退魔の少女達

コロンド

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番外編

敗北の少女に与える快楽実験 1

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こちらFantiaにてリクエストを受けて作成した作品になります。
本編終了後にもしかしたらあったかもしれない物語、くらいの感覚でお楽しみください。

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夜の廃工場。
サクラがやってきたその場所は、人気も少なく淫魔が湧くには最高のスポットと言っていい場所だった。

「てやぁ!」

いつもの制服を身にまとい、サクラは刀を振り下ろす。
するとそこにいた蝙蝠のような小型の低級淫魔が真っ二つになり、霧のように消えていく。

「ふぅ……一体何体倒せば……」

額に滲んだ汗をぬぐう。
サクラはもう今日だけで数えきれないほどの淫魔を切り伏せていた。
低級の淫魔が群れを成している、という報告だけを受けこの場に一人でやってきたサクラ。
確かに辺りからは強い淫魔の反応はないが、それにしても低級淫魔の数が多かった。
淫魔の気配を追いながら歩いていると、廃棄されたドラム缶ががガタガタと揺れ、中からまた蝙蝠型の淫魔が現れる。

「セイッ!」

視界に入るや否や、サクラはその淫魔をすぐさま叩き切る。
体を真っ二つにされた小型淫魔が、地面に落ちて消滅する。

「手ごたえがないなぁ……いや、あっても困るんだけど」

もはやこの程度の淫魔、サクラの敵ではない。
そんなとき、そんなサクラの思いを知ってか知らずか、ゾワリとした気配を背後からやってくる。

「グゥウウウウ……ッ!」

廃工場内に響く、飢えた獣のような鳴き声。
明らかに先ほどまでの敵とは違う気配だった。

「……! 人型ッ!?」

サクラの視界に映る、二足歩行で歩くシルエット。
しかしながら人間にしてはやや大きな上半身。
接近してようやくその全貌が見える。
そこにたのは2メートルを優に超えた、腕を六つ持つ人型の淫魔だった。
その淫魔はサクラを視認した途端、淫魔は弾丸のような速度でサクラに急接近し、その拳をサクラめがけて叩き込む。

「ぐうっ!?」

重い一撃。
それをサクラはそれをなんとか刀の腹で受け止めた。

(ぐっ……なんてパワー……ッ!)

なんとか攻撃は受け止めたものの、ジンジンとした手の痺れは残る。
先ほどまで相手にしていた淫魔とは比べ物にならない力。
その上、まだ敵の攻撃は終わりじゃない。
六つある腕が、波状攻撃でサクラに襲い掛かる。

「グガァアアアッ!!」

「がはっ!?」

一本の刀で六本の腕からなる攻撃を防ぎきれるわけもなく、淫魔の拳がサクラの腹部にめり込む。
その衝撃にサクラの体が浮き上がり、そのまま廃材をなぎ倒しながら地面を転がる。

「ぐっ……げほっ……」

(強い……でも自意識を持っているようには見えない……ということは、こいつも低級淫魔?)

廃材を払いのけながら、サクラは間髪入れずに立ち上がる。
いくらかすり傷はあるものの、退魔師であるサクラにとってこの程度は怪我のうちにも入らない。
そんなサクラに、六本腕の淫魔が再び接近してくる。

「ガアアァアアッ!」

その淫魔は力任せに最短距離で突進してくる。
腕の数こそ多いものの、その動きは単調。

(防ぐんじゃなくて、切り払うッ!)

サクラの顔面目掛けて一直線に進んでくる淫魔の腕。

「ふッ!」

それをかわすのと同時に、距離を取りながら舞うように刀で切り払う。
ボトっと音を立て、六本ある腕の内の一本が地面に転がった。
地面に落ちた腕はすぐに霧のように霧散し、淫魔は失った自分の腕の一つをじっと見つめる。
だが、どうやらその淫魔には痛覚というものは存在しないようで、すぐに何もなかったかのように再びサクラに接近する。

「ガッ、グァアアアアッ!」

再びサクラに殴りかかろうと接近してくる淫魔。
その単調な動きを、サクラは既に見切っていた。

「失敗から学ぶ知能がないみたいで安心しましたよっと!」

弾丸のような速度で振り抜かれる淫魔の拳。
だがその拳が捉えたのはサクラの残像。
その間、サクラは淫魔の懐に入り込む。

「せやぁああッ!!」

振り抜かれる一刀。
淫魔の上半身と下半身が、真っ二つに分かれる。

「ガ、ァ……っ」

地面に落ちる淫魔の上半身と下半身。
淫魔は自身の体を保てなくなり、体が霧散していく。

「腕は六本あっても、体が一つじゃ大したことないですね」

消えていく淫魔の姿を確認し、サクラは周囲を見渡す。
辺りはしんと静まり、淫魔の気配は完全に消えた……かのように思えた。

――カラン。

静寂の中、空き缶が転がるような音が響く。

「……ッ! 誰かいるの!?」

サクラが声を上げた直後、通路の奥から何者かが駆け出すような音が聞こえた。
嫌な予感がして、サクラは通路の方へと駆け出す。
そこにいたのが人ならともかく、僅かながら淫魔の気配を感じたからだ。

通路に入ると曲がり角に消える人影が見えた。
足元に気をつけながらサクラは、サクラはその影を追いかける。
その先にある広い部屋に出ると、白衣を着た女性――――いや、その気配から淫魔であろう者の姿を捉えた。

「……ッ! 淫魔たち!」

白衣の姿の淫魔が振り向き手を振ると、どこからか小型の淫魔が集まる。
数十もの蝙蝠の形をした淫魔がサクラの周囲に群がり、行く手をふさぐ。

「くっ……このッ!」

乱雑に刀を振り、近づく淫魔を斬り刻んでいく。
この程度の相手、いくらやってきても大したことはないが、サクラがその場で動けずにいる間に白衣の淫魔がどこかへ逃げていく。

「はぁ……はぁ……」

そして周囲の敵を完全に切り伏せた頃には、白衣の淫魔は既に姿を消していた。
周囲は淫魔の香りが充満し、匂いを頼りに追いかけることも難しい。

「はぁ……逃がしちゃったか……」

廃工場を出ると既に空は濃い青色に染まり、朝日が差し込もうとしていた。
淫魔の活動時間が終わる。
あの白衣の淫魔を取り逃がしたことを悔しく思いつつも、サクラはこれ以上淫魔を追いかけるつもりはなかった。

「しょーがない、明日こそは……」

サクラとて体力は無限じゃない。
今日は一度帰還し、また明日、あの白衣の淫魔を探すことにした。


 ***


その瞳は、廃工場を後にする一人の少女を見つめていた。

「刀を使う退魔師…………戦闘センスはなかなかだったけど、それ以外の術を使う様子はなかったッスねぇ。いや、あるいは使えないのか……もしかしたらあの手が有効かも……?」

廃工場の一室で、ぶつぶつと呟く声が響く。

「明日もここに来てくれるかな? だったらアレを試すいい機会ッスねぇ……クフフ」

日が明けても暗い廃工場の中で、その視線の持ち主は静かに笑う。

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