28 / 33
二章 王都バッシュテン編
スキルレスのダンテリオ
しおりを挟む
「クフフ、貴方の命確かにいただきましたよ?ではまたいずれお会いしましょう」
これが目の前にいる魔族がオレに止めを刺した時に言った言葉だ。
獣人の国の戦士として魔王が滅びた後の残党と戦っていたのだが、百戦して百勝とはいかずオレは朽ちていく事になってしまった。
薄れゆく意識の中でオレが考えていたのは、国に置いてきた家族でもなく、この国の行く末でもない……自分でも忘れてしまっていた子供の頃の事……オレがなぜスキルなしだったのかの原因となる出来事だった……
◇
犬獣人の村バンデスの村はずれで、1人遊んでいた時にその人達に出会った。
「イーシュ、この子で間違いないのかい?」
目の前には四人の男女がいた、いずれもが20~30代といったところで、その中の優男が魔法使いらしき男にそう尋ねていた。
「ああ、この子で間違いない。今のうちなら例の術で何とかできると思う。」
子供だったオレは股に尻尾をはさんで体の前で抱えている、知らない人間の大人に囲まれ震えていた。
「じゃあさっさとやっちまおうぜ、別に死ぬわけじゃなし。このままじゃまずいんだろう?」
「この子を殺さずに済ませるには仕方ないんですものね……」
戦士の男と僧侶の女が気まずそうにしていた。
「村の他の人に、なぜこの子に術を掛けないといけないのかは説明する事はできませんよ。」
「ああ、わかってる。今のうちにやってしまうしかない。……僕の名前はローレン、君はなんていうのかな?」
「ボクは、ボクはダンテリオ!勇敢なる犬族の子、ダンテリオだよ!」
「そうか、ダンテリオ君って言うんだね?この指先を見てくれるかな?……『風魔法・眠りの粉』『水魔法・忘却』」
オレは眠ったような顔で突っ立っている。今までこの時の記憶はなかったが、死ぬ前だからかはっきり思い出す事ができた。
「完全に眠らせてないですね?意識がないと例の術もかかりませんから。」
「弱めに掛けたから大丈夫、今は朦朧としているはずだ。完全に寝た後は僕らと会った事も忘れてしまうだろう。」
魔法使いの男が地面に魔方陣を書き始める、複雑な模様でオレにはなんだかわからない。優男が書き上げた魔方陣の真ん中にオレを横たえた。
「では封印術を行います。ローレン、イオニス、ニーニャ、四方に立ってください。」
魔方陣を囲うように四人が立つ。
「この術は通常のスキルのような使い方はできません。魔方陣と、多大な魔力が必要です……これは四人でまかないます。詠唱は私が行いますので、終わるまで魔力を魔方陣に流し続けてください。」
四人の男女が魔方陣に魔力を流し込むと、魔方陣が淡く光りだした。
「我、賢者イーシュの名においてここに命ずる。白き妖精と黒き妖精の鎖を持ちて、女神より授かりし箱を封じこれを開ける事を禁ず!『スキル封印』」
術の完成と共にオレは眠りに落ちていった、完全に眠りにつく前に優男……ローレンがオレの手をとりすまなそうに言った。
「君は一生何かのスキルを覚える事はできない。つらい事もあるだろうけれど、しっかりと生きて欲しい。」
◇
……今思えばあれは魔王を倒した勇者ローレンとその仲間達だったのだろう。
オレはあの封印術のせいで、準成人の時もスキルを授かる事なく、地道な訓練をいくらつんでも何も覚える事がなかった。いったい何故オレはスキルを封印されねばならなかったのだろう……その疑問を胸にオレは死んでいった。
ステータス
名前 ダンテリオ
種族 犬獣人
職業 戦士
スキル なし
これが目の前にいる魔族がオレに止めを刺した時に言った言葉だ。
獣人の国の戦士として魔王が滅びた後の残党と戦っていたのだが、百戦して百勝とはいかずオレは朽ちていく事になってしまった。
薄れゆく意識の中でオレが考えていたのは、国に置いてきた家族でもなく、この国の行く末でもない……自分でも忘れてしまっていた子供の頃の事……オレがなぜスキルなしだったのかの原因となる出来事だった……
◇
犬獣人の村バンデスの村はずれで、1人遊んでいた時にその人達に出会った。
「イーシュ、この子で間違いないのかい?」
目の前には四人の男女がいた、いずれもが20~30代といったところで、その中の優男が魔法使いらしき男にそう尋ねていた。
「ああ、この子で間違いない。今のうちなら例の術で何とかできると思う。」
子供だったオレは股に尻尾をはさんで体の前で抱えている、知らない人間の大人に囲まれ震えていた。
「じゃあさっさとやっちまおうぜ、別に死ぬわけじゃなし。このままじゃまずいんだろう?」
「この子を殺さずに済ませるには仕方ないんですものね……」
戦士の男と僧侶の女が気まずそうにしていた。
「村の他の人に、なぜこの子に術を掛けないといけないのかは説明する事はできませんよ。」
「ああ、わかってる。今のうちにやってしまうしかない。……僕の名前はローレン、君はなんていうのかな?」
「ボクは、ボクはダンテリオ!勇敢なる犬族の子、ダンテリオだよ!」
「そうか、ダンテリオ君って言うんだね?この指先を見てくれるかな?……『風魔法・眠りの粉』『水魔法・忘却』」
オレは眠ったような顔で突っ立っている。今までこの時の記憶はなかったが、死ぬ前だからかはっきり思い出す事ができた。
「完全に眠らせてないですね?意識がないと例の術もかかりませんから。」
「弱めに掛けたから大丈夫、今は朦朧としているはずだ。完全に寝た後は僕らと会った事も忘れてしまうだろう。」
魔法使いの男が地面に魔方陣を書き始める、複雑な模様でオレにはなんだかわからない。優男が書き上げた魔方陣の真ん中にオレを横たえた。
「では封印術を行います。ローレン、イオニス、ニーニャ、四方に立ってください。」
魔方陣を囲うように四人が立つ。
「この術は通常のスキルのような使い方はできません。魔方陣と、多大な魔力が必要です……これは四人でまかないます。詠唱は私が行いますので、終わるまで魔力を魔方陣に流し続けてください。」
四人の男女が魔方陣に魔力を流し込むと、魔方陣が淡く光りだした。
「我、賢者イーシュの名においてここに命ずる。白き妖精と黒き妖精の鎖を持ちて、女神より授かりし箱を封じこれを開ける事を禁ず!『スキル封印』」
術の完成と共にオレは眠りに落ちていった、完全に眠りにつく前に優男……ローレンがオレの手をとりすまなそうに言った。
「君は一生何かのスキルを覚える事はできない。つらい事もあるだろうけれど、しっかりと生きて欲しい。」
◇
……今思えばあれは魔王を倒した勇者ローレンとその仲間達だったのだろう。
オレはあの封印術のせいで、準成人の時もスキルを授かる事なく、地道な訓練をいくらつんでも何も覚える事がなかった。いったい何故オレはスキルを封印されねばならなかったのだろう……その疑問を胸にオレは死んでいった。
ステータス
名前 ダンテリオ
種族 犬獣人
職業 戦士
スキル なし
0
あなたにおすすめの小説
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。
☆ほしい
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。
前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。
ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。
「この家は、もうすぐ潰れます」
家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。
手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした
有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる