退魔の少女達

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聖母の淫魔 2

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淫魔の香りを追い、サクラは体育館の中へと急ぐ。
入り口の靴棚付近に人気はなく、奥へ進めば進むほどその匂いは強くなっていく。
そして体育館への扉を開くと、体育館の奥に奴はいた。
肉の塊のような胴体から触手を伸ばし、女子生徒の足を引きずり飲み込もうとしている。
そして、引きずられているその女子生徒の顔には見覚えがあった。

「マユちゃん!」

サクラが叫ぶも返事はない。
完全に気を失っているようだ。
しかし、それはそれで好都合。サクラは右手に刀を具現化させる。

(相手は低級淫魔が一体。大丈夫、私一人で問題ない!)

サクラは走りながら、淫魔との距離を詰める。
淫魔もサクラの存在に気づいたようで、マユを引きずる速度が早まる。

「させるかァ!」

まだ淫魔との距離はあるが、サクラは刀を大きく振った。
その瞬間柄と刃の部分が分離し、刃だけが回転しながら淫魔の方へ飛んでいく。
そして刃はマユを拘束していた触手を切り裂いた。

「よし!」

もう一度集中して、強い力のイメージを込めると刀身はすぐに元に形に戻った。

「ギエエエエエエエェエッ!!」

淫魔は叫び声をあげながら、その攻撃対象をサクラへと完全に切り替える。
しかしサクラの方も、すでに淫魔まで数メートルのところまで迫っていた。

(これ以上近づけば淫液をかけられるかもしれない………なら!)

サクラは刀身が届くより手前の距離で足を止め、構えの姿勢に入る。
動きの止まったサクラに対して、淫魔はすかさず触手を伸ばす。
しかしサクラはそんなもの目にも入れず、ただ刀を構え、集中する。
触手が目先まで近づいたその瞬間、サクラは大きく目を見開き、一閃を薙ぐ。

「セヤアアアアアアァッ!!」

本来敵の胴体に刃など届かない距離。
しかし振った刀はその刀身がどんどん伸びていく。

強い力を具現化したその力は、その手に持つ武器をどんな形にでも変えることができる。
ゆえに精気が尽きぬ限り、その刀身を無限に伸ばすことさえ可能ではある。
しかし、その武器が本人に扱えないのであれば意味がない。
刀身を伸ばせばその分刀は重くなり、軽くするために中を空洞にすればその分刀は脆くなる。
だからこそ、サクラは刀を振るうその一瞬だけ、刀を伸ばす。
勢いに乗った斬撃は、淫魔の胴体をいともたやすく切断した。
そして刀を振るい終わる頃には、伸びた分の刀身は霧となり消え、いつものサイズの刀身に戻っていた。

「ギアアアアアアアアッ!!」

淫魔が叫び声をあげあながら消えていく。
塵となり消えた淫魔を確認したあと、周囲からは完全に淫魔の香りが消えていた。

(勝った……私、強くなってる……よね?)

幾度となく淫魔と戦い続けたサクラは、自然と新たな戦い方を身につけていた。

「そうだ、マユちゃん!! マユちゃん、しっかりして!!」

マユに駆け寄り、その安否を確認する。

(息はある。ただ気絶してるだけ、かな? うぅ、こういうとき先輩がいないとどうしたらいいか分からない)

戦闘後の事後処理をカナに任せっきりだったことをサクラは後悔した。

(保健室、空いてるかな? とりあえず先輩が来るまでベッドに寝かせておこう)
サクラはマユの体を抱え、保健室を目指した。


 ***


「あれ、保健室、電気ついてる。まだ誰かいるのかな?」

入学してからというもの身体測定の日以外に保健室を利用したことがないサクラは、保健室がいつまで開いているものなのか、そもそも保健の先生がどんな顔をしているのかすら知らずにいる。
こんな時間に訪れて怒られはしないだろうか、そんなことを思いながら保健室の扉を開いた。

「あら、こんな時間にどうしたの?」

机に座っていた白衣の女性が、こちらを見て優しく微笑む。
優しそうな先生でまずは胸を撫で下ろした。

「あの、私の友達が部活中急に倒れてしまって、診ていただけますか?」
「それは大変ね。奥のベッドまで運んでくれる?」
「はい!」

サクラが奥のベッドにマユを寝かせると、保健の先生は「ちょっと待っててね」と言い残しカーテンを閉めてしまった。
カーテンの外側に残されたサクラは何をしたらいいか分からず、とりあえず手前にあったベッドへと座った。
部屋の中にはサクラとマユと先生だけ。
当然だがこの時間帯に他の生徒はいなかった。
保健室のツンと鼻を指す独特な薬品の匂いのせいか、保健室は学校の中でも独特の雰囲気を感じる。
それにどこか甘い匂いもする。
おそらく机の上に置いてあるアロマディフューザーから香るものだ。
溢れる蒸気にはきっと、リラックス効果があるのだろう。

ソワソワとしながらサクラが待っていると、数分して先生がカーテンの中から出てきた。

「あの、マユちゃんは!?」
「大丈夫よ、きっと疲れが溜まっていたんでしょうね」
「そうですか、良かった……」

マユが無事だということが分かってひとまず安心する。

「あなたはもう帰っていいわよ、あとは私がなんとかしておくから」
「はい、ありがとうございます」

サクラは先生に礼を交わし、その場を後にしようとした。

そして足を一歩踏み出したその瞬間、ガクンと頭が揺れる。

「……え?」

気づくとサクラは地面に倒れていた。

「……ッ! 大丈夫!?」

保険の先生がサクラに詰め寄る。

「なん、で……体が、動かない」

どういうわけか体が重く感じ、体に力を入れることができない。

「友達が助かったことに安心して、腰が抜けちゃったのかも知れないわね。とりあえずベッドまで持ち上げるわ、痛かったらごめんね」
「す、すいません……」
(腰が抜けた? 腰が抜けると、こんな体全身が動かなくなるの?)

サクラは初めての体験に混乱する。
先生の手を借りて、ベッドの上へと持ち上げられる。
そしてどういうわけか先生の膝の上に座る形となった。

「じゃあちょっと体の方診ていくわね」
「……ぇ、あ、はい」

まだ理解が追いつかぬままそう答えてしまう。
先生が制服のボタンを上から順に外していく。

(え……服、脱がすの……? でも、そっか、診察だから……)

頭の中で勝手にそう理解して、体を任せる。
全てのボタンが外され、白い肌と水色のドット柄のブラがあらわになる。
先生は後ろから抱きつくようにサクラのおへそのあたりから胸の方へ、指でツーッとなであげる。

「んっ」
(診察って聴診器とか使うんじゃないの!?)

腰や横腹、肩などを優しく揉まれ、その度に口から漏れそうになる甘い声を必死に抑える。

「せんせ……ダメッ…………これ、違っ!」
「違くないわ、腰が抜けた時はこうやってマッサージするのが一番なの。多分数分もすればきっと動けるようになるわ」
「そう、なんですか……んッ」

先生に対して疑う気持ちはあるものの、体を動かすことのできないサクラは体を任せる以外に術はない。

「そうそう、これを使うともっとよく効くのよ」

そう言って先生はサクラの腹部にオイルのようなものをかける。

「んんッ!? こ、これはっ!?」
「よく効く塗り薬よ」

冷たくて粘性のある液体が肌に触れ、条件反射で体がビクンと跳ねる。
そして先生はその上から、液体を全身に伸ばすかのようにマッサージを続ける。

「んッ……あぁぅッ……」

必死に抑えようとしている嬌声がだんだんと抑えられなくなる。
先生の手は鎖骨や脇のあたりを優しく撫で、そしてサクラの体が十分に火照ったところで両の胸を揉みしだいた。

「ふぁうッ!?」

抑えきれなくなった嬌声が口から漏れる。

「どうしたの? すごく顔が赤いわ」

もはやこれはマッサージではないと、流石のサクラでも気づいた。

「手を、手を止めてくださいッ! こんなの、違いますッ!」

あくまで抵抗できるのは首から上だけ。
首を振ってサクラは拒否の意思を示す。

「ふふっ、ごめんなさい。ちょっといたずらし過ぎちゃったかも」

先生は反省したのか、サクラの胸から手を離す。
それを見て、サクラも安堵する。

「そういえば自己紹介、まだだったわね。私の名前はマリリア、ここを根城にする淫魔よ」
「……え?」

唐突に言われたその言葉に、まだ頭が追いつかない。
今まで出会った淫魔は人間に近い形はしていても、どこか違う色や形状をしていた。
だが、今真後ろにいる女性はどう見ても普通の人間にしか見えない。

「ふふっ、そのキョトンとした顔、本当に可愛いわね。あなたの名前は知ってるわ、退魔師のサクラちゃん。もうこの辺じゃあかなり有名なのよ、あなた」
「……ッ!」

その言葉を聞いて、ようやく後ろにいる相手が間違いなく淫魔なのだと確信できた。
ならば戦わなくては……でも、どうやって……。
どんなに力を入れようと思っても、体はまるで動かない。

「それにしても、この部屋に蔓延する神経毒に気づかないなんて、退魔師にしてはちょっと抜けてるわね」
「神経毒……? ……はッ!」

あの甘い匂いがするアロマディフューザーに目が行く。
間違いない。あそこから出ている蒸気に神経毒の効果があるのだとサクラは気づく。

「ふふっ、今頃気づいたんだ。かーわいいー」

マリリアと名乗る淫魔はサクラの頬を嫌味ったらしくつつく。
「何が、目的……?」
「目的、淫魔の目的なんてたった一つよ。女の子が気持ちよくなっているところを見たいの。いや、私の場合は診たい、かしら。ふふっ、本当にそれだけなのよ」
「ふあぁんッ!」

マリリアの手がまたサクラの胸へと伸びる。

「そうそう、このヌメヌメした液体なんだと思う?」

サクラは答えない。答えることができない。
漏れそうな声を抑えるの必死だからだ。

「はーい、時間切れ。正解は媚薬でした、えいっ!」

マリリアのぬるぬるした手がブラの中へと入り込み、二つの蕾を同時に摘んだ。

「んああああああああぁあぁああッ!!」

我慢していた甘い声が一気に漏れる。
動かせない体とは別に、生理現象で体がビクビクと震える。

「ふふっ、素敵な声。夜は長いわ。サクラちゃんの可愛い声、もっと聞かせてよ」

耳元で囁くマリリアの声で、背筋が跳ねる。
手足を拘束されているわけでもなければ、満身創痍で動けないわけでもない。
後ろから優しく抱擁されているだけ。
たったそれだけなのに、まるで体を動かすことができない。
何度自分の体に鞭を入れても、その体が動くことは決してなかった。
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