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二章 王都バッシュテン編
訓練に参加~模擬戦
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オーファスさんに連れられて、僕達は中庭?にある練習場へとやってきた。剣と盾を打ち合う音が響き、騎士達の熱気が肌でわかるほどに伝わってくる。フルプレートを着ている者がいないのは練習だからだろうか。村の自警団の練習を見たことがあるけど、やはり迫力は何倍も上のような気がする。その証拠に……
「凄い凄い!本物!本物の騎士達だ!うわ、鼻血が…」
今日一番のハイテンションを見せるミリス、鼻血まで出さなくても……
そんな僕達を見て、恐らくこの場で一番偉いであろう人が此方にやってきた。村の自警団長のギャレックさんに劣らぬ巨体と禿頭が印象的で、立派に蓄えた髭に……見覚えがあるような……
「青の将ミハイロフ?」
僕の口から自然に名前が零れ落ちた。
「オーファス殿、何ですかなこの小僧共は?青の将等と呼ばれるのは久しぶりだわい!」
この国は騎士団長の下に青、赤、黄、黒の四色の騎士団が存在する。どの色が一番とかではなく同列なのだが、確か青の騎士団は守備力に特化した軍団だ、ミリスが入りたい騎士団だったから間違いないはず。
「ミハイロフ騎士団長殿、この二人はトーマス村のアルノ君とミリスさんです。エルミージュの使いで来たのですが、騎士の訓練を見てみたいという事で連れてきました。」
オーファスさんが、ミハイロフさんは騎士団長だとさりげなく訂正して教えてくれた。僕はこの人を知らない、名前が出てしまったのは間違いなくユーフィリス王女の記憶だ。うっかり知らないはずの事を言わないようにしないと困った事になるかもしれない、気をつけないと……。
「フム、小僧共は騎士志望なのかね?」
「ハイ!今年成人式を終えたばかりですが、騎士になるべく鍛えていました!特に青の騎士団を目指しています!よろしければ今日は訓練に参加させて下さい!」
「僕は狩人志望なので、見学だけお願いします!」
ミリスの言葉に満足したのかにこやかな笑顔になったが、その口からでた言葉に僕は驚いた。
「なかなか良い心がけだな!よし、二人とも訓練に混ざっていくがいい。倒れるまで頑張れよ!はっはっはっ!」
え?いや、僕は見るだけでいいです!やるのはミリスだけです!
「ハイ!私達二人、よろしくお願いします!」
既に退路は絶たれてしまったようだ。
「では、私はミハイロフ騎士団長殿とゴブリンの件で話がありますから、二人は訓練頑張ってくださいね。」
オーファスさん……酷いです……
◇
僕とミリスはそれから二時間あまり訓練に参加させてもらった、騎士の皆さんはとても友好的に接してはくれたけれど、それが慰めにならないほどのキツイ訓練だった。僕は地面に大の字に寝転がり、口から魂を半分くらい出していた。
「はっ!はっ!せりゃー!」
ミリスは訓練にくらい着いていっている、全てを吸収すべくその瞳は真剣そのものだ。いつものミリスより何だか大人になったように見えるのは僕の気のせいなのだろうか。
「よーし、今日の訓練はここまで!」
いつの間にか戻ってきたミハイロフ騎士団長が終了の掛け声を掛ける。ふぅ終わったー
「では最後にゲストに模擬戦をしてもらおうかの!二人ともよいな?」
終わっていなかったようだ……
◇
「一対一で模擬戦をしてもらうぞ。最初は譲ちゃんとフロスキー、次は小僧とジャイネンだ。武器は刃を落とした物を用意したから好きなものを選ぶがいい。スキルは使ってもいいが殺すなよ!」
フロスキーさんは赤騎士団所属の若手のホープ、ジャイネンさんは青騎士団所属のベテラン騎士らしい。ミリスはバスタードソードを選び、フロスキーさんはロングソードとラウンドシールドを選択したようだ。
「譲ちゃんは青騎士団を目指している割に盾を使わんのか?攻撃重視なら青騎士ではなく赤騎士だぞ?」
「守りはスキルで補っているので大丈夫です!このスタイルで行かせて下さい!」
「フム、よかろう。お主の力みせてみるがいい。」
こうしてミリスとフロスキーさんの戦いは始まった。
フロスキーさんは若手のホープだけあって、剣も盾もかなり使いこなしているようだが、同じ若手という事でミリスは『守りの盾』を駆使しつつ互角以上に戦っていた。
「ほぅ、『守りの盾』のスキルを持っておったか!両手を武器に回せるからこそのバスタードソードというわけだな。中々スキルも上手く使いこなしておるし、将来的には期待できそうだな。しかし……」
ミリスが押していた戦いであったが、フロスキーさんは持久戦に切り替えたらしく時間が経過していく。徐々に魔力を消耗させられたミリスが『守りの盾』を維持できなくなり、剣で攻撃を受けようとしたところでフロスキーさんが『重い剣』のスキルを使い、押しつぶして試合が終わった。
「今回は僕が勝ったけど君もかなり強かった。騎士団希望なんだってね、心強い仲間が増えるのは歓迎するよ!」
「お譲ちゃん……、いやミリス。そのスタイルでやっていくのなら、スキルで防げるうちに勝負を決められる攻撃力をつけるか、スキルを長時間維持する魔力を鍛えないといかんぞ。もちろん両方あればなお良い。次の入団試験は来月の中頃だからな、期待してまたせてもらおう。」
名前を呼んでもらえた上に期待してもらえた事に感激したのか、ミリスは何度もミハイロフさんに「頑張ります!頑張ります!」と言っていた。
「ではアルノ、次は俺が相手をさせて貰おう。全力でかかってくるが良い!」
僕は本来狩人だから弓だけど、一対一の時は相性が悪すぎるのでショートソードとラウンドシールドで行く事にした。『筋力強化』のスキルがあるからロングソードでも良かったのだけど、リーチを犠牲にする分速さを重視した結果だ。相手のジャイネンさんはロングソードにラウンドシールドでやるみたいだ。筋肉ムキムキタイプなので実にしっくりしている。
「よろしくお願いします!」
二戦目はこうしてはじまった。
ステータス
名前 アルノ
種族 人間
職業 狩人
ユニークスキル 『思い出す』
『魔法剣Lv1』
スキル 『腕力強化Lv2』
『集中Lv2』
『気配察知Lv1』
『剣聖Lv1』
『神速Lv1』
「凄い凄い!本物!本物の騎士達だ!うわ、鼻血が…」
今日一番のハイテンションを見せるミリス、鼻血まで出さなくても……
そんな僕達を見て、恐らくこの場で一番偉いであろう人が此方にやってきた。村の自警団長のギャレックさんに劣らぬ巨体と禿頭が印象的で、立派に蓄えた髭に……見覚えがあるような……
「青の将ミハイロフ?」
僕の口から自然に名前が零れ落ちた。
「オーファス殿、何ですかなこの小僧共は?青の将等と呼ばれるのは久しぶりだわい!」
この国は騎士団長の下に青、赤、黄、黒の四色の騎士団が存在する。どの色が一番とかではなく同列なのだが、確か青の騎士団は守備力に特化した軍団だ、ミリスが入りたい騎士団だったから間違いないはず。
「ミハイロフ騎士団長殿、この二人はトーマス村のアルノ君とミリスさんです。エルミージュの使いで来たのですが、騎士の訓練を見てみたいという事で連れてきました。」
オーファスさんが、ミハイロフさんは騎士団長だとさりげなく訂正して教えてくれた。僕はこの人を知らない、名前が出てしまったのは間違いなくユーフィリス王女の記憶だ。うっかり知らないはずの事を言わないようにしないと困った事になるかもしれない、気をつけないと……。
「フム、小僧共は騎士志望なのかね?」
「ハイ!今年成人式を終えたばかりですが、騎士になるべく鍛えていました!特に青の騎士団を目指しています!よろしければ今日は訓練に参加させて下さい!」
「僕は狩人志望なので、見学だけお願いします!」
ミリスの言葉に満足したのかにこやかな笑顔になったが、その口からでた言葉に僕は驚いた。
「なかなか良い心がけだな!よし、二人とも訓練に混ざっていくがいい。倒れるまで頑張れよ!はっはっはっ!」
え?いや、僕は見るだけでいいです!やるのはミリスだけです!
「ハイ!私達二人、よろしくお願いします!」
既に退路は絶たれてしまったようだ。
「では、私はミハイロフ騎士団長殿とゴブリンの件で話がありますから、二人は訓練頑張ってくださいね。」
オーファスさん……酷いです……
◇
僕とミリスはそれから二時間あまり訓練に参加させてもらった、騎士の皆さんはとても友好的に接してはくれたけれど、それが慰めにならないほどのキツイ訓練だった。僕は地面に大の字に寝転がり、口から魂を半分くらい出していた。
「はっ!はっ!せりゃー!」
ミリスは訓練にくらい着いていっている、全てを吸収すべくその瞳は真剣そのものだ。いつものミリスより何だか大人になったように見えるのは僕の気のせいなのだろうか。
「よーし、今日の訓練はここまで!」
いつの間にか戻ってきたミハイロフ騎士団長が終了の掛け声を掛ける。ふぅ終わったー
「では最後にゲストに模擬戦をしてもらおうかの!二人ともよいな?」
終わっていなかったようだ……
◇
「一対一で模擬戦をしてもらうぞ。最初は譲ちゃんとフロスキー、次は小僧とジャイネンだ。武器は刃を落とした物を用意したから好きなものを選ぶがいい。スキルは使ってもいいが殺すなよ!」
フロスキーさんは赤騎士団所属の若手のホープ、ジャイネンさんは青騎士団所属のベテラン騎士らしい。ミリスはバスタードソードを選び、フロスキーさんはロングソードとラウンドシールドを選択したようだ。
「譲ちゃんは青騎士団を目指している割に盾を使わんのか?攻撃重視なら青騎士ではなく赤騎士だぞ?」
「守りはスキルで補っているので大丈夫です!このスタイルで行かせて下さい!」
「フム、よかろう。お主の力みせてみるがいい。」
こうしてミリスとフロスキーさんの戦いは始まった。
フロスキーさんは若手のホープだけあって、剣も盾もかなり使いこなしているようだが、同じ若手という事でミリスは『守りの盾』を駆使しつつ互角以上に戦っていた。
「ほぅ、『守りの盾』のスキルを持っておったか!両手を武器に回せるからこそのバスタードソードというわけだな。中々スキルも上手く使いこなしておるし、将来的には期待できそうだな。しかし……」
ミリスが押していた戦いであったが、フロスキーさんは持久戦に切り替えたらしく時間が経過していく。徐々に魔力を消耗させられたミリスが『守りの盾』を維持できなくなり、剣で攻撃を受けようとしたところでフロスキーさんが『重い剣』のスキルを使い、押しつぶして試合が終わった。
「今回は僕が勝ったけど君もかなり強かった。騎士団希望なんだってね、心強い仲間が増えるのは歓迎するよ!」
「お譲ちゃん……、いやミリス。そのスタイルでやっていくのなら、スキルで防げるうちに勝負を決められる攻撃力をつけるか、スキルを長時間維持する魔力を鍛えないといかんぞ。もちろん両方あればなお良い。次の入団試験は来月の中頃だからな、期待してまたせてもらおう。」
名前を呼んでもらえた上に期待してもらえた事に感激したのか、ミリスは何度もミハイロフさんに「頑張ります!頑張ります!」と言っていた。
「ではアルノ、次は俺が相手をさせて貰おう。全力でかかってくるが良い!」
僕は本来狩人だから弓だけど、一対一の時は相性が悪すぎるのでショートソードとラウンドシールドで行く事にした。『筋力強化』のスキルがあるからロングソードでも良かったのだけど、リーチを犠牲にする分速さを重視した結果だ。相手のジャイネンさんはロングソードにラウンドシールドでやるみたいだ。筋肉ムキムキタイプなので実にしっくりしている。
「よろしくお願いします!」
二戦目はこうしてはじまった。
ステータス
名前 アルノ
種族 人間
職業 狩人
ユニークスキル 『思い出す』
『魔法剣Lv1』
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