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この転校生、近い……
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食堂で夕食を済まし、そのまま浴場で汗を流し、その時悠香にセクハラされかけたり。
諸々を済ませた私たちは寮の入り口に置きっ放しになっていた悠香の荷物を持って、悠香を私の部屋……いや、私たちの部屋へと案内する。
「ここが今日から私が暮らす部屋かー」
いつも私一人しかいない部屋に、今日会ったばかりの人がいると言う違和感。
悠香は私とは全く正反対の人間。
これから私はこの日常に慣れていくんだろうか、全然イメージできない。
「なんか、思ったより物少ないんだね」
室内を見渡した悠香がそう一言。
確かに部屋に物は少ない。
「そもそも、この辺じゃ何か買ったりもできないからね」
部屋にあるものといえば二人分のベッドと、机の上には勉強道具や最低限の化粧道具くらい。
ああ、あとはベッド横の小さなテーブルの上にスマホも置いてある。
私はそれを手に取る。
「スマホ使っていいんだ」
「え? ああ、教室に持ち込むと怒られるけど、寮にいる間は使っても大丈夫だよ」
「そうなんだ。いやー、なんか全寮制の学校ってゲームとかスマホ持ち込み禁止なイメージあったからさ」
「ああそう言うことね。昔はそうだったみたいだけど、今はそんなことないよ。そう言うの厳しくしすぎると逆に学校側が色々と言われるみたい。生徒の自由を尊重してないとか云々」
私がそう説明すると、なぜだか悠香は不服そうな表情を見せる。
「えー、私ああ言う独自のルールがある閉鎖的な環境とか結構憧れてたんだけどなぁ。先輩のことをお姉様、って呼ばないといけないとかさー」
ちょっと意外だ。
なんとなく悠香は常にスマホ持ち歩いているイマドキの女子と言うイメージがあったから。
でもよくよく考えたら自分の意思でこんな学校にやってきた彼女が、よくいるイマドキの女子のカテゴリーに入るはずはなかった。
「残念だったね。うちの学校はそこまでじゃないよ。電源タップ一つ空いてるから、そっちは使っていいよ」
「んー……いや、いいや」
「え、スマホ持ってきてないの?」
「持ってはきているけど…………連絡したい相手もいないし、知りたい情報もないし、いいや」
流石にその返答は予想外だった。
この学校には娯楽がないから、基本的にスマホは暇を潰すための必須アイテムだ。
それをいらないと言いきる人は、この学校で彼女が初めてかもしれない。
あまり使わないとかならともかく、充電すらしようとしないのは異常じゃないだろうか。
まるで誰かと連絡すること、連絡がくることを拒絶しているかのよう。
それは過去にモデルをしていた人間が、こんな辺境の全寮制の学校までやってきたことと何か関係があるのだろうか。
私はそれを深く考えようとして…………やめた。
それは無粋だ。
「ああ、そう」
私はただ、さも興味がなさそうな声でそう返事をした。
「ところでこの部屋ベッドが二つあるけど、志乃は今までこの部屋に一人だったの? 学校の説明では寮は基本一部屋に二人って聞いてたけど」
「ん……うん、私は一人あふれちゃったから」
「えぇ……志乃はずっと部屋で一人だったんだ…………かわいそう……」
別に部屋で一人でいることにストレスはないし、寂しさを感じた覚えもないのだけれど、なぜだか悠香は私に哀れみの視線を向けてくる。
「これからは私がずっと一緒にいてあげるからね!」
そしてグッと顔を寄せてくる。
「ち、近い……」
たとえ同性であっても、見てくれのいい顔が近づけば緊張する。
私は顔をそらして悠香を押し返す。
「今日はもう疲れたから私はもう寝るよ、悠香は?」
「私も寝る! 実は私もすっごい疲れててさ、クタクタなんだよねー」
そうして激動の一日が終わる。
今日からルームメイトになったこの転校生の存在が、これからの私の学園生活にどんな影響を与えていくのか、今はまだ分からない。
「ん?」
電気を消して、私の布団のあたりに手を伸ばすと何か柔らかいものに手が当たった。
「やぁん、えっち」
悠香だった。
「あの……悠香のベッドはあっち」
「うん、知ってる」
「じゃあ」
「一緒に寝よ?」
暗くてよく見えないが、舌を出して戯けた表情をした悠香の姿が脳裏に浮かぶ。
なんだか無性に腹が立ってきて、私は無言で悠香をベッドの上から引っ張り出す。
「あぁう、もう冗談、冗談だってば~」
悠香の存在が私の生活にどんな影響を与えていくのか、今はまだ分からないけど少なくとも今までの静かな生活が帰ってくることはしばらくなさそうだ。
諸々を済ませた私たちは寮の入り口に置きっ放しになっていた悠香の荷物を持って、悠香を私の部屋……いや、私たちの部屋へと案内する。
「ここが今日から私が暮らす部屋かー」
いつも私一人しかいない部屋に、今日会ったばかりの人がいると言う違和感。
悠香は私とは全く正反対の人間。
これから私はこの日常に慣れていくんだろうか、全然イメージできない。
「なんか、思ったより物少ないんだね」
室内を見渡した悠香がそう一言。
確かに部屋に物は少ない。
「そもそも、この辺じゃ何か買ったりもできないからね」
部屋にあるものといえば二人分のベッドと、机の上には勉強道具や最低限の化粧道具くらい。
ああ、あとはベッド横の小さなテーブルの上にスマホも置いてある。
私はそれを手に取る。
「スマホ使っていいんだ」
「え? ああ、教室に持ち込むと怒られるけど、寮にいる間は使っても大丈夫だよ」
「そうなんだ。いやー、なんか全寮制の学校ってゲームとかスマホ持ち込み禁止なイメージあったからさ」
「ああそう言うことね。昔はそうだったみたいだけど、今はそんなことないよ。そう言うの厳しくしすぎると逆に学校側が色々と言われるみたい。生徒の自由を尊重してないとか云々」
私がそう説明すると、なぜだか悠香は不服そうな表情を見せる。
「えー、私ああ言う独自のルールがある閉鎖的な環境とか結構憧れてたんだけどなぁ。先輩のことをお姉様、って呼ばないといけないとかさー」
ちょっと意外だ。
なんとなく悠香は常にスマホ持ち歩いているイマドキの女子と言うイメージがあったから。
でもよくよく考えたら自分の意思でこんな学校にやってきた彼女が、よくいるイマドキの女子のカテゴリーに入るはずはなかった。
「残念だったね。うちの学校はそこまでじゃないよ。電源タップ一つ空いてるから、そっちは使っていいよ」
「んー……いや、いいや」
「え、スマホ持ってきてないの?」
「持ってはきているけど…………連絡したい相手もいないし、知りたい情報もないし、いいや」
流石にその返答は予想外だった。
この学校には娯楽がないから、基本的にスマホは暇を潰すための必須アイテムだ。
それをいらないと言いきる人は、この学校で彼女が初めてかもしれない。
あまり使わないとかならともかく、充電すらしようとしないのは異常じゃないだろうか。
まるで誰かと連絡すること、連絡がくることを拒絶しているかのよう。
それは過去にモデルをしていた人間が、こんな辺境の全寮制の学校までやってきたことと何か関係があるのだろうか。
私はそれを深く考えようとして…………やめた。
それは無粋だ。
「ああ、そう」
私はただ、さも興味がなさそうな声でそう返事をした。
「ところでこの部屋ベッドが二つあるけど、志乃は今までこの部屋に一人だったの? 学校の説明では寮は基本一部屋に二人って聞いてたけど」
「ん……うん、私は一人あふれちゃったから」
「えぇ……志乃はずっと部屋で一人だったんだ…………かわいそう……」
別に部屋で一人でいることにストレスはないし、寂しさを感じた覚えもないのだけれど、なぜだか悠香は私に哀れみの視線を向けてくる。
「これからは私がずっと一緒にいてあげるからね!」
そしてグッと顔を寄せてくる。
「ち、近い……」
たとえ同性であっても、見てくれのいい顔が近づけば緊張する。
私は顔をそらして悠香を押し返す。
「今日はもう疲れたから私はもう寝るよ、悠香は?」
「私も寝る! 実は私もすっごい疲れててさ、クタクタなんだよねー」
そうして激動の一日が終わる。
今日からルームメイトになったこの転校生の存在が、これからの私の学園生活にどんな影響を与えていくのか、今はまだ分からない。
「ん?」
電気を消して、私の布団のあたりに手を伸ばすと何か柔らかいものに手が当たった。
「やぁん、えっち」
悠香だった。
「あの……悠香のベッドはあっち」
「うん、知ってる」
「じゃあ」
「一緒に寝よ?」
暗くてよく見えないが、舌を出して戯けた表情をした悠香の姿が脳裏に浮かぶ。
なんだか無性に腹が立ってきて、私は無言で悠香をベッドの上から引っ張り出す。
「あぁう、もう冗談、冗談だってば~」
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