弟、異世界転移する。

ツキコ

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2章

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「ーーーで?」

「っだから、ケイを、その、どうにか、できないか…っ」

「はあ…あのねぇ、まずは睨みつけるのをやめなさいな…」

ぎり、と奥歯を噛むように苛立ちを押し込める。

ここは王城。
ケイが使っていた部屋だ。
エディとマヤ、他複数人がいる。

「わかってる…わかってはいる、が…」

睨みつけるようにマヤが見ている先には2人がいる。
自分がそこにいないのが許せないようだ。

「まあ、殿下には懐いたものねぇ」

ちらりとエディもそちらを見る。

ケイがマヤを怖がるといけないので衝立で隠してある。
もちろんその隙間からガン見しているわけなのだが。

ちなみに声も遮断してある。
魔法さまさまだ。

「楽しい?」

「うん。きらきら、すき」

「ふふ、そう」

ヴィーの髪を小さな手でちょいちょいと遊ぶケイ。
当然ヴィーのお膝の上である。

「っ…!!!」

「はあ…ケイが怯えるでしょ」

殺気が止まらない。
もはや隠すつもりもない。

髪を弄っていることでも膝の上にいることでもなく。
すき、と言ったことに対してフラストレーションが溜まっているようだ。

「君の髪も綺麗だよ」

「ん…えへ…」

見られていることわかっているのかいないのか。
でこチュー入りました。
わかっている上でやったのなら完全に煽りです。

「~~~!!!!」

「どうどうどうどう。ほら見てみなさい。ケイは嫌がってないわよ?」

「それがっ…!!余計に…嫌なんだ……」

これ放っておいたらいつか泣くんじゃないか。
マヤは現在かなり情緒不安定になりつつある。
それともぽっと出の男に娘を奪われた父親ポジだからだろうか。

「ねーぇ、それでケイくんどうなるのぉ?」

「そうねぇ…正直アタシはわからないんだけど、殿下ならわかっているんじゃないかしら?」

「ええー?アレはケイくんを楽しんでるだけじゃないのぉ?」

ダウンしたマヤとバトンタッチをするようにノアのターン。

「方法がわかっているからじゃない?今は楽しんでおくべきだと思ったのかもしれないわよ?」

「ええー」

そして呆れた視線をケイ達へ向ける。
早く2人の世界から出てきてほしいものだ。

「あのね、おれね」

「うん」

「まほう、はじめてみたの!あのね、きらきらーってしてて、きれーでね、おうまさんかっこよくてね」

「うん」

「でもねでもね?」

「ん?」

「おにーさんがいちばんきれーなの!おひさまみたいで、とってもとってもきれー」

「…ありがとう」

「おかーさんがね、おひさまはおれのみかただよっていってたの。だからね、おれ、おひさまだいすき!」

「………そっか」

ぎゅっと慈しむように抱き締める。
その表情はどこか泣き出しそうで、けれど嬉しそうでもあった。

ヴィーを太陽だと言い、それを好きだと言う。
子どもの戯言に過ぎないのかもしれないが言っているのは他ならぬケイなのだから。

ところでこの2人いつになったら2人の世界やめてくれるのか。
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