64 / 159
第7章
6.*
しおりを挟む
「ん……っ、ん」
優しくて嬉しい。でも感じてしまう。触れられるだけで、びくんと跳ねて浅ましい身体が恨めしかった。テラ様は、まったくそんな気ないのに。わたしをただただ心配して、優しく撫でてくれてるだけなのに。それなのに紋章に浸されたわたしの身体はあさましくて、その指先でもっともっと、いろんなところに、奥まで触れて欲しい、なんて思ってる。
涙が出てくる。伝うそれは幾筋も流れて止まらなかった。
紋章をうけた悔しさと、優しさを裏切っているような浅ましい自分への悲しみ。
「どうした、どうして泣く、シェルヴェリラ。やはり痴れ者は殺めたほうがよかったか」
「ちが、ちがうの……違うの……! テラ、さまぁっ、おねがい、があるの」
「願い?」
泣き出してしまったわたしに、テラ様が眉をひそめて困ってるのがわかる。
そうだよね、わかんないよね。でも、今この状態から、「この紋章は人間の発情状態をもよおすものでね、触れて絶頂に至らないと死んじゃうから、エッチなこといっぱいして!」なんて、絶対に絶対に言えない。そもそも一から説明もしてられないし、説明してもわかってもらえないと思うし、それに――テラ様だって困るよね。
「あの……あのね、この紋章、身体をいっぱい、さわって、もらわないとなおらない、の」
嘘は言ってないはず。肝心の達しないと消えないってことは言えてないけど。
「……そう、なのか」
「そう。だから、いっぱい、わたしのからだ、さわ、って……?」
嘘は付けなくて、でも本当のことも言えなくて、一生懸命熱に浮かされる頭で考えた言葉はこれだった。息も絶え絶えなわたしを涼やかなその琥珀色の瞳でじっと見下ろして、テラ様は言った。
「我は、シェルヴェリラのためなら何も拒まぬ。我が、触れるだけでいいのか?」
「うん……あの、ごめん、ね、ごめんな、さい、おねがい――」
本当は、こんなこと頼みたくない。
恥ずかしい。申し訳ない。でもまだ死にたくない。
そっと差し出された手に、指を絡めた。
テラ様の手はものすごくおっきい。アクアさんもウィンちゃんもおっきいなぁって思ったけど、やっぱり身長も一番大きいせいか、とっても大きかった。わたしがこんなに真っ赤な顔して目を潤ませて、たぶんすごくだらしない、嫌らしい顔をしてるのに、相変わらず優しいまなざしでずっと見てくれてる。
ごめんね、と小さくつぶやいて、わたしはその手を自分の胸の上にそっと導く。テラ様は黙ってわたしにされるがままになっていた。
テラ様の手を、無理やり快楽を得るために使おうとしてる。ものすごい罪悪感と、なんだかお腹の奥がもぞもぞした。最低だなぁ、わたし。そんなことを思いながらも、荒い息が止まらない。
身体の芯はひどく熱を帯びていて、早く胸に、身体中に、刺激が欲しいって待ちわびてるのがわかるけど、心は冷え切っていた。
最初にこの紋章が発動して、アクアさんを呼び出したときのことを思い出す。あの時から、結局なにひとつ解決してない。頭がぼうっとする。結局みんなに、迷惑かけて――そう思えば思うほど涙があふれて止まらない。ぽた、ぽたとこぼれた涙がわたしの頬をつたって落ちていった。
「我が触れれば、楽になるのだな?」
「はい……お願い、します……。ごめんね、テラさま……」
「わかった。シェルヴェリラは儚いからな、そっと――壊さぬように触れよう。唇の方がいいかもしれぬ」
「え?」
くちびる――? と戸惑っている間に、わたしの身体は持ち上げられて、寝台に寝かせられた。
寝台に仰向けに寝ると、わたしの身体の上に跨るようにテラ様も寝台に上がる。ふと、ああさっきまでわたしのこと組み伏せてた男たちと同じような位置だけど、全然ちがうなぁって安心するなぁって思って――。
「ぁっ!?」
ふ、とその唇が近づいてきてわたしの胸の頂に触れる。ひく、と肌が蠢いて泣きだしたくくらい気持ちがよくて。テラ様の、こういうことはよくわからないけど、わたしの望むように、優しくしてあげようっていう気持ちが伝わってきて、また涙がこぼれてくる。
はぁ、と息を吐く。そのまま唇で身体をたどられると、濡れた声と身体中の震えが止まらなくなってしまう。
「いい、よ、テラさま、手で、さわってくれる、だけで、わたし」
「力加減がわからぬからな。唇はいやか?」
「……いや、じゃ、ない……っ、けど、っだ、め……っ」
「だめなのか?」
「ダメ、じゃない……っ」
段々わけがわからなくなってくる。そのまま胸や首、やさしくあやすように辿られて、体の熱がゆっくりと押し上げられてくるのを感じていた。
優しくて嬉しい。でも感じてしまう。触れられるだけで、びくんと跳ねて浅ましい身体が恨めしかった。テラ様は、まったくそんな気ないのに。わたしをただただ心配して、優しく撫でてくれてるだけなのに。それなのに紋章に浸されたわたしの身体はあさましくて、その指先でもっともっと、いろんなところに、奥まで触れて欲しい、なんて思ってる。
涙が出てくる。伝うそれは幾筋も流れて止まらなかった。
紋章をうけた悔しさと、優しさを裏切っているような浅ましい自分への悲しみ。
「どうした、どうして泣く、シェルヴェリラ。やはり痴れ者は殺めたほうがよかったか」
「ちが、ちがうの……違うの……! テラ、さまぁっ、おねがい、があるの」
「願い?」
泣き出してしまったわたしに、テラ様が眉をひそめて困ってるのがわかる。
そうだよね、わかんないよね。でも、今この状態から、「この紋章は人間の発情状態をもよおすものでね、触れて絶頂に至らないと死んじゃうから、エッチなこといっぱいして!」なんて、絶対に絶対に言えない。そもそも一から説明もしてられないし、説明してもわかってもらえないと思うし、それに――テラ様だって困るよね。
「あの……あのね、この紋章、身体をいっぱい、さわって、もらわないとなおらない、の」
嘘は言ってないはず。肝心の達しないと消えないってことは言えてないけど。
「……そう、なのか」
「そう。だから、いっぱい、わたしのからだ、さわ、って……?」
嘘は付けなくて、でも本当のことも言えなくて、一生懸命熱に浮かされる頭で考えた言葉はこれだった。息も絶え絶えなわたしを涼やかなその琥珀色の瞳でじっと見下ろして、テラ様は言った。
「我は、シェルヴェリラのためなら何も拒まぬ。我が、触れるだけでいいのか?」
「うん……あの、ごめん、ね、ごめんな、さい、おねがい――」
本当は、こんなこと頼みたくない。
恥ずかしい。申し訳ない。でもまだ死にたくない。
そっと差し出された手に、指を絡めた。
テラ様の手はものすごくおっきい。アクアさんもウィンちゃんもおっきいなぁって思ったけど、やっぱり身長も一番大きいせいか、とっても大きかった。わたしがこんなに真っ赤な顔して目を潤ませて、たぶんすごくだらしない、嫌らしい顔をしてるのに、相変わらず優しいまなざしでずっと見てくれてる。
ごめんね、と小さくつぶやいて、わたしはその手を自分の胸の上にそっと導く。テラ様は黙ってわたしにされるがままになっていた。
テラ様の手を、無理やり快楽を得るために使おうとしてる。ものすごい罪悪感と、なんだかお腹の奥がもぞもぞした。最低だなぁ、わたし。そんなことを思いながらも、荒い息が止まらない。
身体の芯はひどく熱を帯びていて、早く胸に、身体中に、刺激が欲しいって待ちわびてるのがわかるけど、心は冷え切っていた。
最初にこの紋章が発動して、アクアさんを呼び出したときのことを思い出す。あの時から、結局なにひとつ解決してない。頭がぼうっとする。結局みんなに、迷惑かけて――そう思えば思うほど涙があふれて止まらない。ぽた、ぽたとこぼれた涙がわたしの頬をつたって落ちていった。
「我が触れれば、楽になるのだな?」
「はい……お願い、します……。ごめんね、テラさま……」
「わかった。シェルヴェリラは儚いからな、そっと――壊さぬように触れよう。唇の方がいいかもしれぬ」
「え?」
くちびる――? と戸惑っている間に、わたしの身体は持ち上げられて、寝台に寝かせられた。
寝台に仰向けに寝ると、わたしの身体の上に跨るようにテラ様も寝台に上がる。ふと、ああさっきまでわたしのこと組み伏せてた男たちと同じような位置だけど、全然ちがうなぁって安心するなぁって思って――。
「ぁっ!?」
ふ、とその唇が近づいてきてわたしの胸の頂に触れる。ひく、と肌が蠢いて泣きだしたくくらい気持ちがよくて。テラ様の、こういうことはよくわからないけど、わたしの望むように、優しくしてあげようっていう気持ちが伝わってきて、また涙がこぼれてくる。
はぁ、と息を吐く。そのまま唇で身体をたどられると、濡れた声と身体中の震えが止まらなくなってしまう。
「いい、よ、テラさま、手で、さわってくれる、だけで、わたし」
「力加減がわからぬからな。唇はいやか?」
「……いや、じゃ、ない……っ、けど、っだ、め……っ」
「だめなのか?」
「ダメ、じゃない……っ」
段々わけがわからなくなってくる。そのまま胸や首、やさしくあやすように辿られて、体の熱がゆっくりと押し上げられてくるのを感じていた。
82
あなたにおすすめの小説
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
なんか、異世界行ったら愛重めの溺愛してくる奴らに囲われた
いに。
恋愛
"佐久良 麗"
これが私の名前。
名前の"麗"(れい)は綺麗に真っ直ぐ育ちますようになんて思いでつけられた、、、らしい。
両親は他界
好きなものも特にない
将来の夢なんてない
好きな人なんてもっといない
本当になにも持っていない。
0(れい)な人間。
これを見越してつけたの?なんてそんなことは言わないがそれ程になにもない人生。
そんな人生だったはずだ。
「ここ、、どこ?」
瞬きをしただけ、ただそれだけで世界が変わってしまった。
_______________....
「レイ、何をしている早くいくぞ」
「れーいちゃん!僕が抱っこしてあげよっか?」
「いや、れいちゃんは俺と手を繋ぐんだもんねー?」
「、、茶番か。あ、おいそこの段差気をつけろ」
えっと……?
なんか気づいたら周り囲まれてるんですけどなにが起こったんだろう?
※ただ主人公が愛でられる物語です
※シリアスたまにあり
※周りめちゃ愛重い溺愛ルート確です
※ど素人作品です、温かい目で見てください
どうぞよろしくお願いします。
抱かれたい騎士No.1と抱かれたく無い騎士No.1に溺愛されてます。どうすればいいでしょうか!?
ゆきりん(安室 雪)
恋愛
ヴァンクリーフ騎士団には見目麗しい抱かれたい男No.1と、絶対零度の鋭い視線を持つ抱かれたく無い男No.1いる。
そんな騎士団の寮の厨房で働くジュリアは何故かその2人のお世話係に任命されてしまう。どうして!?
貧乏男爵令嬢ですが、家の借金返済の為に、頑張って働きますっ!
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
残念女子高生、実は伝説の白猫族でした。
具なっしー
恋愛
高校2年生!葉山空が一妻多夫制の男女比が20:1の世界に召喚される話。そしてなんやかんやあって自分が伝説の存在だったことが判明して…て!そんなことしるかぁ!残念女子高生がイケメンに甘やかされながらマイペースにだらだら生きてついでに世界を救っちゃう話。シリアス嫌いです。
※表紙はAI画像です
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
異世界に転生したら溺愛されてるけど、私が私を好きでいるために努力はやめません!
具なっしー
恋愛
異世界に転生したら、まさかの超貴重種レッサーパンダ獣人の女の子「リア」になっていた元日本の女子高生・星野陽菜(ほしの ひな)。
女性の数が男性の1/50という極端な男女比のため、この世界では女性は「わがままで横暴、太っている」のが当然とされ、一妻多夫制が敷かれています。しかし、日本の常識を持つリアは「このままじゃダメになる!」と危機感を抱き、溺愛されても流されず、努力することを誓います。
容姿端麗なリアは、転生前の知識を活かし、持ち前の努力家精神でマナー、美術、音楽、座学、裁縫といったあらゆるスキルを磨き上げます。唯一どうにもならないのは、運動神経!!
家族にも、そしてイケメン夫候補たちにも、そのひたむきな努力家な面に心惹かれ、超絶溺愛されるリア。
しかし、彼女の夢は、この魔法と様々な種族が存在する世界で冒険すること!
溺愛と束縛から逃れ、自分の力で夢を叶えたいリアと、彼女を溺愛し、どこまでも守ろうとする最強のイケメン夫候補たちとの、甘くも波乱に満ちた異世界溺愛ファンタジー、開幕!
※画像はAIです
異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?
すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。
一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。
「俺とデートしない?」
「僕と一緒にいようよ。」
「俺だけがお前を守れる。」
(なんでそんなことを私にばっかり言うの!?)
そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。
「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」
「・・・・へ!?」
『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!?
※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。
※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。
ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる