エンリルの風 チートを貰って神々の箱庭で遊びましょ!

西八萩 鐸磨

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45.本当のこと

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◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




「なるほど、”冒険者アイリス”殿のお気持ちはよく理解った。さぞやお辛かったであろうな。それにもかかわらず、この様に前向きに生きようとする姿に私も感じ入るものがあった。・・だが、ヒタト国は今や魔物の支配するところとなり、ドワーフ族は各国に散らばったと聞いているが、万が一将来国を再建することがあれば、我が国は全面的に支援することを約束しよう」


 決然としたアイリスの宣言に、エリム国王さまは大きくうなずいて言った。

 すると、そんなエリム国王さまのことをそれぞれが、それぞれの表情で見返した。


 サーシャさまとスザンヌさんは、優しい表情で。

 テレーゼさまは、困惑と諦めの混じった表情で。

 ベンジャミンさんとエル、それに俺は、驚きの表情で。

 レオナルド卿は、納得したような表情で。

 バロア卿は、苦虫を噛み潰したような表情で。


 そして当の本人であるアイリスは、やはり最初は驚きの表情を浮かべたが、直ぐに元の決然とした顔に戻った。


「既に滅んでしまった国に、その様なお言葉大変有り難いことと存じます。ですが、国を奪われた原因も、もとを正せば身から出た錆である部分も多々ございます。・・それに、国を建てるにしても、もうこの世には王族はわたくししかおりません。先程も申し上げました通り、わたくしは”冒険者アイリス”として生きていく所存ですので、どうかお気遣いなくお願い申し上げます」


 そう言って、少し哀しさを混じえながらも、透明な表情でエリム国王さまを見つめた。


「・・そうか、ではその話は今はやめにしよう」

「ありがとうございます」


 アイリスは一礼して席についたのだった。





「・・・ただ、大変申し訳無いのだが」


 アイリスが席に戻ったあとも、彼女のことを見ていたエリム国王さまが、言葉を続けた。


「なんでしょうか?」


 アイリスが首を傾げる。


「最近の魔物達の異変とヒタト国が魔物に奪われたことに、なんらかの関係性がある可能性を指摘する向きもあってな、できればその”国を奪われた原因”というのを教えてもらえるとたいへん助かるのだ」

「陛下、彼女の話を聞いておられたでしょう?そのような辛い思い出を掘り起こすようなお願いは、おやめになったほうが良いと思います」


 先程までとは違って、瞳の奥に鋭さを覗かせるエリム国王さまに、サーシャさまが釘を差す。


「構いません、サーシャ王妃さま。冒険者として、必要な情報を提供することは、当然の責務だと思いますので」


 アイリスは、サーシャさまにニッコリと笑顔を見せると、エリム国王さまの顔を見ると、コクリとうなずいた。


「ウム、すまぬな」



 この状況でなんなんだけど、アイリスから受ける印象が、さっきからクルクルと変わりまくりなんだけど!

 今の彼女は、なんか”かっけぇー!”って感じ。



◇◇◇◇◇



 それにしても、全員の自己紹介が終わったところで、いよいよこの食事会の本来の目的ってことかな?









 あ!

 コリンとライアンはですね、ひたすら食いまくって飲みまくってます。


 え?

 誰に言っているのかって?


 誰でしょう?



◇◇◇◇◇◇◇◇




「それでアイリス、先程のヒタト国が魔物に奪われた経緯だが」




 食後のデザートと、紅茶が出てきて全員が一息入れると、徐ろおもむろにエリム国王さまが先程の話の続きをうながした。



「はい」



 アイリスが少し緊張した面持ちで、エリム国王さまの方を真っ直ぐに見た。



「数年前にシア国の使節が、両国の親交と交易の発展を目的に訪れたことは聞き及んでいるが、その後の突然の混乱で詳細が判っていないのだ」


 エリム国王さまは、テレーゼさまとレオナルド卿の方へ、一瞬ちらりと目線をやってから言った。




「確かに、ラフム河を遡ってシア国の使一行が、ある日王都を訪ねてきました。使者の名前は正使がナタル、副使がベセリといい、事務官のネルという人が随行しており、他に7人の護衛を含めて全部で10人の一行でした」


 アイリスは一度うなずくと、そのままそっと目を閉じて記憶を手繰るように話しだした。


 ん?

 いま、『使』って言ったよな?




「彼らは自分たちの事を、正使のナタルはシア国の首相を務める大臣であり、副使のベセリは筆頭書記官、事務官のネルはその補佐という立場であると言っていました。父である国王をはじめ重臣たち、さらには母である女王や貴婦人たちも含めて、彼らの理知的な物腰の柔らかさにすっかりその言葉を信じ込み、盛大に歓待しました」



 『信じ込み』?

 ふ~ん、相手は他国とはいえ一国の高官なのに、ヒタト国の人たちは顔も知らなかったのかな?



「ご存知の通り、ドワーフ族は少し閉鎖的で、そのため世情に疎いと言いますか、信じ込みやすいところがありまして・・・。ましてや、近隣国とはいえ、陸づたいにはこのハルバト国が間にあるため、殆ど国交は無いも同然でした。ですので、普段見たことのないような物産や奴隷達、とりわけ屈強さと精悍さを併せ持つ護衛の7人を目の当たりにして、国中がすっかり舞い上がっていました」



 最初の方の、珍しい物産とか奴隷(種族?)については何となく分かるが、なんで屈強な護衛に興奮する訳?

 ドワーフ族ってマッチョがお好きなの?



「そして使者一行の滞在は、いつしか半年にも渡っていました」



 なにそれ、長くね?

 っていうか、国交のための使節だったら、観光に来ているんじゃないんだから、普通、目的達したら一旦帰るだろ。

 で、そのあと好きなだけ交流を深めればいいじゃんね?



「その間、当初はラフム河の河口に停泊していたシア国の巨船が、王都のすぐそばの港に入港を許され、そして使者たちがいることが日常となりました。・・・・やがて、連日連夜の宴のため、王都中の人々がぐっすりと寝入っていたある夜に、それは起きました・・・」


 そう言ってアイリスは、瞑っていた目を開いて顔を上げた。







 ・・・・・・・そこから語られた話は、壮絶なものだった。



 もちろん、神託のことは意図的に省いていたけれど、以前に、アイリスやスザンヌさんから聞かされていた内容とは大分違っていた。


 俺は、あのときニンフルサグ村で見た光景を思い出し、ヒタト国の王都で繰り広げられたであろう惨劇を想像すると、胸が締め付けられるようだった。



 ・・・それに、その時のアイリスの受けた心の傷や、抱いていた想いはもはや、想像すらできなかった。
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