淫靡な香りは常日頃から

綾崎暁都

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小説家は官能恐怖を物語る

 俺は小説家だ。元々純文学を主に書いていたのだが行き詰まり、ここ最近は官能小説をメインに書いている。これも生活のためだ。官能小説を書くための取材と称し、と言うか生来の女好きがたたって、浮気がばれ、妻と子どもに逃げられてしまう。仕事も上手くいかず、ぎりぎりの金銭面で養育費を払いながら、それでも俺は酒と女に溺れる毎日を送っていた。
 ある晩、俺は寂しいバーで一杯やっていた。ふと、背後から気配を感じ振り返ると、女性が微笑んでいた。彼女の瞳は不思議な輝きを放っていた。
「一人で飲んでいるの?」
 彼女の声はハスキーで耳に心地よく響き、俺は彼女に心惹かれた。彼女は妖艶な雰囲気を身に纏っていた。今まで見たどの女よりも美しい。そして、俺は彼女に近づいた。
「君の名前は?」
 彼女は微笑みながら答えた。
「名前はいらないわ。私はただ、あなたを求めているの」
 俺は彼女と酌み交わした後、一晩を共にした。顔はもちろんのことだが、彼女の身体はとても美しかった。顔と身体、どれもが完璧なほどの黄金比で形成された、圧倒的で妖しげな美。俺は女神なのか、それとも堕天使なのか、名前も知らない彼女に、自身の全ての欲望をぶちまけた。
 それからというもの、彼女は俺の周りに現れるようになった。バーで偶然会う以外にも、精神的な世界、つまり夜な夜な俺の夢に入り込み、妖艶な姿で誘惑してくる。俺は彼女の虜になっていくような感覚に陥っていった。
 しかし、次第に彼女の正体に疑問を抱くようになった。あまりに行くところ、行くところで、彼女と遭遇してしまう。彼女は霊なのだろうか? それともただの妄想なのか? 心の内で恐怖が広がっていく。
 ある晩、俺は再びバーで彼女に出会った。恐怖はあったものの、彼女の魅力に抗えず、彼女と共に暗い部屋へと足を踏み入れた。
「君は何者なんだ? 本当の姿を教えてくれ」
 彼女は微笑みながら囁いた。
「私はあなたの欲望の化身。あなたの内に潜む闇を解放するためにここにいるの」
 その瞬間、彼女の姿が変わった。美しい女性の姿から、怪物のような姿へと変貌し、恐怖が俺を襲った。
「闇を解放してみせるわ」
 彼女の手が俺に迫り、恐怖が頂点に達した瞬間、彼女は俺に口付けをした。濃厚なキス。恐怖と欲望、後悔と好奇、いろんな感情が入り混じる中、段々と自分の意識が薄れていくのを感じた。
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