エンリルの風 チートを貰って神々の箱庭で遊びましょ!

西八萩 鐸磨

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19.はじめてのパーティー

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 ヒタト国との国境地帯は、4000キュピ(2000m)級の山々が連なり、河と渓谷が縦横に走る荒涼とした土地だった。


 エア村を、Bランク以上のパーティー数組と、Cランク以上のソロの冒険者たち数十人と共に、国境へ向けて北上した。

 馬車に乗り合って、半日ほど進むと、標高が高くなり、木々もまばらになってくる。

 数日前に、魔物の目撃情報のあったあたりだ。


「おい坊主、エルちゃんの足を引っ張るんじゃねえぞ。お前のせいで、怪我させたら、ただじゃおかねえからな」


 目の前に座った、4人組のBランクパーティー『銀狼』のひとり、シンという名前の若い男が言った。

 人族の、20代半ばくらいで、爽やかなイケメンだ。

 彼がこのパーティーのリーダーで、Bランクの冒険者らしい。


「ええ、気をつけます。こういう、大規模な討伐依頼は初めてなんで、ご迷惑をお掛けしないように頑張ります」

「シン、あんまりプレッシャーをかけるんじゃないよ。エルがパートナーに選んだんだ、少なくとも足でまといにはならないだろうさ。ねえ、坊や」


 俺が、礼儀正しく頭を下げて答えていると、シンさんの隣に座っていた、猫の獣人のお姉さんが言ってきた。

 20代前半の、ナイスバディな色っぽいお姉さんだ。

 Cランクの冒険者で、ミーシャというらしい。

 シャム猫っぽい。


「は、はい。そうならないように、努力しま・・うっ」

「大丈夫。実戦経験を積ませるために連れてきたんだから、そうならないように、あたしがなんとかする」


 ミーシャさんのスラリと伸びた脚に、思わず目が行っていた俺の脇腹を、目立たないように肘打ちをして、エルが答えを横取りした。


「ま、そりゃそうだな。いつも、エルちゃんが最後は全部持っていっちまうもんな。がははは!」


 対面の一番奥から、ザラザラした大声で言ってきたのは、虎の獣人の大男。

 3人目のメンバー、ダンさんだ。

 30代半ばくらいで、とにかく声がでかい。


「それはいつも、お前の詰めが甘いからだ」


 俺たちの座っている側、俺、エルときて、ひとつ席を開けて、ダンさんの向かい側に座る、ダークエルフのお姉さん~カリナさんが、ボソリとつぶやいた。

 灰色のローブを着て、フードを目深にかぶっているので、あまり表情は見えないが、ものすごい美人なのは確かだ。

 年齢は・・・きっと100歳は超えてると思うけど、怖くて聞けませんでした。


「がははは、目の前の敵に集中すると、周りが見えなくなってしまってな。面目ねえ!」

「ちっ、単細胞が・・」

「ハハハハ。ダンさん、俺もそういうとこあるから、ちょっと分かります」


 なんかその場の雰囲気が険悪になりそうなので、俺はとりあえずフォローしようとした。


「は~~・・だから、あんたはいつ迄たってもヘッポコなのよ」


 なのに、横でエルが深い溜め息をついて、つぶやいた。


「「ぷっ!」」


 すると、シンさんとミーシャさんが同時に吹き出していた。



 じつは、俺が必要以上に馬車の中で、気を使っていたのは理由があった。


 まず、俺とエルが二人でパーティーを組んで、討伐依頼に行くと言うと、コリンが自分も一緒に行くと騒ぎ出した。

 だが、今回はさすがに他の冒険者やパーティーがいるので、冒険者登録もしていない、ましてやまだ5歳の子供を連れて行くわけにはいかない。

 たっぷり数時間をかけて、説得した。

 その結果、『必ず帰ってくること』、『帰ってきたら二人でデートに行くこと』、『今回のパーティーは仮で、コリンが冒険者登録したら、正式なパーティーを組むこと』の3つを約束させられて、ようやく納得してもらったのだった。


「コリンは、いい子にしてちゃんと待ってるから、早く帰ってきてね」の言葉に見送られて、朝イチでパーティー登録するために、冒険者ギルドへ向かったのだった。


 ギルドに到着すると、エルと二人でパーティー登録用の窓口へ並んだ。

 窓口にはすでに2組ほどが並んでいたので、その後ろについた。

 すると、なにやらギルド内がザワザワしだした。

 遠くの方では、「なんであんな奴と?」とか「あのエルさまが、パーティー!?」とか、ささやいているのが聞こえてくる。


「なあエル、なんかみんながこっちを見ている気がするんだが?」


 中には、指を指しているやつもいる。


「べつに気にしなくていい」

「いや、でも主に俺のこと睨んでいる人が殆どなんだけど・・」


 動揺する俺をよそに、エルは、前を向いたままだ。


「おう、アンチャン」

「だれの許可をもらって」

「エル様と」

「「「一緒にいるんだ?」」」


 大・中・小もしくは、デブ・ガリ・チビの、絵に描いたようなチンピラ風の3人組が、声をかけてきた。

 ・・・・ここで、テンプレくるかあ!

 ずいぶんと長かった気がするけど、なんか感動するなあ・・・。


「感動・・」

「「「ああん!?何言ってんだ、この坊主!」」」


 まずい、心の声が漏れてしまった。


「あ、いや。なんでもありません!な、なんでしょうか?」

「だから、なんで」

愛しいとしのエル様と」

「一緒にいるんだって」

「「「言ってるんだよ!」」」


 3人が同時に、汚い顔を近づけてくる。


「な、なんでって。パーティー登録をしようと思って・・」


 俺は、両手を前に突き出して、近づいてくるのを必死で阻止する。


「はあーーっ?!」

「パーティーを」

「組むだあーーっ!?」

「「「1万年早いわ!!」」」


 デブが、俺の胸元を掴んでくる。


「ちょっ、やめてください!エルが組もうって言ってくれたんですよ!」

「んなわけ」

「あるはず」

「ねえだろ!」

「「「ねえ、エル様!!」」」


 俺を含めて4人が一斉に、エルの方を見た。


「そうよ」

「「「「ほら!・・・・ん?」」」」


 4人で顔を見合わせて、もう一度エルを見る。


「「「「どっち?」」」」

「だから、あたしが組もうって言ったの」

「・・・ほら」

「「「えーーっ!」」」


 俺が、両の手のひらを上に向けて、肩をすくめると、3人は驚愕の声を上げた。


「いや、俺たちは認めねえぞ」

「確かお前はまだEランクのはずだ」

「そんなペーペーのド素人が」

「「「Aランクのエル様と、パーティーなんて認めねえ!」」」


 そしてそう叫ぶと、3人同時に殴りかかってきた。


「え、エルどうしよう!?」


 俺は、パンチを躱しかわしながら、平然と列に並んでいるエルに尋ねた。


「やっちゃえば?」

「へ!?い、いいの?」

「いいんじゃない?」


 いいのかな?

 え~と、こいつら何ランクだっけ?


「くぅ~!ヘラヘラひとのパンチを躱しやがって」

「このDランクパーティー」

「『ひげサソリ団』様を」

「「「馬鹿にする気か!」」」


 おー、ご丁寧に教えてくれたぜ。

 Dランクなら格上だし、少し手加減すればいいかな?


「すみません。じゃあ、躱さないでいきますね」


 俺は、デブの右ストレートを右の手のひらで掴んで止めると、手首のスナップを効かせて半回転させた。

 すると、その巨体が錐揉み状に回転しながら浮き上がり、俺が軽くひと押ししただけで、そのまま水平に吹っ飛んでいった。

 一方その動作と同時に、ガリが放ってきたボディブローを左手で下方に弾いて、前のめりになったガリの顔面に、その左手で裏拳を打ち込んだ。

 するとガリは、「グヘッ!」と変な声を発しながら、仰向けに倒れ込んでいった。

 さらに、チビが俺の脚を狙って、足払いを掛けてきていたのを直前で躱し、そのまま一歩踏み込んで、チビの顎をつま先で蹴り上げた。

 チビは、綺麗な放物線を描いて10キュピ(5m)ほど飛んで、数回バウンドして止まった。
 

 ・・・・それはほんの、数秒の出来事だった。

 騒ぎが始まる前からこちらに注目していた、ギルド内の誰もが、動くのを止めていた。


「セイヤ、あたしたちの番よ」


 感情の無いエルの声が、静寂を破った。

 その途端、示し合わせたように、何事もなかったかのように、全員が動き出した。


「あ、ああ」


 俺は、慌ててエルの許へ戻っていった。

 背後では、どこからともなくガタイの良いギルド職員が数人集まってきて、『ひげサソリ団』の3人組をギルドの外へと引きずって行った。



***************


「パーティー名は、いかがいたしますか?」


 受付の人が、聞いてきた。


「どうしようか?」


 俺は、エルに尋ねた。


「セイヤが決めて」

「いいのか?」


 エルがうなずく。

 どうしよう・・・・。


「『ジ・アース』・・」

「『ジ・アース』で、ございますか?」

「はい、『ジ・アース』でお願いします!エル、いいかい?」

「セイヤがいいなら、それでいいわ」

「承知いたしました。『ジ・アース』で登録させていただきます」


 やっぱり、故郷を忘れたくないっていうか・・・なんかね。


***************


 ・・・そんなわけで、出発前から色々と、ゴタゴタが続いていて、なるべく穏便にゆくように、気を使っていたのだった。



***************


「ねえ、セイヤ」

「ん?」

「『ジ・アース』って、どういう意味?」

「俺の故郷の名前さ」

「・・・そう、いい名前ね」
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