな~!」
「ははは、そうか?まだ子どもだと思うけどな」
コリンのいた集落が一番近いのかと思っていたが、どうも違うらしい。
どうすっかな・・・さっきの探査の時に、もう少し東よりの方に、川があったな。
川沿いに下れば、何らかの集落があるだろう。
よし、そうしよう。
「コリン、こっちへ行こう」
俺が東へ向けて歩きだすと、コリンが右手で俺の左手を握ってきた。
とっても小さくて、可愛い手だ。
「うん、行こう、いこう」
成り行きで、二人連れになった俺たちは、ようやくその場をあとにした。
・・・あ、いい忘れてたけど、倒したスライムとゴブリンの討伐部位は、ちゃんと回収してアイテムボックスにしまいました・・・て、ダレに言ってんだ?
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何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
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