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気になるカノジョ
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さて。
転校生はきちんと教科書を持ってきていたため「教科書持ってないから見せてー」なんてイベントも発生することもなく、一限目の授業が終わった。
何かこちらから話しかけた方がいいのだろうか……なんて考えている内に、金井さんの周囲には人だかりができていた。
「金井さんすっごく美人だね、モデルさんみたい!」
「金井さんってどこから来たの?」
クラスメイトの半数近くが金井さんの席に集まりだす。
こちらから話しかける必要はなさそうだ。
「へへん、実は東京で本当にモデルやってたんだよー。あ、これ自慢するために持ってきた雑誌ね」
金井さんがカバンからいくつかの雑誌を取り出すと、餌に群がる鯉のようにクラスメイトがよってたかる。
そして歓声が上がる。
「すごい、これ金井さんだよね!」
「私女性誌に乗ってる人、生で見るの初めて!」
「まぁモデルなんて親の遺伝子8割、化粧2割みたいなもんだからね。私自身はそんな大した人間じゃないよ。ほんと親の遺伝子様様ですわー」
私は前を向きながら、視線だけを真横に向ける。
雑誌には確かに金井さんと思わしき人物がお洒落なコーディネートをして紙面に乗っていた。
――本当にモデルなんだ、すごい……
口には出さないけど感心する。
モデルなんて、こんな辺鄙な場所では絶対に出会わない職種の人間だ。
――気になる……もっと金井さんのこと知りたい……
そう思うのと同時に、私の中に群れたくない心理が発動する。
隣の席で話している内容はすごく気になるけど、そこに私は参加しない。
これは厄介かつ面倒くさい私のプライドのようなものだ。
ということで私は机に突っ伏し、興味がないふりをしながら隣の話を聞く。
「金井さん、好きな食べ物は?」
「んーチョコレート。甘いやつ」
「好きな動物は?」
「猫」
「昼と夜どっち好き?」
「夜」
――その浅い質問いる?
直接本人たちには言わないけど、心の中でツッコむ。
「金井さんはどうしてこんな学校に来たの?」
――そうそう、そういう質問して欲しかった!
興味がなさそうなふりをして、私は聞き耳を立てる。
「なんか色々人間関係に疲れちゃってさー。それに人生の青春時代を仕事で終わらせるのって嫌でしょ? 親からは反対されたんだけど、学費を自分で払えるくらいには稼いだし、都会から離れて自然豊かな場所で青春を謳歌したいと思ってさ。色んな学校探して、ここがいいなって思ったからここに来たんだよ」
また歓声が上がる。
私たちにとって『都会で活躍する人がド田舎のこの学校を自分で選んで来てくれた』という事実は割と嬉しいことだ。
この学校の生徒たちは、都会に住む人たちがどこか自分たちのような環境で暮らしている人を見下しているんじゃないか、という不安感を少なからず持っている。
だからこそ金井さんはそういう偏見の持ち主ではないようで、少しだけ安心した。
その後も私は机に突っ伏しながら、隣の話を聞き続けた。
***
「黒瀬さんっ!」
「うぉあッ!?」
一日の授業が終わるなり、金井さんにいきなり声をかけられた。
「学校案内してほしいんだけど、いいかな?」
「う……うん、いいよ」
学校案内を任されていた件、忘れていたわけじゃない。
ただ今日は休み時間に入るたび金井さんの周囲にクラスメイトが集まり、放課後になるまで案内をしてあげる暇なんてなかった。
「金井さんさよならー」
「金井さんまた明日」
「モデル時代の話、また聞かせてね」
金井さんと一緒に教室を出ようとすると、すれ違うクラスメイトが金井さんに声を掛けて行く。
転校初日だというのに金井さんはもうクラスの人気者で、隣を歩く私は置物みたいで何だか居心地が悪かった。
***
「浴場は学年ごとに使える時間が違うから気をつけてね」
「うんうん」
「となりにあるのが食堂。朝昼晩、基本的に毎日ここでみんなと一緒にご飯を食べるよ」
「ここはお昼行ったからOKです」
「こっちは飼育小屋、うさぎとかカメとか飼ってるよ」
「かわいー!」
教室を出てからも、金井さんは周囲の視線を集めていた。
すれ違う他の学年の生徒達から、普段は感じることのない興味の視線を感じる。
何だか嫌だなぁ、隣を歩くの。
比較対象にされそうで。
「えーっと、次は……」
「ちょ、待って、黒瀬さん待ってぇ!」
「え?」
歩きながら次はどこを案内しようか感上げていると、後ろから金井さんの声がして振り返る。
金井さんは早足でこちらに向かってきていた。
「黒瀬さん、歩くの早いよー」
「ああ、ごめん」
金井さんの隣を歩くのがなんだか恥ずかしくて、さっさと終わらせてしまおうという気持ちが強くなり、どうやら私はやや早足で学校案内をしていたようだ。
「はぁ……はぁ……ねぇ黒瀬さん」
呼吸を切らしながら、金井さんが私の目を見て語りかける。
なんとく私は視線をそらしてしまう。
「黒瀬さんさ…………私のこと嫌い?」
「え?」
突如、予測もしていなかった言葉を浴びせられ、私はたじろぐ。
「さっきから私の顔見てくれないし、教室では私がみんなとおしゃべりしている間、ずっと興味なさそうな顔してたし……それにほら、先生が寮で私と同じ部屋って言った時に微妙そうな顔してたじゃん」
「え……あ……」
――やってしまった
不安そうな表情の金井さんを見て、私はようやく自分の失態に気づく。
初対面の時からずっと金井さんはどこか気が強そうで、なんとなく苦手なタイプだったので私は極力関わらないようにしていた。
だけど初めての環境、それも周囲に自分の知り合いが全くいない状況で不安にならない人はいない。
「黒瀬さんが嫌なら、私先生に他の部屋に移るように言って――」
「ごめん!」
金井さんが言い切る前に、私は頭を下げる。
「ちょっと、都会っ子を僻む田舎っ子みたいになってた……かも…………金井さん、ほんと、ごめんなさい……」
さらに深く頭を下げる。
何というか、ふとさっきまでの自分を振り返ると、ダサかった。
金井さんの悲しそうな顔を見て正気に戻った私はただただ頭を下げ続けた。
「そんな、頭下げたりしなくていいよ! でもそっか、嫌われてるわけじゃなかったんだ……良かったぁ……」
金井さんの安堵する顔を見ると、なんだか私も落ち着いてくる。
やっぱりモデルをやっていただけあって、表情の一つ一つがこちらの感情を揺さぶってくる。
「ねぇ、金井さんじゃなくて、悠香って呼んでよ」
「え……」
金井さんが上目遣いの視線でこちらを見つめてくる。
恥ずかしくて視線を逸らしてしまいそうになるけど、今は耐える。
そしてあまり人のことを名前で呼ばない私は、金井さんの急な要求にたじろぐ。
だけど今は私の方にも罪悪感があるから、軽くあしらうこともできない。
「……ゆ、ゆーか」
私がそう言うと、金井さん……もとい悠香の顔がパァっと嬉しそうな表情に変わる。
その表情を見ると、私もなんだか嬉しくて口元が綻ぶ。
「えへへ、じゃあ私も……………あれ、そういえば黒瀬さんの下の名前って?」
そういえば悠香の前では一度も自分の名前を言っていなかったと気づく。
「志乃、黒瀬志乃」
「しの…………志乃ちゃんだねっ! 改めて今日からよろしくね志乃!」
「うん、よろしく……悠香」
その瞬間、張り詰めていた緊張が解けて、心の壁が崩れていくような気がした。
いや、私が勝手に敵意を感じて壁を作っていただけなのだけれど。
「ふふっ」
理由は分からないけれど、なぜか勝手に笑みがこぼれた。
「……可愛い」
急に、不意打ちのように、悠香がそう呟いた。
「……え」
独り言だったのか、私に聞こえるように言ったのか、判別がつかないくらいの小さな声。
私はふっと顔が熱くなるのを感じて、視線を逸らす。
「ほ、ほらっ! つ、次の場所行くよっ」
「はーい」
焦って声がしゃくりあがる私に対し、悠香はなんてこともないかのような声で返事をした。
***
一通りの学内施設を紹介し終わり、私たちは寮に向かって歩いていた。
ただ田舎の、それも人里離れた山の上にある学校であるがゆえに敷地だけは無駄に広い。
歩き疲れたのに加え、初対面がゆえの話題の枯渇。
ただ足音だけが響く、私は妙な気まずさを感じていた。
何か話題を振らなければ……そう思うものの、私は普段から自分から話題を振るのが苦手な女だったことを思い出す。
「あの……休み時間中のことだけどさ……」
「ん?」
「寝てるふりしてたけど、ほんとはずっと悠香たちの話聞いてたよ」
「……」
何か話題を、と思って出てきた言葉がそれだった。
また二人の間に静寂が訪れる。
完全に後悔した。
「へっ、えへへ、なにそれ可愛い」
「……っ!」
はにかむ悠香の顔とその言葉が頭の中を反芻して、また顔がカッと熱くなる。
「かっ、可愛いは違うと思う」
なんでかはよく分からないけど、私は可愛いって言葉に凄く弱いらしい。
「違うって言われても…………私の主観は私しか決めれないんだからが、私が可愛いって言ったんだから可愛いんだよ。志乃に拒否権はないよ」
う、うう……
言い返せなくなって、私は黙り込む。
「んふっ、不服そうな顔も可愛い。それじゃあ仲良くなった証として志乃には一個だけ、みんなには教えてないことを教えてあげる」
歩く私の前に陣取り、悠香は目をそらすことができないくらい私に顔を近づけ、そして微笑む。
「この学校に来た理由、みんなの前では自然の中で青春を謳歌したい……だなんて言ってたけど、あれは嘘。本当はね、可愛い女の子がたくさんいる場所でパラダイスを謳歌したかったんだ。私可愛い女の子大好きだからね!」
それはそれは楽しそうな表情で、悠香はそう言った。
「は……はぁ……ッ!?」
「ふふっ……ほら、はやく寮まで戻ろ!」
言うだけ言って、彼女は私の前を歩いていく。
「いや……え……ちょ、ちょっと待って!」
転校生金井悠香、やっぱりヤバイやつだった……!
転校生はきちんと教科書を持ってきていたため「教科書持ってないから見せてー」なんてイベントも発生することもなく、一限目の授業が終わった。
何かこちらから話しかけた方がいいのだろうか……なんて考えている内に、金井さんの周囲には人だかりができていた。
「金井さんすっごく美人だね、モデルさんみたい!」
「金井さんってどこから来たの?」
クラスメイトの半数近くが金井さんの席に集まりだす。
こちらから話しかける必要はなさそうだ。
「へへん、実は東京で本当にモデルやってたんだよー。あ、これ自慢するために持ってきた雑誌ね」
金井さんがカバンからいくつかの雑誌を取り出すと、餌に群がる鯉のようにクラスメイトがよってたかる。
そして歓声が上がる。
「すごい、これ金井さんだよね!」
「私女性誌に乗ってる人、生で見るの初めて!」
「まぁモデルなんて親の遺伝子8割、化粧2割みたいなもんだからね。私自身はそんな大した人間じゃないよ。ほんと親の遺伝子様様ですわー」
私は前を向きながら、視線だけを真横に向ける。
雑誌には確かに金井さんと思わしき人物がお洒落なコーディネートをして紙面に乗っていた。
――本当にモデルなんだ、すごい……
口には出さないけど感心する。
モデルなんて、こんな辺鄙な場所では絶対に出会わない職種の人間だ。
――気になる……もっと金井さんのこと知りたい……
そう思うのと同時に、私の中に群れたくない心理が発動する。
隣の席で話している内容はすごく気になるけど、そこに私は参加しない。
これは厄介かつ面倒くさい私のプライドのようなものだ。
ということで私は机に突っ伏し、興味がないふりをしながら隣の話を聞く。
「金井さん、好きな食べ物は?」
「んーチョコレート。甘いやつ」
「好きな動物は?」
「猫」
「昼と夜どっち好き?」
「夜」
――その浅い質問いる?
直接本人たちには言わないけど、心の中でツッコむ。
「金井さんはどうしてこんな学校に来たの?」
――そうそう、そういう質問して欲しかった!
興味がなさそうなふりをして、私は聞き耳を立てる。
「なんか色々人間関係に疲れちゃってさー。それに人生の青春時代を仕事で終わらせるのって嫌でしょ? 親からは反対されたんだけど、学費を自分で払えるくらいには稼いだし、都会から離れて自然豊かな場所で青春を謳歌したいと思ってさ。色んな学校探して、ここがいいなって思ったからここに来たんだよ」
また歓声が上がる。
私たちにとって『都会で活躍する人がド田舎のこの学校を自分で選んで来てくれた』という事実は割と嬉しいことだ。
この学校の生徒たちは、都会に住む人たちがどこか自分たちのような環境で暮らしている人を見下しているんじゃないか、という不安感を少なからず持っている。
だからこそ金井さんはそういう偏見の持ち主ではないようで、少しだけ安心した。
その後も私は机に突っ伏しながら、隣の話を聞き続けた。
***
「黒瀬さんっ!」
「うぉあッ!?」
一日の授業が終わるなり、金井さんにいきなり声をかけられた。
「学校案内してほしいんだけど、いいかな?」
「う……うん、いいよ」
学校案内を任されていた件、忘れていたわけじゃない。
ただ今日は休み時間に入るたび金井さんの周囲にクラスメイトが集まり、放課後になるまで案内をしてあげる暇なんてなかった。
「金井さんさよならー」
「金井さんまた明日」
「モデル時代の話、また聞かせてね」
金井さんと一緒に教室を出ようとすると、すれ違うクラスメイトが金井さんに声を掛けて行く。
転校初日だというのに金井さんはもうクラスの人気者で、隣を歩く私は置物みたいで何だか居心地が悪かった。
***
「浴場は学年ごとに使える時間が違うから気をつけてね」
「うんうん」
「となりにあるのが食堂。朝昼晩、基本的に毎日ここでみんなと一緒にご飯を食べるよ」
「ここはお昼行ったからOKです」
「こっちは飼育小屋、うさぎとかカメとか飼ってるよ」
「かわいー!」
教室を出てからも、金井さんは周囲の視線を集めていた。
すれ違う他の学年の生徒達から、普段は感じることのない興味の視線を感じる。
何だか嫌だなぁ、隣を歩くの。
比較対象にされそうで。
「えーっと、次は……」
「ちょ、待って、黒瀬さん待ってぇ!」
「え?」
歩きながら次はどこを案内しようか感上げていると、後ろから金井さんの声がして振り返る。
金井さんは早足でこちらに向かってきていた。
「黒瀬さん、歩くの早いよー」
「ああ、ごめん」
金井さんの隣を歩くのがなんだか恥ずかしくて、さっさと終わらせてしまおうという気持ちが強くなり、どうやら私はやや早足で学校案内をしていたようだ。
「はぁ……はぁ……ねぇ黒瀬さん」
呼吸を切らしながら、金井さんが私の目を見て語りかける。
なんとく私は視線をそらしてしまう。
「黒瀬さんさ…………私のこと嫌い?」
「え?」
突如、予測もしていなかった言葉を浴びせられ、私はたじろぐ。
「さっきから私の顔見てくれないし、教室では私がみんなとおしゃべりしている間、ずっと興味なさそうな顔してたし……それにほら、先生が寮で私と同じ部屋って言った時に微妙そうな顔してたじゃん」
「え……あ……」
――やってしまった
不安そうな表情の金井さんを見て、私はようやく自分の失態に気づく。
初対面の時からずっと金井さんはどこか気が強そうで、なんとなく苦手なタイプだったので私は極力関わらないようにしていた。
だけど初めての環境、それも周囲に自分の知り合いが全くいない状況で不安にならない人はいない。
「黒瀬さんが嫌なら、私先生に他の部屋に移るように言って――」
「ごめん!」
金井さんが言い切る前に、私は頭を下げる。
「ちょっと、都会っ子を僻む田舎っ子みたいになってた……かも…………金井さん、ほんと、ごめんなさい……」
さらに深く頭を下げる。
何というか、ふとさっきまでの自分を振り返ると、ダサかった。
金井さんの悲しそうな顔を見て正気に戻った私はただただ頭を下げ続けた。
「そんな、頭下げたりしなくていいよ! でもそっか、嫌われてるわけじゃなかったんだ……良かったぁ……」
金井さんの安堵する顔を見ると、なんだか私も落ち着いてくる。
やっぱりモデルをやっていただけあって、表情の一つ一つがこちらの感情を揺さぶってくる。
「ねぇ、金井さんじゃなくて、悠香って呼んでよ」
「え……」
金井さんが上目遣いの視線でこちらを見つめてくる。
恥ずかしくて視線を逸らしてしまいそうになるけど、今は耐える。
そしてあまり人のことを名前で呼ばない私は、金井さんの急な要求にたじろぐ。
だけど今は私の方にも罪悪感があるから、軽くあしらうこともできない。
「……ゆ、ゆーか」
私がそう言うと、金井さん……もとい悠香の顔がパァっと嬉しそうな表情に変わる。
その表情を見ると、私もなんだか嬉しくて口元が綻ぶ。
「えへへ、じゃあ私も……………あれ、そういえば黒瀬さんの下の名前って?」
そういえば悠香の前では一度も自分の名前を言っていなかったと気づく。
「志乃、黒瀬志乃」
「しの…………志乃ちゃんだねっ! 改めて今日からよろしくね志乃!」
「うん、よろしく……悠香」
その瞬間、張り詰めていた緊張が解けて、心の壁が崩れていくような気がした。
いや、私が勝手に敵意を感じて壁を作っていただけなのだけれど。
「ふふっ」
理由は分からないけれど、なぜか勝手に笑みがこぼれた。
「……可愛い」
急に、不意打ちのように、悠香がそう呟いた。
「……え」
独り言だったのか、私に聞こえるように言ったのか、判別がつかないくらいの小さな声。
私はふっと顔が熱くなるのを感じて、視線を逸らす。
「ほ、ほらっ! つ、次の場所行くよっ」
「はーい」
焦って声がしゃくりあがる私に対し、悠香はなんてこともないかのような声で返事をした。
***
一通りの学内施設を紹介し終わり、私たちは寮に向かって歩いていた。
ただ田舎の、それも人里離れた山の上にある学校であるがゆえに敷地だけは無駄に広い。
歩き疲れたのに加え、初対面がゆえの話題の枯渇。
ただ足音だけが響く、私は妙な気まずさを感じていた。
何か話題を振らなければ……そう思うものの、私は普段から自分から話題を振るのが苦手な女だったことを思い出す。
「あの……休み時間中のことだけどさ……」
「ん?」
「寝てるふりしてたけど、ほんとはずっと悠香たちの話聞いてたよ」
「……」
何か話題を、と思って出てきた言葉がそれだった。
また二人の間に静寂が訪れる。
完全に後悔した。
「へっ、えへへ、なにそれ可愛い」
「……っ!」
はにかむ悠香の顔とその言葉が頭の中を反芻して、また顔がカッと熱くなる。
「かっ、可愛いは違うと思う」
なんでかはよく分からないけど、私は可愛いって言葉に凄く弱いらしい。
「違うって言われても…………私の主観は私しか決めれないんだからが、私が可愛いって言ったんだから可愛いんだよ。志乃に拒否権はないよ」
う、うう……
言い返せなくなって、私は黙り込む。
「んふっ、不服そうな顔も可愛い。それじゃあ仲良くなった証として志乃には一個だけ、みんなには教えてないことを教えてあげる」
歩く私の前に陣取り、悠香は目をそらすことができないくらい私に顔を近づけ、そして微笑む。
「この学校に来た理由、みんなの前では自然の中で青春を謳歌したい……だなんて言ってたけど、あれは嘘。本当はね、可愛い女の子がたくさんいる場所でパラダイスを謳歌したかったんだ。私可愛い女の子大好きだからね!」
それはそれは楽しそうな表情で、悠香はそう言った。
「は……はぁ……ッ!?」
「ふふっ……ほら、はやく寮まで戻ろ!」
言うだけ言って、彼女は私の前を歩いていく。
「いや……え……ちょ、ちょっと待って!」
転校生金井悠香、やっぱりヤバイやつだった……!
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