【後日談有り】わたしを孕ませてください! ー白の令嬢は、黒の当主の掌で愛に堕ちるー

さわらにたの

文字の大きさ
66 / 94
エピローグ/後日談

20. 時を越えて(4)

しおりを挟む
 

「シア様」

 ノルンが、微笑を浮かべたまま言った。
 ルーは相変わらず無表情だがどこか楽しそうだ。

「二人とも、どうしたの?
「原因はよくわかりましたわ。それで、何がご不安なのですか?」

 ノルンに単刀直入に聞かれ、シアは口籠る。

「ええと……たくさんある、けれど。その、この文を書かれた方がどんな方だったのか、だとか、エルはわたしと結婚する前に、当主様だもの、沢山お付き合いされていたのかな、だとか。あとはその……本当は愛し合う方がいたのに、わたしと無理に結婚させられたのでは、とか……そういう、事よ」

 言葉にすると余計に自分の心の狭さが目立つ気がしてさらに恥ずかしくなる。

「本当は、ちょっと前から……気になってはいたの。でもこんなこと、聞くのもいやな女じゃない? エルの愛情を疑っているわけではないの。でも――エルは大人だから、うまく隠せたりもできるでしょう?」

 シアの言葉にノルンとルーは顔を見合わせる。
 そして今度はルーが静かに口を開いた。

「たしかに坊ちゃんは、過去に何人かの女性とお付き合いされていました。ただ……お傍にいても、まったく楽しそうではございませんでしたね」

 ノルンが続けるように頷く。

「ええ。どなたも“当主の妻にふさわしい”という理由で周囲に薦められた方々ばかりでしたから。坊ちゃんのほうは、淡々と義務を果たしておられただけでした。ご自身の発明した魔道具を見る目つきの方が、まだお優しいくらいで……。熱を上げておられる方もいらっしゃいましたが、周囲への義理返し程度にお付き合いされていただけです」
「そ、そんな……? でも――」
「坊っちゃんが愛しておられるのは、生涯、間違いなくシア様だけですよ。使用人一同、これだけは自信をもって言えますわ」

 静かに、しっかりとノルンが言い切った。
 その言葉に、シアの瞳が大きく揺れる。
 嬉しい。信じたい。でも……。

「じゃあ、この紙は……?」

 まだ不安の残る問いかけに、ルーはくすりと笑いながら、意味深な目線でノルンと視線を交わす。

「それはまあ、別件ですね。今は……内緒です」
「え?」

 シアのきょとんとした顔に、ノルンがにこやかに答える。

「この紙については、坊ちゃんからしっかりと説明してもらいましょう。諸々の話も、きちんとお話してもらった方がいいと思いますし」
「え……えっ、ええぇっ!?」
「呼んでまいります」

 すっと一礼し、扉へと向かうノルン。
 その背を、シアの声が、か細く追いかける。

「ちょ、ちょっと待って、ノルン! まだ心の準備が――」

 だがノルンはさっさと扉の向こうに姿を消してしまった。
 あとに残されたシアは、掛け布団をぎゅっと握りしめてぶわっと頬を染めた。
 そしてその頬がぷくりと膨らむ。

「ルー!」
「なんですか」
「ひどいわ! ノルンとルーは味方だと思ったからお話したのに、エルを呼ぶだなんて!」
「わたしたちより、坊ちゃんに直接聞いた方がすっきりするでしょう?」
「それは、そうかもしれないけれど……でも」

 それでもこんな展開になるなんて思わなかったわ、とシアは思う。
 ノルンとルーの、どこか楽しげな、揶揄うような態度も気に食わない。

「でも?」
「……他の女性の話をエルの口から聞きたくないの。お名前だけでも嫌だわ」
「おかわいらしいですね、奧様」
「……そんなことないわ。ただ、嫉妬深いだけ……。わたしもエルのように大人になれればいいのに」
「大人、ですか」

そういって、ルーはかすかに口元を上げて微笑む。
今日のルーはごきげんだわ、とシアは思った。

「ふふふ……シア様に、他の男性とのお付き合い経験がなくて、本当によかった、と私は思っていますよ。坊ちゃんの嫉妬心はすごそうですからね。とんでもないお薬を調合させられていたかもしれません……」
「……え? そ、そうかしら?」
「そうですとも。愛されている自覚を、きちんとお持ちください、シア様」

 ルーはすました顔をして、相変わらず口元だけで笑っていた。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております

紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。 二年後にはリリスと交代しなければならない。 そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。 普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…

【完結】呪いを解いて欲しいとお願いしただけなのに、なぜか超絶美形の魔術師に溺愛されました!

藤原ライラ
恋愛
 ルイーゼ=アーベントロートはとある国の末の王女。複雑な呪いにかかっており、訳あって離宮で暮らしている。  ある日、彼女は不思議な夢を見る。それは、とても美しい男が女を抱いている夢だった。その夜、夢で見た通りの男はルイーゼの目の前に現れ、自分は魔術師のハーディだと名乗る。咄嗟に呪いを解いてと頼むルイーゼだったが、魔術師はタダでは願いを叶えてはくれない。当然のようにハーディは対価を要求してくるのだった。  解呪の過程でハーディに恋心を抱くルイーゼだったが、呪いが解けてしまえばもう彼に会うことはできないかもしれないと思い悩み……。 「君は、おれに、一体何をくれる?」  呪いを解く代わりにハーディが求める対価とは?  強情な王女とちょっと性悪な魔術師のお話。   ※ほぼ同じ内容で別タイトルのものをムーンライトノベルズにも掲載しています※

婚約解消されたら隣にいた男に攫われて、強請るまで抱かれたんですけど?〜暴君の暴君が暴君過ぎた話〜

紬あおい
恋愛
婚約解消された瞬間「俺が貰う」と連れ去られ、もっとしてと強請るまで抱き潰されたお話。 連れ去った強引な男は、実は一途で高貴な人だった。

襲われていた美男子を助けたら溺愛されました

茜菫
恋愛
伯爵令嬢でありながら公爵家に仕える女騎士イライザの元に縁談が舞い込んだ。 相手は五十歳を越え、すでに二度の結婚歴があるラーゼル侯爵。 イライザの実家であるラチェット伯爵家はラーゼル侯爵に多額の借金があり、縁談を突っぱねることができなかった。 なんとか破談にしようと苦慮したイライザは結婚において重要視される純潔を捨てようと考えた。 相手をどうしようかと悩んでいたイライザは町中で言い争う男女に出くわす。 イライザが女性につきまとわれて危機に陥っていた男ミケルを助けると、どうやら彼に気に入られたようで…… 「僕……リズのこと、好きになっちゃったんだ」 「……は?」 ムーンライトノベルズにも投稿しています。

勘違い妻は騎士隊長に愛される。

更紗
恋愛
政略結婚後、退屈な毎日を送っていたレオノーラの前に現れた、旦那様の元カノ。 ああ なるほど、身分違いの恋で引き裂かれたから別れてくれと。よっしゃそんなら離婚して人生軌道修正いたしましょう!とばかりに勢い込んで旦那様に離縁を勧めてみたところ―― あれ?何か怒ってる? 私が一体何をした…っ!?なお話。 有り難い事に書籍化の運びとなりました。これもひとえに読んで下さった方々のお蔭です。本当に有難うございます。 ※本編完結後、脇役キャラの外伝を連載しています。本編自体は終わっているので、その都度完結表示になっております。ご了承下さい。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

一目惚れは、嘘でした?

谷川ざくろ
恋愛
代打で参加したお見合いで、「一目惚れです」とまさかのプロポーズをされた下級女官のシエラ・ハウエル。 相手は美しい公爵、アルフレッド・ベルーフィア。 疑わしく思いつつも、病気がちな弟の治療と領地への援助を提示され、婚約を結んだ。 一目惚れと言っていた通り溺愛されて相思相愛となり、幸せな結婚生活を送るシエラだったが、ある夜、夫となったアルフレッドの本音を聞いてしまう。 *ムーンライトノベルズ様でも投稿しています。

冷酷な王の過剰な純愛

魚谷
恋愛
ハイメイン王国の若き王、ジクムントを想いつつも、 離れた場所で生活をしている貴族の令嬢・マリア。 マリアはかつてジクムントの王子時代に仕えていたのだった。 そこへ王都から使者がやってくる。 使者はマリアに、再びジクムントの傍に仕えて欲しいと告げる。 王であるジクムントの心を癒やすことができるのはマリアしかいないのだと。 マリアは周囲からの薦めもあって、王都へ旅立つ。 ・エブリスタでも掲載中です ・18禁シーンについては「※」をつけます ・作家になろう、エブリスタで連載しております

処理中です...