発情紋章を刻まれた真面目な召喚士ですが、契約精霊たちに甘やかされて困ってます。

さわらにたの

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第7章

6.*

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「ん……っ、ん」
 
 優しくて嬉しい。でも感じてしまう。触れられるだけで、びくんと跳ねて浅ましい身体が恨めしかった。テラ様は、まったくそんな気ないのに。わたしをただただ心配して、優しく撫でてくれてるだけなのに。それなのに紋章に浸されたわたしの身体はあさましくて、その指先でもっともっと、いろんなところに、奥まで触れて欲しい、なんて思ってる。
 涙が出てくる。伝うそれは幾筋も流れて止まらなかった。
 紋章をうけた悔しさと、優しさを裏切っているような浅ましい自分への悲しみ。

「どうした、どうして泣く、シェルヴェリラ。やはり痴れ者は殺めたほうがよかったか」
「ちが、ちがうの……違うの……! テラ、さまぁっ、おねがい、があるの」
「願い?」

 泣き出してしまったわたしに、テラ様が眉をひそめて困ってるのがわかる。
 そうだよね、わかんないよね。でも、今この状態から、「この紋章は人間の発情状態をもよおすものでね、触れて絶頂に至らないと死んじゃうから、エッチなこといっぱいして!」なんて、絶対に絶対に言えない。そもそも一から説明もしてられないし、説明してもわかってもらえないと思うし、それに――テラ様だって困るよね。

「あの……あのね、この紋章、身体をいっぱい、さわって、もらわないとなおらない、の」

 嘘は言ってないはず。肝心の達しないと消えないってことは言えてないけど。

「……そう、なのか」
「そう。だから、いっぱい、わたしのからだ、さわ、って……?」

嘘は付けなくて、でも本当のことも言えなくて、一生懸命熱に浮かされる頭で考えた言葉はこれだった。息も絶え絶えなわたしを涼やかなその琥珀色の瞳でじっと見下ろして、テラ様は言った。

「我は、シェルヴェリラのためなら何も拒まぬ。我が、触れるだけでいいのか?」
「うん……あの、ごめん、ね、ごめんな、さい、おねがい――」

 本当は、こんなこと頼みたくない。
 恥ずかしい。申し訳ない。でもまだ死にたくない。

 そっと差し出された手に、指を絡めた。
 テラ様の手はものすごくおっきい。アクアさんもウィンちゃんもおっきいなぁって思ったけど、やっぱり身長も一番大きいせいか、とっても大きかった。わたしがこんなに真っ赤な顔して目を潤ませて、たぶんすごくだらしない、嫌らしい顔をしてるのに、相変わらず優しいまなざしでずっと見てくれてる。
 ごめんね、と小さくつぶやいて、わたしはその手を自分の胸の上にそっと導く。テラ様は黙ってわたしにされるがままになっていた。
 テラ様の手を、無理やり快楽を得るために使おうとしてる。ものすごい罪悪感と、なんだかお腹の奥がもぞもぞした。最低だなぁ、わたし。そんなことを思いながらも、荒い息が止まらない。

 身体の芯はひどく熱を帯びていて、早く胸に、身体中に、刺激が欲しいって待ちわびてるのがわかるけど、心は冷え切っていた。
 最初にこの紋章が発動して、アクアさんを呼び出したときのことを思い出す。あの時から、結局なにひとつ解決してない。頭がぼうっとする。結局みんなに、迷惑かけて――そう思えば思うほど涙があふれて止まらない。ぽた、ぽたとこぼれた涙がわたしの頬をつたって落ちていった。

「我が触れれば、楽になるのだな?」
「はい……お願い、します……。ごめんね、テラさま……」
「わかった。シェルヴェリラは儚いからな、そっと――壊さぬように触れよう。唇の方がいいかもしれぬ」
「え?」

 くちびる――? と戸惑っている間に、わたしの身体は持ち上げられて、寝台に寝かせられた。
 寝台に仰向けに寝ると、わたしの身体の上に跨るようにテラ様も寝台に上がる。ふと、ああさっきまでわたしのこと組み伏せてた男たちと同じような位置だけど、全然ちがうなぁって安心するなぁって思って――。

「ぁっ!?」

 ふ、とその唇が近づいてきてわたしの胸の頂に触れる。ひく、と肌が蠢いて泣きだしたくくらい気持ちがよくて。テラ様の、こういうことはよくわからないけど、わたしの望むように、優しくしてあげようっていう気持ちが伝わってきて、また涙がこぼれてくる。
 はぁ、と息を吐く。そのまま唇で身体をたどられると、濡れた声と身体中の震えが止まらなくなってしまう。

「いい、よ、テラさま、手で、さわってくれる、だけで、わたし」
「力加減がわからぬからな。唇はいやか?」
「……いや、じゃ、ない……っ、けど、っだ、め……っ」
「だめなのか?」
「ダメ、じゃない……っ」

 段々わけがわからなくなってくる。そのまま胸や首、やさしくあやすように辿られて、体の熱がゆっくりと押し上げられてくるのを感じていた。

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