僕はスキルで思い出す

魔法仕掛けのにゃんこ

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二章 王都バッシュテン編

スキルレスのダンテリオ

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「クフフ、貴方の命確かにいただきましたよ?ではまた

これが目の前にいる魔族がオレに止めを刺した時に言った言葉だ。
獣人の国の戦士として魔王が滅びた後の残党と戦っていたのだが、百戦して百勝とはいかずオレは朽ちていく事になってしまった。
薄れゆく意識の中でオレが考えていたのは、国に置いてきた家族でもなく、この国の行く末でもない……自分でも忘れてしまっていた子供の頃の事……オレがなぜスキルなしスキルレスだったのかの原因となる出来事だった……



犬獣人の村バンデスの村はずれで、1人遊んでいた時にその人達に出会った。

「イーシュ、この子で間違いないのかい?」

目の前には四人の男女がいた、いずれもが20~30代といったところで、その中の優男が魔法使いらしき男にそう尋ねていた。

「ああ、この子で間違いない。今のうちなら例の術で何とかできると思う。」

子供だったオレは股に尻尾をはさんで体の前で抱えている、知らない人間の大人に囲まれ震えていた。

「じゃあさっさとやっちまおうぜ、別に死ぬわけじゃなし。このままじゃまずいんだろう?」

「この子を殺さずに済ませるには仕方ないんですものね……」

戦士の男と僧侶の女が気まずそうにしていた。

「村の他の人に、なぜこの子に術を掛けないといけないのかは説明する事はできませんよ。」

「ああ、わかってる。今のうちにやってしまうしかない。……僕の名前はローレン、君はなんていうのかな?」

「ボクは、ボクはダンテリオ!勇敢なる犬族の子、ダンテリオだよ!」

「そうか、ダンテリオ君って言うんだね?この指先を見てくれるかな?……『風魔法・眠りの粉スリープ』『水魔法・忘却オブリビオン』」

オレは眠ったような顔で突っ立っている。今までこの時の記憶はなかったが、死ぬ前だからかはっきり思い出す事ができた。

「完全に眠らせてないですね?意識がないと例の術もかかりませんから。」

「弱めに掛けたから大丈夫、今は朦朧としているはずだ。完全に寝た後は僕らと会った事も忘れてしまうだろう。」

魔法使いの男が地面に魔方陣を書き始める、複雑な模様でオレにはなんだかわからない。優男が書き上げた魔方陣の真ん中にオレを横たえた。

「では封印術を行います。ローレン、イオニス、ニーニャ、四方に立ってください。」

魔方陣を囲うように四人が立つ。

「この術は通常のスキルのような使い方はできません。魔方陣と、多大な魔力が必要です……これは四人でまかないます。詠唱は私が行いますので、終わるまで魔力を魔方陣に流し続けてください。」

四人の男女が魔方陣に魔力を流し込むと、魔方陣が淡く光りだした。

「我、賢者イーシュの名においてここに命ずる。白き妖精と黒き妖精の鎖を持ちて、女神より授かりし箱を封じこれを開ける事を禁ず!『スキル封印クローズギフト』」

術の完成と共にオレは眠りに落ちていった、完全に眠りにつく前に優男……ローレンがオレの手をとりすまなそうに言った。

「君は一生何かのスキルを覚える事はできない。つらい事もあるだろうけれど、しっかりと生きて欲しい。」



……今思えばあれは魔王を倒した勇者ローレンとその仲間達だったのだろう。
オレはあの封印術のせいで、準成人の時もスキルを授かる事なく、地道な訓練をいくらつんでも何も覚える事がなかった。いったい何故オレはスキルを封印されねばならなかったのだろう……その疑問を胸にオレは死んでいった。





ステータス
名前 ダンテリオ
種族 犬獣人
職業 戦士
スキル なし
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