49 / 49
46.腹の探り合い?
しおりを挟むアイリスが話し終えるとその場は、しばらくの間物音一つすること無く静まり返っていた。
さすがのコリンとライアンも、その場の雰囲気を察したのか大人しく座っている。
・・・・コリンは両手にケーキを、ライアンは口に砂糖の入っていないクッキーを咥えたままだけど。
「アイリス・・・」
「だいじょうぶ!」
俺が、なんて声をかけたらいいか判らず小さくつぶやくと、アイリスが満面の笑顔を向けてきた。
「お父様もお母様も、お兄様もお姉様も・・・シーグも・・シュルツも・・・・みんなもうこの世にはいないけれど」
そして一瞬かすかに表情に影が差し、すぐに再び笑みを浮かべて言った。
「セイヤくん達がいるもん!スザンヌさんも、エルちゃんも、コリンちゃんもライアンも!!みんなが一緒にいてくれるから、今は幸せ!ボクは一人じゃないもの。ボクは『ジ・アース』のメンバーだもの!!」
「そ、そうだな!俺たち仲間だもんな」
「ええ!」
アイリスの眩しいくらいの笑顔に少したじろぎながら、俺も笑顔で応え、エルも大きく頷いて微笑んだ。
「アイリスちゃんはなかま~!「ミヤーォ!」」
「そうね、仲間よね」
他の二人(と一匹)も笑顔で応える。
(最後のひとが俺に向けて放ったウィンクは、ワタシには視えていません)
「む、むふぉん。何にしても、仲が良いのは良しとして、どうやら今回の件とは直接関係は無さそうですな」
バロア卿が、わざとらしい咳をしてそう言って話の矛先を変えようとした。
うん、良い人かも知れないけど、下手くそだ。
すると、ベンジャミンさんが横から言ってくる。
「そうとは言い切れませんぞ」
「どういうことだ?」
バロア卿が、くまのプーさんを彷彿とさせる、黒くてつぶらな瞳の上の、ふっとい眉を上げてベンジャミンさんの方を振り返る。
「例の黒いローブの魔物のことですかな?」
ベンジャミンさんが答える前に、反対側のレオナルド卿が言葉を発する。
「黒いローブ?・・何だそれは?」
律儀に再度レオナルド卿の方に振り返って、バロア卿が聞き返す。
「本部長殿がよくご存知でしょう」
しかし、レオナルド卿は口元に微笑をたたえつつ、鋭い目つきでバロア卿の向こう側のベンジャミンさんを見やった。
バロア卿が慌てて振り返る。
「内務省さんとの人材交流も良し悪しですな・・・守秘義務契約もあったものでもない・・・」
「まあそれは、どこの部所もお互い様というものではないですか」
レオナルド卿の視線から目をそらして、ぶつぶつ愚痴を零すベンジャミンさんに、レオナルド卿は口元の笑みをやや濃くして言った。
「はーーっ。確かにいずれ陛下からも知らされることであろうし、まあいいか・・」
今度はひとつ大きな溜息を零して、ベンジャミンさんは当惑したまま固まっているバロア卿の方を見た。
「イナンナの町の件は知っておられるでしょう?」
「う、うむ。確か、音信不通となっているイナンナの町へ冒険者連中を派遣したんだったな」
「だが結果は、帰還者はゼロだった。そして唯一そちらの方角から王都にたどり着いたという冒険者から、魔物の大量発生に遭遇したとの情報があった」
「ふん。そのくらいは知っておる。それで、冒険者ギルドでは大陣容の第二陣を派遣したのだろう?」
「さよう。今朝方、彼らは出発していった・・・」
そこで一旦ベンジャミンさんが口ごもる。
「・・・そうか、ではその結果待ちということだな」
「いや、さきほどその報告が届いた」
「な!は、早くないか?」
バロア卿が目を見開く。
「イナンナの町には着かなかったそうだ。その手前の森に着く前に魔物の群れに遭遇したそうだ」
「魔物の群れ?」
「グールが50体にスケルトンが50体、そしてヴァンパイアが20体。奴らは黒いローブの魔物に率いられていた」
「黒いローブ!!・・・・で、冒険者たちは?」
「壊滅した」
ベンジャミンさんは、目を伏せて首を振った。
「壊滅?・・・だが、今回はそれなりの準備をして向かったのだろう?」
「さよう。Bランク以上の選りすぐりの冒険者たちだ。中にはAランクも混じっていた」
「それが壊滅だと?!・・・それじゃあ相手はもしかして・・」
「Aランク以上ということだ」
「まさか!・・・それにしたって、それだけの人数を相手にして壊滅とは・・・それはつまり・・Aランクどころではないということか!?」
「どうやらそういうことのようだな。そうであろう?」
ベンジャミンさんとバロア卿のやり取りが一瞬止まり、僅かな間を置いたとき、上座に座ってテーブルの上に両肘を載せ、さらに組んだ手の上に顎を載せて、面白そうな表情でそのやり取りを眺めていたエリム国王さまが、唐突に俺やスザンヌさんの方へ視線を向けて言った。
その言葉に、一斉に偉い人たちの視線が俺たちの方へ向く。
「いや、その・・」
俺は大人たちの無言の圧力に、思わず口ごもった。
「そうね、あたしでも多分・・・ひとりでは勝てないと思うわ」
すると、スザンヌさんが不機嫌そうな顔で答えてくれた。
「まさか!!(あの『剛力の牆壁』が歯が立たないほどの?)」
バロア卿が大きな目玉を大きく見開いて、絶句した。
(そのあとの、つぶやきは俺にはよく聞こえなっかたけど)
「”乙女”よ。歯が立たないんじゃないわ、勝てないのよ」
(あ、聞こえている人がいた)
「スザンヌでも勝てぬ相手か・・・セイヤ、その方ならばどうだ?」
エリム国王さまは相変わらず顎を組んだ手の上に載せ、俺のことを見る。
目元は微笑っているのに、なにか抗いがたい眼力がある。
「お、俺ですか?いや、その・・正直勝てる気がしないです(今のところ)」
「ほう。今のところか?」
「え!?いや!そうじゃなくて、なんていうか」
なんで聞こえるかなあ。
エリム国王さまは、テレーゼさまの方へ視線を向けた。
・・テレーゼさまが無言でうなずく。
え?なんの頷きだよ!
「お、お待ち下さい。彼らはその黒いローブの魔物とやらに」
「会ったことがあるということですか?」
バロア卿とレオナルド卿が、揃ってエリム国王さまと俺達を交互に見て言った。
「先程の自己紹介で、ヴァンパイアたちに遭遇したと言っておったではないか」
ベンジャミンさんが、少し呆れたような表情で言う。
「そ、そうか・・」
「た、確かに・・」
「ところで、その方らの今後の予定を聞いていなかったな?」
そんな3人のやり取りには興味を示さずに、エリム国王さまは、ようやく組んだ手の上から顎を上げて言った。
「予定ですか?」
「うむ。予定が無ければ、頼み事をしようかと思ってな」
エリム国王さまは、そう言って右の口角を少しだけ上げた。
***************
0
この作品は感想を受け付けておりません。
あなたにおすすめの小説
こわいかおの獣人騎士が、仕事大好きトリマーに秒で堕とされた結果
てへぺろ
恋愛
仕事大好きトリマーである黒木優子(クロキ)が召喚されたのは、毛並みの手入れが行き届いていない、犬系獣人たちの国だった。
とりあえず、護衛兼監視役として来たのは、ハスキー系獣人であるルーサー。不機嫌そうににらんでくるものの、ハスキー大好きなクロキにはそんなの関係なかった。
「とりあえずブラッシングさせてくれません?」
毎日、獣人たちのお手入れに精を出しては、ルーサーを(犬的に)愛でる日々。
そのうち、ルーサーはクロキを女性として意識するようになるものの、クロキは彼を犬としかみていなくて……。
※獣人のケモ度が高い世界での恋愛話ですが、ケモナー向けではないです。ズーフィリア向けでもないです。
甘い匂いの人間は、極上獰猛な獣たちに奪われる 〜居場所を求めた少女の転移譚〜
具なっしー
恋愛
「誰かを、全力で愛してみたい」
居場所のない、17歳の少女・鳴宮 桃(なるみや もも)。
幼い頃に両親を亡くし、叔父の家で家政婦のような日々を送る彼女は、誰にも言えない孤独を抱えていた。そんな桃が、願いをかけた神社の光に包まれ目覚めたのは、獣人たちが支配する異世界。
そこは、男女比50:1という極端な世界。女性は複数の夫に囲われて贅沢を享受するのが常識だった。
しかし、桃は異世界の女性が持つ傲慢さとは無縁で、控えめなまま。
そして彼女の身体から放たれる**"甘いフェロモン"は、野生の獣人たちにとって極上の獲物**でしかない。
盗賊に囚われかけたところを、美形で無口なホワイトタイガー獣人・ベンに救われた桃。孤独だった少女は、その純粋さゆえに、強く、一途で、そして獰猛な獣人たちに囲われていく――。
※表紙はAIです
「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~
あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。
彼は気づいたら異世界にいた。
その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。
科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~
深楽朱夜
ファンタジー
13人の神がいる異世界《アタラクシア》にこの世界を治癒する為の魔術、異界人召喚によって呼ばれた主人公
じゃ、この世界を治せばいいの?そうじゃない、この魔法そのものが治療なので後は好きに生きていって下さい
…この世界でも生きていける術は用意している
責任はとります、《アタラクシア》に来てくれてありがとう
という訳で異世界暮らし始めちゃいます?
※誤字 脱字 矛盾 作者承知の上です 寛容な心で読んで頂けると幸いです
※表紙イラストはAIイラスト自動作成で作っています
異世界に来ちゃったよ!?
いがむり
ファンタジー
235番……それが彼女の名前。記憶喪失の17歳で沢山の子どもたちと共にファクトリーと呼ばれるところで楽しく暮らしていた。
しかし、現在森の中。
「とにきゃく、こころこぉ?」
から始まる異世界ストーリー 。
主人公は可愛いです!
もふもふだってあります!!
語彙力は………………無いかもしれない…。
とにかく、異世界ファンタジー開幕です!
※不定期投稿です…本当に。
※誤字・脱字があればお知らせ下さい
(※印は鬱表現ありです)
転生したらスキル転生って・・・!?
ノトア
ファンタジー
世界に危機が訪れて転生することに・・・。
〜あれ?ここは何処?〜
転生した場所は森の中・・・右も左も分からない状態ですが、天然?な女神にサポートされながらも何とか生きて行きます。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初めて書くので、誤字脱字や違和感はご了承ください。
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる