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第7章
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身体が、熱い。
今までより苦しい気がする。
それに意識が遠い。前までは紋章が発動しても意識があったのに――どうして?
たゆたう意識の中、シェラの脳内はぐらぐらと揺れていた。
身体だけが芯から熱くて、燃えそうなほどに揺らめいている。誰かに、低い声で呼びかけられて、応えようとおもうけれど口が動かない。
抱きしめられている、けれど、誰なのかはわからない。熱い、でもちょっとだけ寒くて、身体の震えが止まらなくて、自分の身体が自分のものではないような、そんなふわふわとした浮遊感がある。
わたしを、抱いて。穿って、めちゃくちゃにして。押し倒して、体に触れて、膣内を埋めてーー自分の気持ちとは全く違う欲望が内側から溢れ出てきて抑えきれない。
いやだ。涙が出てくる。怖い。こんな気持ちなんかいらない、わたしはーー!!
「ん……ぐぅ、んん……っ」
肌に穏やかな指が触れて、喉奥から声が出る。
はく、と口が勝手に開く。なにか、飲みたい……ううん、違う。欲しい、欲しいの、水じゃない。喉が渇いているんじゃない、ただ身体に触れて欲しい……愛して、欲しい。
「シェルヴェリラ」
「あ、ぁ、っ、ぁあ………」
何かが頬に触れる。サラリとした感触が気持ちいい。抱きしめられる。胸がまた締め付けられたように苦しくなって、大声を上げて――わたしは、目を開いた。
■
「テラ、さま?」
「気がついたか、シェルヴェリラ?」
背中が柔らかい。ベッドの上なのかな、とわたしはうっすらと瞳を開けてーーそして固まった。
目の前に、めちゃくちゃ綺麗なテラ様の顔がある。
いつもの宿の部屋だった。でもベッドの上じゃない。切れ長の涼し気な琥珀の瞳。通った鼻筋、薄い口元。どこかおっとりとした様子で微笑んだテラ様は、床にすわり、横抱きにわたしを抱きかかえていた。
ぱち、ぱちと信じられなくて2回瞬きした。
わたしは今、発情紋章を発動させた、ヘロヘロのぐちゃぐちゃの状態で、テラ様の膝の上に抱きかかえられて座っている。
「ここ、は? あの男、たちは? てら、さま、だいじょうぶ?」
聞きたいことは山ほどある。やつぎばやに……というには口がまわらなくてたどたどしい口調で訊ねた私に、テラ様は静かに首を振った。
「お前の気にすることではない。それよりも」
「!? ん、ぁっ!?」
する、としなやかな指先で胸元をたどられて、わたしは身をよじる。
破られたままの白いローブの前合わせは見事に拓かれ、胸が完全に見えてしまっていた。そして、その肌の上にくっきりと刻まれている、光る発情紋章。さっきからそれを宥めるようにテラ様の指先が紋章に触れてくれていて、それだけでしびれるような気持ちよさが全身に散っておかしくなってしまいそうだった。
涙がにじむ。こんなふうにあられもない声を上げて、さもしい。耐えられない、見ないで、ほしい。
「シェルヴェリラよ。お前が体調を崩しているのはこの胸元の印のせいだな。どうしてこのような」
「これはその……」
「ずっと、うなされていた。身体が辛いのだと思い、一度寝台に寝かせたのだが、さみしいとお前がすがってくるものだから、こうして抱きかかえていた。こうして擦るたびに、ひどく震えて叫んでいたので心配していたのだが」
「そ、そう……そう、なの……。あ、ありがとう……」
はずかしい。痴女にもほどある……!
紋章のせいで、誰かに触れて欲しくてすがったんだろうけれど、事情を知らないテラ様はどう思ったんだろう――なんて思うと、もう今すぐ布団をかぶってうずくまりたい気持ちだった。でも、そんなことしてられない。
紋章はわたしの胎奥を食い破るような勢いでじくじくと熱を持っていた。たぶんわたしは、本当にどうしようもない顔をしてると思う。でもテラ様は、さっきと全く同じ慈愛にみちた表情で、ぐっしょりと汗に濡れてるわたしの額にそっと触れて、あやすように撫でてくれた。
今までより苦しい気がする。
それに意識が遠い。前までは紋章が発動しても意識があったのに――どうして?
たゆたう意識の中、シェラの脳内はぐらぐらと揺れていた。
身体だけが芯から熱くて、燃えそうなほどに揺らめいている。誰かに、低い声で呼びかけられて、応えようとおもうけれど口が動かない。
抱きしめられている、けれど、誰なのかはわからない。熱い、でもちょっとだけ寒くて、身体の震えが止まらなくて、自分の身体が自分のものではないような、そんなふわふわとした浮遊感がある。
わたしを、抱いて。穿って、めちゃくちゃにして。押し倒して、体に触れて、膣内を埋めてーー自分の気持ちとは全く違う欲望が内側から溢れ出てきて抑えきれない。
いやだ。涙が出てくる。怖い。こんな気持ちなんかいらない、わたしはーー!!
「ん……ぐぅ、んん……っ」
肌に穏やかな指が触れて、喉奥から声が出る。
はく、と口が勝手に開く。なにか、飲みたい……ううん、違う。欲しい、欲しいの、水じゃない。喉が渇いているんじゃない、ただ身体に触れて欲しい……愛して、欲しい。
「シェルヴェリラ」
「あ、ぁ、っ、ぁあ………」
何かが頬に触れる。サラリとした感触が気持ちいい。抱きしめられる。胸がまた締め付けられたように苦しくなって、大声を上げて――わたしは、目を開いた。
■
「テラ、さま?」
「気がついたか、シェルヴェリラ?」
背中が柔らかい。ベッドの上なのかな、とわたしはうっすらと瞳を開けてーーそして固まった。
目の前に、めちゃくちゃ綺麗なテラ様の顔がある。
いつもの宿の部屋だった。でもベッドの上じゃない。切れ長の涼し気な琥珀の瞳。通った鼻筋、薄い口元。どこかおっとりとした様子で微笑んだテラ様は、床にすわり、横抱きにわたしを抱きかかえていた。
ぱち、ぱちと信じられなくて2回瞬きした。
わたしは今、発情紋章を発動させた、ヘロヘロのぐちゃぐちゃの状態で、テラ様の膝の上に抱きかかえられて座っている。
「ここ、は? あの男、たちは? てら、さま、だいじょうぶ?」
聞きたいことは山ほどある。やつぎばやに……というには口がまわらなくてたどたどしい口調で訊ねた私に、テラ様は静かに首を振った。
「お前の気にすることではない。それよりも」
「!? ん、ぁっ!?」
する、としなやかな指先で胸元をたどられて、わたしは身をよじる。
破られたままの白いローブの前合わせは見事に拓かれ、胸が完全に見えてしまっていた。そして、その肌の上にくっきりと刻まれている、光る発情紋章。さっきからそれを宥めるようにテラ様の指先が紋章に触れてくれていて、それだけでしびれるような気持ちよさが全身に散っておかしくなってしまいそうだった。
涙がにじむ。こんなふうにあられもない声を上げて、さもしい。耐えられない、見ないで、ほしい。
「シェルヴェリラよ。お前が体調を崩しているのはこの胸元の印のせいだな。どうしてこのような」
「これはその……」
「ずっと、うなされていた。身体が辛いのだと思い、一度寝台に寝かせたのだが、さみしいとお前がすがってくるものだから、こうして抱きかかえていた。こうして擦るたびに、ひどく震えて叫んでいたので心配していたのだが」
「そ、そう……そう、なの……。あ、ありがとう……」
はずかしい。痴女にもほどある……!
紋章のせいで、誰かに触れて欲しくてすがったんだろうけれど、事情を知らないテラ様はどう思ったんだろう――なんて思うと、もう今すぐ布団をかぶってうずくまりたい気持ちだった。でも、そんなことしてられない。
紋章はわたしの胎奥を食い破るような勢いでじくじくと熱を持っていた。たぶんわたしは、本当にどうしようもない顔をしてると思う。でもテラ様は、さっきと全く同じ慈愛にみちた表情で、ぐっしょりと汗に濡れてるわたしの額にそっと触れて、あやすように撫でてくれた。
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