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「僕には話せないこと? 僕、そこそこ頼りになるとは思ってるんだけどな……?」
冗談めかした口調でそう言うニコラスに、ヴィオレッタは力なく笑った。
――何も話してくれないのは、ニコ様じゃないですか。中央に帰るんでしょう?
思わずそう叫んでしまいそうになり、唇が震える。口に出せないぐちゃぐちゃの醜い感情が、胸の奥にふつふつと溜まっていくのがわかった。
――半年間、私の体をこんなに淫らにめちゃくちゃにしておいて。
――お別れの言葉のひとつ言わず、あっさり中央に帰るんですね。
――やっぱり男なんて、嘘つきなんですね。
そんな醜い言葉たちを喉奥に飲み込んで、ヴィオレッタはうつむいた。
笑顔で「ありがとうございました。お元気で」って、ちゃんと言わなきゃ。
ニコ様が、好きだから。感謝、しているから――
「ヴィオちゃん!」
ヴィオレッタの頬には、気づけばほろほろと涙が伝っていた。
慌てて拭う。どうして。
「なんでも……ありません。なんでも……ないんです」
絞り出すようにそう言って、ヴィオレッタは初めて自分からニコラスに抱き着いた。
強くしがみ付いてその胸元に顔を埋める。
「ニコ様……お願い、します」
最後かもしれないから。
ヴィオレッタは抱きついたまま体重をかけ、ニコラスの身体を仰向けに寝台へと押し倒した。
冗談めかした口調でそう言うニコラスに、ヴィオレッタは力なく笑った。
――何も話してくれないのは、ニコ様じゃないですか。中央に帰るんでしょう?
思わずそう叫んでしまいそうになり、唇が震える。口に出せないぐちゃぐちゃの醜い感情が、胸の奥にふつふつと溜まっていくのがわかった。
――半年間、私の体をこんなに淫らにめちゃくちゃにしておいて。
――お別れの言葉のひとつ言わず、あっさり中央に帰るんですね。
――やっぱり男なんて、嘘つきなんですね。
そんな醜い言葉たちを喉奥に飲み込んで、ヴィオレッタはうつむいた。
笑顔で「ありがとうございました。お元気で」って、ちゃんと言わなきゃ。
ニコ様が、好きだから。感謝、しているから――
「ヴィオちゃん!」
ヴィオレッタの頬には、気づけばほろほろと涙が伝っていた。
慌てて拭う。どうして。
「なんでも……ありません。なんでも……ないんです」
絞り出すようにそう言って、ヴィオレッタは初めて自分からニコラスに抱き着いた。
強くしがみ付いてその胸元に顔を埋める。
「ニコ様……お願い、します」
最後かもしれないから。
ヴィオレッタは抱きついたまま体重をかけ、ニコラスの身体を仰向けに寝台へと押し倒した。
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